
(全部終わった後の1月19日にやっと「外遊」から帰ってきた安倍総理。肝心の時に役に立たない首相だ)
アルジェリアの人質事件はまだ全容がわかりませんが、約40人の武装集団がガス関連施設を襲って多数の方々を人質にとり、アルジェリア軍が突入して、人質とされた方々が8か国37名亡くなられたということです。
日本の日揮というプラント会社の方々も少なくとも7名が亡くなり、まだ3名の方の安否が不明だということです。
日本の方だけでなく、すべての行方不明の方々の安全をお祈りし、亡くなった方々のご冥福をお祈り申し上げ、遺された皆様に心からお悔やみ申し上げます。言葉でどういっても言いつくせるものではありませんが。。。。
この事件では、施設で働いていた日本人、米国人、英国人、フランス人、ルーマニア人、ノルウェー人、フィリピン人の方々が死亡もしくは行方不明となっており、他方、武装勢力のメンバーはカナダ国籍の男が首謀者で、エジプト人、モーリ タニア人、ニジェール人、チュニジア人、マリ人、アルジェリア人が含まれているということで、まるで武力紛争の絶えない地球の縮図のような悲劇になりました。
アルジェリア軍の誤爆もあったと報道されており、人質の中で亡くなった方がすべて武装勢力に殺害されたのか、アルジェリア軍との交戦で亡くなられた方もいらっしゃるのかわかりませんが、日本人の方を含めて人質の一部の方が爆弾を体に巻かれて「人間の盾」にされたという報道もあり、いずれにしても全く罪のない関係のない人を人質にして死に至らしめてしまう犯人たちはまさにテロリストの残虐さで、まるで同情の余地がありません。
ちなみに本事件の背景事情としては、アルジェリアの隣国のマリで2013年1月11日、北部の反乱勢力を抑えようとする政府軍の要請を受けて、フランスが軍事介入し戦争状態に突入していることが関係しているようですが、そんなこと、人質にされた方々とは何の関係もないのですから。
(なぜ日本人を選んで殺害したのか)
これだけ多数の方々が故意に命を奪われたとなると、私のような凡人は茫然自失と言った感じなのですが、それでもこの事件に関して気になることがいくつかあります。まず、安倍首相がのんびり外遊をしすぎで、本当はもっと早く帰ってきて対処すべきではなかったか、ということです。
この事件が起きたのは、2013年1月16日午後2時ころで、同日午後5時前には日本政府も事件発生を把握しました。そして、アルジェリア軍が救出作戦に入ったのは17日夜でした(いずれも日本時間)。
ところが、肝心の安倍晋三首相がアルジェリアのセラル首相に電話して人命優先の救出活動を求めたのは、同国軍の武装勢力に対する鎮圧作戦がほぼ終了しようという18日になってからだというのですから、噴飯ものです。そして、安倍首相がASEANでの外遊を切り上げたのは19日朝になってからです。
ちなみに、1月18日にオランダのアムステルダムで、EUにおける将来の英国の役割について演説する予定になっており国内外から注目が集まっていた英国のキャメロン首相だって、17日に声明を発表して演説を延期して、自国の議会で事件について報告したり、アルジェリア軍の早すぎる攻撃を批判したりしているのです。
こんな危機意識のないお粗末な日本の内閣総理大臣はもっと批判されて当然だと思います。
これに関して、菅官房長官らが、またぞろ、日本版国家安全保障会議(NSC)が必要だなどと言いだしていますが、軍の作戦が基本的に終了した後も、日本政府は人質の安否について「情報が錯綜している」と繰り返すばかりだったのは、皆さんがテレビでご覧になったとおりです。 どんな組織を作っても、政府のこの危機管理意識・能力では話になりません。
安倍内閣はまず自らの危機管理の甘さを問いただすべきでしょう。実際、民主党政権もひどいものでしたが、安倍内閣の時に東日本大震災と福島原発事故が起こっていたらと思うと、さらにぞっとします。
安倍晋三自民党新総裁誕生 暗黒の騎士(岸)再び
(これも全く役に立たなかった城内実政務官)
また、惨事便乗型政治の典型というか、邦人救出のために自衛隊が海外に行けるように自衛隊法を「改正」するという話が安倍自民党政権から出てきています。
