先日、また現実逃避のため、僕は夜中にパソコンテレビ「GyaO」を見ていた。例によって懐かしプロレスチャンネルである。そこには、ブルーザー・ブロディが縮れた髪をなびかせて躍動していた。この人は一時期、本当に世界最強だったと思う。恵まれた体躯と無理やり作ったわけではないナチュラルな筋肉、パワーと跳躍力、そしてクレバーな試合運び。その表現力はやはり知性的で、古館伊知郎が「インテリジェンス・モンスター」と称したがうまい言い回しだ。哲学者を思わせるその風貌を見つつ、この人ももうこの世に居ないのだなと思うとまた感傷的になってしまった。テレビではマイケル・ヘイズ&テリー・ゴディ(フリーバーズ)vsケリー・フォン・エリック&ブロディのタッグマッチが行われていて、このうち3人はもう逝ったのかと思うと泣けてきた。
ブロディのフィニッシュと言えばそれはもちろんキングコング・ニードロップに決まっているわけで、以前ニードロップの記事を書いたときにも言及した。ただ、ブロディの技はそれだけではなく、ワンハンド・ボディスラムやジャックハマーにも似たブレーン・バスターなど叩きつける技、そしてドロップキックなどの足技が印象に残る。そして、ギロチンドロップを出すタイミングにも妙があった。
ブロディのギロチンドロップは相手を叩きつけたあとコーナー対角に下がって走りこんで放つ。これはニードロップと同じスタイルで、「あっここで決めるのか」と一瞬息を詰めたところでギロチンに移行する。肩透かしを食らったようでいて、まだ試合が続くのかという安堵の気持ちと余韻を残す。実際はニードロップを放つ際は拳を突き上げるポーズをするので判るのだが、それでも走りこむ迫力がそれを一瞬忘れさせるのだ。
ギロチンドロップとは、足を延ばして相手の首元に叩きつける技。ヒザを落とすニードロップとは違い、自分のモモの裏側からヒザの裏あたりが相手の首に決まるので、威力はニーに劣るが、ニードロップが危険すぎてヒザを相手の喉笛に落とせないのと違って確実に相手の首を狙うことが出来る。人間断頭台とはよく言ったもので、まさにギロチンを彷彿とさせる。海外でギロチンドロップという言葉が存在するのかどうか知らない。よくあちらではレッグドロップと表現する。「ギロチン」と称したのはもしかしたら日本かもしれないのだが不明。
この技をフィニッシュに用いていたのはあの「超人」ハルク・ホーガン。日本ではアックスボンバーをフィニッシュにしていたが、アメリカではこれでピンフォールを奪っていた。ホーガンのぶっとい脚を相手の首にめり込ませればそれはたまらんだろう。この「首を断ち切るように放つ」ギロチンドロップは、ニードロップが危険すぎて首に落とせないことを考えれば相当の必殺技と考えられるのではないか。
日本で印象に残るギロチンドロップとして思い出すのは、猪木が異種格闘技戦でモンスターマンと対戦した際、パイルドライバーを放った(このパイルドライバーは汗、もしくはモンスターマンが身体に塗っていたとされる油で滑り不完全なものとなったが、よく見ると川田が三沢戦で放つ脳天パワーボムに似ている)後に、とどめとしてかましたのが印象深い。これはやはり不完全で肩口に入ってしまったが、それでモンスターマンは肩を痛め試合続行不能となった。フィニッシュがいずれも美しく決まらなかったところが異種格闘技戦らしい。
フィニッシュに用いるのはニードロップなどと比べて地味なので、なかなか繋ぎ技の域を出ないのが残念でもある。北尾光司がプロレスに来たときに、当時ホーガンを模したスタイルをとっていたためギロチンをフィニッシュに使っていたが、あの太い脚はギロチンに適していたにせよ中途半端な印象がある。北尾のプロレスに対する姿勢が中途半端であったからかもしれないが。
その後、高山もフィニッシュに使用していたが、エベレストジャーマンとニーアタックがこれを凌駕したためもう使わなくなった。
ところで、コーナートップから放つダイビング・ギロチンドロップともなると、これは地味などとはとても呼べない技に変貌する。そもそもギロチンドロップとは、脚をマットに平行にして落とす技であるために、いわゆる「しりもちをつく」状態になる。これは自分にもかなりダメージがある技となり、ましてやコーナートップからダイブして放つともなれば、「ひとりアトミックドロップ状態」になってしまう。尻をマットに体重を乗せて打ち付けるのは痛いはずで、僕のようなヘルニア持ちの人間からしてみればあまりにも危険で冷や汗が出る。だが、レスラーは果敢にこの技に挑む。受身の上手いプロレスラーは、うまく背骨に響かないように落ちるのだろうが危険と隣り合わせには違いない。これを見てプロレスの凄さがわからない人とは本当に話をしたくなくなる。
決死のダイビング・ギロチンドロップの使い手は多々いる。かつて小橋健太は、この技をフィニッシュにしていた。最近はあまり見ることがない。危険だからであろうか。現在ではモハメド・ヨネが派手に叫びながら放つ。ヨネは昨今、筋肉バスターを尻もち式から後方倒れ式にしてしまったのだが、この技はまだ使っている。
コーナーに上って回転して放つというウルトラC級(古い?)の技も使用されている。テレビではスコーピオのローリングギロチンがお馴染み。スコーピオはマットに背を向けて後方回転だが、前方回転のダイビングギロチンもある由。どんどんエスカレートしていく。
このダイビングギロチンドロップで、伝説となっているシーンがある。こう書くと頷く人も多いと思うが、あの15年前の横浜、ブル中野vsアジャ・コングの一戦である。
女子プロレスはあまり取り上げないのだけれど(キライではもちろんないのだが、体重の軽い選手が多いので)、ギロチンドロップをテーマに書くならこれを外すわけにはいかない。
当時、全日本女子プロレスはクラッシュも引退し少し人気に翳りが出た頃。ブルとアジャはともにヒールながら抗争を繰り広げていた。不可解な判定など遺恨試合が続き、完全決着のためノーレフリー・金網デスマッチを敢行する。そのラストシーンで、ブル中野はアジャに対し金網最上段からダイビングギロチンドロップを放ったのだ。
リングを取り囲む、外に逃げ出せないために聳える金網。コーナートップよりもまだ高い、地上4mとも言われる高さは僕なら目が眩むだろう。そこから、尻もちで落ちるのだ。考えただけでも恐ろしい。昔、よくジプシー・ジョーが金網最上段からダイブしていたが、ボディプレスやニードロップなら受身も取りやすい。しかし尻から落ちねばならないギロチンドロップは…。
