フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

アメリカ医療の愁い

2006年01月04日 11時19分05秒 | 第10章 恋愛分岐編
キンケイド達の身を案じつつ、来た道を南下した。
車は不安材料を抱えつつも快適に街路樹を駆け抜けていった。




1990年代、アメリカの病院はひとつの間違いを犯した。
当時、慢性的に不足している看護婦の数を埋めるべく、各病院は挙って無資格の看護援助者の採用を進めた。

当初は、人手不足の解消のための採用と言った意味合いが濃かったのだが、看護婦よりもとても安い彼らの雇用賃金は雇用する側、即ち病院側にとっては魅力的だった。

そこにC&H社は目を付けた。
地獄からの冷血なコストカッター(COLD&HELL社と世間からの揶揄)の異名を取るC&H社CEO(最高経営責任者)グレアム・マッカーシーは無資格者の採用に力を入れ、正規看護婦の露骨な肩叩きを始めた。

その反対派の急先鋒となっていたのが、今は退職した当時の婦長達だった。
無資格者による数々の医療ミスとサービスの低下を憂えた彼女達は、ストライキを立案し、組合の結成を呼びかけた。
そうした彼女達の動きを察知したマッカーシーはある時は、懐柔策を持ち出し、それでも頑なに受け付けない者には、マフィアもここまではやるまいと言うような制裁を加えていったと言う。

アメリカの大規模な病院では医者が出資者となることを許容していたため、多くの医者が競うようにC&H社への出資を行い、利益を手にしていた。

一番の犠牲者は何も知らずに最低の医療行為に、従来よりも高い治療費を払っている患者自身だった。

そのC&H社の魔手が、我が社・・・・・・AMH社へと伸び、その巨大な病巣へと引き摺り込もうとしている・・・・・・。


「そんなことさせない!」
僕は勢いアクセルを踏んだ。

・・・・・・しかし、車はプスンプスンと音を立てて止った。

「・・・・・・っ、くっそぉ!」
僕は慌てて車から降りてトマス・ハザウェイの言った個所を蹴ろうとハンドルから手を放し、視線を車の扉に移した。
その時、ふとある計器に目が止り、がっくりと肩を落とした。

「・・・ガソリン、入れといて下さいよ・・・・・・。ハザウェイさん・・・・・・」



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