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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

伊勢崎賢治氏らウクライナ戦争即時停戦派が呼びかけた署名運動が悲惨。1日200人未満しか賛同者が増えず2週間で3000人未満。伊勢崎氏は自分が作った声明文がダメダメなことを認めて猛省すべきだ。

2023年04月20日 | ロシアによるウクライナ侵略

このまま賛同者が伸び悩んだままで終わったら、「好戦派」に邪魔されたと言い訳するか、「数じゃないと思いますよ」と菅官房長官のようなことを言い出すのだろうか(笑)。

人のせいにせず、自らを省みる知性と理性が求められる場面です。

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 当ブログが

自称「国際紛争処理の専門家」伊勢崎賢治東京外国語大学名誉教授とウクライナ戦争即時停戦派・西側からの軍事支援反対派のトンデモ「反知性主義」がひどすぎる(呆)。

でご紹介した、G7広島サミットに集まる先進国首脳に向けて、ウクライナへの軍事支援をするのではなく、ロシアとウクライナが即時停戦ができるように求めた「今こそ停戦を」という声明文

 2023年4月5日には伊勢崎賢治氏、青山学院大の羽場久美子名誉教授、東京大学の和田春樹名誉教授、ジャーナリストの田原総一朗氏、元『世界』編集長で前岩波書店社長の岡本厚氏ら錚々たるメンバーが記者会見を行ない、広く賛同を集めるアピールをしました。

侵略しているロシア軍と防衛戦争をしているウクライナとそれを支援する欧米を「どっちもどっち」だと同列に扱い、侵略戦争の反省の上に立った憲法9条の心を曲解して伝える伊勢崎氏。

ウクライナ戦争「どっちもどっち」論には道理がないとする日本共産党の立場は至当。侵略しているロシアの行為の違法性こそ著しく重大。そこから議論を始めない橋下氏らがロシア擁護派とされるのは当然だ。

 

 

 この声明文に名を連ねた方々もちょっと見たことがないくらい著名人が名を連ねており、私が個人的に「うぉ!」と思ったのは大好きな硬骨の作家高村薫氏、前法政大学学長の田中優子氏、ジャーナリストの金平茂紀氏。

 他にも、東大名誉教授の上野千鶴子氏、哲学者で神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏、九条の会事務局長で東大名誉教授の小森陽一氏、同じく東大名誉教授の姜尚中氏、東京外国語大学名誉教授西谷修氏などなど、リベラル派の市民にとっては夢のような豪華メンバーが揃っています。

 ところが、4月5日に集め始めたこの声明への賛同者はもう2週間以上経過した4月19日現在で、たった2700人にも満たない状況。

 つまり1日平均で200人も賛同者が増えていないわけで、まずは「数は力なり」であるはずの署名運動としては惨憺たる惨敗の拡散状況と言えるでしょう。

 

 水島朝穂早稲田大学教授や内田雅敏弁護士という法律家も加わっているのですが、私が属している法律家用のメーリングリストにも一回も誰もこの署名活動を紹介しません。

 水島先生も自分のブログでも紹介しないし、金平茂紀氏とはわたくしFacebookでお友達なのですがこれまた全く黙殺した状態。

 ロシア軍によるブチャ虐殺についてロシア側がウクライナのでっちあげたフェイクだと反論していたのに対して、金平氏と報道特集は実際にロシア軍による虐殺であるということを実証したわけですから、そんなロシアに対しても公平な金平氏が一回でもシェアして賛同を呼びかけたら、何千人という市民が一斉に賛同すると思うのですが、金平氏もこんな署名運動は存在しないかのような扱いです。

 ひょっとしたら水島先生も金平氏も無断で名前を借用されたんだろうかと思うほどです(笑)。

 イギリスによるウクライナへの劣化ウラン弾供与に反対する署名については、公表の翌日にはもう私のところにまわって来たのと比べると雲泥の差。

 どこの法律家のメーリングリストでも平和運動・市民運動のメーリスでも誰一人としてシェアしないということは、やはりこの声明文の中身が知性のある大人にとっては恥ずかしすぎる内容だからだとしか言いようがありません。

 金平氏はちゃんと読んで賛同したのか。

 

 

