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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

ウクライナ戦争「どっちもどっち」論には道理がないとする日本共産党の立場は至当。侵略しているロシアの行為の違法性こそ著しく重大。そこから議論を始めない橋下氏らがロシア擁護派とされるのは当然だ。

2022年04月12日 | ロシアによるウクライナ侵略

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 私は、2022年4月7日に日本共産党の志位和夫委員長が「参議院選挙勝利・全国総決起集会」で行なった幹部会報告の中で

「万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくというのが、日本共産党の立場であります。

 わが党は、綱領で、憲法9条の完全実施に向けて、国民多数の合意で、自衛隊問題を段階的に解決していく方針を明確にしています。その重要な第一歩は、安保法制を廃止して、海外派兵の自衛隊を、文字通りの専守防衛を任務とする自衛隊に改革することにあります。

 こうした立場で、急迫不正の主権侵害にさいしては自衛隊を活用します。」

と強調したことを、選挙目当てのポピュリズムだと強く批判しました。

志位委員長の「急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくのが党の立場だ」は、綱領と矛盾はしないが、今わざわざ言うべきことではなかった。

 

 

 しかし、志位委員長は同じ報告の中で非常に重要なことを先に述べています。

 それは、ウクライナに侵略しているロシアと、侵略されているウクライナを同列に扱う立場を批判している部分です。

 引用しますと

『この問題に対して、日本国内の一部に、ロシアとウクライナの双方に問題があるとして同列におく「どっちもどっち」論がありますが、これは道理がなく、国際社会では通用しないものです。

 日本共産党は、軍事同盟について、「軍事対軍事」の対抗と悪循環をもたらし平和に逆行すると批判し、軍事同盟のない世界を目指しています。

 この立場から、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大や域外派兵にきびしく反対してきました。

 しかし、軍事同盟の問題は、国連憲章を蹂躙したロシアの侵略の免責には決してなりません。

 プーチン政権は「NATOへの懸念」を口にしますが、かりに「懸念」があったとしても、隣国への武力攻撃を正当化する理由には決してなりません。

 侵略国と被害国を同列におく「どっちもどっち」論は、結局のところ、侵略国を免罪し、二つの世界大戦の惨禍を経てつくられた国連憲章にもとづく平和秩序の否定につながる議論といわなければなりません。』

 これは非常に論理的で正当です。

 

 法律学では違法性はゼロか100かではなく、違法性には程度があるということは万国共通の普遍性のある常識です。

 今回のロシア軍によるウクライナ侵略について、事前の経緯の中でウクライナにもなにがしかの問題はあったかもしれませんし、ロシア軍捕虜に対するウクライナ軍の殺害行為があったとも報道されています。

 なにより、ロシアがウクライナに侵攻を開始した当日の2022年2月24日にウクライナ政府が「総動員令」を発令して成人男子の移動の自由・出国の自由を制限したことは、同国民に対する人権侵害だと思います。

 このようにウクライナの手も真っ白ではないにしても、ロシア軍がウクライナを侵略したことがまず国連憲章に違反する重大な国際法違反行為であり、原発攻撃、病院攻撃、学校攻撃、駅攻撃など一般市民に対する殺戮行為、避難民の強制連行行為などはすべてジュネーブ協定やジェノサイド条約など戦時国際法に反する戦争犯罪行為であり、その違法性は極めて重大です。

 日本共産党が言う『ロシアとウクライナの双方に問題があるとして同列におく「どっちもどっち」論』は国際法、国際人道法や国際刑事法の理解に全く乏しい議論と言わざるを得ません。

 

 この点、例えば、橋下徹氏は「ロシアが一番悪い」を枕詞に「戦闘員に敬意」を締めの言葉にしてエクスキューズしながら、あとはもっぱらウクライナ政府やNATO批判をするのですが、ロシア軍による原発攻撃も病院攻撃も一回も批判したことがないのです。

 これではかれがいくら自分はウクライナの一般市民の犠牲者を減らすためにその避難を最優先する立場だと強調しても、ウクライナ政府を批判したいのが本音だと言われるのは当然でしょう。

 だって、ウクライナ市民を殺しているのはロシア軍なのに、プーチン大統領やロシア政府やロシア軍に対する批判には全く熱がこもっておらず、「ロシアが一番悪いのは当然だとしても」のあとはいつもウクライナや西側政府批判が続くのですから。

 だいたい、「戦闘員に敬意」って何に対してエクスキューズしているんですか?

