できるだけ歩く鳥

サラリーマンエンジニアによる日常メモ。たまにMac偏り気味。

アフォードされてるとバレたらダメなんじゃん?

2008-04-30 02:41:58 | design
大学入学後サークル入って、バンドやり始めたばかりのころの話。
練習後の片付け時にマイクケーブルを巻いていると、クセがついてしまっていてねじれてしまいがちなマイクケーブル(以下ケーブル)に出くわす。普段から使われ方がよくなくて、八の字巻きされずに使われ続けてるケーブルとかで、こういうのは無理に矯正しようとしても、なかなかきれいに巻けない。

そんなときに先輩が教えてくれた言葉がある。
「ケーブルが巻かれたいように巻いてあげればいいよ」
言われた通り、ケーブルがねじれたいように巻いてあげたらすんなり巻けた。これ聞いたときは目から鱗。今でも覚えてる。そして今思うと、ある意味「アフォーダンス」の話。

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アフォーダンスとは:
アフォーダンスとは、もともと知覚用語であるが、Normanがインターフェイスの用語として定着させた。物体の持つ属性(形、色、材質、etc.)が、物体自身をどう取り扱ったら良いかについてのメッセージをユーザに対して発している、とする考えである。動詞はサ変活用(?)で「アフォードする」などという使い方をする。

使いやすさ研究所 用語解説/アフォーダンス
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ケーブルの「こう巻いて」というアフォーダンスの認知能力が僕にはなかったが、先輩にはあった。この差は知識とか経験とかに根ざすと思う。本来「アフォーダンス」って言葉がデザイン系の話に出てくるときは、無意識に働きかけるような話だったりするので、こういうのはアフォーダンスとは言わないかもしれないけれど、最近の幅広く使われちゃった「アフォーダンス」で考えれば、これもアフォーダンス。

このクセのついたケーブルの巻き方に関するアフォーダンスは、巻きやすさ(片付けやすさ)だと思って認識すると、クセに逆らわずに巻くことに。それがよくないねじれまくりのクセだったとしても。
でも、ケーブルの正しい使われ方としてのアフォーダンスだとすれば、八の字巻きしてあげることこそが「ケーブルが巻かれたいように巻く」ということにもなる。

なぜかというと、ケーブルにとっても、それを使う人・環境にとっても、総じてよいのは八の字巻きだ(と言われている)から。ってことは「クセに逆らわない」というだけでは、アフォーダンスを誤って認知してしまう可能性があるとも言える。
いや、アフォーダンスを認知できなかった初心者の僕のような人がいて変なクセをつけてしまったがために、ケーブルは本来のアフォーダンスを失ってしまい、歪んだ巻きやすさアフォーダンスを発する存在になってしまったのかもしれない。そうすると、経験者でもそう認知するしかなかった、ということかも。

と考えると、ケーブルは最初から八の字巻きのクセがついた状態で売っているべきなのかも、と考えることもできる。そうすれば、知識や経験に根ざすアフォーダンスにあまり依存せずに済むようになりやすいわけで。(本当にそんな売り方しろとは微塵も思ってないけど)

つまるところ、やはりアフォーダンスってのは後天的学習により認知可能になるようなものとしてではなく、無意識に働きかけるべきものとしてあれこれ議論するのが、本質なんだろうなと思う。


僕はユーザーインターフェース屋とか、デザイナーとか、そういう類の仕事はまったくしてないのになにを唐突にこんな話を書いているのかというと、こういうの考えるのが好きだというだけです。


ケーブルが巻かれたいように巻いてあげればいいよ、と先輩が僕に教えてくれたのはもう10年以上前。10年以上前の言葉が今アフォーダンスの話と結びついてよみがえったわけですが、そんな僕は先輩よりももう6年も長く生きているのです。

やすらかに。