 この声明文の少なくとも前半は伊勢崎氏が起案したことは明らかで、第1段落の

「いまやNATO諸国が供与した兵器が戦場の趨勢を左右するにいたり、戦争は代理戦争の様相を呈しています」

だとか

「ロシアを排除することによって、北極圏の国際権益を調整する機関は機能を停止し、北極の氷は解け、全世界の気候変動の引き金となる可能性がうまれています。」

等の部分は伊勢崎氏がこれまでも何度も主張してきた独自の内容です。

国際刑事裁判所が戦争犯罪容疑でプーチン大統領らに逮捕状発令。国連人権理事会が殺害・性的暴行・子どもの連れ去りなどロシア軍の戦争犯罪があったとする調査報告書を公表。橋下徹氏、伊勢崎賢治氏らは沈黙。

 

 

 そして、この声明の中に一回もロシア軍が侵略したとは書いていない事、G7サミットに集まる首脳に向けての声明文のはずがウクライナの抵抗が欧米による

「代理戦争」

だと言ってしまっていること。

「ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア二国間の協議がはじめられ、ほぼ一カ月後にウクライナから停戦の条件が提案されると、ロシア軍はキーウ方面から撤退しました。」

とロシア擁護の大嘘が書いてあること。

「現実的な解決案を含むこの停戦協議は4月はじめに吹き飛ばされてしまい、戦争は本格化しました。」

と、本当はロシアの蛮行でとん挫した1年前の停戦協議が自然災害で挫折したかのように書かれていること、などなどあまりにも偏っていて、これでは自分が賛同するのはもちろんのこと、他人に賛同を求められるわけがありません。

ウクライナ戦争に対する「即時停戦派」がなぜ「徹底抗戦派」より、国際世論でも国内的にも支持を得られないのか。その理由は即時停戦派の偏頗性=偏っていて不公平、にある。

 

 

 他方、国連総会では加盟国の4分の3という大多数の国が、ロシアに対して「即時・完全・無条件」の撤退を決議で求め、日本の衆議院でもロシアに即時撤退を求める非難決議が採択されています。

 それなのに、この署名はロシア軍に撤退を求めることはせず、ロシアとウクライナに即時停戦を求めるだけなのですから、広く支持を集めるためには相当な説得力がないともともと無理な話でした。

国連総会がロシア軍に対して「即時・完全・無条件」の撤退を求める決議を圧倒的多数で可決。ウクライナのインフラ・民間施設への攻撃の停止も求め、ロシアの戦争犯罪に対する調査と訴追の必要性を初めて明記。

 

 

 ところがこの声明文は、今の現況で停戦したらロシアの占領地でのロシア軍による虐殺や強姦や子どもの連れ去りがし放題になってしまうという根本的な疑問に全く答えていません。

 また、ロシアの憲法と刑法では領土割譲が厳しく禁止され刑罰まであるのに、2022年9月30日にプーチン大統領がウクライナの4州を併合宣言してしまっている今、どうやって停戦後に領土をウクライナに戻せるのか、この声明文では全く道筋が示されていないのです。

劣勢に回ったロシアがまた蛮行。ロシア軍が実効支配する親ロシア派武装集団が今月、ウクライナ東・南部4州ロシア併合への住民投票。まさにクリミア併合と同じ国際法違反の侵略手法だ。

プーチン大統領によるウクライナ4州の併合条約調印に対して、ゼレンスキー大統領がNATO加盟手続きを加速する申請書に署名。この非は一方的にロシアにあり、プーチン大統領がまず4州併合を撤回するべきだ。

 

 

 しかも、このように声明文の中身が偏っているうえにお粗末なのに(後半2段落は何のために誰に向けて書いているのかもわからない)、HPの解説はそれに輪をかけて悲惨な内容で、ロシアの撤退ではなく双方の停戦を求めるが、停戦後にロシア軍がどこまで撤退するかは住民投票で決めるなどと書いてあるのです。

 いやいやいや、形式的には4州で住民投票をしてそれでロシアに併合されたんだって。ロシアが占領している中で住民投票をしたら国連軍的なものがいたからってまた同じ結果でしょうに。

 また、ロシアの侵略は国連憲章違反で国際法違反、もちろん侵略の結果ウクライナの領土を占領しているのも違法で、すでに国際司法裁判所から仮保全命令も出ているのに、即時停戦をすればその違法状態を温存したままになります。

れこそナチス以来の戦争犯罪。

 

国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)も早くも2022年3月16日にロシアに対し、

「ウクライナで起きている広範な人道上の悲劇を深刻に受け止めており、人命が失われ人々が苦しみ続けている状況を深く憂慮している。ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」

として、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置を出している。この措置には法的拘束力があるのでこれ以降のロシア軍の侵攻はこの一点だけでもすべて国際法違反。

国際司法裁判所がロシアに対し、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置命令(法的拘束力あり)。「ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」

 

 

