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憲法記念日 安倍政権の「自由民主党 日本国憲法改正草案」に見る緊急事態条項=戒厳令の恐怖

2015年05月03日 | 安倍自民党の危険性

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 昨日書いた記事

憲法記念日 産経新聞が自分の世論調査で、憲法「改正」に賛成41%・反対48%に大いに焦る(笑)

で触れた産経新聞の笑える記事に、全く笑えない部分がありました。

 それは、

憲法改正に賛成は40・8%で、反対は47・8%。賛成者のうち9条改正に60・3%、緊急事態条項の新設に88・2%、環境権の新設に82・8%、財政規律条項の新設に72・3%がそれぞれ賛意を示した。

という箇所です。

 なんと、改憲が必要だという一番の理由が「緊急事態条項」だというから驚きました。

 また、同じく改憲反対が多かった朝日新聞の世論調査でも、憲法に新しい権利や条項を

「加えるべき」と答えた人に「加えるべきもの」を複数回答で選んでもらったところ、次世代に借金を残さないようにする「財政規律条項」67%▽国や国民が環境保護につとめる「環境権」51%▽緊急事態の際に政府が国民の権利を一時的に制限できる「緊急事態条項」40%、の順だった。

となっていました。

 国民の権利を一時的に制限できるとしているのに、40%もの人が緊急事態条項を加えるべきだと言っているのですから、そのお花畑ぶりにはあ然とするしかありません。

 

 

 ところで、自民党は2012年4月27日付で自由民主党憲法改正草案を発表し、安倍首相はその自民党改憲案にそって憲法を「改正」すると何度も宣言しています。

 これに対して、私は以下のように何度も自民党の「日本国憲法改正草案」批判を書いてきたのですが、中でもこの緊急事態条項が自民党改憲案の最も危険性が国民に分かりやすい部分だと思っていました。

 だって、緊急事態宣言って戦前の大日本帝国憲法で言う戒厳令で、法律もなしに国民の基本的人権を制限できる内閣の命令なんですから。

安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖1 緊急事態条項=戒厳令の明記

安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖2 基本的人権規定の内容を削減して極小化し法律で好きに制約

安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖3 軍法会議の設置 

総選挙の争点4 安倍自民党の公約「集団的自衛権」で日本の国防軍はアメリカの戦争に参戦する

総選挙の争点5 安倍自民党のトンデモ改憲案は大日本帝国憲法より醜い封建主義憲法です

総選挙の争点6 驚き・桃の木・片山さつきの憲法解説 やはり安倍自民党は徴兵制を目論んでいる

各政党の意見でも、緊急事態条項が一番反対が少ないという恐ろしい事態になっている。

 

 

 しかし、先ほど見た世論調査でも、特に東日本大震災の経験があってから、この緊急事態宣言を出すことができる緊急事態条項が憲法に必要だという意見が一定の説得力をもっていることがわかりました。

 また安倍政権も、環境権創設と緊急事態条項などを憲法「改正」の第1段階、突破口にすると言っています。

憲法改正「2段構え」 自民党推進本部が再始動

 そこで、今年の憲法記念日はこの「現代の戒厳令」、緊急事態宣言について書きたいと思います。


 

 まず、自民党改憲案の緊急事態条項は98条でどういう場合が緊急事態宣言を出す場合かという要件(条件のこと)、99条が宣言が出た場合になにができるかという効果(なんと国民の人権をも制限できる)を規定していますので、それぞれ見てみたいと思います。

自民党草案 第98条
第1項 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

 さて、「法律の定めるところにより」とあるように、自民党憲法の「緊急事態」の中身は明治憲法と同じく法律に委任しており、いくらでも拡大可能なことをまず押さえなければなりません。

 この点、この改憲案を解説する「日本国憲法改正草案解説」(以下「解説」と表記)によれば、「内乱等」にはテロも含むとしています。

 内乱は一国の体制がひっくり返るような規模を言いますが、テロは死者の出ない爆弾テロでもテロですから、これでは緊急事態の範囲が広すぎてめちゃくちゃです。ひょっとしたらドローンを使って官邸に福島の土を運ぶこともテロ扱いになりかねません。

新型インフルエンザ流行まで、国民の権利を制限する緊急事態宣言の対象にする気でいる。

 

 

