フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

謎の男

2005年10月21日 02時12分06秒 | 第5章 恋愛前夜編~トオルの章~
この男、ヒューバート・キンケイドは、一見、慇懃な態度で僕に質問を始めた。

「トール・フジエダ。君は、3年前にある事故機に乗って日本から戻ってきたんだよね」

キンケイドの物腰は柔らかだった。
だけど、彼のその態度はかえって僕に警戒感を抱かせた。

「・・・・・・」
「だんまり、か。まぁ、いい」

キンケイドはベッドサイドにパイプ椅子を引き寄せると、背もたれをくるりとこちらの方に向け、椅子に跨り、背もたれを抱き抱えるようにしながら、まんじりと僕を見やった。

「その時に、乗客は皆一様に可笑しな事を言っているんだ。・・・天使がいたってね」
「・・・・・・」
「その彼らの言う容姿が、とある誰かさんの容姿に正にピタリと一致するんだな。これが」
「・・・・・・」
「またまただんまりですか」
彼はヤレヤレと言った感じで両手を上に上げ、肩を窄めた。



僕は努めて平静を装い、表情を読み取られまいと下を向いていた。

彼は上着の内ポケットに手を忍ばせ、2枚の写真を僕のベッドの上にポンと放り投げた。

その写真には、僕、そして両親がそれぞれ飛行機から降りてきた航空機事故当時の様子が写されていた。
キンケイドは、写真をこつんこつんと人差し指で叩きながら質問を続けた。

「僕は君に非常に興味を持ってね。・・・で、調べたんだよ。
だけどね。君の名前も、ご両親の名前も、搭乗者記録には無かった・・・。
どうしてだろうね?」

僕は驚いて、思わず顔を上げてしまった。
キンケイドは張っていた網に獲物を捕らえたと言わんばかりのくつくつとした笑いを漏らした。

「さて、ここからが、質問の本題だ」

彼は確かに笑っている。
でも、何だろう。この違和感は・・・。
ずっとそう思っていた。

その疑問が今解けた。
そう、彼は一度も笑ってなんかいなかった。
ただの一度も、彼の目は・・・・・・。
キンケイドはゆっくりと立ち上がると、今まで侮蔑を含んだ態度とは別人のような真摯な口調で僕に語り掛けた。

「君は一体、何者なんだ?どうして政府は君を、君達を匿うんだ?」



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