紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

『M列車(ミステリー・トレイン)で行こう 日本ベストミステリー選集32』日本推理作家協会編

2005年09月28日 | アンソロジー
オンライン書店ビーケーワン:M列車(ミステリー・トレイン)で行こうM列車(ミステリー・トレイン)で行こう 日本ベストミステリー選集32』日本推理作家協会編(光文社文庫)

ミステリー・トレイン、ということで、“旅と街”をテーマにしたアンソロジー。
「幽霊船が消えるまで」柄刀一、「マン島の蒸気鉄道」森博嗣、
「湯煙のごとき事件』山口雅也は読んだことのある作品でした。
「セヴンス・ヘヴン」北森鴻は、テッキとキュータのシリーズもので、
なんだかこれまでの北森さんとはちょっと違った雰囲気を感じました。
が、これも連作短編の中の一つだということで、親本を読んでみたいなあ。
「迷宮に死者は棲む」篠田真由美は、建築探偵の短編。今回は、桜井京介でも、
蒼でもなく、なーんと深春ちゃんが主役。尾道で出あう“迷宮”のお話は、
短編なのにしっかりと“建築探偵”していて面白かったですよ。

ちなみに、その他の収録作品は「悩み多き人生」逢坂剛、
「危険な乗客」折原一、「三たびの女」小杉健治、「逢いびき」篠田節子、
「愛の記憶」高橋克彦、「阿蘇幻死行」西村京太郎、「山魔」森村誠一。

『夜のピクニック』恩田陸

2005年09月28日 | あ行の作家
オンライン書店ビーケーワン:夜のピクニック夜のピクニック』恩田陸(新潮社)


第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞受賞作。
帯に、“ノスタルジックでリリカルで、いつまでも読み
続けていたい作品”と、池上冬樹の言葉がありますが、
まさしくその通り。夜通し80キロもの道のりを、ただ
歩き続けるだけ、という高校生活最大のイベント「歩行祭」。
私の記憶に当てはめるならば、修学旅行といったところでしょうか。
厳密にいうと私の学校は「修学旅行」ではなく、箱根の山奥に
篭もる「合宿」だったので、それほど楽しくはなかった(笑)。
でも、「歩行祭」も“しんどい”イベントではあるわけですよね。
しかしながら、“高校生活最後のイベント”“最大のイベント”となると、
“これだけはしておかなくちゃ”という気持ちになるんです。

甲田貴子もそんな1人でした。前半はクラスメイトたちと歩き、
仮眠を取った後の後半は、仲の良い友人と歩こうと決めていた貴子。
彼女はこの「歩行祭」で一つの賭けをしていたのです。

ノスタルジーの神様などといわれている恩田さんですが、それだけ
じゃないですよね(当然ですが)。確かに、高校生活最後の一大行事を
舞台に繰り広げられる青春物語、といった趣なのですが、
たかだか1泊2日を友人たちと過ごすだけの話が(歩いてはいますが)、
こんなに楽しくて切ないものだとは、想像できないでしょう。
高校生活って、高校時代って、こんなに大切なものだったのか、と、
改めて思い知らされました。もっと大事に過ごせば良かった!(笑)。

ネバーランド』のような“閉じた世界”ではあるのですが、
だからこその魅力。その辺に私は激しくそそられるんだなあ。