 また、緊急事態宣言を出す「特に必要があると認めるとき」は、閣議で決するとされていますが、これは1分1秒の緊急性を想定しているものではない(自民党の「日本国憲法改正草案Q&A 以下Q&A」。以下「Q&A」と表記)ということなので、閣議にかけずに総理がいきなり緊急事態を宣言できる場合が多数ありえます。

 自民党は「地震等による大規模な自然災害」と規定し、大規模自然災害でも緊急事態宣言が可能(Q&AP30・解説)としており、津波や地震で緊急事態を宣言するのを基本としています。

 しかし、東日本大震災は福島原発事故が同時に起こり、2万人近くが亡くなった大災害ではありましたが、かの大震災でさえ、国民の自由と人権を制限できる緊急事態宣言は必要ではありませんでした。

 あの時は、政府に権限がないから混乱したのではなく、はっきり言って民主党が無定見だったから「人体に直ちに影響はない」「直ちに影響はない」の連続になったのです。

 当時の菅政権・野田政権にもっと権限があればなあ、という場面が一回でもありましたか?

 むしろ自民党は、浜岡原発の運転を停めさせた菅首相の行政指導でさえ強権的だと批判しました。つまり、逆に言うと、今の憲法や法体系でも十分内閣総理大臣の権限は強力な証拠です。

 なのに、なぜ、そのうえまだ国民の人権を停止するような緊急事態条項が必要なのは、「戒厳令」と言う非常手段を使って国家権力にとって邪魔な国民の基本的人権を排除するためだけなのです。

自民改憲案 VS 日本国憲法 緊迫! 9条と96条の危機

上脇博之 日本機関紙出版センター

ご存知、兵庫が誇る憲法学者、上脇先生によるコンパクトな解説。

 

 

第98条第2項 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。

 国会の承認は必要としながらも、事後承認も可能となっています(Q&AP31)。

 しかし、緊急事態宣言の承認は、あとでみるように衆議院の優越があります。つまり、いったん政権与党が宣言を出してしまうと、与党が衆議院で過半数を占めている限り必ず承認を得られるという仕組みであり、国会の承認は緊急事態宣言の歯止めになりえません。

 また、これもあとでみるように、緊急事態宣言が出されると、衆議院が解散されず、参議院議員の任期も延長される可能性があるために(99条4項参照)、いつまでも長く議員でいたい両院の議員は必ず緊急事態宣言を承認するという仕組みになっています。

第98条第3項 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。

 また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。

 この第3項は一旦なされた緊急事態宣言が解除される場合を規定していますが、その要件を

(1)宣言の国会不承認 (2)国会の宣言解除決議 (3)内閣総理大臣の判断

のいずれかに限定してしまっています。

 まず、(1)は国会の承認が必要としたのだから当たり前の規定です。そして、緊急事態宣言をした当の首相が判断する(3)があてにならないことは当然です。

 最後に(2)については、一旦、国会が宣言を承認をした後に緊急事態宣言を解除する旨を決議する場合には、衆参両院の決議が必要となってしまっており、宣言承認よりも要件が加重されています。

 これでは緊急事態宣言を出すより、解除するほうが相当困難になっているわけで、合理性がなく大きな問題です。

 つまり、自民党改正草案の緊急事態宣言は出しやすく解除しにくいように作られています。

安倍政権と日本政治の新段階 新自由主義・軍事大国化・改憲にどう対抗するか
渡辺治
旬報社

護憲派に最も信頼されている憲法学者渡部先生による詳細な改憲の背景解説。

 

 

第99条
 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

 戦前の天皇の緊急勅令そっくりの「内閣の緊急政令制度」を導入した非常に恐ろしい条文です(Q&AP31・解説)。

 緊急事態宣言を出した後は、内閣は法律に代わる緊急政令なるものをバンバン出せます。

 この緊急政令は法律と同じ効力を持ちますが、どのように出すかは憲法に規定せず法律に委任されてしまっています。

 そして、たとえば、緊急政令によって、自民党憲法改正草案第9条の2で規定されている国防軍の組織や出動に関する法律や、国民の権利を制限する法制等も、すべて変更が可能になります。

 つまりこの緊急政令で、それまでの法律制度は容易に無意味化・無力化するのです。

 また、いくらでも国防軍の出番を創れるので、まさに軍事戒厳令になりうるのです。

 さらに、自民党は国会開会中の緊急政令も法制上可能になるとしています(解説)。それでは国会が開会していて法律を作れるのに、法律と同効力の緊急政令を内閣がポンポン出せることになります。

 また、そもそもそうした場合に、緊急政令と法律の内容が矛盾する時の解決も決まっておらず、この憲法案が思いつき程度であることがよくわかる規定です。

総選挙の争点5 安倍自民党のトンデモ改憲案は大日本帝国憲法より醜い封建主義憲法です

この人が自民党憲法改正草案を作りました。もう一回勉強して来い!