ブル中野は、最上段に上がってまさに放つその時、目を閉じて合掌した。4mという高さへの恐怖。下にいるアジャ・コングの首をへし折ってしまうかもしれないという恐怖。そして、自分がマットに尻から落ちることによって骨盤が割れ背骨がひしゃげてしまうかもしれないことへの恐怖。様々な事が去来しただろう。
ブルは敢然と脚を伸ばして飛び降り、アジャをノックアウトした。
このシーンはプロレス雑誌の表紙を飾り、15年経った今でも伝説として語り継がれている。ギロチンドロップの凄さを永遠に伝える名試合である。
ブロディのフィニッシュと言えばそれはもちろんキングコング・ニードロップに決まっているわけで、以前ニードロップの記事を書いたときにも言及した。ただ、ブロディの技はそれだけではなく、ワンハンド・ボディスラムやジャックハマーにも似たブレーン・バスターなど叩きつける技、そしてドロップキックなどの足技が印象に残る。そして、ギロチンドロップを出すタイミングにも妙があった。
ブロディのギロチンドロップは相手を叩きつけたあとコーナー対角に下がって走りこんで放つ。これはニードロップと同じスタイルで、「あっここで決めるのか」と一瞬息を詰めたところでギロチンに移行する。肩透かしを食らったようでいて、まだ試合が続くのかという安堵の気持ちと余韻を残す。実際はニードロップを放つ際は拳を突き上げるポーズをするので判るのだが、それでも走りこむ迫力がそれを一瞬忘れさせるのだ。
ギロチンドロップとは、足を延ばして相手の首元に叩きつける技。ヒザを落とすニードロップとは違い、自分のモモの裏側からヒザの裏あたりが相手の首に決まるので、威力はニーに劣るが、ニードロップが危険すぎてヒザを相手の喉笛に落とせないのと違って確実に相手の首を狙うことが出来る。人間断頭台とはよく言ったもので、まさにギロチンを彷彿とさせる。海外でギロチンドロップという言葉が存在するのかどうか知らない。よくあちらではレッグドロップと表現する。「ギロチン」と称したのはもしかしたら日本かもしれないのだが不明。
この技をフィニッシュに用いていたのはあの「超人」ハルク・ホーガン。日本ではアックスボンバーをフィニッシュにしていたが、アメリカではこれでピンフォールを奪っていた。ホーガンのぶっとい脚を相手の首にめり込ませればそれはたまらんだろう。この「首を断ち切るように放つ」ギロチンドロップは、ニードロップが危険すぎて首に落とせないことを考えれば相当の必殺技と考えられるのではないか。
日本で印象に残るギロチンドロップとして思い出すのは、猪木が異種格闘技戦でモンスターマンと対戦した際、パイルドライバーを放った(このパイルドライバーは汗、もしくはモンスターマンが身体に塗っていたとされる油で滑り不完全なものとなったが、よく見ると川田が三沢戦で放つ脳天パワーボムに似ている)後に、とどめとしてかましたのが印象深い。これはやはり不完全で肩口に入ってしまったが、それでモンスターマンは肩を痛め試合続行不能となった。フィニッシュがいずれも美しく決まらなかったところが異種格闘技戦らしい。
フィニッシュに用いるのはニードロップなどと比べて地味なので、なかなか繋ぎ技の域を出ないのが残念でもある。北尾光司がプロレスに来たときに、当時ホーガンを模したスタイルをとっていたためギロチンをフィニッシュに使っていたが、あの太い脚はギロチンに適していたにせよ中途半端な印象がある。北尾のプロレスに対する姿勢が中途半端であったからかもしれないが。
その後、高山もフィニッシュに使用していたが、エベレストジャーマンとニーアタックがこれを凌駕したためもう使わなくなった。
ところで、コーナートップから放つダイビング・ギロチンドロップともなると、これは地味などとはとても呼べない技に変貌する。そもそもギロチンドロップとは、脚をマットに平行にして落とす技であるために、いわゆる「しりもちをつく」状態になる。これは自分にもかなりダメージがある技となり、ましてやコーナートップからダイブして放つともなれば、「ひとりアトミックドロップ状態」になってしまう。尻をマットに体重を乗せて打ち付けるのは痛いはずで、僕のようなヘルニア持ちの人間からしてみればあまりにも危険で冷や汗が出る。だが、レスラーは果敢にこの技に挑む。受身の上手いプロレスラーは、うまく背骨に響かないように落ちるのだろうが危険と隣り合わせには違いない。これを見てプロレスの凄さがわからない人とは本当に話をしたくなくなる。
決死のダイビング・ギロチンドロップの使い手は多々いる。かつて小橋健太は、この技をフィニッシュにしていた。最近はあまり見ることがない。危険だからであろうか。現在ではモハメド・ヨネが派手に叫びながら放つ。ヨネは昨今、筋肉バスターを尻もち式から後方倒れ式にしてしまったのだが、この技はまだ使っている。
コーナーに上って回転して放つというウルトラC級(古い?)の技も使用されている。テレビではスコーピオのローリングギロチンがお馴染み。スコーピオはマットに背を向けて後方回転だが、前方回転のダイビングギロチンもある由。どんどんエスカレートしていく。
このダイビングギロチンドロップで、伝説となっているシーンがある。こう書くと頷く人も多いと思うが、あの15年前の横浜、ブル中野vsアジャ・コングの一戦である。
女子プロレスはあまり取り上げないのだけれど(キライではもちろんないのだが、体重の軽い選手が多いので)、ギロチンドロップをテーマに書くならこれを外すわけにはいかない。
当時、全日本女子プロレスはクラッシュも引退し少し人気に翳りが出た頃。ブルとアジャはともにヒールながら抗争を繰り広げていた。不可解な判定など遺恨試合が続き、完全決着のためノーレフリー・金網デスマッチを敢行する。そのラストシーンで、ブル中野はアジャに対し金網最上段からダイビングギロチンドロップを放ったのだ。
リングを取り囲む、外に逃げ出せないために聳える金網。コーナートップよりもまだ高い、地上4mとも言われる高さは僕なら目が眩むだろう。そこから、尻もちで落ちるのだ。考えただけでも恐ろしい。昔、よくジプシー・ジョーが金網最上段からダイブしていたが、ボディプレスやニードロップなら受身も取りやすい。しかし尻から落ちねばならないギロチンドロップは…。
ブル中野は、最上段に上がってまさに放つその時、目を閉じて合掌した。4mという高さへの恐怖。下にいるアジャ・コングの首をへし折ってしまうかもしれないという恐怖。そして、自分がマットに尻から落ちることによって骨盤が割れ背骨がひしゃげてしまうかもしれないことへの恐怖。様々な事が去来しただろう。
ブルは敢然と脚を伸ばして飛び降り、アジャをノックアウトした。
このシーンはプロレス雑誌の表紙を飾り、15年経った今でも伝説として語り継がれている。ギロチンドロップの凄さを永遠に伝える名試合である。