 そもそも、外国の軍隊が占領している間に出された法令や制度などはすべて無効だとハーグ陸戦法規で定められています。

 それなのに、ロシアの占領状態はそのままにしながら住民投票を行ない、それでウクライナとロシアの国境を定める、などと解説してあるこの声明文に法律家が賛同できるわけがなく、水島朝穂先生や内田雅敏先生はそんな解説がされていることまではご存じないのでしょう。

 また、いまロシアはウクライナの反転攻勢に備えて2重3重に占領地の防御を固めていると報じられています。

 だから停戦をしたらロシアに戦争を有利に継続するための準備をする時間的余裕を与え、ロシアの占領状態が恒久化するだけだとウクライナも多くの国も言っているわけです。

 このように、停戦はロシアとウクライナ双方が了承しないと実現不可能なのに、伊勢崎氏起草の声明文ではロシアは喜んでもウクライナは絶対に飲めないようになっているのです。

 つまり、伊勢崎氏が平和主義者の著名人たちを巻き込んでやらかしたこの即時停戦を求める「今こそ停戦を」運動は、我が国のリベラル左派を分断するものでしかなかったわけで、伊勢崎氏は猛省して謹慎すべきです。

尖閣諸島に中国が攻めてきたらというほとんど可能性のない例を自分から出して、その時日本は「たかが領土のために」戦争するのかと記者会見で護憲派を挑発した実は9条改憲派の伊勢崎氏。

ロシア軍に侵略された領土にはウクライナ市民の生活があり、彼らの故郷であり、そんな彼らが1300万人も難民になっている現実は無視。

ロシア軍に対して即時撤退を求めているリベラル派をネトウヨ同然だと決めつけて護憲派の分断を図る改憲派の伊勢崎氏は言語道断だ。

 

ロシア軍に対して即時撤退を求めるリベラル派は「停戦するにしても、もう少しやっつけてからでないと(一方が)つけ上がる」と思っていると決めつけてディスる伊勢崎氏。

この人の性格の悪さが、彼らの運動が広がらない一つの理由だ。

 

 

伊勢崎氏らは賛同署名を求めるだけではなく、新聞に意見広告を出すためのクラウドファンディングもしているのですが、2週間で集めたのが100万円あまりで、残り17日間であと170万円となっており、こちらも目標額に達するかどうか微妙な感じです。

こういうクラウドファンディングって目標額に達しないと集まったお金はどうするのか、他人事ながら気になりますが、賛同署名は1人1回しかできませんが、寄付は1人がど~~んと出せば一挙に集まります。

お金持ちそうな田原総一朗氏とかが全部出してやればいいのに(笑)。

しかし、目標額に達してしまってこんな恥ずかしい広告が憲法9条を持つ国の新聞に出るよりは、いっそお金が集まらない方がいいのかもしれません。

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「今こそ停戦を」 呼びかける人たちさんがこのオンライン署名を開始

「Ceasefire  Now!今こそ停戦を」
「No War in Our Region!私たちの地域の平和を」

-----2023年5月広島に集まるG7指導者におくる日本市民の宣言 -----
(この署名のURL:https://chng.it/ZrHvPh8x)、記者会見動画HP

 私たちは日本に生きる平和を望む市民です。
 ウクライナ戦争はすでに一年つづいています。この戦争はロシアのウクライナへの侵攻によってはじまりました。ウクライナは国民をあげて抵抗戦を戦ってきましたが、いまやNATO諸国が供与した兵器が戦場の趨勢を左右するにいたり、戦争は代理戦争の様相を呈しています。数知れぬウクライナの町や村は破壊され、おびただしい数のウクライナ人が死んでいます。同時にロシア軍の兵士もますます多く死んでいるのです。これ以上戦争がつづけばその影響は地球の別の地域にも広がります。ロシアを排除することによって、北極圏の国際権益を調整する機関は機能を停止し、北極の氷は解け、全世界の気候変動の引き金となる可能性がうまれています。世界の人々の生活と運命はますますあやうくなるのです。核兵器使用の恐れも原子力発電所を巡る戦闘の恐れもなお現実です。戦争はただちにやめなければなりません。

 朝鮮戦争は、参戦国米国が提案し、交戦支援国ソ連が同意したため、開戦一年と15日後に、正式な停戦会談がはじめられました。ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア二国間の協議がはじめられ、ほぼ一カ月後にウクライナから停戦の条件が提案されると、ロシア軍はキーウ方面から撤退しました。しかし、現実的な解決案を含むこの停戦協議は4月はじめに吹き飛ばされてしまい、戦争は本格化しました。以来残酷な戦争がつづいてきたのです。開戦一年が経過した今こそ、ロシアとウクライナは、朝鮮戦争の前例にしたがって、即時停戦のために協議を再開すべきです。Ceasefire Now!の声はいまや全世界にあふれています。