 

 

第99条第3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

 武力攻撃事態法や国民保護法では協力努力義務だった国民の義務が、遵守義務=必ず守らなければいけない義務へと強化されています。

 これについて、自民党は「大きな人権(国民の生命、身体及び財産)のためには、小さな人権は制限されることがあり得る」(Q&AP33・解説)としていますが、大きな人権と小さな人権だなんて議論はこの世にありません。何を言っているのでしょうか。

 たとえば、平等権、思想良心の自由、信教の自由、表現の自由などなどは生命・身体・財産に入りませんが、これらが小さな人権ですか?

 そもそも、憲法は自由と人権を守るために、国家権力の濫用を防ぐためにあります(立憲主義)。大事な人権を小さな人権などと文字通り矮小化して、国家権力の濫用を促すこの自民党改憲案は近代立憲主義にもとる現代最悪の憲法案です。

総選挙の争点7 安倍自民党の「憲法改正」案なら基本的人権の保障は大日本帝国憲法に逆戻りする

安倍改憲政権の正体 (岩波ブックレット)
斉藤貴男
岩波書店

日本最高のルポライターによる安倍政権の危険性告発。



第99条第4項 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

 緊急事態宣言の期間中は、不解散により衆議院議員の身分を保障し、緊急事態宣言の期間中は参議院議員の任期延長により身分を保障する可能性があります。一見、国会重視のようですが、緊急事態宣言を出すような内閣を選んだ議員の身分がずっと保証される危険性があります。

 また、Q&AP33や解説では、緊急事態下でも総選挙の施行が必要であれば、何らかの方法で実施することになるとしていますが、解散できないのですから総選挙はあり得ず、完全に条文の文言と矛盾しています。もっとよく考えてから憲法案を書けと言いたいです。

 というわけで、なにより、この憲法案は杜撰です。創設当時から自主憲法制定を綱領に掲げる自民党として、お粗末この上ありません。


 そもそも、この自民党憲法改正草案は立憲主義を全く理解しない憲法「改正」案という言語道断な存在であり、国民の人権を保障するという観点がきわめて弱い国家主義的な、悪い意味で今の自民党らしい改憲案といえるでしょう。

 皆さん、こんな杜撰で恐ろしい規定のある改憲案に賛成ですか?

総選挙の争点8 あなたは支配者に奴隷的拘束を受けたいのか、自由に人間らしく生きたいのか

 

 

何回読んでも恐ろしい安倍自民党の改憲案。

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追伸 ポイントは以下の通り。

1 たとえば次に原発事故が起きたときに、緊急事態宣言によって国民の知る権利が制限され、報道の自由が制限され、避難のための十分な情報が得られない可能性がある。同時に移動の自由が制限されたり、自分の土地が勝手に自衛隊に使われるなど財産権の制限など、さまざまな人権侵害が可能になる。

2 戦争法制でさまざまな事態で自衛隊が出動することになるが、緊急事態条項はそれと連動している。自衛隊が出動するときにもやはり知る権利や報道の自由などが侵害され、なにもわからないまま戦争に巻き込まれる可能性が高い。

3 本文では新型インフルエンザやテロを例に挙げたが、緊急事態宣言が出されるとそれが本当に緊急事態なのかどうかを判断する情報さえ制限されてしまう。国家権力にとってはいつでも好きな時に抜ける伝家の宝刀が緊急事態宣言で、有害無益も甚だしい絶大な権力を国家に与えるべきではない。

など。

 

 