以前にも書いたが、パソコンテレビ「GyaO」は誠にありがたい。このストリーミング配信の無料PCテレビが今放送してくれている懐かしプロレスはエリック一家特集である。フリッツ・フォン・エリックの引退試合から始まり(なんと相手はキングコング・バンディ! !)、息子達の活躍を特集している。ケビン、デビット、そしてケリー。みんなフレッシュで小気味いい。若さ溢れるファイトである。エリック兄弟のライバルは前述のバンディ他、ファビラス・フリーバーズ(マイケル・ヘイズ、テリー・ゴディ、バディ・ロバーツ)、ジム・ガービンたち。アメリカンプロレスの王道である。ザ・グレート・カブキもマジック・ドラゴン(ハル薗田)とタッグで登場。実に楽しい。
しかしこうして見ているとエリック一家はほとんどがもう死んでいる。ゴディもハル薗田ももうこの世にはいない。まるで追悼ビデオを見ているような気がする。
フリッツ・フォン・エリックの必殺技と言えば、言わずと知れたアイアン・クロー。「鉄の爪」である。人並みはずれたデカい手のヒラと握力を持ったエリック親父は、ただ相手の体の一部を掴んで絞めるというそれだけの単純な技で世界の頂点に登りつめた。
クロー技(手で掴み苦しめる技)は以前にもあったのかもしれない。しかし、その技を必殺技に昇華させたのはエリック親父であることは間違いない。ちょっと信憑性に欠ける資料ではあるのだが梶原一騎の「プロレススーパースター列伝」によると、フリッツ・フォン・エリックは23歳のときにジャック・アドキッセンとしてプロレスデビュー。「巨体だが木偶の棒」であったアドキッセンは売れなかったが、あるとき街でナイフを振り回すチンピラを制止しようと相手の手首を掴んだとき、相手の手首の骨が砕けてしまい、自分の握力の強さに気づいた。この握力を生かすべくその後改良を重ね、手首など危険な部位ではなく顔や腹部を掴んで握り締めるアイアン・クローという技を完成させたと言う。見るからに残酷で陰惨な匂いのするこの技によりアドキッセンは善玉から悪役へとなり、名前もナチスを意識してドイツ貴族風のフリッツ・フォン・エリックとし、全米を恐怖に陥れたのだ。
僕はエリック親父の全盛期をリアルタイムで見た世代ではもちろんないのだがその伝説は生き続けていて、何本も「懐かしプロレス」のビデオを借りて見た。若き日の馬場さんと対戦した試合はまさに恐怖そのもので、一度頭部に入ったアイアンクローがどうしても外れず馬場さんはのたうち回り、実況は「コメカミから…血が流れ出ています! !」と叫んだ。アタマを握り潰して流血までさせるというアイアンクローの恐怖は、ブラッシーの噛み付きと並んで最も怖ろしい技ではないだろうか。
しかし、この技は握力があれば誰でも出来る技である。だがプロレス的に見て絵になる技とするには、陰惨な匂いをプンプンさせた悪役が使用してこそだ。他に使い手として有名な選手にバロン・フォン・ラシク、キラー・カール・クラップらがいた。クラップは「ブロンズ・クロー(青銅の爪)」と称してかなり陰惨な雰囲気を醸し出していた。こういうレスラーでないと絵にならない。
例えば、アンドレ・ザ・ジャイアントがやれば本当に頭蓋骨が砕けてしまっただろう。しかしアンドレはやらなかった。当然である。この技は強力無比な握力を大前提とするが、最も重要なことは「似合う・似合わない」であろう。手の大きさと握力だけではどうにもならない部分があるのだ。失敗例として、エル・ヒガンテを思い出す。238cmとアンドレを超える巨人として売り出したヒガンテであったが、フィニッシュにクローを使ったためにその体の大きさを誇示することが出来ず、いつの間にか消えてしまった。
クロー技はその掴む部位によって分類できる。まずアタマを掴むブレーン・クローが代表格で、アイアンクローと言えばこれを連想する。エリック親父が大きな手を広げて頭部を掴みかからんとする姿、相手が両手でブロックしているところへジワジワと広げた手を近づけていくその迫力は、まさに千両役者のものである。
もうひとつ、腹部を掴むストマック・クローがある。実はこのストマック・クローの方がブレーン・クローよりも効く、と言われている。頭部を掴むのでないので相手の悶絶する表情がよく見えてエグい。アバラの下を掴むレバー・クローも同じ。
コブラ・クローというタイガー・ジェット・シンの技があり、これは相手のノドボトケを掴むという無茶苦茶な技でありどう考えても反則である。カウント4でパッと離し、またノドボトケを掴むことを繰り返し猪木に徹底的なダメージを与えたこの技はシンでないと似合わない。藤原組長が昔やっていたがちょっと首を傾げたものだった。
ショルダー・クローは肩口を掴む技で、これは日系悪役レスラーの専売特許みたいなものだった。グレート東郷が始めたのだろうか。背後から肩口をグッと掴んで舌なめずりをするその姿はまさに残忍であり悪役そのもの。前述のカブキもよくやった。
クロー攻撃は現在では壊滅状況である。握力があるからと言って誰でも出来るものではない。小橋がやれば強力だろうがもちろん似合わない。中西が時々やるのだが、そんなクローなどやってないでもっとアタマを使った試合をやって欲しいものである。ショルダー・クローであれば、例えば矢野通は似合うかもしれない。
このクロー攻撃は、元祖アイアンクローのエリック親父とともに消滅してもよかったのかもしれない。ただ、この極め付けの陰惨な技を親父は息子達に伝授してしまった。次男のデビッドを正統鉄の爪の後継者とし、長男ケビンは鷹の爪、三男ケリーは虎の爪として華々しく売り出した。陽気なアメリカンプロレスの体現者であったエリック兄弟には陰惨な空気など全くなかったにもかかわらず、だ。
この後、エリック一家に呪いがかかる。この悲劇はご存知の人も多いと思う。
実は、長男ケビン、と書いたがそれは正確でなく、実はまたその上に兄が居た。ジャックjrである。だがまだ子供の頃に、庭で遊んでいてエリック親父の目の前で感電死してしまう。呪いの始まりだ。ショックをうけた親父だったがなんとか立ち直り、息子達をデビューさせるのだが、この息子たちにも悲劇が次々と起こる。後継者と目され最もセンスがあったとされるデビットが日本遠征中に突然死。死因は定かではない。このニュースはショックだった。しかし、これで終わらず次々と呪いはエリック一家に襲いかかるのだ。
