多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

定年後の人とのつながり

2018年08月05日 | 日記
「定年後の生活」シリーズは、これまでに2回掲載した。退職して初めて体験する失業保険のもらい方「失業給付・狂想曲(2017年4月25日)と 乏しくなった小遣いの範囲でいかにして展覧会やコンサートを楽しむかという「格安コンサートと展覧会の歩き方(2017年8月25日)である。
今回は、これまでの人間関係が途絶えた状況下、どのように「人とのつながり」を築き、もっと端的にいえば人との会話をどのように成立させるかという問題を取り上げる。
高齢者にとって、人や社会とのつながりは重要だ。
会社に所属し毎日通っていれば、たとえ「おはようございます」「お疲れさま」といったあいさつに近い会話を含め、日常的にコミュニケーションがある。しかし退職後は、会社の人間関係がなくなる。下手をすると数日間、コンビニなどレジでの会話以外だれとも話をしていない、心のなかでの自分自身との対話のみということも現実に起こる。わたしのように一人暮らしの高齢者だけの問題だと思っていたが、家族のいる友人でも、奥方との会話は自分自身との対話の延長なので、同じ状況だと言っていた人もいる。「自分と同じことを考えている人がほかにもいたとは」と驚かれてしまった。
なお高齢者でも働いている人はもちろんいるが、それは「高齢者の仕事」という項をつくってそちらで詳しく論じたい。
社会運動や趣味の「サークル」、学校などの「同期会」もあるが、ここでは、主として地域の人とのつながり、地縁について述べる。

この春「定年が楽しみになる!オヤジの地域デビュー」(清水孝幸 東京新聞出版部 2018年3月という本を読んだ。
50歳を過ぎた著者(1962年生まれ)は、定年後の居場所を探そうと、地域での活動を始める。
内容は、1 サークル編(仲間づくり 社教の将棋サークル、スポーツクラブのカヤック体験、アロマスプレーづくり、握りずし教室など、区民カレッジや講座受講をきっかけにサークルに参加して仲間づくりをした体験談)、2 趣味講座編(学ぶ・習う  男の料理、菓子づくり、ヨガ、区民マラソンなど)、3 地域のイベント編(楽しむ 銭湯、マンションの防災訓練、終活セミナー、ラジオ体操、国際交流サロンでのもんじゃ焼きづくり、地区防災訓練など)、4 ボランティア編(役に立つ プレディー、絵本セラピー、街の清掃、高齢者施設のボランティア体験など)から成る。巻末の寺脇研氏の解説には「さまざまな趣味を獲得していくうちに、清水さんはボランティア活動に入っていく。それが生涯学習の最大の効用なのである」と記されている。
たまたま同一区内在住で、同じ社教(社会教育会館)を利用しているせいもあり、同じようなことをしているものだと感じた。
たとえば社会教育会館、区民カレッジ、区内銭湯などの「場」の利用、認知症ボランティア、区民マラソン、終活セミナーなどイベントへの参加は同じようなことをしているなあ、と感じた。だれも、思いつくことは同じということだろう。
わたしはあまり利用していないがシニアセンターや女性センター・ブーケに行ったこともある。また本書を読んで刺激され、盆踊りの練習やさくらんぼ種飛ばし大会(友好都市・東根市との共催イベント)には初めて参加してみた。またどうやら下町はお祭りやイベントが盛んなようで、桜の花見、祭り、花火、盆踊り、サマーフェスティバル、子ども歌舞伎など地域参入の糸口となるイベントは数々ある。ここに書かれていないものでは、秋の「まるごとミュージアム」や築地はしご酒というイベントがある。まるごとミュージアムでは会場の主宰者やスタッフと話をしたり、はしご酒では店のスタッフや客から珍しい情報を得ることもある。

本願寺の盆踊り。外国人観光客の参加も多い
しかし著者との違いもある。著者は、実際には定年前の現役世代で、平日日中の活動をまだできる状態にないことと、相対的には「若い」世代なので、「定年後」の実態と異なる点がある。
たとえば年齢の関係で著者は利用していないようだが、シルバー人材センターやシルバーワーク中央、敬老館の風呂、平日昼間のプール教室は、地域の方との会話のチャンスの場でもある。
シルバーでいっしょに働いた同僚と休憩時間に出身地やこれまでの職歴などの身の上話をすることは自然のなりゆきだ。また、風呂では男性とはほとんど話はしないものの上がってからお茶を飲む場所があり、そこで女性も交えて世間話をするとか、プール教室で親しくなった人と、近くの居酒屋で待ち合わせ一杯やることもある。
また住んでいるところが地元なので、別の場で知り合った人と別の場で偶然出会いびっくりすることもある。
本書の冒頭のあたりに「小学校のボランティアで仲よくなった男子と街で出会い声をかけられた」ことや「マラソン大会に出たとき将棋サークルのメンバーが応援してくれた」といった話である。わたくしも、たまたまシルバー人材センターの仕事をいっしょにやった人と銭湯で再会したことや、合唱サークルでお世話になった方と、区民カレッジで同じグループになり奇遇にびっくりした体験がある。

高齢者にとって自治体の「おしらせ」は情報の宝庫だ
このようなきっかけ探しに「区のおしらせ」など自治体広報紙は宝の山だ。わたしの区では月に3回発行されうち2回は新聞折り込みだが、毎月1日号は公共の場所に取りに行く必要がある。かつてサラリーマン時代には新聞だけでも見るのに精いっぱいで、区報や都報は大見出しだけ見て捨てていた。その他、都の広報、都議会だより・区議会だより、購読新聞社の広報紙、地域新聞などもサラリーマン時代に比べると格段に細かい部分までながめるようにしている。たとえば都市計画審議会の傍聴広報が出ていて、傍聴しずいぶん充実した議論をしていることを知り驚いたこともある。
わたくしも2回しか参加していないのだが、2か月に一度築地居留地研究会という地域の公開講座が開設されていることを「おしらせ」で知った。おそらく郷土史研究会は全国どこでもあると思われる。ただしこの会は地域限定ではなく、横浜、神戸など全国の居留地とも連絡を取り合っているようなので幅広い「趣味のサークル」のような面もある。知識欲も満たせるし、人脈がいろいろ広がる可能性がある。

築地居留地研究会定例報告会
ただ、天気の話や世間話だけするのも何だし、本当は考えの近い人と少し話ができると理想だと思うこともある。これは地域の人との偶然のつきあいのなかで相手を見つけるのは、かなり時間がかかりそうだ。わたくしの場合、たまたま地裁や国会前との距離が近いせいもあり、裁判所の傍聴席や報告集会でよく会う方も少しずつ増えてきた。また官邸前集会で前に住んでいた地域の知人と少し情報交換することで満たしている。

なお、著者の清水氏はこの本の発刊直前に東京新聞政治部長に就任しているので、いまはこの本で書いていたころの「日常」とは生活が変わっているだろうと考えられる。いわずもがなだが、わたくしは著者とは一面識もない。
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