天狗とおまん
小学一・二年の頃、山の祖父母のところへ父の使いで煙草や魚等を届けて泊まると、祖父といっしょに寝て面白い昔話を聞くのが楽しみであった。
「おぢいさん、また面白い話をして」と言うと、「よっし、今晩は天狗の話をしちゃろう」と言ってから、歌を歌いだした。
「土佐はよいとこ、美人が多うて、おまん可愛いや、布曝すよ、よさこい、とさにこい」と歌ってから、
「此処の山の空に愛宕山神様の祠があって、そこに、愛宕山神様の召し使いに、天狗で、鼻がにぎりこぶし二つ合わしたほど長い、顔は真っ赤で、手にはやつでの葉のような扇を持ち、足には一つ歯の高下駄を履き、着いた着物は山伏衣で、見るからにそれは恐ろしい男の天狗様。 ほんたい怖いぜよ。
その天狗が、うにゃうにゃとお呪いを唱えて、手に持った扇をパコリっとあおったら、天狗様はスーっと空中に浮いて、空をぐるぐる飛んで回り、里の人達がまじめに精出して仕事をしよるかのと、お天気の良い日はいつも空から見て回りよった。
ある天気の良い日に、天狗様はいつものとおり、空から見て回っていた。
ふっと、小川を見たら、名主の娘で、おまんという里一番の器量良しの娘が、水の澄んだ小川で、着物を尻からげをして、赤いおこしをみせ、臍から下の白い足を水にひたして、洗濯物をチャプチャプリンと洗濯をしていた。
その姿の美しいこと。空を飛びながら、水に映ったおまんを見て、こりゃほんたい奇麗な娘じゃと思い、思わず声が出て、『おまん可愛いや、布曝すよ。』と言うた。
とたんに、天狗様の魔法が解けて、たまるか、天狗は空から真っ逆さまに落ちてきて、おまんが洗濯している小川に、ドプンと水しぶきを上げて落ち込んだ。
おまんはびっくりして、そこを見たら、あのいかめしい天狗様ではなく、痩せてひょろろとした、ただのおぢいさんじゃった、と。
女子(おなご)が奇麗ないうて心を引かれたら、天狗の魔法も解けて、役にたたんようになると。」話してから、
「土佐はよいとこ、美人が多うて、おまん可愛や、布曝すよ、よさこい土佐にこい」と、歌を聞く。そのうちに寝てしもた。
三郎さんの昔話・・・作者紹介
三郎さんの昔話
小学一・二年の頃、山の祖父母のところへ父の使いで煙草や魚等を届けて泊まると、祖父といっしょに寝て面白い昔話を聞くのが楽しみであった。
「おぢいさん、また面白い話をして」と言うと、「よっし、今晩は天狗の話をしちゃろう」と言ってから、歌を歌いだした。
「土佐はよいとこ、美人が多うて、おまん可愛いや、布曝すよ、よさこい、とさにこい」と歌ってから、
「此処の山の空に愛宕山神様の祠があって、そこに、愛宕山神様の召し使いに、天狗で、鼻がにぎりこぶし二つ合わしたほど長い、顔は真っ赤で、手にはやつでの葉のような扇を持ち、足には一つ歯の高下駄を履き、着いた着物は山伏衣で、見るからにそれは恐ろしい男の天狗様。 ほんたい怖いぜよ。
その天狗が、うにゃうにゃとお呪いを唱えて、手に持った扇をパコリっとあおったら、天狗様はスーっと空中に浮いて、空をぐるぐる飛んで回り、里の人達がまじめに精出して仕事をしよるかのと、お天気の良い日はいつも空から見て回りよった。
ある天気の良い日に、天狗様はいつものとおり、空から見て回っていた。
ふっと、小川を見たら、名主の娘で、おまんという里一番の器量良しの娘が、水の澄んだ小川で、着物を尻からげをして、赤いおこしをみせ、臍から下の白い足を水にひたして、洗濯物をチャプチャプリンと洗濯をしていた。
その姿の美しいこと。空を飛びながら、水に映ったおまんを見て、こりゃほんたい奇麗な娘じゃと思い、思わず声が出て、『おまん可愛いや、布曝すよ。』と言うた。
とたんに、天狗様の魔法が解けて、たまるか、天狗は空から真っ逆さまに落ちてきて、おまんが洗濯している小川に、ドプンと水しぶきを上げて落ち込んだ。
おまんはびっくりして、そこを見たら、あのいかめしい天狗様ではなく、痩せてひょろろとした、ただのおぢいさんじゃった、と。
女子(おなご)が奇麗ないうて心を引かれたら、天狗の魔法も解けて、役にたたんようになると。」話してから、
「土佐はよいとこ、美人が多うて、おまん可愛や、布曝すよ、よさこい土佐にこい」と、歌を聞く。そのうちに寝てしもた。
三郎さんの昔話・・・作者紹介
三郎さんの昔話