しかし、少なくとも、今回の事件ではアルジェリアと関係が深く、マリにも展開しているフランス軍でさえ何の役にも立たず、しょっちゅう武力行使している英米の軍隊も動く暇さえなかったのですから、自衛隊法がどうなっていようが、一人たりとも日本人の命を救出できなかったのは明らかなのですが、いったい、何のために自衛隊を海外に送れるようにしようというのでしょうか。
今の法律では自衛隊が邦人を陸路で輸送できないとかいろいろ細かいことを言っていますが、ちなみに、無事が確認された日揮の日本人駐在員7人の方々を帰国させるためなら、首都アルジェに政府専用機を派遣することになっており、別に自衛隊法を「改正」する必要性は今回も全くありません。
仮に、自衛隊が動けたとしても、今回のように情報が錯そうしていると混乱し、何が起こっているのかもまるで分らないような日本の外交の状態では、自衛隊など現地に行っても動きようもなく有害無益でしょう。今よりさらに武装できるようにするなどとも言っていますが、他国に重武装の軍隊を送るなど緊張と反発を生むだけです。
(これぞショック・ドクトリン=惨事便乗型ビジネス)
今回の事件の教訓は、日本の情報収集能力の乏しさのはずです。それは、自衛官がやるべきことではなく、大使館がやるべきことなのです。検証すべきは官邸と外務省の怠慢です。
さらに言えば、前述した1月11日からのフランス軍のマリ北部攻撃について、日本政府は早くも1月14日にこれを支持する声明を発表しています。戦争放棄をした国の政府としてはいかにも軽率ですし、今となってみればこれもなんの情報もないのに一方的に支持声明を出してしまったことが今回の人質事件で多数の日本人殺害に結びついていないか、徹底的に検証されるべきでしょう。
さて、今回の事件で、日本人の人質の方々が無残に殺害された背景には、ブッシュ前大統領らに「ショー・ザ・フラッグ」と言われて、小泉内閣がイラク戦争に自衛隊を派兵してから、イスラム諸国での日本に対する「特別な尊敬」はもはや薄れていることがあるとも言われています。
そもそも「テロとの戦争」と勇ましく言いますが、憎しみと報復が連鎖し、拡大しているだけのように見えます。在外邦人の安全を本当に考えるのであれば、日本が軍隊を背景にした「普通の国」になってしまうのではなく、軍隊のない国コスタリカのような徹底した平和・調停外交で、世界中から敬意を持たれることが大事なのではないでしょうか。
世界一「幸せ」な国はコスタリカ
また、かつて、旧日本軍が行なった上海事変や山東出兵などの軍事行動の多くが「在外邦人保護・救出活動」を名目としていました。「邦人救出」という一見もっともらしそうな理由が戦争を起こす大義名分となりました。
自衛隊を国防軍にすると安倍自民党が言っている今、多数の日本人の方が亡くなられたショックに付け込まれ、戦争でずっと多くの犠牲者を出すような事態だけは避けるよう、目の前で起きている生々しいことだけにではなく、歴史にも学びたいものです。
総選挙の争点4 安倍自民党の公約「集団的自衛権」で日本の国防軍はアメリカの戦争に参戦する
まさに温故知新。
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菅義偉官房長官は22日午前の記者会見でアルジェリア人質事件に関し、海外で緊急事態が発生した際の邦人救出の ための自衛隊法改正について、与党の議論を踏まえた上で政府として検討する考えを表明した。「日本版国家安全保障会議(NSC)の設置は極めて大事だ」と の認識も示した。
公明党の井上義久幹事長も、アルジェリア人質事件に関する与党対策本部会合後の会見で「邦人保護の在り方につい て自衛隊法改正を含めて検討したい」と明言。同時に「自衛隊の実力行使を伴うような海外派遣は政府提出法案でやるべきだ」と、議員立法での改正には慎重な 姿勢を示した。
アルジェリア人質事件の経緯(日本時間)
【16日】
午後 2時ごろ イスラム武装勢力がアルジェリア・イナメナスの天然ガス関連施
設襲撃。日本人を含む外国人40人前後とアルジェリア人100
人以上を拘束し籠城
4時40分 政府、邦人拘束の情報を把握
9時すぎ 菅官房長官が記者会見で「邦人が数人拘束された」と発表
11時半ごろ 外務省、与党対策本部で「3人拘束の可能性」を伝達
【17日】
午前 0時ごろ 岸田外相がアルジェリア外相と会談、早期解決に向けた協力と人
命最優先で対応することを要請
3時ごろ 犯人グループが犯行声明
11時ごろ 岸田外相、キャンベル米国務次官補と会談、日米連携を確認
11時半~ 政府対策本部が初会合
