フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

鎌倉高校前駅にて

2005年12月13日 10時26分52秒 | 第9章 恋愛翻弄編
トオル君は車を路肩に寄せると、助手席のドアを開けた。
「日本に来てここの景色のあまりの美しさに感動したんだ」

トオル君の歩調に合わせて必死に小走りになっている私に気付いて、彼は歩調を緩めた。

「日本に来て?」
「あ?!うん。ここに来る前はアメリカにいたんだ」
「アメリカ?」

トオル君は小さく頷くと、古い木造りの駅へと私を連れて行った。
「鎌倉・・・・・・高校前、駅?」
トオル君はそのまま改札口を通り抜けた。
「車掌さんは?切符は??」

トオル君は微笑んで、あっけらかんと答える。
「車掌さんは江ノ電を運転中。切符は乗らないから買わない」
「トオル君。不良記録更新中ですね」
「そのセリフは道路側を見てから言って下さい」

トオル君の指す方向には、穏やかな冬の光を弾く広々とした海が広がっていた。
「うっわぁ!すごい!!すごい!!」
私はあまりにも美しい景色に「すごい」以外の言葉が思いつかなかった。

「いいなぁ。鎌倉高校の人達は皆こんな美しい景色を毎日見ながら高校に行けるんだ。
私も、ここに転校しようかな~」
「それには、ここも良くないと入れないよ」
トオル君は頭を指差して嬉しそうに笑った。
「イジワル!」と上目遣いで怒る私に、彼は「ごめん」と私の肩を抱く。

トオル君の隣りは心地良い・・・・・・。

かずにぃの愛が奪う愛なら、トオル君の愛は与える愛だ。
かずにぃに奪われて枯渇し、何もかも失っていく私に、彼は愛と言う尽きることの無い泉を私に与えてくれる・・・・・・。

駅のベンチに腰掛けトオル君の肩にもたれながら海に浮かぶ船の影を見つめていた。
そっとトオル君の唇が重なる。

「ハルナ、君と一緒に来れて良かった」
トオル君の声が、海の波の音に乗って心地良く私の耳に響いた。




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