 意味不明なうえに気色悪いです。

戦争しなくても政治で回避できたはず、それは軍事侵攻したロシアに言え。

 

 

 とにかく、ロシアが一番悪いと抽象的に言うだけではなく、ロシアのやった侵略、原発攻撃や市民の殺戮を具体的にそれぞれ批判しない人は、結局、国際法を守る気も人権や命を守る気もない人だと認定していいのです。

 日本共産党はこの状況下で、日本が攻められたら自衛隊も使って「主権」や「国民」を守りますと言い出したことでは株を下げましたが、ロシア軍の侵略に対する批判は日本の全政党の中でも一番厳しく、この態度は立派なものだと賞賛できます。

 プーチン大統領・ロシア政府・ロシア軍の行為に対する批判は形だけという人たちは、今後ますます明るみに出るロシアの蛮行の証拠の数々で追い詰められるのは必至です。

 もちろん、ウクライナ政府と軍による国際法違反行為も見逃してはなりませんが、侵略している側と侵略されている側とでは、もともと行為の違法性の程度が全く違うということは国際社会は銘記しておくべきです。

 そうでないとこれまでの戦争の違法化の歴史も、戦時国際法も何もかも無駄になり、戦争を抑止する理性の力が雲酸霧消してしまいます。

関連記事

国際司法裁判所がロシアに対し、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置命令(法的拘束力あり)。「ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」

チョムスキー曰く「ロシアによるウクライナ侵攻は重大な戦争犯罪だ」「攻撃に至った経緯を突き止めようとすることにいかなる言い訳も入り込む余地はない」。侵略国ロシアとウクライナを相対化することは許されない。

国際法違反で戦争犯罪にもなりかねないロシア軍の原発攻撃に沈黙する橋下徹氏。ウクライナ人に「旧ソ連から時代は変わった」「中国がロシアに働きかける可能性もある」からロシアと妥協しろと言い募る(呆)。

米戦略軍司令官が、大統領の違法な命令には従わないと明言。そして、米国による北朝鮮への核攻撃は違法だ。

憲法学にまるで「ど素人」同士の橋下徹氏と篠田英朗教授の罵りあいは、どちらも憲法について全く誤解しておりナンセンス。憲法9条は戦争前も戦争中も戦争後も国家権力を制約する。

橋下徹氏がロシアへ強制連行されたウクライナ市民について「ロシアに避難ができて命が守られるのであれば、僕は重要な選択肢だと思うんです」。強制連行自体がジェノサイド条約違反の戦争犯罪なんですが?

【橋下維新の会とハシズム】「力の信奉者」橋下徹氏が高市早苗氏や櫻井よしこ氏ら極右にさえ惨敗するのは、善悪は度外視でプーチンには勝てないと最初から決め込んでいる「長いものには巻かれろ」精神のゆえだ。

憲法学にまるで「ど素人」同士の橋下徹氏と篠田英朗教授の罵りあいは、どちらも憲法について全く誤解しておりナンセンス。憲法9条は戦争前も戦争中も戦争後も国家権力を制約する。

 

だいたい、橋下氏はずっと「戦う一択」ではダメだ、一般市民の避難を最優先にしないウクライナの政治家はダメだと批判し続けているのですが、ドラゴンボールのサイヤ人じゃあるまいし、戦う一択なんて主張している人はどこにもいないんですよ。

相手の主張を単純化して叩くのは橋下氏のいつものやり口ですが、今回の架空の論争相手を作るというやり方では誰とも議論がかみ合うわけがなく、高市早苗氏や櫻井よしこ氏や篠田英朗氏ら右翼が相対的に持ち上がるだけでのことです。

戦争が始まったら外交努力で戦争を終結させることを最初から考えるのはどの政治家にとっても、いや誰にとっても常識です。

プーチン大統領でさえそれは考えていますよ。

 結局、橋下氏はウクライナ市民をダシに使って自分が視野が広くて賢くてええ人やと思われたいだけなんで、最悪です。

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ロシアの「戦争犯罪」追及本格化 ウクライナ民間人虐殺

破壊されたロシア軍の戦車の近くを歩くウクライナ軍の兵士=ウクライナ首都キーウ近郊のブチャで2022年4月6日、AP

 ロシアによる侵攻が続くウクライナで、多数の民間人が虐殺された「戦争犯罪」の疑惑が次々と明らかになっている。米欧はロシアの責任を追及する姿勢を強めるが、国際的にロシアの行為はどう裁かれるのか。

