紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『奇巌城 怪盗ルパン4』ルブラン原作・南洋一郎文

2005年08月01日 | ら行の作家
オンライン書店ビーケーワン:怪盗ルパン 4奇巌城 怪盗ルパン4』ルブラン原作・南洋一郎文(ポプラ社)

つい先日も、逢坂剛の『奇巌城』を読んだばかりなのですが、
今度は正真正銘、私の原点である南洋一郎の『奇巌城』なのです。
ここで初めて私はホームズにも触れることになるのですが、
これはいただけない(笑)。これじゃあ、ホームズに興味を
持たなくなるってもんです。まあ、それは置いといても。
何にわくわくしたって、たぶん、あの暗号じゃないでしょうか。
結局あの暗号は、あの場所にいないと解けないものなのですが、
暗号が出てきて、それを解いてルパンに迫る、という状況が
楽しかったんだと思います。探偵役のイジドールが高校生だった、
というのも、身近に感じられたのかもしれません。

それにしても、随分、割愛されていたのね(^^;)。
というのが、正直な感想(笑)。なぜレイモンドが…か、
という部分が省かれていて、これだけ読むとちょっと最後を
すんなりと受け入れらるのは難しいのかも。でもまあ、子供向けだから(笑)。

こだわりの1冊ということもあり、どこが他の訳者と違うのか、
ということについて、下に挙げておきたいと思います。

■『奇岩城』堀口大学訳(新潮文庫)
 レイモンドが聞き耳を立てていた。またしても、しかも二度まで、
その物音が聞こえてきた。夜の深い沈黙を形作っているさまざまな
聞き取りにくい物音から区別できるほどの、かなりはっきりはして
いるが、それが近いのか遠いのか、この広い城館の壁の内側から聞
こえてくるのか、それとも広庭の影の多い億の方から聞こえてくる
かは言いかねるほどかすかだ。
 そっと彼女は起き上がった。……

■『奇巌城』石川湧訳(創元推理文庫)
 レーモンドは耳をすました。またもや、しかも二度、物音がきこ
えた。夜の静けさのなかにあるどんな雑音とも違う音であることが
わかるほど、はっきりと、しかし、それが誓いのか遠いのか、広い
館の内側でか、それとも外側の、庭のくらい隅でかは、わからない
程度にかすかであった。
 彼女はそっと起き上がった。……

■『名作選・怪盗ルパン2 奇巌城』保篠龍緒訳(講談社)
 カタリ、コトリ……
 どこからともなく聞こえてくる、あやしいもの音に、ふと目をさ
ましたレイモンドは、そっと、ベッドから起き上がると、寝室の窓
の戸を、音のしないようにあけた。ま夜中の青白い月の光が、ひろ
い庭の芝生の上にながれていた。
 と、その光の中を、ひとりの男が、大きな堤をかかえて、タタタ
タ……と走りさっていく。おどろいて見おくるまもなく、つづいて
またひとり。早い、じつに早い。ふたりのあやしい男のすがたは、
たちまち土べいのなかにきえてしまった。

■『奇巌城』逢坂剛訳(講談社文庫)
 スザンヌは、はっと目を覚ました。
 物音が聞こえる。二度、三度。ただの物音ではない。何かを動か
し、運んでいくような思い物音だった。しかも、屋敷の中だ。
 スザンヌはベッドの上に起き上がり、じっと耳をすました。胸が
どきどきしてくる。……

■『怪等ルパン4 奇巌城』南洋一郎訳(ポプラ社)
「おやっ。」
 白バラのように美しい少女レイモンドは、三階の寝室で目をさま
すと、じいっと耳をすました。
「あ、また、聞こえるわ。」
 しんしんとさびしい真夜中に、どこからか、あやしい物音が、か
すかにきこえてくるのだった。
 古い建物のなかかしら……それとも……ひろい庭の木立のおくか
らかしら……毛布をそっとはねのけて、ベッドからすべりおりたレ
イモンドは、すらりとした白い素足に上靴をつっかけると、こっそ
り窓ぎわにしのびよって、しずかに……しずかに、戸をおしひらい
た。……

※南洋一郎がいかに創作していたかがよく分かります(笑)。
 逢坂版を読んだとき、すごい大胆だなあと思ったのですが、
 南洋一郎と比べると、もしかしたらたいしたことないかも(笑)。