インプロヴィゼーションの彼方に

人生ヨウスルニインプロヴィゼーション

漆黒の音楽 ~AFRO FUTURE FILM FESTIVAL~

2006-03-10 01:43:42 | 今日の一本
近年、刺激が少ないんですよ。刺激がない分、同時に希望も鈍化する。身辺も世の中も我々の希望を奪うに相応しい事件性に溢れているからなおさらだ。鈍化した心を鋭く磨ぎあげるには、スポイルされ鈍化したなりの自力を振り絞り多大なエネルギーが必要になります。ので気持ちの再起動を図るべく、僕は欲望渦巻く夜の街渋谷へレイトショーを観に行ったんですよ。CD屋でふと目にしたフライヤーの宇宙的デザイン、そして漢字が魅惑すぎるキャッチが僕の心を捉えた『漆黒の音楽』。かっこよすぎである。
Robert Johnsonがアメリカ南部の十字路(いわゆるcrossroad)で、悪魔に魂を売り契約を交わし、ギターを弾く技術を手に入れたことからその歴史が始まるという一般的な風説をもつ黒人音楽Bluse。それまで地道に発展してきて、記録分析対象となりえ、まさに地球上に存在する音楽史そのものだった西洋クラシック音楽の文脈とは無関係に、そこに突然変異的に存在していた、西洋からの視点では異端的音楽のBluse。奴隷の抗う手段。そこからスタートしBluseと西洋音楽(Classic)のFusionともいえるJAZZ、Bluseをアフロリズムにのせるべく、ドラムはモチロンギターもベースもラッパも全ての楽器を打楽器に変換しグルーヴさせたFunk、Bluseに影響されジャマイカの地で発展したRaggae、Bluseを電気の力で爆音化し演奏したRock、さらには現在のClub MusicであるHip Hop、R&B、House、Techno、Drum'n'Bassにまで発展し繋がる、まさに現在の大衆音楽の根源といえる音楽Bluse。その歴史的起源から文化的背景、進化の過程を追う非常にDEEPなドキュメンタリー映像作品を上映して、漆黒の音楽を紐解く映画祭とゆうわけです。

でまずこの2作品を拝見。黒人音楽文化の最重要キーワードという「ブラックサイエンスフィクション」、「アフロフューチャリズム」を理解するべく、あえてジャンル分類するとFunkのGeorge Clinton、JazzのSun Ra、RaggaeのLee "Scratch" Perryを筆頭に、その共通する黒人宇宙に迫ってみるという『THE MOTHERSHIP CONNECTION ~LAST ANGEL OF HISTORY』と、金歯が印象的なクリエイターGOLDIEの半生からDrum'N'Bassの歴史を探る『GOLDIE ~WHEN SATURN RETURNZ』。両作品ともとてもカッコよくて、人間的で、地球規模なドキュメンタリーで、Black Musicへの興味が深まった。これまでBlack Musicに傾倒した時期、っていうのがあったわけではないので、名前だけ知ってたような各界の大御所たちの貴重そうな映像と、確信に満ち溢れた言葉、音楽観や世界観に触れることができ、夜分遅くにがんばっただけある思惑通り刺激的な映画鑑賞となったよ。