「将棋世界 2010年12月号」

             

 竜王戦は予想外の羽生名人の2連敗で始まりました。特に第2戦は解説人が何手も羽生名人の疑問手を指摘するというこれまでにあまり記憶のない展開にちょっと驚きです。最近の強さが際立っていただけに意外でした。夫人との別居が報道されており、そこらへんの影響もあるのかなあと想像しています。このまま渡辺竜王の4連勝でしょうか。そうならないことを望みたいと思います。


 さて、将棋界では結構話題となっていたコンピューター対清水女流王将の対決。個人的にはそれほど関心はなかったのですが、今月号の将棋世界での特集「知を巡る物語」を読んで今回の勝負の面白さを今更ながら認識しました。

 今回のコンピューター「あから2010」は「激指」、「Bonanza」、「GPS将棋」、「YSS」という4つの将棋ソフトが次の一手をそれぞれ検討し、その結果を合議制(単純多数決+α)で決めるというものです。それぞれのソフトにはこれまでの実績に応じて激指2.9、Bona1.9、GPS1.0、YSS1.9という発言力が設定されている。
 加えて、序盤の作戦のみ力戦型(定跡を離れて駒がぶつかり合う複雑な将棋)、角交換が行われるように設定したことが開始後発表されました。そこで4手目、☖3三角(後手あから)。
 私も「激指」を持っていて、たまにソフトと対戦するのですが、私のような初心者が角交換するとまず勝てません。容赦ない打ち込みがあるのでとにかく角交換しないように指します。プロなので影響は大きくないでしょうが、あからの序盤思考プログラムを読んで成る程と思いました。

 この特集では、ポイントでの4つのソフトの選択手、その背景としてのソフトの傾向・好み、そして合議でどの手が選ばれたのかが紹介されていて興味深いです。合議中にコンピューターの読みが進んで手を変えるソフトがあり、対立していた協議がまとまるなどワクワクです。

 桂をタダ捨てしてでも、穴熊を阻止する☖4四の角というポジションの価値を高く見るなど手の良し悪しは別としてコンピューターは進化しているんだなあと感嘆しました。

 結局は時間に追われて疑問手を2~3打ってしまった清水女流王将が敗れてしまいます。コンピューターは終盤は間違えませんので明らかな差が出てしまうと一直線です。

 まだ男性プロの方が強いような印象ですが今後のコンピューターの進化も楽しみです。



          




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