「戦争犯罪を犯した」米もICCの捜査支持

 「彼(プーチン露大統領)は戦争犯罪者だ」(バイデン米大統領)、「戦争犯罪を示す極めて明確な手がかりがある」(マクロン仏大統領)――。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどでの虐殺疑惑を受け、米欧ではロシアを国際法に基づき捜査・処罰すべきだとの声が高まる。

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ロシア側が問われる可能性がある犯罪

 捜査に乗り出すのがオランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)だ。ウクライナはICC非加盟国だが、2014年にロシアにクリミア半島を一方的に編入されたことを機に、ICCに戦争犯罪などの捜査権限を認めている。ロシアの国際法違反を問うには、国際的な圧力が必要だと判断したためだ。

 ICC検察局は22年3月2日、ウクライナ情勢を巡る捜査開始を表明。これまで日本、フランス、英国など40カ国以上がICCに捜査を付託し、責任追及を後押しする姿勢を示している。ウクライナも司法当局に特別チームを設置する方針で、自国の捜査体制の強化を図る。

 ICCの捜査ではブチャなどでの虐殺疑惑が最大の焦点となる模様だが、ウクライナ東部ドネツク州の鉄道駅で8日、50人以上が死亡した露軍のミサイル攻撃などを巡っても国際法違反の疑いが出ている。またロシアがクリミア半島を一方的に編入した以降の犯罪行為も捜査対象に含んでいる。

      ◇

 「侵攻前からロシア政府の最高レベルには、民間人を攻撃対象にする計画が存在していた」。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10日、米ABCテレビのインタビューで米情報機関による分析を解説した。

 残虐行為によって民間人を恐怖に陥れて服従させるのがロシアの狙いとみられる。サリバン氏は「個々の部隊や兵士による行為もあるだろう」と推測しながらも、「戦争犯罪」は侵攻計画に組み込まれた組織的な行為との認識を強調。「プーチン大統領やロシア政府に責任があるのは間違いない」と言及した。

 米国内では3月にあったドネツク州の劇場や産科病院への空爆から、ロシアの攻撃が「戦争犯罪」との認識が急速に広がった。米上院は同15日にウクライナ侵攻が戦争犯罪や人道に対する罪にあたるとして、非難する決議を全会一致で採択。米政府も同23日、「無差別攻撃や民間人を意図的に狙っている」と指摘し「ロシア軍が戦争犯罪を犯した」と正式に認定している。

 具体的な責任追及について、米国は戦争犯罪とみられる行為の証拠収集・分析を進めて、国際機関やウクライナ司法当局の特別捜査チームに情報提供する役割を担う。侵攻前から機密情報を公開してきた米国は、ロシアの責任を追及する場面でも衛星画像分析や情報機関の情報を積極的に共有する方針だ。

 米国もICCには加盟していない。01年から20年間続いたアフガニスタン戦争などで米兵の戦争犯罪の責任を追及されることを危惧し、通常はICCと一定の距離を置いているが、今回は支持する姿勢を明確にしている。【ブリュッセル岩佐淳士、ワシントン鈴木一生】

逮捕状出てもプーチン氏の拘束難しく

 ICCのカーン主任検察官はロシアによる国際法違反の捜査開始にあたり、「ウクライナで戦争犯罪と人道に対する罪が行われたと信じる合理的な根拠がある」と主張した。ただ、ICCに加盟していないロシアには捜査への協力義務がなく、プーチン氏ら政権幹部らを訴追するハードルは高いとみられる。<picture>攻撃を受けた病院から子どもを連れ出す男性=ウクライナ南東部のマリウポリで2022年3月9日、AP</picture>拡大

攻撃を受けた病院から子どもを連れ出す男性=ウクライナ南東部のマリウポリで2022年3月9日、AP

 ICCには、戦争犯罪▽人道に対する罪▽ジェノサイド(大量虐殺)の罪▽侵略犯罪――の四つに関して管轄権がある。

 戦争犯罪は、市民を故意に殺害したり、捕虜を故意に虐待したりすることなどと定義されている。後ろ手に縛られたままで殺害された遺体などが見つかったブチャの事例などが捜査対象となりそうだ。ドネツク州のマリウポリでは一般市民が避難していた施設が空爆されており、組織的または広範囲に市民が殺害されたと判断されれば「人道に対する罪」に相当する。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はブチャなどで「ジェノサイド」が行われたと主張するが、国際法でジェノサイドの罪を立件するには、人種、民族、宗教などに基づいて特定の集団を破壊する意図があったと立証しなければならない。

