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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

「住吉の長屋」の実物大展示を見た安藤忠雄建築展

2008年12月16日 | 博物館など
12月2日乃木坂のギャラリー間(ま)安藤忠雄建築展をみた。展示の目玉は「住吉の長屋」の実物大模型である。3階のテラスにコンクリート打ちっ放し(展示はパネル)総2階の直方体の箱が立っていた。外壁には数々の安藤の作品写真が掲示されていた。

この建物は1976年2月大阪市住吉区に、狭い敷地の中央を中庭として建築され、屋内なのに星がみえ風を感じる住宅である。「自然との共生」をコンセプトに、「安易な便利さより、天を仰いで風を感じられる住まいを優先した」とのことだが「こんな住みにくい家に30年以上住んでいただき感謝している」という安藤の謝辞があった。本当に住みにくそうな家だった。1階の渡り廊下は屋根が付いているのでまだよいが、2階は隣の部屋に行くにも隣家や離れに行くのと同様なので雨の日には傘がいる。頻繁に出入りするなら冷暖房費がバカにならないと思われる。こういう家はせめて3階建て以上で考えるべきだろう。
展示のコーナー・タイトルは「記憶の継承」「創造の門」「大地の幾何学」などとなっている。本当に安藤はコピーの名手だ。「記憶の継承」は「15世紀に建てられた歴史的建造物『海の税関』を現代美術館に改造するプンタ・デラ・ドガーナ(イタリア、ヴェニス 2009竣工予定)の説明で、「建物本来の潜在力を活かしながらいかに現代性のある空間を生み出すか」が課題だった。
「創造の門」は、メキシコ第二の産業都市モンテレイの大学キャンパスの新校舎「モンテレイ大学RGSセンター」(計画中)の説明で「未来を夢見る若者を迎え次のステップへと送り出す」ことを基本デザインにしている。また「大地の幾何学」は、バーレーン遺跡博物館」の説明で「幾何学、数学的美学への強い執着を見せるアラビアの造形文化への敬意の表現」とのことだ。
「風を形にする」をコンセプトにしたアブダビ海洋博物館(アラブ首長国連邦 計画中)は、海風を受けて膨らむ船の帆の形をした建物の模型が陳列されていた。その他、「幾何学における思考」(六甲の集合住宅[第1期1983])、「光の空間」(光の教会[大阪府茨木市1989])、「そこにしかできない建築」(フォートワース現代美術館[アメリカ・テキサス州2003年])など、じつに見事なキャッチコピー(コンセプト)が並んでいた。
最後の「海の森プロジェクト」はお台場沖の中央防波堤内側埋立地に植樹をし、晴海から銀座、霞が関、信濃町、明治神宮へと「風の道」をつくろうというものである。「緑の東京10年プロジェクト」の一環で、東京オリンピック開催の2016年に概成予定とある。
わたしは安藤の建築作品がどうも好きになれない。東京都庁舎や国立代々木競技場を設計した丹下健三のように権力におもねる姿勢がいやなのかというと、黒川紀章の国立新美術館や磯崎新の水戸芸術館、高山英華や南條道昌の筑波研究学園都市は嫌いというわけではない。
ウディ・アレンの「ハンナとその姉妹」で次女ホリーと三女リーが建築家の車でマンハッタンのビルを見て回るシーンがある。建物を「ロマンチック」「ハンサム」「趣味が悪くてぶち壊し」などと評する。そういう意味では、半分以上が地下に埋まった建物とか船の帆の形をした建物などこの展覧会でいくつかの模型をみてこの建築家の作品は「小賢しい」という表現が合っている。
ただし、「住吉の長屋」のように機能性が悪いとは思わない。渋谷駅も兵庫県立美術館も表参道ヒルズも通行人としてはしごく快適である。家屋も、安藤の弟子に設計してもらった知人の家を見せてもらったことがある。やはりコンクリート打ちっ放しの3階建て、斜面を生かし2階の浴槽から大阪湾方向を臨むながめがすごくよい家だった。リビングも広くて快適だった。

このビルは1階がセラトレーディングのショールーム、2階がTOTO出版の書店(ブックショップTOTO)、3・4階がギャラリー・間になっている。ショールームの水栓金具、タオル掛け、シャワーヘッドのデザインはかっこいい。しかし価格が高い。タオル掛けでも最低3万円、シャワーバーのセットなら20万以上する。照明器具と同じような値付けなのだろうか。

☆社会人になったころ、ほんの短いあいだ東陶のPR誌「東陶通信」の手伝いをした。高沢順子の「お魚になったワ・タ・シ」(1973)と戸川純の「おシリだって洗ってほしい(1982)の間で宣伝課がとても元気だった時代だ。といっても覚えているのは特集「おしっこの科学」の原稿を大学病院の先生のところに取りにいったことと読者アンケートをやったことくらいだ。工務店、設計事務所やサブコンの担当者向けということもあり、三機工業や斎久工業、大林組の方に面談調査した。
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