午後 4時10分ごろ 外国人人質3人がアルジャジーラの電話取材に応じ、人質の日本
人男性がアルジェリア軍の発砲で負傷したと語る
8時41分 モーリタニアのANI通信、犯人グループの話としてアルジェリ
ア軍が施設への空爆を始め、日本人2人が負傷したと報道
9時45分 ロイター通信、アルジェリア治安筋の情報として日本人2人を含
む外国人25人が解放されたと報道
10時ごろ ANI通信、人質34人と犯人15人が空爆で死亡と報道
同34分~ 官房長官が会見。現地の英国大使から救出作戦開始の連絡を受け
たと発表
同45分~ 政府対策本部会議
11時ごろ ANI通信、犯人側が残る人質は日本人1人、米国人2人、ベル
ギー人3人、英国人1人の計7人と語ったと報道
【18日】
午前 0時半~ 安倍首相、アルジェリア首相との電話会談で軍事作戦の中止要請
4時50分ごろ 国営アルジェリア通信、救出作戦が終了と報道
6時1分 ロイター通信、日本人2人含む外国人人質7人が死亡と報道
8時ごろ 官房長官、日揮からの情報として日本人スタッフ3人の安全が確
認され、14人の安否不明と発表
10時半ごろ~ 政府対策本部会議
午後 1時40分ごろ 加藤官房副長官、安倍首相が外遊を切り上げ19日に帰国すると
発表
4時すぎ 鈴木外務副大臣が駐日アルジェリア大使を呼び、速やかな情報提
供と人命最優先の対応を要求。(2013/01/20-00:04)
その後、安倍首相は、予定をいくつかキャンセルし、アルジェリア人質事件の情報収集と指揮にあたっていました。
その合間を縫って、FNNのインタビューに応じ、安藤優子キャスターが直撃しました。
(事件の最新情報は?)
17人、邦人の方々が現地で仕事をしていて、3人の方の安全は、確保されたということはわれわれもつかんでいるんですが、依然として、14人の方々は安否不明だということであります。
アルジェリア側には、その方々の安否の確認と救命に全力を尽くしていただきたいということは伝えてあります。
(情報があがってこない理由は?)
そういう中において当時国のアルジェリア、そして、このサイトの運営をあたって中心的な役割をBP、イギリス。
そして人質がとられている多くの国々の人たちが関係をしている中において、われわれもアルジェリアはもちろんなんですが、わたしも、首相と電話で会談をしまして、まずは人命第一で考えてもらいたいと。
人質の安全確保に全力を尽くしてもらいたいことを強く申し入れを行いました。
また、現地で城内大臣政務官が、先方と交渉、あるいは情報収集にあたっております。
岸田外相も、先方の外相と会談を行いました。
また、鈴木副大臣も、在京の大使に安全の確保等について強く申し入れを行っています。
また、キャメロン首相とも電話で会談を行い、情報収集等の現状等についての、意見交換をいたしました。
(キャメロン首相との電話会談後のアルジェリア軍武力行使は寝耳に水?)
今 の段階では、関係各国とのこともございますから、詳細については申し上げることは控えたいと思いますが、わたしとしても、おそらく他の国々の首脳も、アル ジェリアに何とか人命第一に考えて、オペレーションを行うのであれば、慎重な対応をしてもらいたいと、そういう申し入れを行っていたと思います。
(人命優先の点はアルジェリア側と共有できている?)
ま だ残りの方々の安否が不明で、そして、実際にオペレーションにあたっているのは、アルジェリアでありますから、アルジェリアの行動について、今ここで批評 的な発言は行うべきではないと思っておりますけれども、いずれにせよアルジェリアには、アルジェリアの今までのテロとの長い歴史があって、その中で、判断 をしていくということなんでしょうけども、こういうオペレーションを行うときには、米国、英国も知見を持っています。
そうした知見を生かしながら、とにかく、安全に人質を確保するための行動を、これからもとっていただきたいと思っています。
(一連の武力攻撃は終わった?)
これはまだ明らかではないんですが、このオペレーションは終わったということと同時に、まだ人質になっている人がいるかもしれないという情報もありますので。
そこは、何とも今の段階では判断できないということではないでしょうか。
(マリにフランス軍が進攻し、それに反発しているというのが犯行声明にあった。フランスへの働きかけは?)