 ICC設立(2003年)前の1990年代に起きた旧ユーゴスラビア内戦時の国際法違反を巡り、国連安保理が国際戦争犯罪法廷を設置。元セルビア人勢力指導者のラドバン・カラジッチ被告が8000人といわれるイスラム教徒の虐殺に関与したとして、ジェノサイドの罪などで有罪判決が言い渡された。

 今回のロシアによるウクライナ侵攻では「法的判断が必要で、まだジェノサイドとの認定には至っていない」(サリバン米大統領補佐官)などの認識が示されている。

 ICCが捜査を進め、ロシア上層部が国際法に違反する行為を命令した証拠を見つければ、侵略犯罪としてプーチン氏らに逮捕状を出す可能性も指摘されている。ただしロシアのような非加盟国の指導者に対し、ICCは管轄権を持っていない。プーチン氏らがICC加盟国に渡航しなければ、拘束するのは難しい。

 ICCが国家元首に逮捕状を出しながら拘束に至っていないケースとしては、スーダンのバシル前大統領が挙げられる。バシル氏は03年に起きたスーダン西部のダルフール紛争を巡り、戦争犯罪容疑などで逮捕状が発行された。しかしスーダンもICCに加盟していないこともあり、身柄を拘束されていない。

 バシル氏は15年にICC加盟国の南アフリカを訪問した際も、南ア高裁から出国禁止令を出されたが、無視して出国した。この際に、南ア与党は首脳会議への参加者には不逮捕特権が与えられているとして、逮捕に反対していた。【松岡大地】

ロシアも米も非加盟のICC、権威示せるか

 ICCで裁判官を務めた経験を持つ尾崎久仁子・中央大特任教授にロシアによる国際法違反の疑いについて聞いた。

      ◇

 国連憲章では自衛権などを除き、武力行使が禁止されている。侵略戦争は国際法上、違法だ。これとは別に、いかなる武力行使においても許されない行為が国際法上、定められている。これが戦争時の犯罪だ。

 ロシアによるウクライナ侵攻では、多くの軍人らが訴追される可能性があるが、プーチン氏が問われる可能性がある罪は、戦争犯罪や人道に対する罪などだ。ただし、プーチン氏が実際の行為に及んだ人に命令したり、教唆したりしたことなどを示すロシア側の資料も必要となり、非常に難しい捜査になる。<picture>尾崎久仁子・中央大学特任教授=本人提供</picture>拡大

尾崎久仁子・中央大学特任教授=本人提供

 仮にプーチン氏に逮捕状が出ても、ICC非加盟のロシアが引き渡す可能性は低い。加盟国を訪れた際に、その国の政府が拘束し、引き渡すことに期待するしかない。国家元首の場合にはもう一つ壁があり、公式訪問先の国では逮捕されない国際法上の「免除」という特権がある。ICC非加盟国の国家元首が、加盟国を訪問した時、受け入れ国が身柄を拘束できるかは議論が分かれている。

 ただし、一般の軍人や民間軍事会社の従業員は訴追を免れる権利はなく、ICCの加盟国に入ることは非常に難しくなる。国家元首も、訪問先の国が自分の身柄を引き渡さないかどうかは最後まで分からない。その意味ではプーチン氏が訴追されれば、国外に出にくくなる可能性はある。

 ICCには米国などの主要国が加盟していない。一方で123カ国・地域という加盟数の持つ意味は大きい。戦争犯罪についてはウクライナでも国内法に基づく裁判が行われると思うが、国際社会をバックにしたICCの権威はより高いと言える。安保理常任理事国であるロシアが捜査の対象となり、大国の思惑が働く中でICCが職務を果たせるか、試金石となる。【聞き手・松岡大地】

 

 

