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RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク) BLOG.

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VICTIMからSURVIVORへ。救済より尊重を!

2017-04-12 15:23:54 | 映画/小説/ドラマ

RC-NETは設立以来、政策提言を始めとした、政策・法律に関わる活動をあまりしてこなかった。それは「まず当事者と共にある事」「まず当事者にとって生きやすい社会をつくること」その為には、まず「当事者の居場所を作る事」だと考えてきたからだ。

しかし、2014年に改正議論が加速化し、法務省の検討委員会にてヒアリングに呼ばれたことから、私たちが受けてきた相談事案を含め、これまでのサバイバーたちの「声」が役に立つならみんな喜んでくれるのではないかと、せっせと書類を作り、せっせと各所でのお話をさせていただいてきた。

「あなたが当事者代表なわけではないでしょう」などと言われたことも何度でもあるが、正直私は、どこであれ、私自身の被害についてを話したことは2回を除いてない(2回は、大学の講義と社会啓発用冊子での体験談にて)。自分が出会ってきたサバイバーや各国での実践に基づいて話しているだけだ。

というわけで、代表だ等と思った事は一瞬もない。それを前提として、私は今の性暴力被害者支援の現場が見るに耐えないものだと感じている。

「強姦罪」

これが、被害の実態に即しておらず、より実態に即した形で改正されなければならない、ということについては異議を唱える隙はない。もちろんだ。しかし、性暴力の全ては強姦罪だけで語れるものではないのも確かなことだ。法務省の改正の論点に沿った議論しかせず、勝ちをとりに行こうとしたことについては、私たち市民団体の反省点の一つだと思う。その論点の洗い出しからしなければならなかった。実際にそうした声はあった。これまで、性暴力とは何かということについてより習熟した論議があったにもかかわらず、当事者団体としての改正に向けた素案を出さずに国の言う議論に乗ってしまっただけだからだ。

その改正論点の中からですら、政府が受け取った答申においては多くの事柄が排除されてしまった。暴行脅迫要件はその中の大きな課題の一つ。性暴力被害を受けた多くの人たちが「生き延びるため」にした選択が、改正案の中でも「抗拒不能性」を問われ、強姦であることを認められはしないのだ。

また、陰茎の挿入のみを強姦とすることについてもそうであろう。挿入の主体が性器か否かで犯罪の性質、被害にあった者のダメージが変わるというのだから、とんだ茶番のような話だ。それで、量刑が変わってしまうのだから。

そして、監護者要件についても、児童福祉法に則った「現に監護する者」からの被害以外は被害と認めないという。要は経済的に、その者の生活を支えている人間だけ、ということだ。他団体の方がこれを「近親者」と記載しているのを見たが、それは完全にミスリードであろう。

そもそも性暴力とは何なのか。

私たちはもっと、もっともっと、そこに注目しなければいけない。

「犯罪」だけを念頭に社会的な発信を続けることは、ある意味では強姦神話を広めることにも繋がる。

VICTIM(被害者)ではなくSURVIVOR(性暴力を生き抜いた人たち)だと名乗りだした人たちは、私たちに「力」があることを伝えたかったはずなのだ。私たちは被害にあった。しかし、一生被害者として生きる必要はない。生き抜いたものたちなのだと、

「被害の圧倒的多数を占める女性」「性犯罪被害者の多くは子供や若い女性です。」というような、これまた「分かりやすさ」ばかりを押し出したもの言いは、そこから除外されたサバイバーの力を奪い取る。

そんなことを支援団体と言う名のもとに行っていること気がつくべきだ。

犯罪、という文脈を重視しすぎるからそういうことになる。何故なら、強姦罪は女性の被害しか認めておらず、それ故に犯罪白書にも女性の被害しか載っていないし、内閣府の調査も女性に対してしか行っていないからだ。日本では、「性暴力」に関する国レベルでの大規模調査が無い。しかし、疑いもなく「被害者は女性」それも「若い女性」とまで言い切るのが今の「支援者」だとしたら、私はこう思うのだ。

サバイバーを分断しているのは、あなた方だ、と。


また、このところ、被害当事者として、また支援者としてのメディア等での発言や、他SNSを含めた自発的な発言の中で、とても気になるものがある。

被害者「救済」という言葉だ。

私は、「救済」という言葉を支援者と呼ばれる人間たちが使いだしたら、それは当事者運動にとって、当事者と支援者のバランスが支援者上位主義に傾いている瞬間だと思っている。要は、人間を弱者と捉えだしたということ。 それはvictimへの視線であり、survivorsへの視線ではない。

社会に対して理解を促したい、議論を大きくしたい、という気持ちはわかる。だが、社会に対して分かりやすい物言いをするがために「救済/救い」という言葉を安易に言うべきではない。強姦罪が改正されれば被害者が救済されるというが、 あなたは裁判をしたからといって救われたのか? 裁判をしなかったから、救われなかったのか?

そんな単純なものではないし、暴行脅迫要件が変わらない現状、裁判をしたからといって「被害者」が救われるような思いをすることは全く、不確かな事柄に過ぎない。

強姦罪改正は、確かに共謀罪よりも先に閣議決定された。順当に行けば先に審議されるはずであり、強姦罪を後に回す事によって共謀罪の審議過程に強姦罪の早期改正を求める当事者の声が利用されるのではないかという懸念はもっともな事であり、単純にこう思う。

「サバイバーを政治利用する現政権与党は最低だ」。

しかし、ある意味ではこうも思う。

強姦罪改正への議論はまだ足りない。時間が出来た。より良い改正のために、私たちは声をあげていかなければいけないと。

そして、現段階での改正案について、これらが施行された場合、施行前の事案であった場合でも改正後の要件での裁判が実施されることになると法制審議会の中では話し合われていたはずだ。

肛門や口への陰茎挿入被害があった人たち、18歳未満で監護者(主に生計を一にする親)からの陰茎挿入をされたという人たち、あなたたちは改正強姦罪で訴えることが可能になる可能性が大きい。今からでも、準備をしていきましょう。

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