当然、フランス当局側とも意見交換、あるいは情報交換は行っております。
(安否を見守る家族へメッセージを)
遠く離れた地で、ご家族が仕事をしておられて、こういう事件に巻き込まれたというのは、本当に心配しておられると思います。
われわれとしても、救出のために全力を尽くしていきたいと思っております。
(19日朝に帰国し、すぐに対策本部で陣頭指揮?)
こちらにくる飛行機の中から、官房長官に連絡をいたしまして、こちらの日程を切り上げるという判断をしたので、直ちに官邸に向かうから、その段階で情報収集と分析を行って、報告をしてもらいたいという指示をいたしました。
それで、朝の6時に対策本部を開いて、指示をしたいと思います。
(楽観視できるような情報は?)
今の段階では、まだそうした情報も含めて、新しい情報、確定した情報は、残念ながらないということですね。
(テロリスト側との交渉チャンネルは?)
今の段階で、こういうチャンネルでやっているということは、申し上げることはできないわけでありますけれども。
当然、アルジェリア政府等も、さまざまな対応は考えているんだろうと。
また、いたんだろうと思います。
(解決の方策は?)
人質をどうやって、無事に解放するかということについては、これは、技術的なことも含めて、今まで、テロとの戦いの中で、さまざまな試みがなされてきて、それによって積み上げられてたきた知見があるんですね。
それを活用していくことによって、そういう可能性も模索をしていくべきだろうと。
政治的な目的は達成させないけれども、人質の安全を確保して、そして解放するということですね。
そ れは、すぐにそういう結果が出るとは限りませんけれども、われわれとして、アルジェリアに申し上げたことは、テロリストに屈するということではないんです が、そういう人命を確保するために、無事に解放するために、先ほど申し上げましたように、さまざまな知見を活用して、安全を確保してもらいたいということ は申し上げました。
(初外遊の手応えは?)
まず日本の総理大臣が、初めての外遊先として、アジアの国々、ベトナムとタイとインドネシアを選んだということについては、大変歓迎をしていただきました。
そして、ASEAN(東南アジア諸国連合)と日本の関係というのは、最も重要だという認識を示してまいりましたし、そして、2015年には経済共同体をつくっていく、これは相当、大きな人口を要して、そしてGNP(国民総生産)ということになるんだろうと思います。
そのASEANの国々と、日本がしっかり連携していくことは、日本の成長にももちろん結びついていくわけでありますし、また、この地域の平和と安定にも、日本は大きく寄与していきたいと考えています。
その意味においても、こうした形で意見交換し、連携を強くしていくということは、地域の安全保障環境においても、大いにプラスであるという認識においては一致できたのではないかと思っています。
(中国に対しての姿勢は一枚岩?)
まず、誤解を受けないように申し上げておきたいことは、対中国ということで、この3カ国を訪問しているわけではないんですね。
ベトナム、そしてタイ、インドネシア、ASEANでも大国ですね。
そして、これからどんどんどんどん、人口も経済も成長していく国です。
そうした国々と日本が関係を強化をしていくということは、日本にとっては極めて重要なことです。
そして同時に、この南シナ海において、戦略環境が、海の戦略的環境が変化をしている中において、やはり、日本のプレゼンスを求めているんですね。
今まで日本はどちらかというと、この数年間極めて内向きでした。
そういう役割を担っていこうという意欲すら、喪失をしていたんではないかとみられていたんです。
ですから、この訪問を通じて、日本は地域の安全保障上のうえにおいても、ちゃんと貢献をしていきますよというメッセージを発信していくことによって、より、それぞれの国との絆は、強化されていくと思います。
積極的にかかわっていくということです。
焦点:アルジェリア人質事件、襲撃指揮に「謎のカナダ人」
約40人のイスラム系武装集団が同施設を襲撃してから5日が経過し、事件の全体像が浮かび上がりつつある。
同事件では、施設で働いていた米国人、英国人、フランス人、日本人、ルーマニア人、ノルウェー人、フィリピン人が死亡もしくは行方不明となっており、人質と武装勢力の死者数を合わせると67人に上る。人質5人の安否が依然確認されていない。