 幸いなことに、この戦争において、穀物輸出と原発については、国連やトルコなどが仲介した一部停戦がすでに実施されています。人道回廊も機能しています。こうした措置は、全面停戦の道筋となりうるのです。中国が停戦を提案したこともよい兆候です。ヨーロッパ諸国でも停戦を願う市民の運動が活発化しています。G7支援国はこれ以上武器を援助するのではなく、「交渉のテーブル」をつくるべきなのです。グローバル・サウスの中立国は中国、インドを中心に交渉仲裁国の役割を演じなければなりません。

 ウクライナ戦争をヨーロッパの外に拡大することは断固として防がなければなりません。私たちは東北アジア、東アジアの平和をあくまでも維持することを願います。この地域では、まず日本海(東海)を戦争の海にはしない、米朝戦争をおこさせない、さらに台湾をめぐり米中戦争をおこさせない、そう強く決意しています。No War in Our Region!―-私たちはこのことを強く願います。

 日本は1945年8月に連合国(米英、中ソ)に降伏し、50年間つづけてきた戦争国家の歴史をすて、平和国家に生まれ変わりました。1946年に制定した新憲法には、国際紛争の解決に武力による威嚇、武力の行使をもちいることを永久に放棄するとの第9条が含まれました。日本は朝鮮の独立をみとめ、中国から奪った台湾、満州を返したのです。だから、日本は北朝鮮、韓国、中国、台湾と二度と戦わないと誓っています。日本に生きる市民は日本海(東海)における戦争に参加せず、台湾をめぐる戦争にも参加することはなく、戦わないのです。

 私たちは、日本政府がG7の意をうけて、ウクライナ戦争の停戦交渉をよびかけ、中国、インドとともに停戦交渉の仲裁国となることを願っています。
 2023年4月5日
-------------------------
この思いを声明にして、2023年5月19日から21日まで広島で開催されるG7広島サミットに出席する首脳たちに届けたいと思います。ぜひ、賛同署名をお願いします。
またG7広島サミットに出席する首脳に向けて新聞広告も出したいと思っています。こちらのクラウドファンディングにもぜひご支援、ご協力、周りへご紹介ください。↓
https://greenfunding.jp/sustena/projects/7234


-----------------------   
伊勢崎 賢治(東京外国語大学名誉教授・元アフガン武装解除日本政府特別代表)
市野川 容孝(東京大学教授)
上野 千鶴子(東京大学名誉教授)
内田 樹(神戸女学院大学名誉教授、武道家)
内田 雅敏(弁護士)
内海 愛子(恵泉女学園大学名誉教授、新時代アジアピースアカデミー共同代表)
梅林 宏道(NPOピースデポ特別顧問)
岡本 厚(元『世界』編集長・前岩波書店社長)
金平 茂紀(ジャーナリスト)
姜 尚中(東京大学名誉教授)
古関 彰一(獨協大学名誉教授)
小森 陽一(東京大学名誉教授)
酒井 啓子(千葉大学教授)
桜井 国俊(沖縄大学名誉教授)
鈴木 国夫(「市民と野党をつなぐ会@東京」共同代表)
高橋 さきの(翻訳者)
高村 薫(作家)
田中 宏(一橋大学名誉教授)
田中 優子(前法政大学総長)
田原 総一朗(ジャーナリスト)
千葉 真(国際基督教大学教授)
暉峻 淑子(埼玉大学名誉教授)
西谷 修(東京外国語大学名誉教授)
羽場 久美子(青山学院大学名誉教授)
藤本 和貴夫(大阪経済法科大学元学長)
星野 英一(琉球大学名誉教授)
マエキタ ミヤコ(環境広告サステナ代表)
水島 朝穂(早稲田大学教授)
毛里 和子〈早稲田大学名誉教授〉
吉岡 忍(作家・元日本ペンクラブ代表)
和田 春樹(東京大学名誉教授)
---------------
詳しい説明はHPをご覧ください。https://ceasefire-now.jimdofree.com/

 

 

