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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

10年目のラ・フォル・ジュルネ

2014年05月25日 | 日記
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンは今年で10回になる。毎年、ベートーヴェン、モーツァルト、シューベルト、バッハ、ショパンなどの大作曲家をテーマに掲げてきた。今年はヴィヴァルディからラヴェルまでこれまでの9人に今年ナントで取り上げたガーシュウィンを加え、かつそのメンバーが友人や先生を連れてくるという設定になっていた。たとえばモーツァルトはハイドンを、ショパンはリストを連れてくるという具合だ。ついに観客を呼べる作曲家が底をついたということかもしれない。

わたしがこのコンサートに来たのは3回目だが、昨年のブログに「この音楽祭は無料のプログラムが充実している」と書いた。わたくしが考えるようなことはどうやらみんな考えるようで、無料プログラムは60分前に行ったのでは遅いようだった。たとえば映画「母・アルゲリッチの世界」やマスタークラスは1時間前でも満席で入場できなかった。
今年見たり聴いたりしたのは下記の5つである。

The Pink BAcCHus!
第1バイオリンもチェロも4プルトしかない小さいオケ。若い人もいれば年輩の人もいる。女性は赤や紫、白など派手なドレス姿の人が多い。どういう団体なのかと思ったら、2009年のラ・フォル・ジュルネでバッハの「マタイ受難曲」を演奏しそれをきっかけに結成した楽団だそうだ。それで名前にもバッハが隠されている。ただこの日の演奏はベートーヴェンの交響曲5番終楽章だった。
この演奏は途中から聞いたので、もちろん立ち見だった。

エロイカ木管五重奏
丸の内ブリックスクエア1号館広場というところで木管五重奏のコンサートがあった。赤煉瓦の三菱一号館美術館の中庭だった。開演10分前に着いたがもちろんイス席はなし。
五月のさわやかな風、新緑の木陰で、ヨハン・シュトラウスの音楽、「春の声」「クラプフェンの森にて」「ラデツキー行進曲」を聞いた。さわやかな気候と情景にぴったりだった。ただ少し風が強く、楽譜が飛ばされそうで演奏者にはちょっと気の毒だった。楽器紹介がかなり詳しく、たとえばオーボエのリードはせっかく削ってつくっても寿命はわずか3日など、知らない話も多く有意義だった。
この団体は10年連続でラ・フォル・ジュルネに出演しているが、今年はじめて「エロイカ」という名前がついたそうだ。
最後の「ラデツキー行進曲」では観客の手拍子が響いた。3-4歳の女の子が体でリズムを取りながら手拍子を打っている姿がとても可愛らしかった。

一番右が民族楽器のガルドン
ムジカーシュ
この日の「当日発表プログラム」はハンガリー民族音楽のクループ「ムジカーシュ」だった。バイオリン2、ビオラ1、ベース1の4人組。そのほか持ち替えで、ガルドンというチェロのような楽器や、ロングフルートという1mくらいあるたて笛、太鼓も登場した。ガルドンは250年前の民族楽器だそうで、ギターのように斜めにかかえ、胴を手でたたく打楽器として使用していた。
音楽は、リズムが強烈で、ジプシー音楽はこんなようなものかと思わせるものだった。聞いたことがあるものではフィドルに似ていた。舞踊にぴったりで、ハンガリーの舞踊なのかどうかはわからないが、飛び入りで男女6人が舞台下で踊っていた。いかにも楽しそうな「民衆」の音楽だった。

エマニュエル・シュトロッセのマスタークラス
今年、唯一聞けたマスタークラスは、ピアノのエマニュエル・シュトロッセによるラベルの「鏡」第4曲「道化師の朝の歌」だった。開演後30分ほどして行くと、キャンセル待ち(途中で退席した人の穴埋め)で入場できた。
生徒は学生ではなく、国立音大出身の女性だった。
「けして走らない」「走らず、たっぷり目に」とつねにリズムを注意していた。また「きれいになりすぎない」という指摘もたびたびあった。
「ピアノの部分であってもパワーは変わらず、遠くのお祭りが聞こえてくるように」「オーケストラのように響きを聞かせる」など表現が興味深かった。

●広瀬悦子のピアノ
昨年は5000人の巨大なホールA(プーシキン)のコンサートを聞いたので、今年は最小のホールをと考えG409(サンド)153席のホールを選んだ。7時半開演なので10分前に行くとまだ開場もしていない。開演時間になりやっと開場した。しかしまだ調律の続きをやっていた。
終演予定の20時15分すぎになり出ていく人数人、演奏が終わった20分過ぎになるとアンコールは聞かず走って会場をあとにする人が十人くらいいた。たぶん新幹線の時間に間に合わなくなるといった事情だろう。梶本がやっているにしてはお粗末な運営だと思った。
さて肝心の演奏だが、曲目は「ディアベッリのワルツによる変奏曲」、ウィーンの出版商ディアベッリが自作のワルツをもとに1819年に多数の作曲家に変奏曲を作曲してもらったというものだ。作曲家はツェルニー、ホフマン、フンメル、リストなどの名が入っている。ただし「有名な」作曲家と同一人物かどうかはわからない。合計26人だが、これで全部ではなく、1時間ほどおいてさらに同じくらいの変奏曲24曲が続いた。このほかベートーヴェンが1人で33曲も作曲したが、それは今回は演奏されない。

アンコールはリスト「ラ・カンパネラ」。迫力のある演奏だった。広瀬さんの略歴をみると、「1999年、マルタ・アルゲリッチ国際コンクール優勝」とあった。「道理で迫力がある」と思った。
見かけがだれかに似ていると思ったら、壇蜜さんだった。

お祭りなので、そんなに感動する演奏には出会わなかったが、いわゆる「今日は一日クラシック音楽三昧」で、楽しい一日を過ごせた。
この音楽祭は、ひょっとするとエリアコンサートなどアマチュアやそれほど有名でないプロの演奏のほうが楽しめるのかもしれない。声楽、ピアノ、金管合奏、弦楽四重奏などいろんなプログラムが取り揃えられている。  
ただ半券をもっていないと入れないものもたくさんあるので、最低ひとつは有料コンサートを取らないといけない。そのコツがまだよくわからない。今年はフォーレのレクイエムを聞きたかったがチケットが取れなかった。
また、待ち時間や移動時間も結構あるが、それも含め、屋台のワインを飲む時間も含めてお祭りの一場面として雰囲気を楽しむのがコツなのかもしれない。
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