脱出できた英国人は手を縛られ、口にテープを張られたほか、首にはプラスチック爆弾を巻き付けられたと話した。また別の脱出者は、武装勢力が居住施設内を捜索する中、自分のベッドの下に1日半以上隠れていたと語った。
セ ラル首相の会見によると、事件はマリで企てられ、武装勢力はニジェールとリビアを経由してアルジェリアに入国。武装勢力のメンバーにはエジプト人、モーリ タニア人、ニジェール人、チュニジア人、マリ人、アルジェリア人が含まれているほか、事件を指揮したのは「チェダド」というカナダ人だと明かした。
同施設は高い塀で囲まれ、アルジェリア軍が定期的に周辺のパトロールをしており、難攻不落と思われていたかもしれない。しかし、それは幻想にすぎなかった。施設は火薬庫と化した隣国リビアとの国境から約80キロしか離れていない。
アルジェリアの治安当局者はロイターに対し、少なくとも16日未明に同施設を急襲した武装勢力の一部は、密輸に使われるルートを使ってリビアとの国境を越えてきたと述べた。
<9台のトヨタ車>
アルジェリアの日刊紙「アルハバル」によると、武装勢力はリビアのナンバープレートを付け、アルジェリアの国営企業ソナトラックの色に塗られた9台のトヨタ車に乗ってやって来た。
侵入困難なはずの居住区域にも容易に入れたことは、施設内に武装勢力の協力者がいたことを示すとの考えが現地では広がっている。セラル首相は施設で働いていた元運転手が武装勢力に情報を提供していたことを明らかにしている。
脱出した人質はロイターに対し、武装勢力は施設の見取り図をまるで知っているかのように歩き回り、周到に準備していたようだったと話した。
異 常を知らせる第一報は、イナメナスの通信センターに無線で届いた。オペレーターは、午前5時45分に外国人労働者を連れてイナメナスの空港へ向かうバスの 運転手とのやりとりを記録していた。「バスが出発して間もなく、たくさんの銃声が聞こえた」。このオペレーターは18日、ロイターの取材にこう答えた。
<バス襲撃>
バス襲撃では、英国人1人とアルジェリア人1人が殺害された。セラル首相は、武装勢力が外国人の乗客を捕らえようとしていたが、護衛の兵士らから攻撃を受けたと語った。
ガス施設を襲撃した事件との関連性は不明だが、バス襲撃から間もなくして少なくとも3台の車両に乗り込んだ武装勢力が施設内に侵入している。首相によると、アルジェリア人の警備員が撃たれたが、亡くなる前に警報を鳴らしていたという。
同施設での勤務経験者によると、夜間は通常、外出が禁止されており、武装勢力が内部深くまでどのように侵入したのかは依然として謎のままだ。主要道路以外から侵入してきた可能性も考えられる。
先のオペレーターは、武装勢力のメンバーが銃弾に倒れたフランス人監督者の身分証明(ID)バッジを着けているのを見たと話した。
アルジェリア軍は戦車や武装ヘリコプターなどで施設周辺を直ちに取り囲んだ。セラル首相は、武装勢力との交渉を試みたことを認めたが、要求をめぐり決裂したことを明らかにした。
<実行犯の横顔>
同施設を知る人物らによると、居住区域と工場を隔てる3キロほどの道路沿いに、数百人の兵士を収容する兵舎があるという。
ア ルジェリアの元政府高官は、朝の5時台という時間帯を考えると、護衛たちが居眠りをしていた可能性があるとしながらも、武装勢力が地元作業員から協力を受 けていた可能性を指摘。「700人もアルジェリア人労働者がいれば、武装勢力はこの中から協力者を数人は必ず見つけるはずだ」と語った。
今回の犯行グループを率いた1人とされ、17日に殺害されたターヘル・ベンシェネブ容疑者など武装グループのリーダーたちは、石油関連施設での給料が良い仕事は外国人や北部出身者で占められているとし、南部で住民の不満をあおってきた。
高 校の数学教師で50代だとされるベンシェネブ容疑者は、地元アンナハール紙の編集者で治安問題に詳しいアニス・ラフマニ氏によると、「イスラム・マグレブ 諸国のアルカイダ(AQIM)」の元幹部、モフタール・ベルモフタール司令官の支持者らと合流して襲撃を実行したという。
ベルモフタール司 令官は現場にはいないが、同氏はアルカイダを代表して犯行声明を出している。ラフマニ氏によると、ベンシェネブ容疑者のグループはアルジェリア国内の拠点 からイナメナスに入り、ベルモフタール司令官の部下らのグループはリビアから越境してきた可能性が高いという。
