パリで起きた同時多発テロ事件で、オランド大統領は2015年11月16日、ベルサイユ宮殿に上下議会議員を集めて異例の演説を行い、過激派組織「イスラム国」に対して、
「我々は、フランスや世界全体を脅かす、イスラム過激思想のテロリストと戦争状態にある」
「我々の敵はイスラム国だ!」「イスラム国をたたきつぶす!」
として、空爆を強化する方針を明らかにしたというのですが。
「今回のテロで初めて戦争になったんやなくて、あんたが空爆を開始したときに、もうとっくに戦争状態にはなってるやん!?」
と思ったのは、世界で私だけじゃないと思うんですが、いかがでしょうか。
テロは許せない。でも、ISに空爆する有志連合だけが人類で、文明国で、普遍的な価値を代表しているの?
オランド大統領はすでに、テロの温床になりかねないとみる反政府的な国内モスク(イスラム教礼拝施設)の閉鎖を命じることや、国家に敵対的な思想を持つ団体に解散を命じることも検討に入っています。
そして、この演説でオランド大統領は、今後2年間で警察官を5000人増員することや、さらには法律で12日間に制限されている緊急事態の期間を3カ月間に延長する方針を明らかにしました。
フランスの緊急事態宣言は、政府の判断で国境管理の強化や夜間の外出を禁止できるもので、現在は最長12日間までと決められています。つまり、憲法で保障される基本的人権である居住・移転の自由などが制限されるために期間制限していたのに、これを8倍に延長するというわけです。
もはや、フランス自身がファシズムに近づいているとさえ言えます。
それにしても、いったん、憲法で緊急事態宣言を規定すると、期間などは下位の法律などの規範に委ねられるので、憲法改正の手続きを取らなくてもどんどん人権制限を加重できることがわかりました。
これも、憲法「改正」の突破口に緊急事態条項が利用されようとしている日本が知っておくべき教訓ですね。
安倍首相が「改憲は緊急事態条項から」。阪神、東日本大震災などの災害弁護士たちは不要だと言っています。
憲法記念日 安倍政権の「自由民主党 日本国憲法改正草案」に見る緊急事態条項=戒厳令の恐怖
また、オランド大統領は憲法改正の方針も訴えました。テロとの戦いにおいて大統領が議会の承認を得ずに緊急の措置を取れるようにするというのです。
具体的には、不審人物の排除のため、「テロを起こすおそれのある」二重国籍の人物からフランス国籍を剥奪する規定や、国外追放の迅速化などです。
「テロを起こすおそれ」ってどうやって判断するんでしょうか。
こういう規定を憲法で制定すると、細目はまた下位の規範で定められるので、どんどんいい加減な「改正」もされてしまうでしょう。
経済・社会政策が全く無策で不評で支持率が10%台にまで低迷して苦悩していたオランド政権は、2013年1月、イスラム過激派による制圧を防ぐためとして、マリ介入に踏み切りました。
アルジェリア人質事件の悲劇 安倍首相の怠慢と邦人救出名目の自衛隊法「改正」の便乗商法は許されない
同年9月、オランドは、フランスはシリアに対する軍事攻撃に参加する用意があると宣言し、オバマ政権のケリー米国務長官は、米国の「最古の同盟国」だとフランスをたたえました。
「私はシャルリー」 失われたのがイスラム教徒の命と言論の自由でもそう言ってくれますか
そして、2014年からは「イスラム国」への空爆に参加し、現在の事態に至ったのです。
人類史上初めての近代人権宣言を持つフランスが、わざわざ「敵」を作って政権浮揚をもくろみ、実際に戦争状態になって国民が熱狂して政権を支持する。
いや、こうして見ていくと、中道左派政権と言われるオランド政権もやはり産軍複合体と深く結びついているのでしょう。
自由と民主主義ではさらに後を行く日本の我々にとって、全体主義に突き進む「自由・平等・博愛」の国が、実に貴重な教訓を与えてくれていると思います。
最後は全員でフランス国歌ラ・マルセイエーズを合唱しました。
フランスによるシリアの「イスラム国」への報復空爆はすでに2日間続いており、オランド大統領はさらに、シリア近海に空母「シャルル・ド・ゴール」を派遣して、「イスラム国」への空爆を強化することも表明しています。
また、国連で開かれた安全保障理事会で、フランスは、国際社会がテロと戦うための緊急決議を採択するように呼びかけました。
9月に成立した安保法制には「国際平和支援法」(国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律)が含まれているのですが、この法律では以下の国連決議(総会又は安保理)がある場合には、日本の安全とは無関係でも、「後方支援」、すなわち、
「諸外国の軍隊等に対する物品及び役務の提供」=兵站!