ロシアとウクライナの“即時停戦”を求める、日本国内の声に感じる違和感

波紋を呼んだ「今こそ停戦を」の会見

 G7指導者に対して、「即時停戦」のためのロシアとウクライナの交渉の場をつくるよう求める――。4月5日、伊勢崎賢治・東京外国語大名誉教授、岩波書店の岡本厚・元社長など日本の学者やメディア関係者らが都内で会見を行い、そこで発表された声明「Ceasefire Now! 今こそ停戦を」が波紋を呼んでいる。  この声明に対して、SNS上で「ロシアに利する」等との批判が相次いでいるのだ。リベラルを自認するジャーナリストの志葉玲氏も、現地を二度取材した経験から「ウクライナの人々の多くは『即時停戦』には賛同できないだろう」「対案が必要だ」と語る。以下、志葉氏の寄稿を掲載する。
 
 

激戦地バフムトで、負傷し搬送される住民

 

 4月5日に衆議院議員会館で行われた「今こそ停戦を」の会見に、筆者も取材に行った。そこで発表された声明では「日本政府がG7の意をうけて、ウクライナ戦争の停戦交渉をよびかけ、中国、インドとともに停戦交渉の仲裁国となることを願っています」とあり、声明の呼びかけ人には、ジャーナリストの田原総一朗氏や上野千鶴子・東京大学名誉教授などの著名人がずらりと並ぶ。この声明への賛同の署名集めや、新聞広告掲載のためのクラウドファンディングも行うそうだ。
「今こそ停戦を」という声明は善意に基づくものだろうが、ウクライナの人々の多くは支持しないだろうし、筆者自身も賛同できない。さまざまな論点があるだろうが、大きく二つに分けると、まず、第一にタイミングが最悪だ。  
 
 呼びかけ人たちによれば、来月の広島県で開催されるG7サミットに向けて声明を発表、署名やクラファンを開始したとのこと。しかし今「即時停戦」を求めているのは、ロシアのプーチン大統領その人だろう。なぜならこの間、ロシア軍が総力をあげて行ってきたウクライナ東部攻略戦が失敗に終わりつつあるからだ。  
 
 筆者は今年2月、ウクライナ東部の都市で同国最激戦地のバフムトを取材したが、同市はロシア軍の猛攻にもかかわらず本稿執筆の現在も陥落していない。仮にバフムトを陥落させたとしても、その周囲の防衛ラインは厚く、ロシア側が当面のゴールとしていた東部の重要都市クラマトルスクを奪うことなど、およそ実現しない状況だ。そのため、ロシア軍は無理に進軍するよりも、現在占領している地域を死守することに重きを置き始めている。
 
 
 
他方、ウクライナ軍は欧米から戦車等を供与され、これから反転攻勢に出ようというところだ。だが、もし今「即時停戦」の国際的な論議が持ち上がれば、ロシア側としては現時点での占領地を固定化でき、なおかつ「我々は平和を望んでいるのに、ウクライナ側は好戦的だ」と、ウクライナ軍の反転攻勢をけん制することができるという訳だ。

ウクライナの人々がロシアへの妥協を拒む理由

ロシア軍の攻撃で破壊された中学校(2023年2月、ドネツク州クラマトルスクで撮影)

 

 無論、ウクライナの人々こそが1日も早い戦争の終結を望んでいる。だが、現地で人々に話を聞くと「ロシアに妥協するような形での停戦には反対」という声が圧倒的に多い。それは「停戦してもロシア軍の時間稼ぎになるだけで、プーチンはまた攻撃してくる」との懸念があるからだ。ウクライナ東部ルハンスク出身の女性は「プーチンのせいで二回、避難させられている。一度目はドンバス戦争。二度目は今回の侵攻。もう、うんざり」と話す。  
 
 ドンバス戦争とは、親ロシアのヤヌコビッチ政権が大規模な市民デモで2014年2月に倒れたことを契機に始まった、ロシアによるウクライナ東部への攻撃だ。ドネツク、ルハンスク両州(=ドンバス地方)で、現地の親ロシア武装勢力にロシアが兵器を供与し、ウクライナ軍と戦わせたほか、ロシア軍や同国の民間軍事企業も侵攻した。ドイツやフランスの仲介で停戦協議が行われたが、双方の停戦違反が相次いだ。  
 
 ドンバス戦争は、日本では上述の「今こそ停戦を」の呼びかけ人らの主張を含め、「内戦」と表現されることがあるが、ウクライナでは「ロシアの侵略戦争」として今回の侵攻と地続きと見なす人々が多い。だからこそ、人々は「停戦はロシアにさらなる攻撃のため準備期間を与えるだけ」と感じているのだ。
 

ロシア軍占領下の地域にとっては「停戦=平和」ではない

 もう一つ「即時停戦」の大きな課題は、必ずしも「停戦=平和」ではないということだ。ロシア軍が占領していた地域では、同軍による深刻な人権侵害がくり返されていた。首都キーウ近郊の都市ブチャは、昨年3月、ロシア軍に占領されていた一か月間で400人以上の住民が殺害された。  
 