災害対策の現場からみた憲法改正「国家緊急権」創設の危うさ

投稿日: 2015年02月19日 16時05分 JST 更新: 2015年02月19日 17時09分 JST ハフィントンポスト

CONSTITUTION ABE
 

与党・自民党は、次の参議院選後を目処に、緊急事態条項すなわち「国家緊急権」の新設を含む、改憲の国会発議を行う意向を明らかにした

国家緊急権とは、自然災害や戦争などの緊急事態に、憲法秩序を一時停止して、非常措置を行う政府の権限のことをいう。

災害対策の現場からすると「国家緊急権」はいらない。理由は3つある。

■それ自体とても危ない

ひとつ目は、国家緊急権は、それ自体とても危ないからである。

要するに国家緊急権は、危機に瀕したときは政府に全てをお任せしてしまうということだ。しかし、たとえ緊急時といえども憲法秩序を取っ払ってしまうことには強い懸念がある。憲法は、一人ひとりの生命や財産や権利を守るために、政府に義務を負わせ、暴走に歯止めをかける法システムである。つまり、災害などで市民の人権が危機に瀕しているときにこそ、まさに憲法の出番なのだ。ところが、逆にこうした憲法秩序を停止してしまい、「何人も‥国その他公の機関の指示に従わなければならない」(自民党憲法改正草案99条3項)というのだから、国民の目から見ればまったく本末転倒である。歴史を振り返ってみれば、緊急事態に政府が誤りを犯した愚例は枚挙に暇が無い。

■日本の制度は十分整っている

ふたつ目は、国家緊急権などなくても日本の制度は十分整っているからである。

諸外国には国家緊急権の規定があるのに、日本にはそれがない、とよくいわれる。それは日本の法制が劣っているからではなく、むしろ優れているからである。自然災害についていえば、我が国の災害対策基本法のように、精緻に整備された制度は類を見ない。それは、災害が圧倒的に多い日本だからこそ蓄積された教訓があるからこその重みであり、戦争と災害をごちゃまぜにしている大陸法系の法制度よりずっと練られている。この災害対策基本法の中には、きちんと「災害緊急事態」の章が設けられており、災害緊急事態の布告の規定もある。いざという時の法の備えは既に存在している。しかるに、あたかも不備があるかのように強調するのはペテンだし、国家緊急権を設けようとする動きは、法の無知に乗じたアンフェアな姿勢だと思う。

■国家緊急権があっても使えない

みっつ目は、国家緊急権があっても使えないからだ。

思い出して欲しい、東日本大震災の直後の政府の対応を。被災者を助けるための「災害救助法」があるのに、それを正しく活用しない。惨憺たる被災地を応援する「災害対策基本法」の規定があるのに、それを適用しない。地球規模の緊急事態である原発事故に際し、情報を隠蔽し、予定された法システムを無視し、「子ども被災者支援法」を制定したのに実行しない。要するに、たとえ良い制度があっても使い方を知らない、想定をしていない、訓練をしていないから、こうした愚かな結果を招いたのである。あまつさえ、特別増税で集めた復興財源を、「復興基本法」を悪用して被災地と無関係に流用する。国土強靱化の名目で公共投資を繰り返す。「政府は間違うことは無い」と心底信じている人がどれだけいるのだろうか。既存の法制度さえ正しく使えない政府に、あぶない道具を持たせるわけにいかないのである。

■「災害対策」の大義名分による思考停止

ところが、「大災害への対策だ」という大義名分を冠に載せると、社会もメディアも、何となく無批判に受け入れてしまう。

国民も、何となく良いことと受け止め、それ以上は深く考えない。

東日本大震災の直後に日経電子版が行ったアンケートでは、災害への対処や防災等のための私権制限に賛成する意見が約8割にのぼり、賛成派議員の論拠にもなった。国民の善意はよく理解できる。しかし、緊急事態条項を設けたら、真っ先に制限や束縛を受けてしまうのは、被災地の人々や避難した人々であるという想像力は働いていただろうか。

 2012年度の衆参両議院の憲法調査会でも国家緊急権について活発な意見交換が行われ、同年7月の中央防災会議が公表した最終報告では、現行の災害緊急事態の緊急措置を拡張して、有事法制である国民保護法制などを参考に、国家存立対策や法整備が必要だと指摘した。彼らは、本当に現行の法制度を正しく理解していたのだろうか。

私たちは、国家緊急権を取り入れるがごとき愚行は、絶対に避けなければならない。

■忘れてはならない歴史の教訓

忘れてはならない出来事を3点だけ挙げておく。

第1に、関東大震災では、旧憲法下の国家緊急権(緊急勅令)が適用された。多数の外国人や思想家たちが虐殺されたが、その契機となった悪質なデマの出元は、海軍省船橋送信所の9月3日午前8時15分の各地方長官宛の打電であるというのが定説である。わずか約90年前の出来事である。

第2に、最も優れた近代憲法といわれるドイツのワイマール憲法には第48条に国家緊急権の規定があり、社会不安の中でこれが乱用され、全権委任法が制定され、ナチスの独裁につながっていき、世界中を戦火に巻き込んでいった。

