安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長・今井敬経団連名誉会長)は21日、首相官邸で第14回会合を開き、天皇陛下の退位に関する議論をまとめた最終報告を首相に提出した。退位後の陛下の活動について、象徴としての地位に基づく公的行為は行わないとした。
首相は会合で「最終報告を参考としつつ、陛下の退位を実現する法案の立案を進め、速やかに国会に提出するよう全力を尽くしたい」と語った。
最終報告はA4判20ページで官邸のホームページで公表された。新天皇との間で象徴や権威の二重性が生じる可能性について、「退位後にどのような活動をされるかによるところが大きい」と指摘。陛下が取り組んできた被災地訪問などの公的行為を退位後に「基本的に全て新天皇にお譲りになる」とした宮内庁見解を引用し、「このような整理が適切」と結論づけた。
退位後の称号は「象徴天皇であった方を表す新たな称号として『上皇』が適当」と明記。皇位継承順位から外し、摂政・臨時代行の就任は認めず、皇籍離脱も認めない。
皇后さまの称号は「上皇と一対になる」として、歴史的に使用されたことがない「上皇后(じょうこうごう)」とした。また、上皇と上皇后のお世話をする組織「上皇職」を新設する。
退位後に皇位継承順位1位の「皇嗣(こうし)」となる秋篠宮さまは「秋篠宮皇嗣殿下」などと呼ぶ案を示した。現在の皇太子さま並みの処遇とするため、秋篠宮さまの皇族費は3倍に増額する。皇族減少対策については「速やかに検討を行うことが必要」と盛り込んだ。
有識者会議は1月、一代限りの対応を促す論点整理を公表。衆参両院の正副議長は3月に特例法での対処を求める国会見解をまとめた。最終報告は特例法の是非には触れず、国会見解を紹介することで特例法を前提とした制度設計を示す形になった。
政府は5月の大型連休明けに、正副議長の下に各党の代表者が集まる全体会議に法案の要綱を示す。事前に与野党の合意を得てから国会に提出することを目指している。
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20170422k0000m010120000c.html【田中裕之】