<ウクライナ危機を読み解く>
ロシアのプーチン大統領=AP

ロシアのプーチン大統領=AP

 ウクライナに侵攻したロシア軍が「戦争犯罪を行っている」として、国際社会からの批判が日増しに強まっている。民間人らに対する残虐行為が次々と明らかになる中、むしろ目立つのは軍隊の弱さと士気の低さだ。近代化を進め、軍事力ではウクライナに圧倒しているにもかかわらず勝てない背景には、ソ連崩壊後も変わらないロシア軍のおぞましい体質が根底にあるようだ。(論説委員・青木睦)

◆いじめから自殺に追い込まれ、餓死した若者も…

 ソ連崩壊後の1990年代、ロシア社会は底無しの混迷に沈んだ。社会主義経済から市場経済への体制移行に苦しみ、国家機能は著しく低下して秩序は崩壊した。
 国防予算が大幅に削られた軍も内部荒廃を来した。汚職は蔓延し、徴兵制度は機能不全で兵員は大幅に定員割れ。古参兵による新兵いじめが深刻化した。
 新兵いじめはどこの国の軍隊でも起こり得るが、ロシアの場合は規模も陰湿ぶりでも桁外れだった。いじめから自殺に追い込まれたり、満足な食事を与えられずに餓死した若者もいた。毎年、新兵いじめによって数千人が死亡したといわれ、ロシアに駐在していた日本の自衛官が「対外戦争もしていないのに…」と絶句したのを思い出す。
 人権団体「兵士の母親委員会」は、新兵いじめから逃れてきた脱走兵の駆け込み寺のような存在だった。90年代半ばに始まったチェチェン紛争では、ろくに訓練も受けていない新兵がいきなり前線に送り込まれた。そんな息子を取り戻そうとする母親らを支援したのも母親委員会だ。
 母親委員会のある女性は「軍はその社会を映し出す鏡よ」と言った。軍はロシア社会が抱える不条理や矛盾が凝縮されたような組織だった。

兵士の母親委員会 徴集された若い兵士とその家族の人権を守るために1989年発足。1994に始まったロシアからの独立を求める南部チェチェン共和国との紛争では反戦を唱え、捕虜になったロシア兵の解放交渉にも携わった。

◆新型装備 通常兵器で7割、戦略兵器は8割以上に

 プーチン時代に入り国情が安定するにつれ、ロシアは軍の近代化を進めた。
 とりわけ2008年に起きたジョージア(グルジア)との軍事紛争以降の進展は目を見張るものがあった。この紛争では軍の通信装備が悪く、司令官が従軍記者の衛星電話を借りたという逸話も残っている。
 プーチン大統領は18年の年次教書演説で、迎撃が難しい極超音速ミサイルシステム「アバンガルド」や、原子力推進式の巡航ミサイルなど6種類の最新鋭兵器の開発を公表した。
 近代化は20年の時点で、新型装備の比率が通常兵器で70%、戦略核兵器は80%以上に達したという。兵員面の改革では、徴兵よりも契約制の軍人を増やす「プロフェッショナル化」を進めた。

◆プーチン氏「職業軍人だけで戦う」はウソ

今年1月、ロシア西部ボロネジ州で,入隊の宣誓をする土木工兵隊員ら=ロシア国防省提供、AP)

今年1月、ロシア西部ボロネジ州で,入隊の宣誓をする土木工兵隊員ら=ロシア国防省提供、AP)

 その軍事力を見せつけてウクライナを圧倒するはずだった侵攻作戦。プーチン氏は徴集兵は投入せず職業軍人だけで戦う、と言った。
 ところが、ウクライナ側の捕虜になったロシア兵には徴集兵もいることがすぐにばれてしまった。
 しかも、「単なる訓練だから」と上官にだまされてウクライナに送られた捕虜が、スマートフォンで母親に「どうなっているのか分からない」と訴える光景も報じられている。結局、ロシア国防省も徴集兵の派遣を認めた。
 侵攻以来、母親委員会にはわが子を捜す親からの問い合わせが殺到しているという。チェチェン紛争時と同じ悲劇が繰り返されている。兵器は一新されたが、軍の体質は変わらないようだ。

ロシアの徴兵制 防衛白書によると総兵力は約90万人。米シンクタンク・戦争研究所によると、そのうち徴集兵は約26万人。徴兵は18~27歳の男性が対象で年2回あり、任期は1年。今春は約13万人の徴集を予定しており、欧米メディアによると,ショイグ国防相は「徴集兵は紛争地に送らない」と強調した。

 

 

