<非電化>「ゼロGP=原発エネルギーのない」生活提唱 独自冷蔵庫、除湿器…発明
◇「非電化」は幸せ
国内の商業用原発が全て止まって3日。「電気のいらない家電製品」を次々生み出している栃木県那須町の発明家、藤村靖之さん(67)は今こそスタートと捉えている。原発のエネルギーを「GP」(原発の頭文字)という独自の単位で表し、講演などで脱原発を訴えてきた藤村さんは「0(ゼロ)GPの維持に必要なのは、電気に頼り過ぎるライフスタイルを改めること」と訴えている。【袴田貴行】
大阪大大学院出身で工学博士の藤村さんは、建機メーカーのコマツの研究開発者などを経て07年、自宅に「非電化工房」を設立。10種類以上の製品を発明し、技術はモンゴルなど海外にも提供されている。
熱伝導率の高い金属で作った貯蔵室の周りに大量の水を張り、断熱材で外部からの熱を遮断した冷蔵庫は、真夏の日中の屋外でも庫内を7~8度に保つ。半永久的に使える1台2万3000円の除湿器は年間200台売れるヒット商品となった。
藤村さんが講演の際に持ち出すのが、自ら提唱した新単位「GP」。1GPは原発1基が1年間に供給する平均的な電力量(04年時点で約50億キロワット時)を意味し、家電製品別の年間電力消費量に当てはめて使う。例えばテレビなら10GP。日本全国の家庭で1年間に消費されたテレビの電力量が、原発10基分の年間発電量に相当することを指す。電気ポットは設定温度に保ち続ける電力が必要なため、意外にも冷房と同じ3GPだという。
非電化工房では、電気炊飯器(2GP)ではなくガスと圧力鍋で米を炊いたり、照明(10GP)やパソコン(3GP)をこまめに消したりして節電効果を高めている。建物内は大きな天窓から採光し、掃除はほうき。太陽光や水力で自家発電もしている。
約3000坪の敷地に10以上の建物があるが、東京電力に支払う電気料金は年間4万円程度だ。
藤村さんは「圧力鍋で炊いたご飯の方がおいしいし、読書や入浴は部分照明やロウソクの方が適度な明るさでリラックスできる。夏場のピーク時を乗り切るための苦しい節電ではなく、日常生活の『幸せ度』を上げるための節電なら長続きする」と話している。
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