<片目のジャック>
先のラフマニ氏は、ベルモフタール司令官が片目で「ミスター・マールボロ」の異名を持ち、タバコの密輸業者としても知られていることに触れ、「武装勢力は密輸業者らと同じルートを使っている」とし、作戦を成功させるにはサハラ砂漠の完璧な知識が必要だと指摘した。
2008 年にニジェールでベルモフタール司令官によって拘束され、4カ月後に解放されたカナダ人外交官のロバート・ファウラー氏は当時、一緒に捕まった他の人質ら と同司令官について話していることを気づかれないように「ジャック」というニックネームを付けていたと明かした。一方、同司令官は人質のことを「背教者」 「異教徒」などと呼んでいたという。
約20万人が死亡したアルジェリアの内戦から10年以上。密輸や誘拐ビジネスを行いながら国内をさまよっていたイスラム武装勢力は、リビアのカダフィ大佐に雇われていたトゥアレグ人武装勢力や他の傭兵たちがアルジェリア国内に戻ってきたことで息を吹き返した。
<アルジェリア軍が攻撃>
アルジェリアの治安部隊は国境での支配力を確保しようと努めているが、砂漠にまたがる国境は曖昧である上、違法取引や観光客らを誘拐して手に入れた多額の資金が、低収入の当局者を手なずけるために使われているという現状がある。
今回の事件では、武装勢力は施設内部に入ると、欧米人らを一カ所に集めた一方、数百人いたアルジェリア人への監視についてはそこまで厳しくはなかったという。あるアルジェリア人労働者によると、武装勢力は「キリスト教徒と異教徒」の殺害にしか興味がないと語ったという。
アルジェリア政府軍は襲撃から約30時間が経過した17日正午ごろ、ヘリコプターなどで施設を攻撃。同国政府はこの攻撃について、武装勢力が人質を連れてマリとの国境まで移動しようとしていたからだと説明した。
施 設からの脱出に成功したアイルランド人男性が語ったところによれば、アルジェリア軍は人質が乗った車4台を誤爆。別の車に乗っていたこの男性は脱出に成功 したが、爆撃を受けた4台に乗っていた人質は全員死亡した可能性が高いという。この男性は武装勢力から首に爆弾を付けられたと証言している。また別の英国 人男性は、襲撃を受ける中、妻に電話し「胸に爆弾を付けられ、自分の席に座らせられている」と伝えた。
17日のうちには人質の大半が脱出することができたが、中にはアルジェリア人を装う欧米人もいたという。しかし、施設内に何人の武装勢力と人質が残されているのかは18日の夜まで不明なままだった。
居 住区域での軍事作戦を終え、部隊は武装勢力が人質を集めているとされる工業用地を包囲。しかし、アルジェリアとの難しい関係を長年続けてきた欧米諸国は、 自国民の安否に関する正確な情報が得られないことに業を煮やしていた。19日朝にアルジェリア軍が最後の攻撃を開始したときも、欧米諸国は何も知らないよ うだった。
アルジェリアの国営通信によると、同国軍兵士は、外国人の人質7人を処刑した武装勢力メンバー11人を殺害。当局は作戦が終了したと宣言したものの、掃討はその後数時間も続き、さらに数十人の遺体が発見されるなど、答えを必要とする多くの謎が今なお残されている。
(原文執筆:Lamine Chikhi記者、翻訳:伊藤典子、編集:梅川崇)
アルジェリア拘束事件の背景にあるマリ戦争
突然の事件に、驚いた。アルジェリアでの日本人拘束事件である。
13年前、凄惨な内戦に一応の終止符を打ち、一昨年の「アラブの春」では周辺国で政権が次々に倒れていくのを横目で見ながらも、アルジェリアの ブーテフリカ政権は健在だ。反政府デモは少なくないが、原油輸出額は2003年以降急速に伸びていまや内戦時の七倍近く、経済成長率もここ数年2~3% と、悪くはない。今回被害にあった日揮をはじめ、伊藤忠、三井、三菱など、日本は70年代から大手商社がアルジェリア向けに大型の建設プラントを輸出して きた。
そのアルジェリアで何故このような事件が起きたのか。それは、隣国マリの状況と連動しているに違いない。マリでは1月11日、マリ北部の反乱勢力を抑えようとする政府軍の要請を受けて、フランスが軍事介入、戦争状態に突入したからである。
マリ戦争の原因は、複雑だ。メディアが伝えるような、「北部=イスラーム過激派=アルカーイダ対マリ政府=欧米諸国」、という理解は、短絡的に過ぎる。
