紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『おれは非情勤』東野圭吾

2005年10月09日 | は行の作家
オンライン書店ビーケーワン:おれは非情勤おれは非情勤』東野圭吾(集英社文庫)

小学校に勤める非常勤講師が主人公の連作短編。
主人公には名前がなく、とっても硬派を気取っている
“ハードボイルド”なんだそうですが、謎解きは
しっかり本格です。これはある種、二階堂黎人の
しんちゃんのシリーズに似通っている気がしないでもない。
(主人公の年齢が随分違うけれども)
何より、「5年の学習」「6年の学習」に掲載されていた、
というのが驚きです。起こる事件がそれほど凄惨ではない
(殺人は起きますが)ということ以外、とりたてて
子供向けな感じはしませんでしたけどね。そこが
返って子供に対してもフェアな気がして良かったです。

硬派でハードボイルドな主人公は、好んで小学校の
先生をやっているわけではなく、ミステリ作家に
なりたいらしい。けれども、その夢を叶える暇はない上、
行く先々で不可解な事件に巻き込まれてしまいます。
先生が殺された現場にダイイングメッセージが残されて
いたかと思うと、教室ではいじめがあったり、また
毒物中毒事件が起こったり…。途中まではなんとなく
分かるんですが、結局謎解きにまでは至りませんでした。
それはなぜかというと、大人の目線と子供の目線で
こうも見方が違うのか!ということに尽きるのかな。
子供の世界で起こる事件は、子供の心理で解かないと
分からないのね。それを、この主人公は見事に解決する
わけです。学校の先生になりたいわけではないらしい
主人公ですが、そういう部分はとっても先生向きだなあ、
とか思ってしまいました(笑)。

話は大きく変わりますが、昨日テレビで「ごくせん」の
特番を見たのですね。いまさら学園ドラマなんて見られない
と思っていたので、ドラマは全く見てなかったのですが、
この特番でダイジェストを見ていると、結構面白い!
やっぱり単純なんだけど、そこが高校生らしい素直さ、
純情さなんだと思い知った気がしました。
それとこの作品はなんとなく通じる部分があって、
結局自分は大人ぶってはいるけれども、やっぱり
過去子供であったことは間違いなく、そういう部分は
いつまでたっても忘れないんだなあ、とか思ったわけです。
主人公の、子供への言葉とか態度なんかを見ていると、
子供をちゃんと1人の人間として見ているというところが、
ちょっと心に残ったりして。。。こういう作品に触れられる
現代の子供たちがちょっとうらやましい(笑)。