いつも寝不足 (blog版)

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元ネタは新しくない

2005年06月07日 | 時事
asahi.comの「米で新たな進化論争 『神』ではなく『知的計画』?」(http://www.asahi.com/international/update/0607/013.html)によると、創造説(creationism)では、もろ宗教であり、政教分離的にまずいので知的計画(Intelligent Design)という説を教えようとする勢力が強まっているそうだ。進化論 vs 創造説が進化論 vs 知的計画説という構図に変化しているらしい。なるほど。ただ、使われているネタは全然新しくなさそう。

細かく調べていないが、知的計画説って、デザイン論証(Design ArgumentまたはArgument from Design)の焼き直しだよなぁ。The Skeptic's Dictionaryの Intelligent Design の項でも "old wine in a new skin: the argument from design wrapped in biochemistry" (古いワインを新しい革袋に、つまり、生化学に詰め込まれたデザイン論証なのだ)と断じられている。

それにしてもデザイン論証はしぶとい。類似の議論は紀元前からあるはずだが、取り敢えずは1600年代のイギリスあたりまで遡れば現在へと繋がる流れを知るには問題ないはず。と言うか、何百年経っても議論の基本構造は変わってない。例証として用いられるものが新しくなっているだけ。その意味では、400年前の文献を読もうが、最新の論文を読もうが、議論の構造を理解する上では大差ない。

この論証が飽きもせずに繰り返し持ち出されて「科学的だ」と言われるのには、それなりの歴史的背景がある。一番有名なところではニュートンがデザイン論証の支持者だったし、いわゆる17世紀の科学革命の原動力の一つでもある。"Nature does nothing in vain, and more is in vain, when less will serve" という有名な言葉も、無駄がない→何らかの意図が働いているから無駄が生じない→意図を有する何かがいるはずだ→その何かとは神である、という文脈で(も)考えておく必要がある。

イギリスにおけるデザイン論証の萌芽を知りたかったら、『信仰と理性―ケンブリッジ・プラトン学派研究序説』を読んでみると良いと思うが、専門家以外は眠くなるような話の連続なので普通の人にはお勧めしない。

ところで、Intelligent Designに対するThe Skeptic's Dictionaryの評価 "no more scientific than any other variant of the argument from design" は切れ味が鋭く素敵だ。

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1 コメント

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Unknown (カマエル)
2005-06-08 21:44:44
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