「ウィーンフィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2010」(11/9)

          

 ウィーンフィル来日公演の11月9日のコンサートを聴いてきました。久しぶりの溜池山王、久しぶりのアークヒルズ、サントリーホールです。

 席は2階正面の一番後ろの席ですが、遠くは感じませんし、音の良いサントリーホールなので問題ありません。2階は50席弱は空いていて、1階席もまばらに空きがあるようです。

 定刻の7時を少し過ぎるとメンバーが入場し、指揮のフランツ・ウェルザー=メストが登場です。報道されたとおりコントラバスのシュトラッカ氏が富士山で滑落死したこともあり、もしかしたら追悼の一曲があるかもしれないと不謹慎ながら期待していたのですがそれはなく、ワーグナーが始まりました。

 冒頭・・・弱音がきれいに聴こえるのでさすがに音響がいいなと思いました。その後は丁寧な音楽づくりが続きます。オーケストラを生で聴くのは久しぶりですが、弦楽よりも金管がよく響くなあという印象です。初めて聴くウィーンフィルですが想像していたよりは普通というか特別ではない高機能のサウンドに聴こえます(贅沢な感想ですが)。それでも弦の弱音はウィーンフィルらしいというか、うっとりする繊細さがあっていいなあと思えます。光が優しく輝きハラハラと散りゆくような響き、これが聴きたかったと思える瞬間もありました。

 メストとウィーンフィルは国立歌劇場でのワーグナー演奏の機会がそこそこあり、現在は音楽監督ですから事実上の首席指揮者扱いだと思うのですが、統率がとれているとか、指揮者とオーケストラとが一体の演奏を繰り広げるといった印象は残念ながら持てませんでした。
 メストの特徴として音楽が盛り上がるところで加速度的にテンポが速まることがあるのですが、トリスタンの前奏曲ではそこらへんのリズム処理でぴたっと決まらない感じがありました。

 愛の死については、これまであまりにもカラヤンとノーマンの演奏を観て聴いてきたので、歌なしだと私はシラケてしまいます。これは仕方ないです。

 演奏時間は16~17分程度ですが、ここで前半終了で20分の休憩となります。


 演奏の合間にたまに双眼鏡でメンバーを観ていたのですが、コンサートマスターはお馴染みのライナー・キュッヒル氏、その他のメンバーは分かりません。来日メンバーにフルートのシュルツの表示がありましたが今日は若手でした。女性奏者は4人、第一バイオリンに3人とビオラに1人です。映像でたまに見るアジア系(ハーフ?)の男性もいました。最近関心あるティンパニもたまに見ていたのですが、剃髪の若い男性で心遣い細かくテテテンテンテン、テテテンテンテン叩いていました。音は全般的にマイルドです。これがウィーンフィルの伝統なんでしょうか。


 後半はメインのブルックナー交響曲第9番。この10日間ちかくの予習でおそらく30回以上録音を聴いているので耳に旋律が残っていて、じっくりと聴き比べることができました。

 ワーグナーよりはブルックナーの方がしっくりいく演奏だったと思います。弦、木管もいいですが、金管の響きの良さに聴き惚れます。ホルンのなだらかなカーブ、トロンボーンの強奏でも優しくマイルドな合奏。素晴らしいです。

 大きくて芳醇な響き、ブルックナーの9番はいいなあと幸せな1時間を過ごすことが出来ました。よい演奏であることには間違いありませんがどのレベルなのかは正直判断できません。
 それでも第3楽章最後の10~15分の天国への階段を登るような、浮揚感ある優しい旋律とファンファーレには時間を忘れる思いです。聴きに来てよかったと思える幸せな瞬間の連続でした。
 終演後は聴衆のマナーもよく指揮者が動くまでは拍手なしです。それでもメストは音楽が消えた後10秒もしない内にさっと動いていました。拍手を受けている間もメストはニコリともせず仏頂面でした。こういう人だったかなあ、顔も一部赤く火照っているようで時差ボケしていたのかもしれません。


 やはりアンコールなしで終了です。夕方の7時過ぎに始まって8時45分には終了。電車に乗って9時半には最寄駅に帰って来れました。
 これでA席3万円とかS席3万5千円がどうかということです。演奏を聴きながら、そういえばいいワインを開けた時も3万円はいい味だけとコストパフォーマンスで微妙とか考えていたことを思い出しました。この演奏会の正直な感想は・・・微妙です。ワーグナーの陶酔感ある音楽を美音で聴けたこと、ブルックナーの至福の金管など。これは普通では聴けない音楽、響きだという思いがある一方、ピシッと首席指揮者の統率が効いている訳でもなく、客演指揮者との一期一会の緊張感もない中庸な演奏だった印象もあります。ただ、メストの録音は比較的聴いている方ですが、特徴はバランスがよいことでもあるのでこれがメストの演奏なのかもしれません。

 10年振りのオーケストラ、他の指揮者とのウィーンフィルを聴いたことがないのでうまく比較はできません。期待が大きすぎたのか。満たされた、痺れたとはいえませんが、これまでに聴いたことのない最高の生の演奏でした。


          



(後で知りましたが、マイクが垂らされていたのはNHKFMで生放送があったようです。ガクッ。とは言ってもラジオのない我が家では聴けなかったですが。)





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