ができることになっています。「イスラム国」問題は、もう、日本にとって全く他人事ではなくなってきました。
①支援対象となる外国が国際社会の平和及び安全を脅かす事態に対処するための活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、又は認める決議
②①のほか、当該事態が平和に対する脅威又は平和の破壊 であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国連加盟国の取組を求める決議
「安全法制」=戦争法案で、自衛隊は湾岸戦争・イラク戦争・ISIL=「イスラム国」への武力行使に参戦できる
戦争法案を整理する 国際平和支援法と「平和安全法制整備法」10本。武力攻撃事態法が集団的自衛権行使。
「後方支援」が武力行使と一体化するという意味は、「後方支援」も参戦そのもので違憲だということ。
フランスが国家総動員体制の構築に突っ走るさまを見ていると、「テロとの戦い」に踏み込んで、攻撃し、攻撃される状態になったら、理性を保つことはほとんど不可能なことがわかります。
戦争は政権維持に使われる。
9・11テロからアフガニスタン攻撃やイラク戦争開戦にかけて、あのブッシュ大統領の支持率が90%だったことを思えば、国民にとっても「戦争状態」になる前に自分を止めるしか、戦争の狂気に呑み込まれるのを防ぐ方法はないと思います。
今なら間に合う。日本。
パリで同時多発テロ。米軍と共に「イスラム国」を空爆しているフランス。安保法制は日本を危険にする。
あれだけの攻撃を受けたのだ。フランスはもはや踏みとどまれないだろう。
かくいう私もオランド政権誕生の時には
ああ、羨ましい! フランス大統領選挙で勝利したフランソワ・オランド氏の格調高い歴史的な勝利演説
なんていうお気楽な記事を書いていました。お恥ずかしい。
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仏政府、反政府的な国内モスク閉鎖へ テロ再発防止策
- 2015/11/17 10:02
- 日本経済新聞 電子版
【パリ=白石透冴】過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)による同時テロに見舞われたフランス政府が、再発防止に向けた対策に乗り出す。テロの温床になりかねないとみる反政府的な国内モスク(イスラム教礼拝施設)の閉鎖を命じる検討に入ったほか、危険人物からの仏国籍の剥奪などの法改正案も浮上している。テロの芽を事前に摘み取る狙いだが、国内外のイスラム教徒の一部などの反発も予想され、さらなる火種となる恐れもある。
仏AFP通信によると、仏政府が閉鎖を検討するのは明確に反政府的、暴力的な考えを掲げるモスクが対象。特にイスラム厳格派のサラフィー主義と関係が深いモスクは「極めて保守的で信者が過激な思想に染まりかねない」(バルス首相)とみており、仏政府はかねてテロの温床になりかねないと問題視してきた。
サラフィー主義の影響を受けるモスクはマルセイユ、リヨンなど仏全土に100カ所程度ある。このうち暴力扇動などの危険な証拠がある場合、今後数週間で閉鎖を命じる可能性がある。10カ所前後が最終的に対象になるとの見方もある。
国家に敵対的な思想を持つ団体に解散を命じることも検討する。
法制面での対応も整備する。オランド大統領は16日の議会演説で、二重国籍を持つフランス人が国に不利益を及ぼした場合、仏国籍を剥奪できるなどの法改正が必要と訴えた。危険人物と見なす外国人の国外追放に関しても、手続きを見直して迅速に実行できるようにする意向を示した。
オランド氏は17日にパリでケリー米国務長官と会談し、IS掃討作戦での協調を再確認する。オランド氏はロシアのプーチン大統領とも近く会談し、大国の力を借りてテロ根絶を推し進める。
仏政府当局によると、テロによる死者は現在132人。自爆があったため身元確認に時間がかかっている。外国人も多く英国、ルーマニア、ポルトガルなど被害者の国籍は計19に及ぶ。ロックコンサートの会場など若者が集まる場所が多かったため、20~30代の若者層の被害が目立っている。
