そこにある夫婦の危機

これ以上、夫とは、やって行けない。
もう、同じ空気を吸うのも嫌！
頼むから、今すぐ、アタシの視界からいなくなって欲しい。
…切に、切に思った。
夫には、早めに単身赴任先に戻って欲しかった。
アタシの気力と体力は、もうもうもう限界である。

夫が、休暇で、赴任先の八戸から帰ってきた時、
ゴホゴホと軽く咳き込むのを見て、いや～な予感がした。
「ネ、軽いうちに病院いったらいいんじゃない？」
「いや、大丈夫だ。もう治りかけてる。」
…嘘だね、とアタシは思った。
「この咳は…この咳の感じは、もしかしたら…」
そう。この咳の感じは、喘息の発作が出る前の症状に似ている！
喘息持ちの夫、以前、風邪がきっかけで発作が起き、
入院した『前科』があるのだ。
この病気、大体は不治の病だから、油断できないのに。
再三、「念のために病院へ行こう」と促したが、
「もう治るから」と動こうとしない夫。

案の定、夜中、更に夫の咳がヒドくなった。
「ゴホッゴホッゴホッ」程度ならまだ平気なのだが…
「ゴホゴホごぼごぼゴキュゴキュんbゔhゔぁんm～！！」と
『今夜は寝かせないぜ』的な殺人咳が、アタシの睡眠を脅かす。
治まったかな～静かになったかな～と、トロトロ寝始めると、
またもや、「ゴホゴホごぼごぼゴキュゴキュんbゔhゔぁんm～！！」。
5分以上？続くかと思われる、苦しげな咳。
口から内蔵が出るんじゃないかというほど、
深く深く長く長く咳き込む。ホント、哀れである。
コレ、何度も何度も、エンドレスな感じで3日3晩やられてみそ。
…今度はアタシが寝不足でおかしくなってきた。

家事や車の運転でミス連発。
カラの炊飯器で、御飯炊こうとしたり、
車で、右車線を走行しそうになったり…。
こうなりゃ、我が身が一番大切！
寝不足で、朦朧とした脳味噌を抱え、
アタシは冷たい妻に成り下がってしまった。
…もうダメ、無理！…お願い！旦那ちゃん！
アンタ、もう赴任先の八戸に戻ってくれ！！
これ以上、1分だって一緒に暮らせない！
『愛』も『情』もへったくれもない精神状態で叫ぶ。
「アタシが、アタシがダメになっちまう！！」

それでも、なんとか耐えて、3日間持ち直した。
（夫の咳は相変わらず、だったけど。）
11月5日は、夫の42歳の誕生日。
ちょっと遅れたが、8日の夜、
毎年恒例『手作りケーキ』でお祝いした。
…『恒例』なので作らねばな！（笑）

旦那ちゃ～ん、お誕生日おめでとう。
ホントはね、山よりも高く海よりも深く、あなたを愛ちてるの！
喘息持ちだからって、あなたを見捨てたりしない。
アタシがアンタを守るからね。
だから、アタシの助言も10のうち3は訊いてよね～。

とりあえず、来週、帰って来るまでに、
その風邪治しておいてよ。頼む！