 ロシア側は「ウクライナの自作自演」などと虐殺を否定していて、日本の親ロシア派の識者には同調する者もいる。昨年4月にブチャを訪れた筆者は、ウクライナ当局の助けなく独力で市内に残る被害者の遺体を探し、遺族や隣人等に話を聞いて、身元やされた時の状況を確認した。  
 
 現場では、シェルターや屋内に隠れていた人々が水を求めて屋外に出たところをロシア軍に銃殺されたなどの証言を何件も聞いた。また、隠れている人々をロシア軍が連行して殺害したとの証言もあり、同様の証言はブチャ近郊のイルピンなど他の地域でも聞いた。これらの虐殺が「ウクライナの自作自演」ということなど、あり得ない。
 

 また被占領地域では、ロシア軍による性暴力も深刻だった。キーウ州警察のイリーナ・プリャニシコヴァ報道官は、筆者のインタビューに対して「ロシア軍による性暴力について、捜査を行っている」と話した。「ロシア兵士らが『子どもを殺す』と脅して母親を何度も強姦したり、別のケースでは5歳の子どもを強姦したとの報告もある」(同)。

 例え、「即時停戦」でロシア軍とウクライナ軍の戦闘が一時的に行われなくなったとしても、ロシア軍占領下の人々の命や人権が脅かされる状態は、真の平和とは言い難い。仮に停戦監視団/部隊が現地に派遣されたとしても、人権侵害抑制のため十分な役割を果たせるかは、これまでのPKO/PKF部隊の実例から言っても疑わしい。ロシアとの衝突を恐れた各国が停戦監視部隊の派遣を躊躇することも、十分にあり得ることだ。
 
中国など「中立国」への批判と対話が必要
 

岸田政権の防衛費増大・敵基地攻撃能力保有に反対するデモ

 

 必要なのは「即時停戦」ではなく、「ロシア軍の即時かつ全面的な撤退」であろう。また、「今こそ停戦を」の声明は、欧米のウクライナへの兵器供与を批判しているが、それならば非暴力でいかにロシアの暴走を止めるかの具体的な提案をすべきだ。  例えば、ロシアへの経済制裁に参加していない「中立国」、特に中国やインド、サウジアラビアやトルコなどへの働きかけを行うことは重要だろう。ウクライナ侵攻は侵略戦争を禁じた国連憲章に明らかに反する。「国連憲章を守れ」というド正論を訴え、中国などの「中立国」に「いつまでロシアをかばうつもりなのか?」と批判の声を高めていくことが必要だ。
 
 中国などの「中立国」が対ロシア経済制裁に加われば、ロシアには大きな打撃となり、戦争を継続することが難しくなるからだ。他方、中国がロシアとの関係を強化してきた背景には米中対立があるから、日本が仲介役となり米中対立の緩和を目指すべきだろう。それは、日本含む東アジアの平和と安定にとっても好ましい。  
 
 日本のいわゆる左派・リベラルの一部には、岸田政権がウクライナ侵攻に便乗して改憲を主張して防衛費が増大することへの反発から、また欧米とロシアとの対立が世界大戦や核戦争に発展することへの危惧から、ウクライナに対しても反感を持ってロシアを擁護するという歪んだ反応がある。  
 
 だが、リベラル・左派こそ、日本政府に対しては改憲志向や防衛費増大を見直すこと、中国に対しても国際秩序の回復や維持に貢献することを求めていくべきではないか。真に平和主義者であるならば、ウクライナの平和と東アジアの平和を両立する方法を模索すべきだ。 文・写真/志葉 玲
 
 
 

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13 コメント

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[伊勢崎 why?] (バードストライク)
2023-04-20 10:39:13
志葉玲
> …もし今「即時停戦」の国際的な論議が持ち上がれば、ロシア側としては現時点での占領地を固定化でき、なおかつ「我々は平和を望んでいるのに、ウクライナ側は好戦的だ」と、ウクライナ軍の反転攻勢をけん制することができる」

前から思っているのだが、新・九条の会といい、このロシア・ウクライナ戦争即時停戦署名といい、伊勢崎さんは一体、何をやりたいの?
志葉玲さんの記事を読むと、ロシアを利するだけのようだが。

