バイクから降りると、彼女に手を差し出し礼を述べようとした。
「有り難う。えぇ・・・っと」
「グレイスよ。グレイス・ハザウェイ」
「有り難う。グレイス」
グレイスは微笑むと力強く握手を返した。
「お礼はまた今度改めて」
「・・・・・・じゃ、今はこれでいいわ」
彼女はそう言うと僕の肩に手を回し、唇を重ねてきた。
「な・・・・・・!?」
慌てて振り解いた僕の顔を彼女はいたずらっぽい目で覗き込みながら「ふふふ」と満足そうに笑った。
グレイスはバイクに跨ると、エンジンを掛け、ヘルメットを被りながら叫んだ。
「マッカーシーは本当に卑劣な奴よ!気をつけてね!!
じゃ、生きていたら会いましょう!」
呆気に取られたとは正にこのことだ。
人の生死をあっけらかんと忠告できるとは・・・・・・。
「生きて還るさ」
僕はリンカーン記念館の白亜の神殿に向かって一歩一歩力強く歩を進めた。
「キンケイドォ!ケッチャーム!」
夕暮れ迫るキーンと冴えた建物内に声が響き渡った。
・・・・・・何の返答もない。
「随分、もったいぶって待たせるんですね。トール・フジエダ」
背後からの甲高い男の声に驚き後ろを振り返った。
40代前半と思しきその男は、ダークスーツを身に纏い、神経質なまでに整髪料で撫で付けられた赤味がかった栗色の髪を幾度も忙しなく掻き揚げた。
「トール・フジエダ。ご高名は何度か。直接こうしてお目に掛かるのは初めてですが・・・・・・。
初めまして。私は、グレアム・マッカーシーと申します」
慇懃な挨拶をした後、マッカーシーは握手を求めてきた。
僕がその手を無視すると、彼は引っ込めたその手で鼻の上に乗せた銀縁メガネを少し持ち上げながら、その奥に潜む冷酷な目で僕を凝視し、冷笑した。
「あなたの大切なお友達は車の中でお休み頂いていますから、ご安心を。
まぁ・・・・・・そのままあの世までお休み頂くか、仲良く手を繋いでお帰り頂くかはあなた次第ですがね」
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「有り難う。えぇ・・・っと」
「グレイスよ。グレイス・ハザウェイ」
「有り難う。グレイス」
グレイスは微笑むと力強く握手を返した。
「お礼はまた今度改めて」
「・・・・・・じゃ、今はこれでいいわ」
彼女はそう言うと僕の肩に手を回し、唇を重ねてきた。
「な・・・・・・!?」
慌てて振り解いた僕の顔を彼女はいたずらっぽい目で覗き込みながら「ふふふ」と満足そうに笑った。
グレイスはバイクに跨ると、エンジンを掛け、ヘルメットを被りながら叫んだ。
「マッカーシーは本当に卑劣な奴よ!気をつけてね!!
じゃ、生きていたら会いましょう!」
呆気に取られたとは正にこのことだ。
人の生死をあっけらかんと忠告できるとは・・・・・・。
「生きて還るさ」
僕はリンカーン記念館の白亜の神殿に向かって一歩一歩力強く歩を進めた。
「キンケイドォ!ケッチャーム!」
夕暮れ迫るキーンと冴えた建物内に声が響き渡った。
・・・・・・何の返答もない。
「随分、もったいぶって待たせるんですね。トール・フジエダ」
背後からの甲高い男の声に驚き後ろを振り返った。
40代前半と思しきその男は、ダークスーツを身に纏い、神経質なまでに整髪料で撫で付けられた赤味がかった栗色の髪を幾度も忙しなく掻き揚げた。
「トール・フジエダ。ご高名は何度か。直接こうしてお目に掛かるのは初めてですが・・・・・・。
初めまして。私は、グレアム・マッカーシーと申します」
慇懃な挨拶をした後、マッカーシーは握手を求めてきた。
僕がその手を無視すると、彼は引っ込めたその手で鼻の上に乗せた銀縁メガネを少し持ち上げながら、その奥に潜む冷酷な目で僕を凝視し、冷笑した。
「あなたの大切なお友達は車の中でお休み頂いていますから、ご安心を。
まぁ・・・・・・そのままあの世までお休み頂くか、仲良く手を繋いでお帰り頂くかはあなた次第ですがね」
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