ケリーは兄の死を乗り越えて、リック・フレアーを破りついにNWA王者となる。しかしデビットのかわりにデビューした弟マイクは、鬱病になり薬物障害で死亡。自殺とも言われる。人気絶頂のケリーもオートバイ事故で片足切断。義足でリングに上がるという壮絶な復活を見せたが、ドラックに溺れピストル自殺。親父は末っ子クリスもデビューさせたが重圧に負けたのか自殺。6人兄弟のうち5人を失い、絶望したエリック親父はプロモート権を売却し離婚、老いて息子達の後を追って死んだ。長兄(次男)のケビンしか今は生き残っていない。呪われた一家と呼ばずになんと言おうか。
これは、アイアン・クローという陰惨で残酷な技を使い続けて巨万の富を稼いだ報いだとも言われるし、エリック親父がユダヤ系移民であるにもかかわらずナチスの残党という触れ込みでのし上がっていったことに対するユダヤの呪いであるということも言われる。真相などわかるわけがない。
ただ、アイアン・クローという技に呪いの伝説が残った。この陰惨で残酷な匂いのする「鉄の爪」伝説の真実は闇の彼方へと消えていった。こんなに凄みのある技はもう生まれてくることはあるまい。
しかしこうして見ているとエリック一家はほとんどがもう死んでいる。ゴディもハル薗田ももうこの世にはいない。まるで追悼ビデオを見ているような気がする。
フリッツ・フォン・エリックの必殺技と言えば、言わずと知れたアイアン・クロー。「鉄の爪」である。人並みはずれたデカい手のヒラと握力を持ったエリック親父は、ただ相手の体の一部を掴んで絞めるというそれだけの単純な技で世界の頂点に登りつめた。
クロー技(手で掴み苦しめる技)は以前にもあったのかもしれない。しかし、その技を必殺技に昇華させたのはエリック親父であることは間違いない。ちょっと信憑性に欠ける資料ではあるのだが梶原一騎の「プロレススーパースター列伝」によると、フリッツ・フォン・エリックは23歳のときにジャック・アドキッセンとしてプロレスデビュー。「巨体だが木偶の棒」であったアドキッセンは売れなかったが、あるとき街でナイフを振り回すチンピラを制止しようと相手の手首を掴んだとき、相手の手首の骨が砕けてしまい、自分の握力の強さに気づいた。この握力を生かすべくその後改良を重ね、手首など危険な部位ではなく顔や腹部を掴んで握り締めるアイアン・クローという技を完成させたと言う。見るからに残酷で陰惨な匂いのするこの技によりアドキッセンは善玉から悪役へとなり、名前もナチスを意識してドイツ貴族風のフリッツ・フォン・エリックとし、全米を恐怖に陥れたのだ。
僕はエリック親父の全盛期をリアルタイムで見た世代ではもちろんないのだがその伝説は生き続けていて、何本も「懐かしプロレス」のビデオを借りて見た。若き日の馬場さんと対戦した試合はまさに恐怖そのもので、一度頭部に入ったアイアンクローがどうしても外れず馬場さんはのたうち回り、実況は「コメカミから…血が流れ出ています! !」と叫んだ。アタマを握り潰して流血までさせるというアイアンクローの恐怖は、ブラッシーの噛み付きと並んで最も怖ろしい技ではないだろうか。
しかし、この技は握力があれば誰でも出来る技である。だがプロレス的に見て絵になる技とするには、陰惨な匂いをプンプンさせた悪役が使用してこそだ。他に使い手として有名な選手にバロン・フォン・ラシク、キラー・カール・クラップらがいた。クラップは「ブロンズ・クロー(青銅の爪)」と称してかなり陰惨な雰囲気を醸し出していた。こういうレスラーでないと絵にならない。
例えば、アンドレ・ザ・ジャイアントがやれば本当に頭蓋骨が砕けてしまっただろう。しかしアンドレはやらなかった。当然である。この技は強力無比な握力を大前提とするが、最も重要なことは「似合う・似合わない」であろう。手の大きさと握力だけではどうにもならない部分があるのだ。失敗例として、エル・ヒガンテを思い出す。238cmとアンドレを超える巨人として売り出したヒガンテであったが、フィニッシュにクローを使ったためにその体の大きさを誇示することが出来ず、いつの間にか消えてしまった。
クロー技はその掴む部位によって分類できる。まずアタマを掴むブレーン・クローが代表格で、アイアンクローと言えばこれを連想する。エリック親父が大きな手を広げて頭部を掴みかからんとする姿、相手が両手でブロックしているところへジワジワと広げた手を近づけていくその迫力は、まさに千両役者のものである。
もうひとつ、腹部を掴むストマック・クローがある。実はこのストマック・クローの方がブレーン・クローよりも効く、と言われている。頭部を掴むのでないので相手の悶絶する表情がよく見えてエグい。アバラの下を掴むレバー・クローも同じ。
コブラ・クローというタイガー・ジェット・シンの技があり、これは相手のノドボトケを掴むという無茶苦茶な技でありどう考えても反則である。カウント4でパッと離し、またノドボトケを掴むことを繰り返し猪木に徹底的なダメージを与えたこの技はシンでないと似合わない。藤原組長が昔やっていたがちょっと首を傾げたものだった。
ショルダー・クローは肩口を掴む技で、これは日系悪役レスラーの専売特許みたいなものだった。グレート東郷が始めたのだろうか。背後から肩口をグッと掴んで舌なめずりをするその姿はまさに残忍であり悪役そのもの。前述のカブキもよくやった。
クロー攻撃は現在では壊滅状況である。握力があるからと言って誰でも出来るものではない。小橋がやれば強力だろうがもちろん似合わない。中西が時々やるのだが、そんなクローなどやってないでもっとアタマを使った試合をやって欲しいものである。ショルダー・クローであれば、例えば矢野通は似合うかもしれない。
このクロー攻撃は、元祖アイアンクローのエリック親父とともに消滅してもよかったのかもしれない。ただ、この極め付けの陰惨な技を親父は息子達に伝授してしまった。次男のデビッドを正統鉄の爪の後継者とし、長男ケビンは鷹の爪、三男ケリーは虎の爪として華々しく売り出した。陽気なアメリカンプロレスの体現者であったエリック兄弟には陰惨な空気など全くなかったにもかかわらず、だ。
この後、エリック一家に呪いがかかる。この悲劇はご存知の人も多いと思う。
実は、長男ケビン、と書いたがそれは正確でなく、実はまたその上に兄が居た。ジャックjrである。だがまだ子供の頃に、庭で遊んでいてエリック親父の目の前で感電死してしまう。呪いの始まりだ。ショックをうけた親父だったがなんとか立ち直り、息子達をデビューさせるのだが、この息子たちにも悲劇が次々と起こる。後継者と目され最もセンスがあったとされるデビットが日本遠征中に突然死。死因は定かではない。このニュースはショックだった。しかし、これで終わらず次々と呪いはエリック一家に襲いかかるのだ。