第3に、ごく最近、10年前に米国で起きたハリケーンカトリーナ災害では、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)の失態に加え、大統領の非常事態宣言の後に、警察による市民の誤殺事件や被災者の遺棄などの事件が起きた。レベッカ・ソルニットは著書「災害ユートピア」の中で、こうした為政者が陥るパニックを「エリートパニック」といって、災害のたびに起きる普遍的現象であると指摘している。

東大の法哲学者の尾高朝雄は「国家の生命を保全せねばならぬ、という何人も肯わざるを得ない主張の蔭には、国家緊急権の旗旌をかざして国家の運営を自己の描く筋書き通りに専行しようとする意図が秘められやすい」と述べた(『国家緊急権の問題』法学協会雑誌62巻9号 1943年)。

70年余経った今、社会は、まさに同じ状況に直面している。


 

産経新聞 金曜討論 「緊急事態条項」 西修氏、徳岡宏一朗氏

2013.7.26 07:22 (1/4ページ)
  西修氏・駒沢大名誉教授(大山実撮影)

  西修氏・駒沢大名誉教授(大山実撮影)

 9条と並んで憲法改正の最優先課題とされる緊急事態条項。東日本大震災の発生で、その必要性が認識されるようになってきた。来るべき巨大地震や外 部からの武力攻撃、大規模テロといった事態に現行憲法で十分に対処できるのか。駒沢大の西修名誉教授と弁護士の徳岡宏一朗氏に見解を聞いた。(溝上健良)

                      ◇

 ≪西修氏

生命財産を守るため必要

 −−そもそもなぜ緊急事態条項か

  「国家の最大の任務は国の独立を守り、国民の生命・身体・財産を守ることだが、今の憲法は緊急事態の発生を予期していない。そして緊急事態の際には一時的 に、基本的人権を制限する可能性が出てくる。立憲主義を守るために一時的に立憲主義を制約することはありうるわけで、これは憲法で規定すべきだ。世界のほ とんどの国の憲法で緊急事態条項が設けられており、これは常識といっていいだろう」

 −−現行憲法に条項がない理由は

 「制定当時の日本には主権がなく、米国の方針として日本が将来、米国と世界の平和を脅かさないようにしておく必要があった。その流れの中に憲法が位置づけられていたことが大きい」

 −−もし緊急事態条項があったら、東日本大震災への対応も違っていたか

 「それは政府の対応や国民の意識などが違っていたはずだ。予期せぬことが起きることを前提として、それにどう対処するか、ということだから」

 −−予期せぬことが起こる以上、条項の規定は包括的なものであるべきか

 「その通り。だから『国民の憲法』要綱でも武力攻撃や内乱などを例示した上で『その他の緊急事態』と盛り込んでいる。

諸外国の憲法をみても『どんな場合に、どんな機関が、何をするか』を大まかに定めており、産経の要綱もそうなっている」

 −−諸外国の憲法の潮流は

 「1990年から昨年までに憲法を新たに制定した100カ国は、すべて緊急事態条項を定めている。国家には必ず置くべき条項だといえるだろう」

 −−護憲派からは、緊急事態における人権の制約への懸念が強い

  「東日本大震災でもあったが、ある場所に居住できないとか移転が必要ということは一時的にありうることだ。国民の生命・財産を守るため、一時的に人権を制 限するのは当然のことだ。そうでないと人権がすべてで何もできないことになりかねない。緊急時には物価統制ということも考えられ、ドイツなどは1968年 に憲法で緊急事態条項を定めるとともに、個別法で細かく規定している。不安や混乱を最小限に抑えるための法体制が必要だ」

 −−これまでと同様に、今後も緊急事態条項は不要との声もある

 「東日本大震災でも本来は災害対策基本法に基づいて災害緊急事態の布告をすべきだったし、安全保障会議も開くべきだった。震災直後にはロシア軍機や中国軍機の不穏な動きもあった。自然災害以外にもいろいろな事態が考えられ、条項は必要になってくる」

 −−人権の制限を憲法でなく法律で規定すれば十分という見解もあるが

 「憲法で定められた人権を法律で制限していいのか。そこは憲法できちんと歯止めをかけておく必要がある」

 