まず、政府軍と戦う北部の反政府勢力の根にあるのは、トゥワイレグ部族を中心とした北部の、富の集中する南部との貧富格差に対する不満と、南部か らの分離運動である。この分離独立運動は最近のことではなく、アフリカ諸国が独立を果たした60年代初期にはすでに芽生えていた。しかし、政府軍との力の 優劣は歴然としており、ほとんど成果をあげなかった。
そのバランスが崩れたのが、「アラブの春」、特に隣国リビアでの政権交代である。内戦状態となったリビアでは武器弾薬が溢れたが、それらが国境を 超えてマリ北部に流入、反政府派の手に渡った。また、リビアのカダフィ大佐はアフリカ諸国から多くの傭兵を抱えていた。カダフィ体制崩壊後、これら傭兵は 自国に帰還するわけだが、そのことが各国政府軍のバランスを揺るがせる。マリはその典型例だ。元傭兵軍人が戻ったことで、軍内の権力関係が変化し、 2012年3月には軍事クーデタが起きた。これらのことが一気に、マリの政府・反政府関係を逆転させることとなったのである。
さらに複雑なのは、北部の分離運動は当初、トゥワイレグ部族を中心に世俗的な民族運動を展開していたのに、そこにイスラーム勢力が加わったこと だ。アンサール・ディーンというイスラーム厳格派がそれだが、エジプトのムスリム同胞団などのように、比較的穏健な勢力だとも言われる。むしろ危惧される のが、「北アフリカのアルカーイダ」や「西アフリカのジハード運動」の存在だろう。彼らはアンサール・ディーンと歩を共にしているが、彼らの多くはマリ人 ではなく、内戦時代のアルジェリアやリビアから流入したとも言われる。
周辺国で結成しているECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)やフランスがマリ介入を考えるようになったのは、昨年秋以降、世俗民族運動に代わ りこうしたイスラーム勢力が、北部勢力の間で主流を占めたからである。この展開は、まさにアフガニスタンなどで、アルカーイダの台頭と外国の軍事介入の負 のスパイラルを起こしてきた過去の事例と同じではないか。ソ連軍の駐留に抵抗し、地元社会に根ざしたタリバンが、国際的に孤立するなかでアルカーイダに協 力を仰ぎ、アルカーイダに母屋を乗っ取られる。米軍の軍事介入で一旦は政権転覆されたものの、戦後も再びタリバンは一大勢力を誇っている。チェチェン紛争 も、そうだ。チェチェンの民族独立闘争から始まった運動が、ロシアの徹底した弾圧に並行して、抵抗側は外国から来たイスラーム義勇兵への依存を強める。
暴力的なアルカーイダ系と、アンサール・ディーンの関係を断たせればよいに違いない、という政府/仏側の発想も、過去の経験の踏襲だ。イラク戦争 後駐留していた米軍は、アルカーイダをイラク社会から孤立させるために、スンナ派アラブの諸部族にカネをばら撒いた。結果、一時期の内戦状態に比べて治安 は落ち着いたが、宗派対立の根本的な問題は解消できないままにある。
イラクにせよ、アフガニスタンにせよ、外国、特にアフリカに植民地支配をした経験を持つ国が軍事介入して、効果を挙げられた試しはない。米国はそれに懲りたので、介入には控えめだ。しかし、今回はフランスが先走っている。
そのフランスが期待するのが、アルジェリアだ。内戦を乗り越え、対テロ戦争の経験を持つアルジェリアに、なんとかマリ戦争で主導的立場に立って欲 しい――。そんなフランスの秋波に対して、「巻き込まれて自国が再び内戦に逆戻りするのは困る」と、アルジェリアは懸念する。今回の事件は、そのアルジェ リアへの「警告」なのだろうか。すでに引きずり込まれてしまったアルジェリアは、今後どう関与するのか。
アルジェリア、早くも施設再開論 早期幕引き最優先
- 2013/1/22 22:13 日本経済新聞
【カイロ=押野真也】アルジェリア政府は人質事件の舞台となったガス関連施設を近日中に再稼働する方針を示した。人質の安否確認すら終 わっていないが、早期幕引きを最優先する。同国は資源輸出に依存。施設停止を短期間にとどめ、外資の流出を抑える狙いだ。原因究明や再発防止策は不十分 で、操業再開のみを急ぐ姿勢には批判もある。
アルジェリアのエネルギー・鉱業相であるユセフ・ユスフィ氏は21日、多くの外国人が犠牲となった英石油大手BPの施設を視察した。軍と武 装勢力が激しい銃撃戦を繰り広げ、プラントの一部は爆破されたが「損傷は甚大ではない。早期に再開できる」と強調した。外国人労働者が国外退避を始めてい るとの指摘に対しても「一時的な動きだ」との見解を示した。