ケリーは兄の死を乗り越えて、リック・フレアーを破りついにNWA王者となる。しかしデビットのかわりにデビューした弟マイクは、鬱病になり薬物障害で死亡。自殺とも言われる。人気絶頂のケリーもオートバイ事故で片足切断。義足でリングに上がるという壮絶な復活を見せたが、ドラックに溺れピストル自殺。親父は末っ子クリスもデビューさせたが重圧に負けたのか自殺。6人兄弟のうち5人を失い、絶望したエリック親父はプロモート権を売却し離婚、老いて息子達の後を追って死んだ。長兄(次男)のケビンしか今は生き残っていない。呪われた一家と呼ばずになんと言おうか。
これは、アイアン・クローという陰惨で残酷な技を使い続けて巨万の富を稼いだ報いだとも言われるし、エリック親父がユダヤ系移民であるにもかかわらずナチスの残党という触れ込みでのし上がっていったことに対するユダヤの呪いであるということも言われる。真相などわかるわけがない。
ただ、アイアン・クローという技に呪いの伝説が残った。この陰惨で残酷な匂いのする「鉄の爪」伝説の真実は闇の彼方へと消えていった。こんなに凄みのある技はもう生まれてくることはあるまい。
前回からの続きです。
上田馬之助のことについて少し。
彼は、日本の元祖悪役レスラーと言ってもいいと思う。日本人悪役レスラーと言えば、グレート東郷をはじめとして主としてアメリカマットで活躍していた。しかし上田馬之助は、日本のマットで日本人なのに悪役になりきるという当時では考えられないことをやった。
日本プロレスでの猪木追放事件。日プロ幹部の堕落と遣い込みに業を煮やした猪木がクーデターを起こそうとしたのが事前に発覚し猪木はマットを追われた。そのクーデター計画を幹部連に密告したのが上田馬之助だったと言われる。この「裏切り者」の汚名を背負い、日本プロレス崩壊後上田馬之助は海外マットを主戦場とし、そこでやっていた悪役のイメージを日本再上陸後そのまま取り入れた。髪を一部金髪にして「まだら狼」となり(後に全部金髪にした)、国際プロレスで活躍、その後タイガー・ジェット・シンとタッグを結成し新日本プロレスで暴れた。「得意技は反則」と言い放ち猪木を苦しめた。
この頃、ファンの間で不思議な噂があった。「上田馬之助はガチンコでやればかなり強いのではないか?」という話。裏切り者のイメージで悪役に徹しているが、実はかなりの実力者なのでは? ということ。「ガチでやれば№1は星野勘太郎」とは定説のようになっていたが、上田馬之助もいい線いくのでは? と言われた。
余談だが、こういう話はプロレスファンの間では微妙なニュアンスを持つ。八百長という話を肯定しているかのように一般の人にはとられるからだ。この感じを説明するのは難しい。ファンなら理解してもらえるとは思うが、「暗黙の了解」を超えた勝負、ととらえて欲しい。この話を続けるとキリがないので深入りは避けるが。
さて、上田馬之助実力レスラー説は、相方のタイガー・ジェット・シンが反則無しでも猪木を苦しめる実力を持っていたということに由来しているのだろうと思われる。シンが強いのなら馬之助も、ということだろう。しかしその実力の片鱗を見せる機会はなかった。
一度だけ、上田馬之助が脚光を浴びたときがあった。それは前田日明率いるUWF勢が新日マットに乗り込んだときのことである。UWFは、今で言えば総合格闘技的色彩が強い。旧来のプロレスを否定する立場で、「プロレスvsUWF」的な様相を呈していた。このとき、上田馬之助は新日サイドに立ち、UWFを叩き潰す側に回ったのである。
猪木と馬之助はタッグを組み、前田、高田延彦らと戦った。これは不思議な光景だった。悪役の上田馬之助が、プロレス側の視点で見れば善玉となっている。会場に上田コールが起こり、全く反則をしない上田馬之助がそこに居た。
上田馬之助は、ファイトスタイルも全て「旧式プロレス」の具現者であった。前田らがアキレス腱固め、脇固めなどの新しい関節技を繰り出すのに対し、上田馬之助はトーホールド、ハンマーロックなどの古典的な技で応酬する。新しいプロレスの波に抗うかのように。
象徴的な場面を記憶している。馬之助が前田にヘッドロックをガッチリと極めた。前田はすぐに振り解こうとするが馬之助は離さず、そのままマットにねじ伏せて締め上げ続けた。最も古典的な技であるヘッドロックでニューウェイブの前田を苦しめる。僕は全身に鳥肌が立った。力道山以来のプロレスは死んでいなかったのだ。
上田馬之助はその後、老いてインディーズ団体に身を投じ、その遠征中事故に遭って脊椎骨折で半身不随となりプロレスを引退、リハビリ生活を送ることとなった。
旧世代のレスラーはもうほとんど居ない。馬場さんは死に、大木金太郎、ラッシャー木村、坂口征二、星野勘太郎、山本小鉄、みんなマットから遠ざかった。猪木も還暦を過ぎた。追憶だけが残る。
話がヘッドロックから大きくずれた。
派生技として、ヘッドロックから投げる技として「フライングメイヤー」がある。ヘッドロックの状態からそのまま投げを放つ「首投げ」である。相手をマットに這わすだけの目的として使われるが、デストロイヤーのフライングメイヤーは自分が大きくジャンプして勢いよく相手を投げるのでダメージが大きい。ヘッドロックをかけた状態のままコーナーを駆け上がってブン投げるということも行われていた。
また、ブルドッキング・ヘッドロックという技がある。"カウボーイ"ボブ・エリスが元祖と言われ、牛の首根っこを掴んでねじ伏せるのを模している。
印象に残る使い手が何人か居るが、これはこの技をどのようにとらえるかで見方が変わってくる。ヘッドロックに捕らえたまま助走し、ジャンプして相手の顔面をマットに叩きつける技だと解釈すると、これはフェイス・バスターの亜流ということになる。僕にはアドリアン・アドニスが印象深い。ジャンプしたときにヘッドロックを解き、抱えていた腕を上に向け、ちょうどエルボーを後頭部に押し付けるようにしてマットに顔面を叩きつけていた。これは効く。
しかし、叩きつける際にヘッドロックを解くと、これは形態としては武藤敬司がよくやるフェイスバスターとさほどかわりがない。ヘッドロックと言うからには最後までロックを離さないでいて欲しいのだが、そうなると引き付けた腕が邪魔をして顔面をマットに叩きつけられない。
もうひとつの見方として、これはネックブリーカーの一種と見られないか? ジャンプして倒れこんでもロックしたままであれば首にかなりの衝撃が走るはず。
この使い手がラッシャー木村であったと思うのだがどうか。木村はマット対角線をドタドタと走り、ロックを外さずジャンプして尻もちをつくようにマットに叩きつける。顔面ではなく明らかに首を狙っている。華麗さはフェイスバスター方式に一歩も二歩も譲るが、本来の牛の首根っこを押さえつけるニュアンスはラッシャー木村の方式が正しいと思われるのだがどうか?
