「しあわせへのまわり道」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

           


 リアルな説得力があって、しっとりとした味わいもあり、面白くて最後まで一気に魅せる、言葉を重ねると空しくなるのですが、要するにそういう映画が観たいです。ただ、映画評・宣伝からこれはと思って観に行ってもガッカリな作品も結構あります。


 原題は「ラーニング・トゥ・ドライブ」(運転を覚える)というストーリーを端的に表したもので、久しぶりに好みのタイプのド真ん中に近い映画でした。舞台はニューヨーク、インド系男性と白人女性とがタクシーの中に佇むポスターの印象、上映時間が無駄に長くない1時間30分と、これはイイんじゃないかという直観が当たりました。


 冒頭に20年間連れ添った夫に浮気されて嘆き悲しむ白人女性が登場します。一体何歳なのか分かりませんが、化粧が濃く、老けていて骨筋ばっていて、正直惨めな女性です。まさか彼女が主人公とは思いませんでした。イザベル・コイシェという女性監督だからこそ描ける残酷ともいえるリアルな描写で始まります。


 これに元は知的な職業に就いていながら、インドから政治亡命し、ニューヨークでは自動車教習所の教師とタクシードライバーを生業としている男が、白人女性の免許取得の教師となることでこの物語は始まります。


 インド系男性は、事あるごとに街中で露骨な人種差別を受けつつも誠実に生きる、白人女性は夫への未練たらたらながら、少しずつ新しい人生に踏み出そうとします。


 偶然出会った二人の人生にはいろいろと人には言えない悩みがあって、一喜一憂あるのですが、それは観てのお楽しみです。


 テーマの一つは勇気をもって外の世界へ踏み出すことで得られる人生の可能性、解放感です。映画は教訓を得るために観るものではないと思うのですが、久しぶりにそうだよなあと納得するメッセージ、何ともいえない爽快感がありました。ちょっとした勇気による打開感、外に出よう、外に出れば人と人との接点が生まれて、本当の人生を生きているという現実感を得られる。単純なのですがこの現実感はとても大事だと改めて感じました。




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