【楢葉町(福島県)】東京電力は4日、東日本大震災で事故を起こしたを福島第1原子力発電所から10キロ離れた第2原発を廃棄する可能性を初めて示唆した。
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第1原発を視察した東電の下河辺和彦会長は、第2原発に対する地元の根強い反対意見を「受け止める」と述べた。第2原発は2011年3月11日の大地震と津波で被害を受けたが、第1原発のような原子炉のメルトダウン(炉心溶融)は免れた。
下河辺会長は視察終了にあたり、同行した記者団と会見し、「複数の地元首長から第二を含め、きっちりした廃炉を要望する申し出を受けた」と述べ、「そのような気持ちで思う人があることは受け止める」と語った。
同席した東電の広瀬直己社長は、第2原発を廃棄するかどうかは「国民の議論、地元の声、それらを踏まえて考えなければいけない」と述べた。下河辺会長と広瀬社長は、まだ決定は一切していないと強調した。両氏はともに6月に就任した。
福島第2原発を放棄する場合、資金難の東電にとって難しい選択になる。東電は債務超過状態を回避するため政府から1兆円の資金を受け取る。政府は福島第1原発事故の被害者に対する賠償金支払いを肩代わりしたが、東電は第1原発の安定化と廃炉に伴う費用のほか、失われた発電能力を補うため新たな火力発電所のコストを担わねばならない。
第2原発の原子炉は比較的新しく、建設してから25~30年にとどまっている。同原発を廃棄する場合、東電には資産償却や廃炉費用で2000億円以上の負担がかかる、と経済産業省は推定している。
こうした巨額の支出をすれば、2013年度に黒字化するとの東電の計画は頓挫し、日々の操業のため不可欠な銀行融資も危うくなりかねない。下河辺会長は、こうした潜在的な資金負担にどう対応するのか言及しなかった。
それでも外部の大半の専門家は、福島第1原発事故のあと福島県民の多くが原子力に反感を募らせているだけに、第2原発の再稼働は困難だろうとみている。日本原子力研究開発機構で以前上級研究主席を務めていた田辺文也氏は、日本の電力需要が将来減少すると予想されるため、第2原発を再稼働する正当性はほとんどないとしている。