武藤の華麗なフェイスバスターと木村の武骨なブルドッキングヘッドロック。ここにも旧世代と新世代の対比を見ることが出来るような気がしてならない。
上田馬之助のことについて少し。
彼は、日本の元祖悪役レスラーと言ってもいいと思う。日本人悪役レスラーと言えば、グレート東郷をはじめとして主としてアメリカマットで活躍していた。しかし上田馬之助は、日本のマットで日本人なのに悪役になりきるという当時では考えられないことをやった。
日本プロレスでの猪木追放事件。日プロ幹部の堕落と遣い込みに業を煮やした猪木がクーデターを起こそうとしたのが事前に発覚し猪木はマットを追われた。そのクーデター計画を幹部連に密告したのが上田馬之助だったと言われる。この「裏切り者」の汚名を背負い、日本プロレス崩壊後上田馬之助は海外マットを主戦場とし、そこでやっていた悪役のイメージを日本再上陸後そのまま取り入れた。髪を一部金髪にして「まだら狼」となり(後に全部金髪にした)、国際プロレスで活躍、その後タイガー・ジェット・シンとタッグを結成し新日本プロレスで暴れた。「得意技は反則」と言い放ち猪木を苦しめた。
この頃、ファンの間で不思議な噂があった。「上田馬之助はガチンコでやればかなり強いのではないか?」という話。裏切り者のイメージで悪役に徹しているが、実はかなりの実力者なのでは? ということ。「ガチでやれば№1は星野勘太郎」とは定説のようになっていたが、上田馬之助もいい線いくのでは? と言われた。
余談だが、こういう話はプロレスファンの間では微妙なニュアンスを持つ。八百長という話を肯定しているかのように一般の人にはとられるからだ。この感じを説明するのは難しい。ファンなら理解してもらえるとは思うが、「暗黙の了解」を超えた勝負、ととらえて欲しい。この話を続けるとキリがないので深入りは避けるが。
さて、上田馬之助実力レスラー説は、相方のタイガー・ジェット・シンが反則無しでも猪木を苦しめる実力を持っていたということに由来しているのだろうと思われる。シンが強いのなら馬之助も、ということだろう。しかしその実力の片鱗を見せる機会はなかった。
一度だけ、上田馬之助が脚光を浴びたときがあった。それは前田日明率いるUWF勢が新日マットに乗り込んだときのことである。UWFは、今で言えば総合格闘技的色彩が強い。旧来のプロレスを否定する立場で、「プロレスvsUWF」的な様相を呈していた。このとき、上田馬之助は新日サイドに立ち、UWFを叩き潰す側に回ったのである。
猪木と馬之助はタッグを組み、前田、高田延彦らと戦った。これは不思議な光景だった。悪役の上田馬之助が、プロレス側の視点で見れば善玉となっている。会場に上田コールが起こり、全く反則をしない上田馬之助がそこに居た。
上田馬之助は、ファイトスタイルも全て「旧式プロレス」の具現者であった。前田らがアキレス腱固め、脇固めなどの新しい関節技を繰り出すのに対し、上田馬之助はトーホールド、ハンマーロックなどの古典的な技で応酬する。新しいプロレスの波に抗うかのように。
象徴的な場面を記憶している。馬之助が前田にヘッドロックをガッチリと極めた。前田はすぐに振り解こうとするが馬之助は離さず、そのままマットにねじ伏せて締め上げ続けた。最も古典的な技であるヘッドロックでニューウェイブの前田を苦しめる。僕は全身に鳥肌が立った。力道山以来のプロレスは死んでいなかったのだ。
上田馬之助はその後、老いてインディーズ団体に身を投じ、その遠征中事故に遭って脊椎骨折で半身不随となりプロレスを引退、リハビリ生活を送ることとなった。
旧世代のレスラーはもうほとんど居ない。馬場さんは死に、大木金太郎、ラッシャー木村、坂口征二、星野勘太郎、山本小鉄、みんなマットから遠ざかった。猪木も還暦を過ぎた。追憶だけが残る。
話がヘッドロックから大きくずれた。
派生技として、ヘッドロックから投げる技として「フライングメイヤー」がある。ヘッドロックの状態からそのまま投げを放つ「首投げ」である。相手をマットに這わすだけの目的として使われるが、デストロイヤーのフライングメイヤーは自分が大きくジャンプして勢いよく相手を投げるのでダメージが大きい。ヘッドロックをかけた状態のままコーナーを駆け上がってブン投げるということも行われていた。
また、ブルドッキング・ヘッドロックという技がある。"カウボーイ"ボブ・エリスが元祖と言われ、牛の首根っこを掴んでねじ伏せるのを模している。
印象に残る使い手が何人か居るが、これはこの技をどのようにとらえるかで見方が変わってくる。ヘッドロックに捕らえたまま助走し、ジャンプして相手の顔面をマットに叩きつける技だと解釈すると、これはフェイス・バスターの亜流ということになる。僕にはアドリアン・アドニスが印象深い。ジャンプしたときにヘッドロックを解き、抱えていた腕を上に向け、ちょうどエルボーを後頭部に押し付けるようにしてマットに顔面を叩きつけていた。これは効く。
しかし、叩きつける際にヘッドロックを解くと、これは形態としては武藤敬司がよくやるフェイスバスターとさほどかわりがない。ヘッドロックと言うからには最後までロックを離さないでいて欲しいのだが、そうなると引き付けた腕が邪魔をして顔面をマットに叩きつけられない。
もうひとつの見方として、これはネックブリーカーの一種と見られないか? ジャンプして倒れこんでもロックしたままであれば首にかなりの衝撃が走るはず。
この使い手がラッシャー木村であったと思うのだがどうか。木村はマット対角線をドタドタと走り、ロックを外さずジャンプして尻もちをつくようにマットに叩きつける。顔面ではなく明らかに首を狙っている。華麗さはフェイスバスター方式に一歩も二歩も譲るが、本来の牛の首根っこを押さえつけるニュアンスはラッシャー木村の方式が正しいと思われるのだがどうか?
武藤の華麗なフェイスバスターと木村の武骨なブルドッキングヘッドロック。ここにも旧世代と新世代の対比を見ることが出来るような気がしてならない。
ヘッドロックをやらないレスラーはいない、と断言してもいいだろう。
ヘッドロックの解説はいらないと思うが、日本語にすると「頭蓋締め」である。こう書くと凄まじい感じがする。しかしこの技、もちろん必殺技でもないし痛め技の範疇にももはや入らないかもしれない。「繋ぎ技」だろう。しかしかつては重要な技であった。
100年前のプロレス。それは時間無制限の「相手が倒れるまでやる」世界だったらしい。そこでは現在の投げ技、関節技などはまだなく、胴締めを3時間かけ続けて相手を倒す、などのスピード感まるでなしの現在からは考えられない試合が主流。そうした中でヘッドロックは必殺技として認知されていた。元祖はエド・ストラングラー・ルイス。伝説の「絞め殺し屋」と言われたレスラーであり、ヘッドロックをかけ続けて相手を発狂させたという逸話まである。
このエド・ルイス、もちろんレスラー時代は知る由もないが、あの鉄人ルーテーズの師匠であることで高名である。ルイスはテーズにヘッドロックの奥義を叩き込み、そのルイス譲りのテーズの強烈なヘッドロックが、バックドロップを君臨させた複線となっている。このことは村松友視氏の著作に記してあるが、テーズ曰く「人間と言うものは、やられたらやりかえす習性を持つ」。テーズは相手に執拗にヘッドロックをかけ、思わず相手も仕返しにテーズにヘッドロックをかける、その瞬間こそバックドロップのチャンスなのだ、と。
もうこのテーズの時点でヘッドロックが繋ぎ技になっていることに注目。ヘッドロックの必殺技の命脈はテーズによっていったん断たれたのだ。
