紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「薬指の標本」小川洋子

2005年05月10日 | あ行の作家
博士の愛した数式」以来、気にしていろいろ読んでます。
帯に“フランスで映画化”とあったのですが、作品に登場する
“標本室”は、日本よりもフランスでの方がイメージしやすいですね。
しかも、作品に流れる雰囲気はとてもフランスにぴったり。
フランス映画として見てみたい、と思いました。

工場での仕事中、事故に遭って辞めてしまったわたしが出会ったのは、
人々が思い出の品を持ち込む「標本室」。すぐさまそこの事務員に収まり、
日々、さまざまな人が持ち込む品々と思い出に触れる生活を送るようになる。

そんな不思議な「標本室」での、不思議で、やはり異質な「愛」の
物語なのでしょうね、これは。女として、彼女の気持ちは分からなくも
ないけれど、でも私なら、彼女と同じことはしない。彼女のような
立場に満足できる私ではない(笑)。…私には“ひそやかな愛”は
向いてないのです(^^;)。だから逆に、フランスが似合うのです。

どちらかというと同時収録の「六角形の小部屋」の方が好きです、
リアリティがあって。主人公である彼女に素直にリンクできるし。
これもある種「愛」の物語かもしれませんが、私的には、ホラーの
ようにも読めますね。不思議な小部屋の物語です。まあでも、
小川さんの作品って、少なからずホラーの要素を含んでますもんね。
表題作だって、充分ホラーだと思いますよ。そこにうまく「愛」を
からめて、美しく仕上げるのが、小川作品の魅力です。


薬指の標本」小川洋子(新潮文庫)

「捩れ屋敷の利鈍」森博嗣

2005年05月10日 | ま行の作家
薄いし、れんちゃん出てこないし(笑)。なんなら、
萌絵なんかが出てきた日にゃあ!って感じで、ちょっと拍子抜け。
Vシリーズからの出演は、保呂草さんと、かろうじて紅子さん。
あとは、萌絵と国枝先生、電話出演の犀川先生。S&Mシリーズと
Vシリーズがリンクした作品、というよりは、やっぱり
S&Mシリーズの番外編という色が濃かったように思います。
なにせ、ここでとある“秘密”に軽く触れるわけですが、
先に四季4部作を読んでしまった身としては、たった
それだけでは物足りない、物足りない(笑)。
そんな、内容以外のところで文句が出てしまう作品なのです(笑)。

メビウスの帯を3次元化した“捩れ屋敷”の、密室状態の
部屋から死体が発見された。しかも、その屋敷に眠っていたはずの
宝剣“エンジェル・マヌーヴァ”も消えてしまった!

この捩れ屋敷の主と萌絵とが“友人”という設定。
こういう設定は微笑ましくって好き(^-^)。ある一時期を
過ぎてから、萌絵は“鼻につく金持ちのお嬢”から
“かわいらしい女性”に変身したと思いませんか(誰に言ってんだか)。
…もしかしたら、保呂草さんと一緒に登場したからそう見えるだけ
なのかもしれませんが(笑)。どっちが“まし”かという問題なのか(^^;)。

作中に提示される“密室の謎”は、実はもう1つあるのですが、
私はこちらの方が好きですね、大胆で(笑)。こういうときに
思うのです。作中に“お金持ち”を登場させる理由は、こいう
ところにあるのか、と(大笑い)。…こんなことを言うと
元も子もないのですが(^^;)。まあ、お金持ちでなくても、
大胆なトリックを作ることは可能なのでしょうが、お金持ちの
方が無理なく、より奇抜なトリックを作れる、というもの。
その最たるモノが、もしかしたら“館シリーズ”かもしれません。
この場合は、お金持ち+中村青司という組み合わせが重要ですが。
そんなことまで考えさせてくれた意味では、意義のある作品でした(何)。
(Vシリーズに何を求めているのか、という個人的な問題ですね(笑))


捩れ屋敷の利鈍」森博嗣(講談社文庫)