毎日新聞 2015年11月17日 11時38分(最終更新 11月17日 13時45分)
【パリ賀有勇】フランスのオランド大統領は16日に行った上下両院合同議会での演説で、パリ同時多発テロで犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)に対する軍事攻撃を巡り、近くオバマ米大統領のほかに、プーチン露大統領とも会談することを明らかにした。シリアのアサド大統領排除を前提にしていた対シリア戦略を転換し、アサド政権を守る立場からISを含む反政府武装組織に対して空爆を行うロシアと、有志国連合との間で一層の協力をはかる狙いがあるとみられる。
オランド大統領は「シリアは世界最大のテロリストの温床になっている」と指摘したうえで「解決に至ることがなかった(IS掃討という)問題」を解決するため米露両国の大統領と会談すると説明。IS打倒を目指し、米国を中心とする有志国連合の枠組みにロシアを組み入れる意向を示した。
シリアのISを巡る空爆では、アサド政権を支援するロシアと、米国やフランスなどの有志国連合との間には溝がある。オランド大統領は「フランスはシリア問題でアサド大統領抜きの平和的解決を目指すが、シリアにおける眼前の敵はISだ」と指摘。アサド政権排除の優先順位を下げ、ISに標的を絞って米露が協調する道を探ることを示唆した。
一方、フランスで起きた同時多発テロについて「シリアで計画して組織され、ベルギーで準備された」と述べ、中東と欧州を結ぶテロネットワークの犯行という見方を示した。国内のテロ対策について、国境警備に当たる職員やテロ対策に当たる警察官などを8500人増員する方針を示した。過激な思想に染まっている人物などの監視を強化することも明らかにした。
また、議会の承認を経ずに非常事態宣言の延長が可能になるよう憲法を改正する意向も表明。改正されれば、大統領権限の強化にもつながる。憲法改正には、上下各院の過半数が賛成した後、両院合同会議で5分の3以上の賛成か、国民投票で過半数の賛成が必要になる。
仏メディアによると、オランド大統領の演説後、ノエル・マメール下院議員は「監視強化には賛成するが、まるで愛国者法のようだ。憲法改正には反対だ」と異を唱えた。
大統領が上下両院合同議会で演説を行うのは、サルコジ前大統領がイスラム教徒の女性が身につけるブルカの着用反対の意見などを述べた2009年以来。
一方、ケリー米国務長官は17日午前、パリでオランド大統領とIS戦略を巡って会談する。
仏大統領 テロは国際ネットワークで実行
また捜査当局は、事件に関わった疑いが持たれているベルギー生まれのサラ・アブデスラム容疑者の顔写真を公開し、ベルギーの当局と合同で行方を追っています。
こうしたなか、フランスのオランド大統領は16日、パリ近郊のベルサイユ宮殿で上下両院の900人以上の議員を前に演説し、「テロはシリアで計画され、ベルギーで組織され、フランスで強行された」と述べ、シリアに拠点を置く過激派組織ISが国際的なネットワークを使って行ったテロだという見方を明らかにしました。
そのうえで、今後、シリアのISの支配地域への空爆を一層強化するとともに、地中海に空母を展開して爆撃能力を3倍に高める方針を示しました。
さらにオランド大統領は、国内のテロ対策について、現在は12日間までしか出せない非常事態宣言を最大で3か月間まで延長できるよう法律を改正するほか、今後2年間で警察官を5000人増員し、さらにはテロとの戦いにおいて大統領が議会の承認を得ずに緊急の措置を取れるよう、憲法を改める考えを強調しました。
そして、「テロはフランスを破壊することはできない。フランスがテロを破壊するのだ」と述べ、ISの壊滅に向けてあらゆる措置を取るとして国民の結束を呼びかけました。
FRANCE10 日仏共同テレビ局
フランス保守派から左派までがイスラム国・空爆に反対する3つの理由
オランド政権がイラク&シリア領土内のイスラム国・空爆に荷担したことについて、首相経験者や政党党首、国民議会議員(下院議員)、欧州議会議員などから反対の声が続続と上がっている。理由は大別して3つある。
(1)軍事介入によってフランスを狙ったテロの危険性が増す