しかし今でもヘッドロックは滅びてはいない。一試合に一度は出てくる。単純だがアタマを抱え込まれて締められるのはイヤな技だ。長時間になると体力も消耗する。なのでかけられた相手は早々に背中を押してロープに飛ばすか、バックドロップなどの技で切り返そうとする。
ビリー・ジャックというレスラーを憶えている人がいるだろうか。アメリカの怪力選手権か何かで優勝したと言う触れ込みで新日本のリングにあがった。どちらかというと力だけのレスラーで二流だったが、ヘッドロックは凄まじかった。木村健吾のアタマをガッチリ極め、その太い腕の輪を上下にブルブル震わしながら締める。何度もギュッギュッと締めなおす。ありゃやられているレスラーは発狂する、ということもありうるのではないかと思われた。木村健吾はヘッドロックのあと精彩を欠きエルボードロップでフォールされていた。ヘッドロックもなかなかやるのである。
そして最近、ヘッドロックが滅んではいないことを証明する画期的な男が出てきた。カッキーこと垣原賢人である。(カッキ的なカッキー…ヾ(_ _。)ハンセイ) カッキーはアウトドア大好き男で昔アウトドア専門誌に連載経験もあり僕も大ファンなのだが、ヘッドロックを得意としていて、昨今はグラウンドヘッドロックでギブアップを奪うという試合をやっている。首の椎間板ヘルニアを克服してリングに上がる様はそれだけで感動ものであるのに、ヘッドロックを決め技とするとは素晴らしい。先日も田中稔からタップを取っていた。カッキーはエド・ルイス以来の必殺ヘッドロックの使い手ではないかと思うのだがどうだろう。頑張れカッキー。
さて、ちょっと思い出話を。
かつて、初代タイガーマスクが「ケーフェイ」を出版しプロレス界に反旗を翻していたころ、よくバラエティ番組に出演してウラ話を喋っていた。確か欽ちゃんの番組だったと思うが、マスクをとって佐山聡として出演して、ヘッドロックについて語っていたのを思い出す。
「ヘッドロックという技は、パッと見には効いていないように見えますが、人の顔面の、ちょうど頬の下あたりには急所があり、その急所に、かけている手の親指の付け根の骨をめり込ませるような形で引っ掛けて締め上げるので効くのです。ホント涙が出るほど痛いですよ」
と言って、実際にそこに居た見栄晴にヘッドロックを軽くかけた。見栄晴は悲鳴を上げて涙をこぼしていた。なるほど、ヘッドロックは「頭蓋締め」ではなく一種の極め技なのだな、とそのとき認識を新たにした。
この話は実に興味深く、当時高校生だった僕は学校でよくヘッドロックを友人にかけては嫌われた。この「泣き所攻撃」であるヘッドロックは、言わばエド・ルイスの頭蓋骨を締め上げるヘッドロックと比べて「新バージョン」であると言っていいだろう。力任せではなく急所を効率よく極める。なるほどなあ。
今は、この新式ヘッドロックがヘッドロック界の主流なのだろうと佐山タイガーの話を聞いて以来思っていた。みんな頬骨の急所を極めているのであろうと。しかし、まだ旧バージョンヘッドロックも滅びていなかった。
またバラエティ番組だが、「笑っていいとも」のゲストに上田馬之助が出演した際でのタモリとの会話。
タモリ「ヘッドロックってーのは、頬骨の下の急所を締める技なんですってね。」
馬之助「いやーそんなもんじゃないんだ。今からかけてわからせてやる」
と言って、タモリに馬之助はヘッドロックをかけた。それはまさに「旧式」ヘッドロックであって、頭蓋骨をぐいぐい締め上げる。タモリはやはり悲鳴を上げていた。もちろん本気でやっていないだろうが、本気で締めればヤワな頭蓋骨なら砕けてしまうに違いない。タモリは懲りたのか、後に長州力がゲストの際、プロレス技を見せてくれ、という声に長州が「じゃヘッドロックをかけましょうか」と言ったところタモリは必死になって断り、コブラツイストにしてもらっていた。ヘッドロックの怖さがわかる話だと思う。
(みんな記憶で書いているので細部に間違いがあったらごめんなさい。)
上田馬之助とヘッドロックの話は、佐山(タイガー)が新世代のレスラー、馬之助が旧世代のレスラーという対比にもなっているような気がする。しかしながら、この「旧世代レスラー」のことを忘れたくないと思うのである。
話が長すぎた。こんな単純な技の話なのに。次回に続く。
小技さんのブログに垣原賢人のヘッドロックの掲載あります。参照してみてください。カッキーが叫びながらぐいぐい締め上げています。いいですねー。こちらに載ってます。「まむしヘッドロック」とはカッコいい♪
ヘッドロックの解説はいらないと思うが、日本語にすると「頭蓋締め」である。こう書くと凄まじい感じがする。しかしこの技、もちろん必殺技でもないし痛め技の範疇にももはや入らないかもしれない。「繋ぎ技」だろう。しかしかつては重要な技であった。
100年前のプロレス。それは時間無制限の「相手が倒れるまでやる」世界だったらしい。そこでは現在の投げ技、関節技などはまだなく、胴締めを3時間かけ続けて相手を倒す、などのスピード感まるでなしの現在からは考えられない試合が主流。そうした中でヘッドロックは必殺技として認知されていた。元祖はエド・ストラングラー・ルイス。伝説の「絞め殺し屋」と言われたレスラーであり、ヘッドロックをかけ続けて相手を発狂させたという逸話まである。
このエド・ルイス、もちろんレスラー時代は知る由もないが、あの鉄人ルーテーズの師匠であることで高名である。ルイスはテーズにヘッドロックの奥義を叩き込み、そのルイス譲りのテーズの強烈なヘッドロックが、バックドロップを君臨させた複線となっている。このことは村松友視氏の著作に記してあるが、テーズ曰く「人間と言うものは、やられたらやりかえす習性を持つ」。テーズは相手に執拗にヘッドロックをかけ、思わず相手も仕返しにテーズにヘッドロックをかける、その瞬間こそバックドロップのチャンスなのだ、と。
もうこのテーズの時点でヘッドロックが繋ぎ技になっていることに注目。ヘッドロックの必殺技の命脈はテーズによっていったん断たれたのだ。
しかし今でもヘッドロックは滅びてはいない。一試合に一度は出てくる。単純だがアタマを抱え込まれて締められるのはイヤな技だ。長時間になると体力も消耗する。なのでかけられた相手は早々に背中を押してロープに飛ばすか、バックドロップなどの技で切り返そうとする。
ビリー・ジャックというレスラーを憶えている人がいるだろうか。アメリカの怪力選手権か何かで優勝したと言う触れ込みで新日本のリングにあがった。どちらかというと力だけのレスラーで二流だったが、ヘッドロックは凄まじかった。木村健吾のアタマをガッチリ極め、その太い腕の輪を上下にブルブル震わしながら締める。何度もギュッギュッと締めなおす。ありゃやられているレスラーは発狂する、ということもありうるのではないかと思われた。木村健吾はヘッドロックのあと精彩を欠きエルボードロップでフォールされていた。ヘッドロックもなかなかやるのである。
そして最近、ヘッドロックが滅んではいないことを証明する画期的な男が出てきた。カッキーこと垣原賢人である。(カッキ的なカッキー…ヾ(_ _。)ハンセイ) カッキーはアウトドア大好き男で昔アウトドア専門誌に連載経験もあり僕も大ファンなのだが、ヘッドロックを得意としていて、昨今はグラウンドヘッドロックでギブアップを奪うという試合をやっている。首の椎間板ヘルニアを克服してリングに上がる様はそれだけで感動ものであるのに、ヘッドロックを決め技とするとは素晴らしい。先日も田中稔からタップを取っていた。カッキーはエド・ルイス以来の必殺ヘッドロックの使い手ではないかと思うのだがどうだろう。頑張れカッキー。