現場での検証作業が終わらないのに同国政府が再稼働を急ぐ背景には、原油や天然ガスの輸出に依存する経済構造がある。輸出総額の約95%を 資源が占め、国内総生産(GDP)の約30%を資源関連で稼ぎ出す。しかも襲撃された施設のガス生産量はアルジェリア全体の約11%を占める。
施設の稼働が遅れれば経済面での打撃は大きい。軍が武装勢力の鎮圧を急いだのは、施設の損傷を最小限に抑える狙いがあったとの分析も出始めている。
同国は資源関連を中心に海外からの直接投資が増え、2011年の受け入れ額は25億7000万ドル(約2262億円)と10年比で14%増 えた。同国政府は人質事件が投資に影響を与えることを強く警戒している。テロ事件に伴う施設停止を長期化させないことで、外資流出を抑えたい考えだ。
だがアルジェリア政府が事件を未然に防ぐことができず、鎮圧作戦で人質に多数の死者が出たことへの批判は根強い。関係各国は「テロに屈しな い姿勢」は支持するが、事件の究明も欠かせないとの立場だ。施設を運営するBP自身からも「現状での早期再開には無理がある」との声が出ている。
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このどさくさで、そんなことを言っているのだなと。
自衛隊が、海外に行ったにせよ、企業の人を守れるわけではないのに、今回の、阿倍のとんちんかんな発言に、またしても憤りを感じました。
東京新聞 特報 2013年01月19日
事件の背景に「アラブの春」 二重基準の欧米諸国に戦略不在 アルジェリア人質事件
http://blog.livedoor.jp/shootque/archives/51879002.html
自衛隊がもっと自由に活動できるようにすることは愛国者国民が切に望んでいます。
アルジェリア政府や日揮の危機管理だとしたら理解できますが、政府にそれを問うのは筋違いじゃないでしょうか。
それと自衛隊派遣を否定してらっしゃいますが、国民の生命と財産を守るのは政府の仕事では?もし私が囚われたとしたら、どんな手段でも助けてもらいたいと思います。「あの」ピースボートの方たちも自衛隊に救助されたではありませんか?
あなた自身やご家族に危機が及んだとき、「どんな手段でもいいから助けて欲しい」と思うはずです。
人命を尊重するなら尚のこと。秋田の救命士の事ご存知ありませんか?目の前の命を救うため、法律違反を承知で気管内挿管をしていた事を。
先のイラク危機の際も、日本からは自衛隊が出動できないときに、邦人を脱出させてくれたのはトルコ軍ですよ。あなたはそうした事実を知っているのでしょうか?
昨年、一度コメントを入れさせていただいた英陸と申します。
安倍政権への怒りにまかせて、挨拶もせず意見だけを書き込んでしまいました。すみません
今回はこちらの記事を自分のブログに勝手に紹介してしまいましたので、
事後になりましたが、ご了承いただきたくコメントいたしました。
返す返す失礼いたしました
こちらのブログは、時折「やりすぎかな?」と思えるコラージュはありますが
多くの資料も載せてあるので、参考にもなります。
いろいろな反撃も受けておられるでしょうが、どうか、がんばって書き続けてください。
応援しています
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130122-OYT1T01698.htm?from=top
批判する向きもありますが、私には安倍総理個人の問題というよりも、戦後この方対米従属主義に邁進してきた日本の外交安全保障に対する姿勢の問題だと思います。
外交官ルートだけではなく軍人ルートでの情報交換も重要だと思いますし、英米は人命優先と要請するのみならずそのためにアルジェリア政府に特殊部隊や最新兵器による支援も申し出ていました(結果拒否されましたが、日本は申し出ることすら出来ません)。
便乗商法と仰いますが、私は何か事件が起きた場合にそれを受けて政治が動くことはそれ自体が悪いことだと思わないですし、法改正を真剣に検討するべきだと思います。
その前に、外交団・外交官による情報収集(極論すれば合法的スパイ活動)でしょう。
川田司・駐アルジェリア大使と大使館は今次、何をしてたんですか? これは職務怠慢で更迭ものですよ。
外務省より企業の方が現地情勢に詳しい国って一体……