フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

僕は君と出会った・・・

2005年11月27日 21時51分56秒 | 第8章 恋愛鼓動編
日本に帰国する前に僕は金髪を黒色に染めた。
「どうしたんだい。一体」
驚く両親を前に、「気分転換」とだけ答えた。
その上、目にあまり刺激を与えないためにサングラスまでしていたものだから、
「まるで変装しているみたいだね」と父は笑った。

日本の病院では直ぐに僕の目の診察が行われた。
やはり、4年前の目の怪我の後遺症との診断を受け、直ぐに目の手術が行われた。


手術後、許可を貰った僕は車椅子に乗って、サングラスを掛けると早速散策に出掛けた。
初夏とは言え、まんじりと汗の滲む、そんな暑い日の午後だった。
僕は、少しでも涼を取れる木の下で車椅子を止めると、一日も早くアメリカへ帰る事を考えていた。
日本の気候に上手く馴染めないものを感じていたし、取り分け、鬱陶しく纏わり付く湿気は僕の判断を鈍らせると感じたからだ。

喉の渇きをおぼえて、僕は自動販売機まで車椅子を動かした。
そして、お茶でも飲もうと自販機にお金を入れようとしたら、思いのほか位置が高くてお金を落としてしまった。

「大丈夫ですか?」
背後から女の子の声がして、掌に五百円玉を乗せて僕に差し出した。
「すみません」
「いえ。でも、ここ買いにくくないですか?」
不思議と安らぎを感じる温かな声の持ち主は、
「そうだ。ちょっと良いですか?」と言うと僕の乗っている車椅子をくるりと方向転換すると、小走りに食堂近くの自販機まで押して行った。

「ほら!私もね、さっき見つけたんですけど、ここの自販機だけスライダーみたいなのが付いてて、車椅子でも楽々買えるんですよ」
「凄いね」
「でしょ?ところで何を飲みますか?」
「お茶だったら何でも」

女の子は、白く細い手を伸ばして、ボタンを押した。
「はい。どうぞ」


君はそう言うとはにかむように笑って目の前に現れ、僕にお茶を差し出したね。
僕はその時、ハルナ・・・、初めて君に出会ったんだ。


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