フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

求める心

2005年12月09日 22時16分00秒 | 第9章 恋愛翻弄編
私達がこれから朝食を取ろうとした時、不意に玄関のチャイムが鳴った。
最初に受話器を取ったトオル君のお母さんは次第に困惑した顔になってきた。

静かに耳を傾けていたトオル君は彼女から電話を取り上げると、低く冷静な声で話し始めた。

「今回の件について正式なプレス発表の日程と場所は追って担当者の方から連絡します。
お引き取り下さい。今は何も申し上げることはない」

彼が何を言っているのか、私は全く理解できなかった。

プレス発表って?連絡って??

私は、さっきまでのトオル君とはまるで別人を見るような気がしていた。

はにかむトオル君・・・・・・。
優しいトオル君・・・・・・。
照れるトオル君・・・・・・。
困った顔をするトオル君・・・・・・。

どれも私が知っているトオル君の顔だ。
でも今のトオル君は・・・・・・そのどれでもない。
眼光は鋭く、堂々として、風格すら漂っている。

「分かりました。今、伺いますが、撮影はご遠慮願いたい」
トオル君の目には仄かに碧色の炎が揺らめいているような気がした。

「ハルナ、ごめん。直ぐ戻るから、二人と一緒に朝食を取っていてくれるかな」
そう言うトオル君の目はいつもの優しい目だった。

気のせいだったんだ。きっと。


「徹は普段学校でどんな感じなのかしら?」
「楽しんでいるんだろうか?」
「無理をしている様子はありませんか?」
「友達は出来たんだろうか?」

私は席に着くなり、ご両親から矢継ぎ早に質問を受けた。
だけど、私もすごく彼のことを知ってるわけじゃない。
学校の行きと帰りにちょっぴり会えるだけ・・・・・・。


もっと彼のこと知りたいなぁ・・・・・・


そっと溜息をつきながら、昨日の夜、私だけに見せてくれた彼の切ない表情と、私を求める指先を思い出して、私は真っ赤になったまま俯いてしまっていた。


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