クワトロ郎

人生の彩りをアレコレ描いたり、歌ったり、知恵しぼったり、
牛乳しぼったり、  ん?  てな具合で
オヤジギャグ三昧

読書感想文:Salinger : The Catcher in the Rye

2014-11-26 23:01:16 | 読書感想文

言わずと知れた、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」。1951年の作。

一人称の饒舌体で語られる、ある若者のドロップアウトと中途半端な復元。出版された当初は衝撃的であったようだ。のべつ間無しに喋り続けるのに付き合わされる。それも、軽い。どうでも良いようなことしか考えていない。深刻な人生に悩む姿は見られない。背負うものも無いようだ。かといって、打ち込む好きなことも無いようだ。一方的に個人の主観が語られる。存在していることの意味を問うのが、従来の文学であったとすれば、これは文学ではない。これが、文学の一つの転機になったことは確かだ。これ以降の作家はこのサリンジャーが示した、既成の概念に捕われない”自由への扉の開放”に、勇気付けられて飛び出して行ったのだ。

だから、現代の僕が読んでも、受ける印象に時代感も違和感も無い。この文体が持つパワー感、リズム感、疾走感、軽快感、は輝きを失っていない。失っていないどころかまだまだ光を煌々と放っている。ここで喋っている言葉も、現代のそれと変わらないのに驚かされる。

この本は売れ、これを愛読書という人がゴマンといるようだ。愛読書というからには、何回も読み返すのだろう。家内も高校生のうちに読んだそうだ。が、僕には耐えられない。本には、密度の濃さとある種の完結感が欲しい。この本にはそれが無い、のか、僕が理解出来ていないのか。

1951年には意味があったと思う。今、人に勧めるかと訊かれれば、有名な本を話題にしたければどうぞ、ただし、後回しでもいいし、あるいは読まなくても特に良いのでは?というのが正直な感想。

読書感想文:F. SCOTT FITZGERALD : THE GREAT GATSBY

2014-11-20 00:00:08 | 読書感想文


1925年作。

ロバート・レッドフォードや近年ディアプリオ主演で映画化された「華麗なるギャツビー」

マンダムの男性用化粧品ブランド「ギャツビー」も、これを拝借してできた。

20世紀を代表する文学の一つ、という評判だが、はてさて。

ある意味、人もうらやむ上流階級の華麗さの中に、どろどろした人間模様があり、それはついには悲劇に至る。というメロドラマ。語り手は、つねに傍観者的冷淡さで、主役ギャツビー氏とその関係者、そして自分自身を、生活リズムの中に置き去りにしている。そこに意志は見られない。流れていく。まさに現代人の物語であろうか。

村上春樹とか、ヘミングウェイとか、絶賛しているらしい。私には、メロドラマ。すまん。

読書感想文:Thomas Hardy : Tess of the D'Urbervilles

2014-11-17 22:40:16 | 読書感想文

1891年英国トーマス・ハーディ(Thomas Hardy)の作。ナスターシャ・キンスキー主演で1979年に映画化。邦訳は、1960年に岩波文庫から、2004年に筑摩書房から『テス』として出版。

映画は見ていないが、文章は非常に視覚的で、ストーリー的にとてもドラマティックで、映像向きだと思う。主人公のテスに読者は感情移入して、はらはらどきどきし、その不遇の人生と、虐げられながらも、自分自身であろうとし続けるその姿に感動する。最後は悲劇の幕切れだが、男というもののしょうもなさと、女というものの強さに、読者は逆に希望を感じる。

現代のような人権主義の時代ではない。生計を立てることが容易な時代ではない。機械もない手作業の時代である。貧富の差がとてつもなく大きかった時代である。公共の教育なんて無い。生まれた階層にとどまるしかなかった時代である。その時代に書かれた、その時代の女の、いや、一人の人間の、決して負けない力強さへの賛歌である。

好き勝手なことをして”自分らしく生きたい”なんて、言ってる脳天気な現代人には、それが自由に出来ることを最大限に生かして欲しいと思うが、ちんけなことしか出来ていないんじゃないのー?と毒づきたくなる。

今の時代、日本においては、何をやるにも制限は無い(法規の範囲内で)。制限はその人の想像力だけ。

今の時代、他の国では、選択肢は非常に限られているところもある。

昔の時代、どの国でも、選択肢は非常に限られていた。

日本人、さて、何をしますかな。