肩書は “ 東京外国語大学名誉教授・元アフガン武装解除日本政府特別代表 ” と非常に立派である。
アフガンでは銃を突きつけられ、死を覚悟したと書いていた。

もしかして…もしかして、最近そういうドキドキ体験やスゴイデスネ賞賛がないので、注目を集めたい→停戦しそうになったらしゃしゃり出て行って、過去の栄光を再現したいとか。
あるいはムネオクラブに取り込まれていて、次の選挙で維新から出馬する、とか。
ゲスの勘繰りならいいんですけどね。

呼びかけ人に名を連ねている錚々たる著名人たちが、個人単位では動いていないというのも不思議な話です。
とりあえず伊勢崎氏は早いとこれいわ新選組から離れてください (*_*)
返信する
Unknown (raymiyatake)
2023-04-20 13:09:11
本文に書くと差し障りがあるので触れませんでしたが、この記者会見にはれいわ新選組代表の山本太郎氏も応援に駆けつけ、挨拶した、って長周新聞に書いてありましたから、関係を断つのは無理でしょう。

もともと、れいわは衆議院のロシア非難決議にも反対しましたし。
返信する
Unknown (バードストライク)
2023-04-20 16:38:18
速攻リプありがとうございます。
また本文では差し障りがあるので触れなかった、とのお気遣いにも感謝いたします(ただ管理人推薦ブログのブログ主「KじたKん氏」はコメ欄も必ず読む、むしろ本文よりコメ欄を愛読しているんじゃないかと思うので、お気遣いは無駄かも…っていうか、既にこの件はご存知でしょうね (◞‸◟))

まあ誰でもひとつぐらい間違いはしますよ。
たとえ太郎が伊勢崎氏と関係を断てなくても、太郎への支持を止める理由にはなりません。

間違えたって
いいじゃないか 
にんげんだもの
返信する
Unknown (なう)
2023-04-20 17:39:24
ウクライナとロシアは戦争中なのだから、双方の情報ともプロパガンダと思って、精査すべきと思います。
ウクライナ現地に行っても、案内するガイド、英語または日本語の通訳を通じての説明をする人がプロパガンダ要因でないとは言い切れません。
私は、イラクに大量破壊兵器はないと言った国連の査察官だったスコットリッターさんの見解を相当程度信頼しています。(アメリカの軍人だったのに、自分の立場も顧みず本当の事を言った人)
その視点で見ると、伊勢崎氏の見解も無下に否定されるものではない様に思われます。
また、9年前の雑誌、岩波の「世界」をじっくり読みなおした友人は、ウクライナ正義・ロシアプーチン悪の決めつけは、公平でないと言っていました。
自衛隊は長年ソ連を仮想敵国にしてきたのでロシアに共感することはないですし、私も「おそロシア~~」などとふざけたことも有るくらいで、ロシアをマイナスに見る癖が強くある事を自覚する必要を感じています。
返信する
Unknown (暗黒大将軍)
2023-04-20 23:17:34
未だに「ロシアばかり悪者にするな」のお経を繰り返す奴らは、じゃああのロシアの言い分の「どこ」を受け入れて、ウクライナや世界が具体的に何をすればいいのか、にはほぼ言及しないよね

まぁ逆張りやDD論を「賢いこと」みたいに勘違いしてる奴らって西側世論をよく研究してるロシアにとっちゃカモだし、伊勢崎を含めたその手の底辺世論の存在によってロシア側にも貢献してるよね、日本って(笑)
返信する
Unknown (なう)
2023-04-22 00:15:48
元IMF日本代表理事の小手川大助氏のレポートを読みました。
この方は、プーチンの我慢と忍耐をはっきりおっしゃっています。
私から見れば、ロシアのウクライナへの侵攻は突然でしたが、
分かっている人から見れば、全く突然でもなんでもなかったのかと驚くとともに、日本の中枢にいる人たちは当然そういう情報に接しているはずです。
なのに、ロシア悪・恐ろしい隣国のイメージが完全に日本を覆ってしまいました。
何か意図が有って誘導されているのではないかと、小手川大助氏のレポートを読んでから、自分と日本の行く末に不安を感じています。
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Unknown (暗黒大将軍)
2023-04-22 01:20:28
チェチェンじゃ10年もかけて一般市民とテロリストの区別もせず3万人虐殺しまくった男が「我慢と忍耐」とやらを忖度してもらえるんだから、あのプーチンって奴は恵まれてますよね(笑)

国連もOSCEも誰も確認してない「ロシア系住民14000人の虐殺」も忖度厨の皆さんなら動かぬ証拠をもってるんだよね?
「何か意図があって誘導されてるのではないか」なーんてボヤッとしたこと言ってるなら堂々と証拠つきの擁護をすりゃいいんじゃないの、証拠があるんだろうから
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Unknown (秋風亭遊穂)
2023-04-22 01:20:34
 呼びかけ人の考えには酷い事実誤認がある。

