沈黙の春

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銘柄米が売れない、在庫の山、すそ米が売れる・・・

2012-05-10 17:51:47 | 食品の安全

原発事故の影響で国産米の価格が高騰し、食味に劣る非銘柄米や輸入米が売れるなど、コメ市場に“異変”が生じている。

 長引くデフレの継続や、消費者のコメ離れなどが進んでいることも、背景にはあるようだ。埼玉県内での販売事情を取材した。

 「今年は昨年の倍以上、在庫があります」。川越市今福のコメ業者「かねこライス」の金子厚社長(49)は、倉庫の天井近くまで積み上がった玄米の袋を前に話した。「新潟産コシヒカリ」「ミルキークイーン」。名が知られた銘柄米のラベルも目立つ。店頭だけでなく、インターネットでも販売しているが、動きは鈍い。震災の風評被害も影響してか、「西日本のお客さんは、東日本のコメをほとんど買わない」という。

 にもかかわらず、価格は高いままだ。震災後、国産米価格は急騰した。農林水産省によると、生産者と卸売業者の取引価格を示す相対取引価格(玄米1俵、60キロ・グラムあたり)の2011年産平均は3月時点で1万5303円と、前年同期に比べて2553円高い。業者の間には、「卸売業者が東北産のコメを避け、流通量が減った」との見方がある。

 そうした中、レストランなど主に外食産業が購入する、食味に劣る「すそ米」が売れている。銘柄米は栽培に手間がかかり、収量も少ないが、すそ米は多く収穫できる。金子社長は米袋の一つを示し、「この袋は銘柄がなく『埼玉雑銘柄』と呼ばれていますよ」と説明した。

 「すそ米」は、ふだんは1俵1万1000円前後だが、最近は1万5000円を超え、在庫がほとんどない。一時は「秋田産あきたこまち」や「宮城産ひとめぼれ」の価格にも迫った。

 さらに注目されているのが、中国産を始めとする安価な輸入米だ。米ウォルマート・ストアーズ傘下の西友中浦和店(さいたま市南区)では、中国・吉林省産米が売れている。5キロ・グラム1299円。国産米に比べて、2~3割安い。

 西友の広報担当者は「国産米の価格上昇で、安くて安心、おいしいを条件に輸入米を売り出した。予想以上の売れ行きだ」と話す。

 安い輸入米が受け入れられる背景について、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次・チーフエコノミストは「長引くデフレで消費行動に変化が出ている」と分析する。加えて顕著なのがコメ離れ。10年産の家庭のコメ購入量の平均は82キロ・グラムで、3年前に比べ5%減った。銘柄や食味へのこだわりが薄れているとみられる。

 政府は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する考えを示している。輸入米の高関税が撤廃されれば、競争力の弱い国産米は淘汰(とうた)されるのでは、との懸念も、生産者らの間では強い。今後、低価格帯で多収量のコメに切り替える農家が増える可能性もある。(栗原健、木村優里)

 ◆輸入米=1993年の関税・貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンドの合意に基づき、一定数量を関税なしで受け入れると決めた「ミニマム・アクセス米」のこと。国内農家を守るため、現在の輸入量は年間77万トンに限っている。大半は加工用や飼料用、海外援助用に回っている。主食用のコメの輸入には、10万トンの上限が設けられている。

2012年5月10日08時08分 読売新聞)


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