徳岡宏一朗氏

憲法で人権を制限するな

 −−憲法に緊急事態条項は必要か

  「東日本大震災と原発事故でも首相の強権発動は必要なく、条項は不要だと立証されたと考える。浜岡原発の停止については自民党は『強引すぎる』と批判した 一方で、今度は強権発動をできるようにしようとしているのは、矛盾している。法的拘束力のない行政指導で浜岡原発を止められたわけで、現状で首相の権限は 十分に強く、憲法に新たに加える必要性はない」

 −−例えば今後、原発事故で「撤退は許さない」と作業員の人権を制約するような命令を出す場合、法的根拠が必要ではないか

 「だからといって憲法に緊急事態条項を設けて人権を制限すべきでなく、法律で綿密に規定しておけばいい。原発事故が想定外で法的に不備があったために大混乱したわけで、憲法改正に直結させる話ではないだろう」

 −−世界の憲法では緊急事態条項を盛り込むことが主流になっているが

  「日本の場合、条項をつくると乱用される恐れが大きい。通常、各国では条項を発動するのは国がひっくり返るような事態に対してで、産経の『国民の憲法』要 綱にあるような『内乱』程度では条項は発動しないものだ。要綱では『大規模自然災害』も例示しているが、例えば大洪水なども該当するのか。これではいつ緊 急事態が宣言されるかわからず問題だ」

 −−原発テロなどの場合、強制的に住民を避難させる措置が必要では

 「残っていたい人をむりやり移動させるのは居住の自由を奪うことになりやり過ぎではないか。一見、人命を考えているようではあるが、行き過ぎが生じかねない。選択肢は住民側にあることが大事で、強制的に出ていけ、ということはすべきではない」

−−南海トラフ巨大地震などの際の国会議員任期延長の是非について

 「緊急事態宣言が出ている限り議員でいられることになり適当でない。無能な議員が残り続けることにもなる。やはり緊急事態下でも選挙は必要だ。巨大災害でも被災地以外では選挙ができるはずで、そのための特別法をつくっておく必要はあるだろう」

 −−想像できないような事態に対処することが国の責務ではないか

  「東日本大震災の津波も過去に同じような津波があり実際には『想定内』だったわけで、法律で事前に対処法を規定しておくべき問題だった。国会で事前に綿密 に検討して、法律をつくって対処するというのが正道だ。国には各分野の専門家がおり、さまざまな事態を網羅することは可能だろう」

 −−緊急事態条項を導入せず、基本的に法律で対処すべきということか

 「そうだ。やむをえず人権を制約する必要がある場合、法律で要件を明確にして規定すべきだ」

   ◇

プロフィル西修

 にし・おさむ 昭和15年、富山県生まれ。73歳。早稲田大大学院博士課程修了。政治学博士、法学博士。昭和55年から平成23年まで駒沢大教授。「図説 日本国憲法の誕生」など著書多数。

                      ◇

プロフィル徳岡宏一朗

 とくおか・こういちろう 昭和37年、兵庫県生まれ。51歳。東大法学部卒。平成3年、弁護士登録。龍谷大客員教授。16〜22年に関西学院大法科大学院教授。「宮武嶺」名義で執筆活動を行っている。

 

 

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6 コメント

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Unknown (キューピー)
2015-05-03 08:32:57
誰かツッコミ入れてないんですかね、この産経の「国民の憲法」。

これっておかしいんですよね、そもそも「憲法」って、現代の意義では、国家から国民の自由を守ることを目的にしているわけで、憲法概念そのものに既に「国民の」という意味が含まれているわけです。

それなのに、憲法の前に「国民の」とつけたら、意味が反復してしまうわけです。無駄な言葉をくっつけてるわけです。俺のマイボールみたいな。

ただ、反復しない、無駄にしないための方法がひとつあって

それは、産経の憲法案が国民の自由を保障する内容のものではない場合ですよ。

これなら反復しないですからね。

その代わり、「国民の」という言葉は、中身を偽った「ウソ」ということになりますが。
America Britain the Evils (時々拝見)
2015-05-03 15:53:12
演説と言い、Primate minister Ape まるで、植民地の現地人の頭ですね(あ、つづりが違ってる、ま、気づかなかったことにして)。アメリカの皆さん、名誉アメリカ人の称号与えれば、何でもしますよ。
改憲または廃憲等に関する疑問
1.押し付けられたから→自主奴隷憲法制定で、御主人様の覚えも目出度くなる?
2.押し付けられたから→アベシ、演説で触れませんでしたね?
3.普通の国→アメリカからの完全独立でなく、植民地化の推進が?

