中東地域への自衛隊派遣で、第1陣となる海上自衛隊の部隊が11日、那覇基地を出発した。軍事的緊張が高まる地域での任務を前に、自衛隊員は張り詰めた表情を見せ、反対する市民は「憲法違反だ」と訴えた。

中東派遣を前にわが子を抱く海上自衛隊員=11日、海上自衛隊那覇基地

 

 ある自衛隊員は「命令されれば任地に赴く。それが自衛官としての役目だ」と話す。家族を沖縄に残し、危険のある地域に赴くことには不安もある。だが「同僚が派遣される中、自分だけが行かないわけにはいかない。職責を果たすだけだ」と言葉少なに語った。

 過去に海外派遣の経験がある別の自衛官は「海外派遣は今に始まったことではない。派遣命令があっても、淡々と業務をこなすだけだ」とし、「安全性は確保されていると信じている。命の不安は全くないと言えばうそになるが、自衛官としての使命を果たしたい」と努めて冷静に受け止めようとしていた。

 一方、市民からは派遣そのものに反対する意見が出た。那覇市の小禄九条の会代表世話人を務める平良亀之助さん(83)は「自衛隊が海外に派遣されること自体、憲法9条の武器放棄、戦争放棄に全く相反するものだ」と怒る。

 朝鮮戦争やベトナム戦争で、在沖基地から飛び立った米軍爆撃機が住民の命を奪ったことに触れ、「沖縄はベトナムから『悪魔の島』と呼ばれ、憎しみの対象になった。そういう状況が、また目の前にやってきてしまった」と嘆いた。

 那覇市の長嶺律雄さん(77)は「自衛隊が行く必要なんかない」と一蹴。「どこの国であれ、他国に軍隊を派遣することはいけない。もし沖縄に『平和のため』と言って中国の軍隊が来ても、誰も安心しないでしょ」と皮肉った。

出発式 家族ら見送り 肩を抱き別れ惜しむ

 海上自衛隊の那覇航空基地で開かれた出発式には隊員60人や家族が出席した。河野太郎防衛相が現れると、カーキ色の服と帽子を着用した隊員約60人が敬礼し、訓示に直立不動で聞き入った。

 河野防衛相は「各国部隊や国際機関と連携し、勇気と誇りを持って過酷な任務を果たすことを期待する」と述べ、家族に対しても「隊員の安全、体調管理に万全を期すよう準備をしてきた。皆さんはしっかり留守を預かってほしい」と声を掛けた。

 式典後、P3C哨戒機に乗り込む前に家族の元に駆け寄った隊員が子どもを抱きかかえる場面も。別の隊員は見送りに来た女性が涙を流すと、肩を抱いて別れを惜しんだ。

 滑走路では離陸前のP3Cが地上を移動する際、家族らが日の丸や自衛艦旗を振り、隊員を見送った。