毎日新聞 2015年11月17日 11時38分(最終更新 11月17日 13時45分)

 【パリ賀有勇】フランスのオランド大統領は16日に行った上下両院合同議会での演説で、パリ同時多発テロで犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)に対する軍事攻撃を巡り、近くオバマ米大統領のほかに、プーチン露大統領とも会談することを明らかにした。シリアのアサド大統領排除を前提にしていた対シリア戦略を転換し、アサド政権を守る立場からISを含む反政府武装組織に対して空爆を行うロシアと、有志国連合との間で一層の協力をはかる狙いがあるとみられる。

 オランド大統領は「シリアは世界最大のテロリストの温床になっている」と指摘したうえで「解決に至ることがなかった(IS掃討という)問題」を解決するため米露両国の大統領と会談すると説明。IS打倒を目指し、米国を中心とする有志国連合の枠組みにロシアを組み入れる意向を示した。

 シリアのISを巡る空爆では、アサド政権を支援するロシアと、米国やフランスなどの有志国連合との間には溝がある。オランド大統領は「フランスはシリア問題でアサド大統領抜きの平和的解決を目指すが、シリアにおける眼前の敵はISだ」と指摘。アサド政権排除の優先順位を下げ、ISに標的を絞って米露が協調する道を探ることを示唆した。

 一方、フランスで起きた同時多発テロについて「シリアで計画して組織され、ベルギーで準備された」と述べ、中東と欧州を結ぶテロネットワークの犯行という見方を示した。国内のテロ対策について、国境警備に当たる職員やテロ対策に当たる警察官などを8500人増員する方針を示した。過激な思想に染まっている人物などの監視を強化することも明らかにした。

 また、議会の承認を経ずに非常事態宣言の延長が可能になるよう憲法を改正する意向も表明。改正されれば、大統領権限の強化にもつながる。憲法改正には、上下各院の過半数が賛成した後、両院合同会議で5分の3以上の賛成か、国民投票で過半数の賛成が必要になる。

 仏メディアによると、オランド大統領の演説後、ノエル・マメール下院議員は「監視強化には賛成するが、まるで愛国者法のようだ。憲法改正には反対だ」と異を唱えた。

 大統領が上下両院合同議会で演説を行うのは、サルコジ前大統領がイスラム教徒の女性が身につけるブルカの着用反対の意見などを述べた2009年以来。

 一方、ケリー米国務長官は17日午前、パリでオランド大統領とIS戦略を巡って会談する。