おまけ、岸氏の華麗な転身の一部
岸氏:鬼畜米英内閣の大臣→収監(何があったんでしょう?)→某国(亡国?)のため、治安出動を画策→弟はオリンピック作戦首謀者の叙勲決定

Unknown (AS)
2015-05-04 15:07:40
わざわざ「緊急事態条項」など作らなくても、50年前に一歩手前になったことがありました。韓国の光州事件・中国の天安門事件より遥か昔のこと。
60年安保騒動の際に、安倍の祖父・岸が自衛隊を鎮圧に使おうとしたのです(治安出動命令)。赤城防衛庁長官が抵抗して防がれましたが。
なぜ日本国憲法にアメリカ連邦憲法やボン基本法のような抵抗権が規定されなかったのか、不思議でなりません。暴君は天皇だけで、行政府立法府は善人ばかりだと思われていたのだろうか。
抵抗権は (raymiyatake)
2015-05-04 16:11:39
ジョン・ロックが唱えた抵抗権。

人間は天賦の人権を持っていて、社会契約で政府にその一部を信託して政治を代行させる。
しかし政府が民衆の意に反して権利を委託された趣旨に反する圧政をしいたら、民衆はその政府を廃止して新しい政府を作ることができる。

アメリカ独立宣言にも書いてあります。
「いかなる形体の政府といえども、こうした権利を破壊するにいたれば、その政府を改め、あるいは廃止すること、そして人々の安全と幸福を実現するにもっとも適したとみられる諸原則に基礎を置き、また権限を持つ、新たな政府を組織することは、人々の権利であると信ずる」 

フランス人権宣言にも。
「あらゆる政治的団結の目的は、人の消滅することのない自然権を保全することである。これらの権利は、自由、所有権、安全、および圧政への抵抗である」(第2条)
「圧政に対する抵抗は他の人権の帰結である」(第33条)
「政府が人民の諸権利を侵害するとき、蜂起は、人民および人民の部分にとって最も神聖な権利であり、最も不可欠な義務である」(第35条)

日本でも抵抗権を行使したら、それが形式的には刑法などの法規に反しても、違法性が阻却され、合法なのだと解する学説が多数です。
憲法の危機という事で (無党派)
2015-05-05 17:38:41
憲法の危機という事で、「共産党と社民党など(社民党・生活の党・民主党)が参院選で全国的に選挙区調整すべき」という意見があちこちでまた強くなっていきそうですが、こういう時って、なぜだか、共産党ばっかり責められる事が多いんですよね。



国政選挙で、共産党が社民党などとの全国的な選挙区調整にやる気がない事を批判するのであれば、社民党など(社民党・生活の党・民主党)が共産党との全国的な選挙区調整にやる気がない事も同じように批判しなければいけないと思うのですが…。
(それ以前はわかりませんが)原発事故以降に、国政選挙で全国的な選挙区調整をしようと、共産党が社民党などに要請をしたという話も聞かないですし、社民党などが共産党に要請をしたという話も聞かないですから。

選挙区調整すべき、というのなら、共産党に対しても、社民党などに対しても、同じように批判しなければおかしいと思いますけどね。
Unknown (かっぱ)
2015-07-09 20:55:17
国民の権利というけども
非常時に権利を制限するなんてのは
どこでもやっているでしょう?
安倍でなくとも いやさ、 安倍だからこそ
これくらいで済んでいる。
共産党や民主党なんて(社民も)
社会主義なんだから もっと制限するともうけど?
非常時に平時の考え方をしていたら
余計に人が死にますよっての。
>国家から国民を守る のが憲法
ちがうよ 少なくとも我が国では。
立憲君主国 だからね メインはあくまでも天皇=君主の権力を縛るもの。
絶対王政下の概念ですよね?
ところが我が国は君民共治が国柄
民なくして君子なく、君子なくば民なし。

多くの人はそこがわかっていない。
憲法には何と書いてあります?
天皇はの日本国の象徴 その象徴が
国民の負託による(議会の)議員が 議員の中から首相を選び
天皇が任命する。
なぜ象徴なのかといえば我々の総意とかいてあるが違うね。建国王朝の子孫が今に続くので 天皇=日本国 天皇の歴史は
我が国の歴史でもある。
そこを踏まえないと 。
共和制であるなら
あなたの言うことが正しいけれどね
共和制じゃないもの。

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