ドミニク=ドヴィルパン元首相は9月29日にRTL(フランス国営ラジオ)の番組に出演して、
「空爆にフランスが参加することでわたしたちはますます危険にさらされることになる。これは明白な事実だ。空爆によって世界各地に散らばるテロリストをわが国に呼び込むことになる」
と警告した。
反テロ行政の長を1980年代に務めた最大野党・UMP(民衆運動連合)のアラン=マルソー国民議会議員も「今回の軍事介入はフランスを危険にさらすことになる」と指摘している。マルソー議員は9月23日にRTLの番組に出演して、イスラム国に対する米仏を初めとする連合について「ひじょうにもろいものだ」と指摘し、「(空爆に参加した)フランスはアメリカと違って海外にいる自国民を護る能力を欠いている。イスラム国支配地域では、3~4機のラファル戦闘機しか飛ばせていない。わたしたちはイスラム聖戦士たち(jihadistes)の標的・敵になる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
(2)空爆は問題を解決しない
ドミニク=ドヴィルパン元首相はさらに「軍事介入はテロリズムを育成・醸成する」と指摘した上で、「この種の空爆や軍事介入によって、テロリスト集団の除去という私たちが期待する結果はもたらされないと、我々は過去の経験から知っている。50-60年の経験から、いやここ10年の経験だけでも、軍事介入はテロを根絶するのでなく、テロの土壌をつくってしまうのは明らかだ」と付け加えた。
左翼党・党首にして2012年大統領候補だったジャンリュック=メランション欧州議会議員は9月26日に仏国営放送「France2」の番組に出て
「以前よりもはるかにひどいカオス・混沌が軍事介入によってもたらされることを世界の人々はまず知るべきだ」「誰がイスラム聖戦士を財政的支えているのか……ということにもっと関心を向けるべきだ。それはサウジアラビアやカタールの君主・国家元首たちだ」
と論じた。
(3)フランスはNATOの枠組み内で行動すべきだ
左翼党のフランソワ=アザンジ国民議会議員(下院議員)は9月24日に議会で
「イスラム聖戦士に抵抗する人たちを、政治的・人道的・財政的に支援するような形で、軍事支援するためには、アメリカによる軍事連合ではなくNATO(北大西洋条約機構)の監督下で、軍事介入が行われる必要がある」
と述べ、米国中心の枠組みでの軍事介入を批判した。
また、フランス共産党のピエール=ローラン上院議員は
「フランスの自由と独立を担保するためには、NATOと連携することが必要だ」「NATOに率いられた介入のみがフランス軍を派遣することを正当化できる唯一の方法だ」
と、主張した。
※映像は仏国営放送「France2」にドヴィルパン元首相が出たときの映像です。
週のはじめに考える 9・11からパリ・テロへ
2015年11月16日 東京新聞社説
パリで起きた大規模なテロを知り、十四年前のアメリカの9・11テロを思い出した人もいるでしょう。世界は何をし、また何をし損なってきたのか。
9・11テロのあった日、アラブ・イスラム世界の一大中心都市エジプトのカイロはどうだったか。
電話で中産階級の知人に聞くとこうでした。
<街路は喜びにわいている。アメリカに一撃をくれてやったということだ。アメリカはイスラエルを助けパレスチナ人を苦しめている。鬱憤(うっぷん)が晴れたということさ>
◆アラブの街路の歓喜
アメリカの悲嘆と怒り、欧米社会のテロ非難とは裏腹にアラブ・イスラム世界の網の目のような無数の街路は暗い歓喜に満たされていたようなのです。
欧米で憎まれるテロは、世界を異にすれば聖戦という美名で呼ばれることは、それが間違っていようがいまいが、動かせぬ事実でもあるのです。
アメリカはテロに対しいくつもの行動をとりました。
一つはアフガン、イラクの戦争です。ビンラディンを追うアフガン戦争は空爆であっけなく勝利したかのような印象を与えたが、今も終わらず無人機空爆は無辜(むこ)の住民の巻き添え死を招いている。
イラク戦争は、サダム・フセインさえいなければ民主化により、自由と経済の活性がテロを締め出すという、いわば無邪気な発想で始まったものの、その泥沼化は目を覆うばかり。最悪の予想すらこえてイスラム国(IS)誕生につながってしまった。
