西加奈子『くもをさがす』





 他人様の闘病記を読み物として楽しむのは趣味が悪いというか、どうかと思いましたが、作者の渾身の読者へのメッセージであるらしいこと、また、自分も似たような時期に病気したしと言い訳しながら手に取りました。

 「無人島のふたり」は、突然余命宣告された翌月の2021年5月24日から亡くなる9日前の10月4日までの日記です。作者が愛した軽井沢、夫、仕事の仲間たち、大好きな小説・漫画、人生との別れの想いが切ないです。

 「くもをさがす」は同じく2021年5月下旬に異変を医師に相談してからのカナダ・バンクーバーでの日本では考えられないような治療の様子を関西弁でドタバタ風にまとめたライブ日誌、哲学入りです。作者の心強さには本当に心打たれます。

 読んでおいてよかった。最近は外国の小説を読むのが辛くなっていて途中で止めることばかり、一方で日本の小説・ノンフィクション系もなかなか好みが広がらずに閉塞感があって、村上春樹と沢木耕太郎の再読ばかりになっていたのですが、この2冊を読んで世界が広がった感があります。2人が紹介している読み物、世界を少し探ってみようと思います。



 

 



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