紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「カラー版 古代エジプト人の世界-壁画とヒエログリフを読む」村治笙子

2005年01月25日 | その他
読みながら、さんざん文句を言ったので(笑)、
ここで改めて書く必要もないかと思いつつ。
でも先日、エジプト関連でとても嬉しいニュースがあったことだし、
それも絡めてちょっと書いてみようかと思います。

先日、エジプトで発掘調査をしている早稲田隊が、
未盗掘のミイラ(この表現おかしくない?)を発見しました。
ミイラは中王国時代のもの。王ではないけれども、
なかなか位の高い人ではないか、という報告でした。
確か、早稲田隊はカエムワセトの神殿及び墓を見つけるべく、
調査をしていたと記憶してます。カエムワセトは
ラムセス2世の第4王子なので、新王国時代のはず。
時代も違うし、どういういきさつで発見されたのかなど、
詳しい話を聞きたいと思っているのですが、あまりニュースなどでも
取り上げられていないのがとても不思議。

とまあ、一口に「古代エジプト」といっても、
ナイル川を統制しはじめた古王国時代からはじまって、
クレオパトラの末期王国時代まで、約3,000年あるんですね。
それをこんな薄い1冊でまとめようなんて、どだい無理な話ですって。
壁画とヒエログリフから読む、ということですが、
現在残っている、そのヒエログリフが刻まれた壁画というのは、
ほとんどがラムセス2世の時代に作られたものです。
そう。新王国時代の第19王朝期のことですね。
それだけを取り上げて、“古代エジプト人の世界”なんていうのは
いかがなものかと。しかも、本書のどこにもそんな注意書きは
ないわけですよ。初めて古代エジプトに触れる人がこれを見ると、
勘違いしますね、きっと。大袈裟にいってしまえば、ここに
描かれていることが古代エジプトのすべてだ、と思われても仕方ない。
…その辺をどう考えているんでしょうね。
だからせめて、メインタイトルとサブタイトルを逆にすればよかったのに。

「壁画とヒエログリフから読む古代エジプト人の世界」

ね。これなら問題ないさ。間違いじゃないもんね。
逆にこの方が、一つの時代に特化して説明できると思いませんか。
新王国時代の死生観、とか、第19王朝期の庶民の生活、とか。
ホントはヒエログリフだって、古いものと新しいものでは
違うと思うんですよね。だって、日本語ですらそうなんだもん。
壁画だって、時代によっては技法なんかが違うわけだし。
そういえば、アマルナ芸術に関しては触れてなかったなあ。
古代エジプト3,000年の歴史にあって、あんなに特徴的な時代なのに。

せっかくカラーなのに、岩波新書なのに。
もったいないなあ。というのが、正直な感想。


「カラー版 古代エジプト人の世界-壁画とヒエログリフを読む」村治笙子