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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

文部科学省「情報ひろば」

2008年04月24日 | 博物館など
今年3月26日にオープンした文部科学省「情報ひろば」を見た。地下鉄虎ノ門の駅から外に出ると、文科省は新築されたはずなのに昔と同じ7階建ての古い建物があり、いったいどこが新庁舎なのかと一瞬戸惑う。1933年に建築された旧庁舎は改修・保存して、2007年登録有形文化財に登録され、33階建て超高層の新庁舎はその後ろにそびえ立っている。「情報ひろば」は旧庁舎に設置されている。             
3階にある展示室は旧大臣室(復元)のほか、教育、スポーツ、科学技術・学術、文化の4室から成る。室内のジャンル分けも含めほぼタテ割り組織に沿っている。見ごたえがあるのは文化庁管轄の「文化」の部屋だ。
重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品、アイヌのアハルシ(樹皮衣)やトンコリ(琴のような楽器)、キトラ古墳や高松塚古墳の保存修復事業で使う宇宙服のような作業服や手袋、文化庁買上げ優秀美術作品などが並んでいる。もちろん施策の例示として各2~3点展示されているにすぎないが、14代柿右衛門の濁手枝垂桜文鉢、北村昭斎の瑞鳥唐花文螺鈿箱、長沢明「トラとワナ」、加来万周「光路」など見事な作品を鑑賞することができる。
スポーツの部屋には、谷亮子の黒帯と柔道着、土佐礼子のウェアとシューズ、長野オリンピックのメダル(片面が七宝焼き、片面が漆の蒔絵のなかなか見事な工芸品)などが展示されており、最も人気を呼びそうだ。
科学技術・学問の部屋には、科学技術の歩みパネルやロボットスーツHALが展示されている。
メインの教育の部屋には、年代別学校給食のメニューが展示されていた。明治22年はおにぎり、塩鮭、菜のつけもの、昭和20年代後半は、コッペパン、ミルク(脱脂粉乳)、鯨の竜田揚げ、キャベツ、昭和60年代前半はビビンバ、牛乳、ナムル風つけもの、ヨーグルトゼリーなどどんどんおいしそうになってくる。最近では郷土食といって、鯖江(福井)では若狭カレイ、長野では笹ずしもあるそうだ。

左上が明治22年のメニュー、上段から下段へと年を下り最後は右下の昭和60年代前半
教科書もいくつか展示されている。盲学校中学部の点字数学ははじめてみた。戦前の国定国語教科書も三種あった。1917年(大正6年)シベリア出兵のころの「尋常小学国語読本」(ハナハトマメ)、1932年(昭和7年)満州事変のころの「小学国語読本」(サイタサイタサクラガサイタ)、1941年(昭和16年)国民学校期の「ヨミカタ1」(アカイアカイアサヒアサヒ)である。「ヨミカタ1」の表紙には鳥の巣と草花のイラスト、本文はカラー印刷と戦後の教科書につながるデザイン重視のものだ。ただ本文は「ヘイタイサン ススメ ススメ」、「ヒカウキヒカウキ アヲイソラニギンノツバサ ヒカウキハヤイナ」では軍用機が空を舞っていたり軍艦が浮かんでいたり、小学校1年入学当初から軍事教育かとちょっとギョッとさせられる。最後は桃太郎だが、鬼が島から戦利品を積んで戻る一行を迎えるオバアサンは日の丸の小旗を振っている。小国民を育成した教育の影響力は大きく、責任は重い。

左から1917年、1941年、1932年の小学校1年生国語の国定教科書
戦後になると文部省編纂で「みなさん、あたらしい憲法ができました。そうして昭和22年5月3日から私たち日本国民は、この憲法を守ってゆくことになりました」で始まる「あたらしい憲法のはなし」(1947.8)も展示されている。この本は中学1年の教科書として使われたが、現在の文科省の施策を考えると驚きだ。「五 天皇陛下」を除きいまでも使ってほしいくらいだ。 
中庭には、岐阜県揖斐郡春日村で産出した、有名な「さざれ石」がある。石灰分を含む水が乳状体となり地下で小石を集結して次第に大きくなる、学名は石灰質角礫岩だそうだ。

君が代の歌詞になっている「さざれ石」
明治神宮が国家神道の総本山であるように、文科省はいまも昔も、まさに国家イデオロギーの総本山であることがよくわかる。壁面に展示されている「教育の歩み」年表は、701年「大宝律令制定による大学寮と国学の設置」に始まり、最後は、2006年末の教育基本法改定、教育再生会議発足、2007年5月の教育再生三法成立で締めくくられていた。安倍晋三・元首相や中川昭一・元政調会長の大きな置きみやげであった。
住所:東京都千代田区霞が関3-2-2
電話:03-5253-4111(内線2170広報室)
開館日:月曜日~金曜日
開館時間:10時~18時
入館料:無料
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