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで市民がロシア兵から性的暴行を受けたと被害を訴えるケースが相次いでいるとして、人権団体は「性暴力が市民への武器として使われている。明らかな戦争犯罪にあたる行為であってはならない」と強く非難しています。

国際的な人権団体、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、今月、ウクライナ国内でロシア兵による市民への性的暴行があったとする報告書を発表しました。

報告書によりますと、東部ハルキウの31歳の女性が学校の地下に家族で避難していたところ、ロシア兵が侵入し、女性は上の階の教室に連れて行かれたということです。女性はこめかみに銃を突きつけられるなどして脅され、何度も性的暴行を受けたうえ、ナイフで首や髪の毛を切られたということです。

団体ではこのほかにもチェルニヒウやマリウポリなどで3件の性的暴行が疑われる報告があり、調査を進めているということです。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの笠井哲平さんは「ロシア兵が性暴力という戦争犯罪を隠蔽するために被害者を殺害したり、遺体を焼いたりしている可能性がある。明るみに出る被害はごく少数で、大勢の被害者がいることが懸念される」と指摘しています。

そのうえで、「戦争や紛争地域では、これまでにも性暴力が市民に対する武器となっていたが、今回も同じことが起きている。明らかな戦争犯罪に当たる行為で、あってはならない」と強く非難しました。

市民への性暴力を巡っては、ウクライナのベネディクトワ検事総長もフェイスブックで、「ロシア兵による女性、男性、子ども、高齢者への性的暴行が多数報告されている。すべての殺害された女性たちが被害を受けた可能性があるため調査が必要だ」としているほか、被害者が医師や調査員、メディアなどの問いかけに応じることで、さらなるトラウマを抱えてしまわないよう配慮する必要があると呼びかけています。

 

 

8日、ウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅で、攻撃後に残された犠牲者の所持品(AFP時事)

  • ウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅に集まった避難民ら=5日(AFP時事)
  • 8日、ウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅に残されたミサイルの残骸。ロシア語で「われわれの子供たちのために」と書かれている(AFP時事)
  • 【図解】ウクライナ・ドネツク州クラマトルスク

 【ロンドン時事】ウクライナ当局は8日、東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅が弾道ミサイルで攻撃され、避難民ら50人が死亡したと発表した。うち5人が子供で、犠牲者はさらに増える恐れがある。負傷者は98人。当時、駅は避難を待つ約4000人で混み合い、女性や子供が大半だったという。

ロシア軍、証拠隠滅か 「絶滅収容所」とマリウポリ市長

 クラマトルスクは政府軍が支配している。ゼレンスキー大統領は、ロシア軍について「戦場で戦う勇気がなく、民間人を殺している。これは際限のない悪であり、罰することなしには止められない」と非難した。首都キーウ(キエフ)近郊ブチャなどで多数の遺体が見つかる中、度重なる「戦争犯罪」への厳しい対応を訴えた。
 欧米各国も一斉に非難し、トラス英外相はツイッターで「民間人を狙うのは戦争犯罪だ」としてロシアを指弾した。
 一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は7日、英スカイニューズのインタビューで「(ロシア)部隊は重大な損失を被った。われわれにとって巨大な悲劇だ」と述べ、侵攻開始以来、ロシア軍に大きな被害が生じていることを認めた。「今後数日のうちに作戦の目標が達成されるだろう」とも強調し、東部や南部の制圧に向け、近く本格攻勢に入ることを示唆した。

 

 

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Unknown (Mina.K (https://clothacccrafter.blogspot.com/))
2022-04-12 09:38:05
はじめまして、毎回楽しく読ませていただいております。
仰る通りで、まずは侵攻した側に一番の罪かあると素人の私でもわかります。
バカタレんトの橋下は、マジでテキトーな事ばっか言ってますね。ほんとに弁護士なんですかね?最近では、怒りを通りこして、橋下のニュースを読むたびに笑ってしまいます。
日本共産党の外国からの侵攻があったら自衛隊を使って防衛すると言う見解への批判がされてますが、軍事力による国家の主権侵害に対する対応としては、極めて当たり前の判断ですし、そもそも共産党は前々からそういう見解を示していたはずです。
それどころか、民族自決権や対等の国家主権を日頃から主張している共産党らしいとさえ私は感じました。
今のタイミングで言うと、安倍みたいな人達からは、嬉しそうに攻撃されるのは、仕方ありませんね。
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