テロとの戦いで武力行使の必要性は否定はしませんが、机上の戦争作戦が無視したもの、あるいは過剰に軽視したものの一つは住民感情、街路の世論だったかもしれません。
アメリカが対テロでとったもう一つの行動は、民主化運動の推進でした。それはいわゆる「アラブの春」として結実した。
◆中東学者の見る偏見
エジプトでネット運動をした若者は米国務省の支援を受けています。民主化運動で市民の政治参加を促し、イスラム勢力の言い分も国民参加の政治の場で聞いて問題解決しようというのは正しい。
トルコはそのモデルでした。イスラム勢力が政権を選挙でとり、経済発展もした。政教分離が国是の国で実現したのです。アラブの春は失敗と決めつけるより、なお途上と言ってもいいでしょう。今は混乱していても、民主化の道が閉ざされたわけではありません。
アメリカの対テロ政策は、戦争は無思慮と独善のそしりは免れないとしても、全部が失敗であったとまでは言い切れません。
アラブ・イスラム世界の専門家らは、テロによってもたらされる偏見、その偏見を利用するテロリスト、政治家たちを警戒します。
たとえばフランスの中東学者ジル・ケペル氏は9・11後、仏紙ルモンドにこう記しています。
<今や「9・11」のレンズを通してのみアメリカは世界を見る>(池内恵訳「中東戦記」より)
続けて、イスラエル右派は対テロ戦争の論理を自らの利益のために流用し、パレスチナ人はイスラエル国内で自爆テロを行うことによってアメリカでのイメージ戦争に敗れる危険を冒している、と述べます。
その通りでしょう。
テロはテロの悪以上に悪用されもするのです。世界を善悪二元論に分けて、亀裂を深めれば深めるほど得をするのがテロリストたちです。
冷戦後、世界的ベストセラーになった本に米国政治学者サミュエル・ハンチントン氏の「文明の衝突」があります。よく知られるように、冷戦時代の米ソ対立に代わって、冷戦後は西欧対非西欧(特にイスラム)の対立になると予見して論争を巻き起こし、のちに9・11を予想した書とまでいわれました。
その「文明の衝突」がアラビア語に翻訳され、イスラム過激派の発行物にしばしば引用されているそうです。衝突はテロリストに好都合に違いありません。
衝突が世界史のうえの論考だとしても、それがテロリストたちに悪用されてはならない。テロと憎悪と復讐(ふくしゅう)の負の連鎖にならぬよう世界は、私たちは、踏みとどまらねばならない。そのためには衝突とはまさに逆方向の相互理解が欠かせない。
◆戦争とテロの犠牲者と
それはきれい事にほかならないともいわれそうですが、米欧また日本の社会がどれほどイスラム世界を理解しているのかというとどうでしょう。二つの戦争による膨大な死者と、パリのテロの無辜の犠牲者とをならべて考えることもまた必要ではないでしょうか。おおげさにいえば、世界史の中で今私たちは試されているのです。
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このような終わりのないテロの恐怖を生み出したのも、その根源であるイラク戦争を引き起こしたアメリカの責任は大きいと言わざるを得ない。批判を覚悟で言いますが、アメリカを中心に、イラク戦争に関与した国々でIS対応すべき、尻拭いすべきだと当方は思います。
日本は有志連合に釘を刺しながら、人道支援、復興支援に徹し、あくまで中庸な立場で関わるのが必要です。中東には地理的にも遠く、日本は大口の石油買い付け客ではあるものの、政治的な口出しする権利も理由も有りません。
さっそくですが、今回のパリテロ事件についてニューズウィーク日本語版に興味深い記事が載せられています。
ごく簡単に言えばパリテロ事件の「イスラム国」主犯説にいろいろ不審な点があるそうです。
以下、リンク先URLです
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2015/11/post-3.php
もともと、フランス社会党は、英労働党のようにネオリベで、イスラエル労働党に近くて親イスラエルで、赤いドゴール=ミッテランの衣鉢をついで核にも戦争にも植民地にも親和的だそうで、日本の識者がオランドに幻想を抱くのが全く不思議だったといっていました。
