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ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

事件といえば事件

2017-08-30 | 家族

土曜日の夜八時頃、ここから車で一時間の市に住む長男から電話があって、妻のKをER(救急室)へ至急連れて行くので、7ヶ月になる娘を見てくれないかと言う。長男は研修医で、最初の触診で妻は盲腸よりも卵巣嚢腫茎捻転か卵巣嚢腫破裂ではないかと診たらしい。夫と私は五分経たずして出発した。

右下腹部の痛みが強くなり、息子は娘のZを子供シートに入れて、病院へ患者となった妻を連れていった。幸いERにはちょうど研修医仲間が詰めていたので、即座に受け入れてくれたということ。私達夫婦が到着すると、家の外にZを抱いた息子がいて、私がZを受け取ると、早速彼は病院へ戻った。

孫のZは、夜泣きするし、なかなか気難しいと聞いていたが、しばらくして親のいないことに気づき、不安から泣き始めた。夫は多少その泣き声の強さに心配したようだったが、私はZに話しかけながら、抱いて歩き回り、気長に勝負よね、と覚悟していたが、やがて私の腕の中でころりと寝入った。

Zをクリブに移し、手があいたので、慌しさが伺えるキッチンで洗い物をすませた。夜もずいぶん更けてきて、夫も休ませ、私はひとり居間で息子のテキストを待ち、孫の夜泣きに備えた。こういう時、スマートフォンは便利である。Netflixで見かけていたMidnight In Parisを見終えた。 

息子は報告をしてくれ、超音波検査では痛む右下腹部の盲腸も卵巣も異常がないとわかった。更にCTスキャン検査をして、当面痛みを緩和する薬剤を、と提案されたが、授乳中なので、そして痛みが和らぎ始めていたので、Kは拒否したという。CTスキャンの放射線量は確かに普通のX線レントゲン一枚より多いが、腹部への被爆量は1.2ミリシーベルトである。

普通に地球上で生活していると受ける自然放射線による被爆量は、年2.4ミリシーベルトである。よってこの検査の被爆量は、日常気にしていない自然放射線被爆量との比較により、影響の発生を心配する必要はない、と医学界は考えて差し支えないと聞く。妊娠はなく、胎児への影響も関係ないし、これが授乳に被害をもたらすとは考えがたい。医療被曝による影響の大きさよりも患者への利益がはるかに大きいと思う。

しかしながら患者が拒否するなら、誰も無理強いはできない。やがて痛みはあるものの、かなり軽減して、ERでできることはなくなり、午前二時を過ぎて二人は疲弊して帰宅した。まず二人を寝かせ、Zの様子をチェックしてから、万が一のため、一晩そこで夫と過ごすことにして休んだ。

翌朝早く私達は息子の家を出て帰途についたが、三十年前の若さはとっくにないから、帰宅早々泥のようにくたくたになって眠った。後で息子が、彼女は痛みはあっても薄れてきているから、週日に専門医に検診してもらうことにしたと言った。そして息子が、Zがたいしたエピソードもなく、寝入ったのを聞いて、不思議だと言ったが、そこは五人生み育てた経験のある祖母だもの。

幼ない娘のために気の遠くなるような痛みをこらえ耐えていたKが、かわいそうでならない。初めての子供を育てながら、在宅で病院勤務を続けているその健気な肩は本当に薄い。多くの医学生や研修医は、妻帯者であれば、その間福祉に頼ることが多いのに、そして今助けてもらって後日一人前になった時、その恩返しをする医師や歯科医はたくさんいるのだ。そう言ってもKは、福祉は本当に困っている人のためであると休まず働く。その生真面目な姿勢があまりに一途なので、医療放射線量は心配することがない、と説明するのは息子に委ねて、私はせめて子守りのお呼びがかかるのを待つ。それが私のできることである。

この小さなひとも、おかあさんの健康を願っている。