指輪物語★3

さて、その鼻クソ…否、婚約指輪を換金するため、
翌日、アタシは酒田市に向かった。
朝から天気は上々。
酒田市に１人で行くのは初めて。ルンルン♪軽いドライブ気分だった。
換金したお金で、酒田市内の小じゃれたお店で
ちょっとリッチなランチなんか食べちゃうか～とか、
夢は…膨らむ膨らむ～♪

大通り沿いの目立つ場所に、目的のA店はあった。
まるで携帯電話のお店みたいな、軽～い造りの店舗である。
なんか、いや～な予感がしてきたぞ。
奥から、事務服を着た30代半ばくらいの
地味目なおねいさんが出てきて応対してくれた。
ほとんどニコリともせず、淡々と事務的に査定し始める。
「ああ～お客様、なかなかいい品ですね。」とも
「綺麗に保存してましたねえ。」とも言わない。
指輪を計量したあと、ペン状の何かの器具をダイヤモンドに当て測定。
何かの資料を照らし合わせながら、サラサラと用紙に計算していく。
その間、約5分。…さて、査定や、いかに？

購入時の値段は60万円だが。…ヤツの給料の3ヶ月分って事か。
何度かの転居で、指輪の鑑定書を紛失してしまったのが悔やまれる。
なんてったって、英国王室から与えられたありがたい称号、
『ロイアル アッシャー ダイヤモンド』の指輪だし。
まあ、これについては説明する気力も無いので、
『ロイアル アッシャー ダイヤモンド』のサイトにて、各自調べるように。

たぶん、3万円くらいじゃない？欲張って5万円。
間違ったら…1万円？いや、そんな安いわきゃないな。
ああ…久々に、ぱ～っと行きたいね、ぱ～っと…

「7,119円になりますね。」

あ、はい？…ななしぇん？えん？…7万円じゃなくて？
あの…一緒にみてもらったディオールのピアスは？
「ピアスのほうもブランドものですが、残念ながら…
当店の査定基準まで達してないのでお引取りできません。
お値段がお気に召さなければ、査定だけでもよろしいですが
…いかがなさいますか？」
放心、約1秒の後、アタシは平静を装って答えた。
「はい。これでお願いします。」

…これでいいです。
もう、どこで査定してもらったとしても、
相場こんくらいなんだろ？（涙）
はいはい。すべてお任せしますデス。

茶封筒に入った7,119円也を手渡される。
店員しゃんは、ご丁寧に入り口まで見送ってくれた。
イカンイカン。動揺しているのを、この店員に悟られてはイカン。
（脱力して、手足が少々フラつく。いやだ…恥ずかしい。）
『査定1万円以上だと、ガソリン代1,000円出ます』って
ここのA店のチラシに記載されてたけど…
今回の査定7,000円だから、それすら出ないって事だよ！
ガソリン代かけて酒田まで来たのに。

…やっぱ、鼻クソなんだあ…（泣）

あまりの激安査定にショックを受けたアタシは、
『酒田でリッチなランチ』の気分も失せ、
そそくさと逃げるように家に帰ってきた。
家に辿り着き座った途端、どっと疲れが。
パトラッシュ、なんだか僕、疲れちゃった。
買ってきた78円スープヌードルを無言ですすっていると、
もっと重大な事件があったのを、急激に思い出した。

それは数日前の事…

（更に更に！もったいつけて！次回につづく！！）