それなら、そのとき教えてよと思いましたが、そのときには出会いがなかったから仕方ありません。
フランスは今でも南米やアフリカなど植民地を持っていますし、旧植民地にも利権を確保していて現地の政権にも強い影響力を持ち続けています。基地を置いたり軍事介入をすることさえあります。
歴史修正主義も酷くて、日仏会館のシンポで「フランスではこんなことはいえないが」と前置きして話してくれました。
旧植民地出身者への差別も酷いです。もっとも嫌な例の一つをあげれば3月の官製?行事である「女性の日」デモ、日本で言えば稲田朋美から池内さおりんまで参加する、に日頃連中が抑圧されて酷いわと同情するスカーフを被ったムスリムの女性は参加させない事があります。本来、ライシテは公共機関の運営において宗教的価値観を持ち込んではいけないという考えですが、差別嫌がらせの大義名分のために多数派が困らない範囲で人々が家の外で宗教的シンボルを示してはならないと矢の向きを逆転させたのです。これには極右から左翼、フェミニストの一部まで乗りました。差別と偏見は骨がらみなので気付く事ができないのです。ムスリム女性は「スカーフを被ろうが被るまいが私の体は私のもの」と言って独自に女性の日のデモをやっています。ポスターには”マチズモ、ファシスト、レイシストは出て行け!”と言ってパチンコを向けている絵が描かれています(たぶん、インティファーダのオマージュ)。また、こうしたデモに参加すると、地元でやると肉体的危険があるそうです。生意気な女と攻撃されるそうです。http://lntv.labornetjp.org/?p=672
反対しても大事な法制は成立する一方で、一般国民から益々変わり者と見られていくのが関の山。
自民憲法と解説を呼んでから来な。
安倍自民党では、国民主権は間違っているだの、天賦人権説はとらないだの、立憲主義は取らないだの、まさに中世なことを言い実現しようとしてるじゃんw
そもそも、安倍自民と支持者が拘ってる日本軍性奴隷制や南京大虐殺なんて、敗戦後に降伏条約やサンフランシスコ条約をはじめとする国際法規で新生「日本国」が否定した大日本帝国がやったこと。
なのに、世界の政治的枠組みと認識、学問的認識を振り切って、安倍自民と支持者は日本軍性奴隷制や南京大虐殺を全否定している。
アナクロに過去に拘っているのは安倍自民と支持者のほうだわ。まあ、右翼反動に分類されるんだから当然だけど。
自民党政権は、今年の戦争法の前から邪な法律と既成事実を積み上げて、今話題のダーイシュに繋がるイラク戦争に、2004年日本を参戦させている。空自が米軍などのためにやった空輸は兵站に当り参戦であると日本国の裁判所が確定判決で認定している。
ネトウヨと違って学問に基づいて歴史を学んでいるから、未来が見えるんだよ。
まあ、理解できないだろうけど。
左の人は時代錯誤だから一般人に何時まで経っても受け入れられないのでしょうね。今の時代にあなた方が言っているようなことが出来る時代だと考えること事態が、ナンセンスであり滑稽だと感じないことが特定秘密保護法・安保法制が成立した要因ですよ。憲法改正も同じこと!中身や内容を議論せず反対、反対だけでは賛同者は減る一方ですね。
阿保なことを言いなさんな。
目的と効果は、別に想定されていて、法律制定の大義名分を作っているだけです。 そんなことは当り前で、制定後の運用段階で、気がついても、既に、遅いのです。
戦前の「治安維持法」がその一例で、この法の制定過程と、制定後の一般国民に与えた効果を調べてから物を言わねばなりません。
共謀罪の真の狙いは、国民の眼と口を封じることにあり、警察権力の歯止めの
無い運用を行うことにあります。
特高警察の復活を狙っている訳です。
権力による恣意的解釈は「デモ」も「共謀」にしてしまいますからね。
そういったのは戦前の治安維持法下でどのようなことが起こったかをよく見れば明らかでしょう。
「犯罪行為を起こさない人にはなんの害もありません。」というのは楽観的すぎると思いますね。。。。。。。
臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前!!
