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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

キース・ウォーナーの「ラインの黄金」

2009年03月20日 | 観劇など
年に一度のオペラ見物。今年はワーグナーの「ラインの黄金」を見た。バイエルン宮廷歌劇場での初演は1869年(明治2年)、日本では、東京遷都、版籍奉還があった年である。チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」が作曲され、トルストイの「戦争と平和」が完成し、日本では河竹黙阿弥の絶頂期だった。

ご存知「指輪」シリーズの序夜である。しかしストーリーまで知らない方もいらっしゃるだろうから、新国立劇場のHPから引用しておく
【第1場】前奏曲に続いて幕が開く。ラインの川底。三人の乙女が「ラインの黄金」を見張る。小人アルベルヒ(Br)が声をかけると、陽光が差しこみ、黄金がきらめく。乙女たちは黄金の不思議な力を話す。「愛の喜び」を断念した者だけが黄金を手にすると彼は知り、「恋愛を呪う!」と叫び、黄金をもぎ取る。
【第2場】山の頂。遠くにワルハラの城。主神ヴォータン(Br)と妻フリッカ(Ms)のもとに、美の女神フライア(S)が逃げ込む。城を建てた巨人の兄弟が、その代価として約束の彼女を求める。火の神ローゲ(T)が「美女の愛より、ラインの黄金が勝る」と彼らに話す。興味をそそられた巨人たちは、フライアと黄金を交換する気になる。主神と火の神は小人の世界に向かう。
【第3場】地下。ヴォータンたちは、アルベリヒの弟ミーメ(T)が、ラインの黄金で頭巾と指環を作ったと知る。アルベリヒは、神々に自分の宝を自慢する。頭巾の力でヒキガエルに変身した彼を神々は捕まえて、地上へと連れ去る。
【第4場】山の頂。アルベリヒは、小人たちに財宝を運ばせ、身代金とする。ヴォータンが指環までもぎ取ると、彼はそれを恨み、「指環を持つ者に死を」と呪いをかけて消える。巨人の兄弟が現れ、女神の姿を隠す量の財宝を求め、指環も要求する。ヴォータンが拒むと、智の女神エルダ(A)が出てきて、指環を捨てるよう忠告する。指環を手にした巨人たちは争い始め、弟が兄を殴り殺す。主神は指環の恐ろしさを知る。神々は虹の橋を渡って城へと向かう。川底からは乙女たちの嘆きが聞こえる。

わたくしは先に「ワルキューレ」「ジークフリート」を見た。ヴォータン、アルベリヒやミーメは「ワルキューレ」「ジークフリート」にも登場する。アルベリヒやミーメは地下に住む小人(ニーベルング)、ヴォータンは天上に住む神々、ファフナー、ファーゾルトの巨人は地上に住むという三層構造を理解できた。またかつてみた夢の遊眠社の「白夜の女騎士(ワルキューレ)」はタイトルからして「指輪」が本歌であることは明らかだが、小人と巨人の意味がいまごろわかった。
キース・ウォーナーのトーキョー・リングと呼ばれる演出はやはりポップだった。 
ラインの娘たちは映画館の観客席をはね回り、ヴォータンとローゲはエグゼクティブパーソン風でアタッシュケースを持ち、フリッカもビジネススーツに身を包む。舞台は、一見現代か近未来のようにみえるが、じつは戦間期のシカゴとかベルリンなど欧米の都市のようだ。
傾いているようにみえる舞台、矢印や数式がたくさん描かれた背景、ジグゾーパズルの1ピースとしての指輪、この演出は、初演の準メルクルの端正で優雅な指揮とまったく合っていなかった。今回のダン・エッティンガーのほうがはるかによかった。というか、演出と歌とオーケストラのバランスが(前よりは)取れていた。
歌手では、ユッカ・ラジライネン(ヴォータン)、トーマス・ズンネガルド(ローゲ)、エレナ・ツィトコーワ(フリッカ)が声量たっぷりでよかった。エルダ役シモーネ・シュレーダーは出番が短かかったので、もう少し聞きたかった。身もフタもないが、いつものように外人がよかったという結果だ。日本人では巨人の長谷川顯(ファーゾルト)、妻屋秀和(ファフナー)が演技、歌唱ともによかった。
今回はじめて1000円出してプログラムを買った。「聞きどころ」(三宅幸夫)、ワーグナーの生涯(鶴間圭)、「トーキョー・リング」(長木誠司)、茂木健一郎と山崎太郎の対談など充実している。わたくしなどは、字幕と舞台とオペラグラスを入れ替わりながめ、ストーリーを追うだけで終わってしまうレベルなので、事前に解説を読み込んでから観劇すべきということが十分わかった。料金の関係で、席は2階の後方なのでなおさらである。次回から、できる範囲で予習するようにしたい。

☆わたくしがオペラを見始めたきっかけは「ハンナとその姉妹(ウディ・アレン 1986年)で、建築家が3人姉妹の次女(ダイアン・ウィースト)といっしょにマノン・レスコーを観劇しながら、バルコニー席でじつに楽しそうに赤ワインをボトルで飲んでいたのを見たことだ。「ラインの黄金」は1幕4場、2時間40分の長丁場だった。幕間そのものがないので「幕間の一杯」を楽しむことはできなかった。
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