 まず、この戦争を侵略戦争ではなく内戦と定義していること。伊勢崎は大国の干渉しない内戦はないと言うが、内戦と侵略戦争は全く異なることは言うまでもない。親ロ派ウクライナ人が武装闘争していていたのは事実だが、それは2014年以降のこと。クリミア強奪と、ロシア系住民の保護を口実にしたクレムリンの軍事介入がされたが、これはずっと以前からロシアの戦略として持っていたことが研究者によって指摘されていた。

https://www.utp.or.jp/book/b300442.html

引用開始----
ロシアが再び大ロシア主義に転じると、旧ソ連地域の民族関係は急速に緊張する可能性が高い。それは、カザフスタン北部やウクライナのドンパス地方のようなロシア人が多く住んでいる地域の「回収」、ロシア連邦の外に住むロシア人の保護を要求する動きにつながる可能性があるからである。
引用終わり----

 また、ミンスク合意はウクライナが破ったと羽場久美子が断言。(さすがに伊勢崎は「諸説ある」と言葉を濁した)
 なお、ミンスク合意の諸問題、以後の経緯は、小泉悠『ウクライナ戦争』(ちくま新書)に詳述されている。

 さらに、カラー革命を米国が仕組んだと言わんばかりのウクライナ国民の主体性を無視している点。(ウクライナ政府がロシア系住民を抑圧しているという認識もあるためだろう。)
 これは会見で志葉玲が厳しく批判をしていた。

 このような事実認識でいれば、どっちもどっち論になるのだろう。停戦すれば犠牲はなくなるとおそらく考えているようだが、タリバンが掌握したアフガニスタンで前政権に協力した人々が拘束を恐れている姿を知らないのだろうか。同様の人権抑圧が懸念される。停戦の困難さは現在のスーダンでも見るとおり。戦闘地域以外のロシア占領地に国際社会は介入できないだろう。また、ロシアによる戦争犯罪に触れないまま即時停戦とは、呼びかけ人たちは「法の支配」をどう考えているのだろうか。

 署名は広がらないだろうが、ただ、今後の西側諸国のウクライナ支援には不安を覚える。年金問題に揺れるフランスのマクロン批判はすさまじい。米国の機密文書流出も、ウクライナに都合の悪い(真偽不明の)情報も出た。徴兵逃れをするウクライナ人の報道も現れた。そしてブラジルが中国、インド、インドネシアと共に仲介をする動きがある。これにマクロンが加味するとも。ルラ大統領は米国の武器支援を批判し、ゼレンシキーに譲歩を促している。一方、ロシアは極東で軍事演習ができるほどの余裕があり、ウクライナ南部では民間軍事会社コンボイが展開する。ウクライナには厳しい現実が迫っている。
 今後も、ウクライナへの関心を持ち続けていきたい。即時停戦派の事実誤認に惑わされぬように。

 今年の世界報道写真大賞はウクライナの写真家Evgeniy Maloletkaに贈られた。母子のその後は、皆さんもご存じかと思う。

Climate, community, impacts of war: 2023 World Press Photo Contest winners announced
https://www.usatoday.com/story/news/world/2023/04/20/2023-world-press-photo-contest-climate-community-war-ukraine/11703439002/
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Unknown (raymiyatake)
2023-04-22 01:36:20
皆様、コメントありがとうございます。

このブログを始めて十数年、ずっとのことなのですが、ブログ記事本体より質の高いコメントには感謝しかありません

声明の呼びかけ人、賛同者に読ませたいものです🤗

うちの記事に疑問を投げかけてくださる方を含めて、これからもよろしくお願いいたします🤲
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Unknown (raymiyatake)
2023-04-24 17:27:15
バードさん、マズイですよ〜

やはりkojitakenさんはこのブログのコメントまで読んでくださってて、おまけにバードさんのことを宿敵とまで書いておられますよ〜(^◇^;)

この記事の表題そのままの記事を書いてくださったので、アクセス解析見たら、Hatenaからめっちゃ読みに来てくださってきてます

うちのコメントは人を不快にしたらダメとなってるので、内容的にあちらのブログを批判するのはこれは表現の自由なので仕方ないんですが、お名前をアカン漢字にいろいろ変えてdisるのに使うのは、それはこれからやめましょうね❣️

私よりたぶん一つお年が上なだけなので爺じゃないし‼️

ご理解のほど、なにとぞよろしくお願いいたします
m(__)m
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