死神・高村が、またしても国民を地獄に引きずり込もうとしている。
それを面白半分に囃し立てるネトウヨ、許さん!! 去れ! キェーッ!!
今回の非常事態宣言は1955年制定法(アルジェリアに適用するために制定)によるものですよね?
先生の記事の説明が憲法上の措置なのか、法律上の措置なのか、混乱しているように感じたのは気のせいでしょうか?
もちろんオランドが憲法改正を目指している事自体は確かですが、そこをきちんと明確にしないと説得力を持たないと思います。
Reutersに依れば、ISの支持者は、以下のように語っている、とのことですから。
「イスラム国は西側諸国内での攻撃をたびたび示唆するが、同組織の支持者たちは、イスラム教徒を差別しているためだとして、フランスとの戦いはとりわけ優先順位が高いと語る。
「これは始まりにすぎない。われわれはマリで味わった苦しみやフランス人の傲慢(ごうまん)さを絶対に忘れない」と、シリアにいる戦闘員は、西アフリカのマリ共和国でイスラム系武装組織に対して行われた仏主導の軍事行動に言及し、このように述べた。」
(参照)
焦点:パリ攻撃は9月決断か、反転攻勢に出る「イスラム国」 ロイター International | 2015年 11月 16日 17:30 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/16/analysis-paris-shooting-islamic-state-idJPKCN0T50NX20151116?sp=true
また、ロシア機の墜落は、テロのようです。 犯行声明どおり、これもISに依るものかも知れません。
ロシア当局、旅客機墜落は「テロ」 爆発物が原因と発表 ロイター International | 2015年 11月 17日 18:11 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/17/egypt-crash-russia-blast-idJPKCN0T60TF20151117
>自民「対テロ、法改正必要」 共謀罪、再び検討も パリ同時多発テロ受け
http://www.asahi.com/articles/DA3S12072688.html
イメージしているのは「治安維持法」でしょうか ?????
「疑わしきは拘束・逮捕」の世の中になってしまうかもしれませんね。
どこまでも腐っている安倍一派です。。。。。。
既に、何世紀も昔に、戦争は、あらゆる方面、即ち、戦場外においても戦われるようになったのです。
一般市民も国家の一員として、戦争に参加しているのですから、パリの一市民であっても、フランスが戦争状態にあるISから観れば、敵対国の一員として攻撃の対象になるのは、不自然では無く、その受けた攻撃を「テロ」と云うのでは、当該戦争は、テロの応酬なのです。
嘗ては、日本もそうした戦争を行い、無防備である敵対国の市民を爆撃し殺しましたし、連合国に依る爆撃で、日本の一般市民も殺されました。
パリが攻撃されるのが嫌なら、戦争しなければ良いだけです。 今までは、イスラム諸国に、欧州本土を攻撃する物的手段が無かっただけです。 これからは、何時、何処で、欧州諸国も攻撃を受けるかは分かりません。
これは、欧米の軍事専門家も、ISの分析を行い、指摘していることで、欧州本土への攻撃は、これからもあるでしょうし、世界中のテロが減少することはなく、増大するとの観測が一般的です。
第一、テロ要員を輩出している諸国は、イスラム諸国を除けば、筆頭は、欧州諸国なのですから、まず、自国のテロ対策を確りとしていただきたいものです。
自国からISへテロ留学し、帰国して実際にテロを実施するのは、火を観るより明らかなのですから、それを放置しているのは、怠慢です。
ISにしてみれば、孫子の兵法に言うところの、「敵の中に味方を作り、味方の中に敵を作らず」を実践しているだけでしょうからね。
それにしても、古来、東西南北を問わず、戦争を始める頃合いに、都合良く、口実を作るように相手からの先制攻撃を受けたり、テロが起こったり、と出来事には事欠きませんね。
9.11しかり、風刺紙へのテロしかり、と。 まるで、示し合わせたように。
今回のテロの衝撃は日本に居ても強く感じるのですから、現地では相当なことだとは思いますが、ぜひ踏みとどまってほしいと切に願います。