さて、ちょっと思い出話を。
かつて、初代タイガーマスクが「ケーフェイ」を出版しプロレス界に反旗を翻していたころ、よくバラエティ番組に出演してウラ話を喋っていた。確か欽ちゃんの番組だったと思うが、マスクをとって佐山聡として出演して、ヘッドロックについて語っていたのを思い出す。
「ヘッドロックという技は、パッと見には効いていないように見えますが、人の顔面の、ちょうど頬の下あたりには急所があり、その急所に、かけている手の親指の付け根の骨をめり込ませるような形で引っ掛けて締め上げるので効くのです。ホント涙が出るほど痛いですよ」
と言って、実際にそこに居た見栄晴にヘッドロックを軽くかけた。見栄晴は悲鳴を上げて涙をこぼしていた。なるほど、ヘッドロックは「頭蓋締め」ではなく一種の極め技なのだな、とそのとき認識を新たにした。
この話は実に興味深く、当時高校生だった僕は学校でよくヘッドロックを友人にかけては嫌われた。この「泣き所攻撃」であるヘッドロックは、言わばエド・ルイスの頭蓋骨を締め上げるヘッドロックと比べて「新バージョン」であると言っていいだろう。力任せではなく急所を効率よく極める。なるほどなあ。
今は、この新式ヘッドロックがヘッドロック界の主流なのだろうと佐山タイガーの話を聞いて以来思っていた。みんな頬骨の急所を極めているのであろうと。しかし、まだ旧バージョンヘッドロックも滅びていなかった。
またバラエティ番組だが、「笑っていいとも」のゲストに上田馬之助が出演した際でのタモリとの会話。
タモリ「ヘッドロックってーのは、頬骨の下の急所を締める技なんですってね。」
馬之助「いやーそんなもんじゃないんだ。今からかけてわからせてやる」
と言って、タモリに馬之助はヘッドロックをかけた。それはまさに「旧式」ヘッドロックであって、頭蓋骨をぐいぐい締め上げる。タモリはやはり悲鳴を上げていた。もちろん本気でやっていないだろうが、本気で締めればヤワな頭蓋骨なら砕けてしまうに違いない。タモリは懲りたのか、後に長州力がゲストの際、プロレス技を見せてくれ、という声に長州が「じゃヘッドロックをかけましょうか」と言ったところタモリは必死になって断り、コブラツイストにしてもらっていた。ヘッドロックの怖さがわかる話だと思う。
(みんな記憶で書いているので細部に間違いがあったらごめんなさい。)
上田馬之助とヘッドロックの話は、佐山(タイガー)が新世代のレスラー、馬之助が旧世代のレスラーという対比にもなっているような気がする。しかしながら、この「旧世代レスラー」のことを忘れたくないと思うのである。
話が長すぎた。こんな単純な技の話なのに。次回に続く。
小技さんのブログに垣原賢人のヘッドロックの掲載あります。参照してみてください。カッキーが叫びながらぐいぐい締め上げています。いいですねー。こちらに載ってます。「まむしヘッドロック」とはカッコいい♪
フライングヘッドシザースについて書いたのだけれども、その結文でも触れたように、フランケンシュタイナーはフライングヘッドシザースの発展系であるかのように思える。技の目指すところは違うし形状も異なるのではあるが。
フランケンシュタイナーという技は、その名の通りスタイナー兄弟の弟スコット・スタイナーの必殺技である。ジャンプして相手の頭を足に挟んで、(スタイナーからみて)後方に反って勢いよく回転するように挟んだ相手の頭を引っ張り込み、相手の脳天をマットにたたきつけるというえげつない技である。
相手の頭を足で挟んで倒す、という面から見ればそれはフライングヘッドシザースと同じ。形状が異なって見えるのは、相手の頭を挟む方向がフライングヘッドシザースの場合側面からのことが多いのに対し、フランケンシュタイナーは確実に相手の正面からである。そしてフライングヘッドシザースが相手を倒す、或いはその倒す過程で相手の首を捻って痛めることに主眼があるのに対し(だから投げるときに捻りを加える)、フランケンシュタイナーは相手の脳天をマットに突き刺す技である。捻って投げるのと違い正面から後方へ相手を投げるのであるから、相当の背筋力が必要となる。表現力に欠けるところはお許し下さい。
スタイナー兄弟は日本マット登場後すぐにファンを魅了した。パワーとスピード感。タッグチームとしてはウォリアーズ以来の衝撃だったかもしれない。兄リック・スタイナーの投げっぱなしジャーマンと弟スコットのフランケンシュタイナーは日本マットでも流行し模倣するレスラーが次々と現れた。流行技になったとも言える。
日本ではJr.ヘビー級の選手が多く使用した。ヘビー級では武藤敬司が第一人者だろう。武藤は少ない個性的な技で試合を組み立てる天才的レスラーだが、フランケンシュタイナーをレパートリーに加えることによってさらに魅力を増したと言える。なんと言っても派手。つなぎ技でなくシャニングウィザード、ムーンサルトプレス、4の字固めと並んで堂々のフォール技としている。前記の技を全て返されたとき、武藤はフランケンシュタイナーを繰り出す。蝶野との三冠へビー級の試合だったか(記憶があいまいなのだが)、「みんな技は返された。フランケンシュタイナーを持っていて本当に良かった」と語ったことがある。この技を信頼しているのだ。
日本ではさらに雪崩式フランケンシュタイナーまで生まれた。最初にやったのはライガーだったように憶えているが正確なところはわからない。武藤もこれをやり、破壊力は凄まじいと言える。
しかしながら、日本でこのフランケンシュタイナーが発展するとともに、ちょっと首をかしげる場面も出てくるのである。それはさんざん「第一人者」と言っているので矛盾するようだが武藤のフランケンシュタイナーにも言えることである。
元祖スコット・スタイナーは、このフランケンシュタイナーを必殺技としていて、あくまでもノックアウト・フォールを目指す。脳天をマットに叩きつけて失神、体固めで3カウントである。しかし日本で多く見られるフランケンシュタイナーは、叩きつけた段階で相手の両肩に座り込むような形状になるため、そのまま後ろ手に相手の足を取り、エビ固めのような状態でフォールを取る。うーん。こういう形だと、フランケンシュタイナーが固め技に見えちゃうじゃないか。
僕はジャーマンスープレックスよりバックドロップが好き、と以前に書いたことがあるが、それはバックドロップの方が相手をノックアウトして体固めでフォールだからである。ジャーマンはそのまま固めるので、ノックアウトじゃなくてもフォールが取れるように見える。そこに威力の強弱が見えてしまう。パワーボムも同様。テリー・ゴディはまっ逆さまに相手をマットに叩きつけて体固めでフォール。しかし日本では天龍をはじめとして、叩きつけた形状のままエビ固めにしてしまう。パワーボムの威力を信じて体固めにした方が3カウントに説得力が生まれるではないか。僕はずっとそう思っている。プロレスというものは、単純に3カウントを奪うだけを目標にすると力の優劣が見えない。相手に立ち上がる気力を失わせる破壊力のある技をフィニッシュにすることが魅力の原点ではないかと思うのだ。
クドクドと書いてしまったが、フランケンシュタイナーを放ち後ろ手でエビ固め、は技の価値を半減させてしまうように思える。やはり体固めで決めて欲しい。
そして、もうひとつ体固めにして欲しい理由がある。そのまま固めれば、それはウラカン・ラナと非常に近しい技になってしまうからである。
ウラカン・ラナというのは、いわゆるあっという間の固め技のひとつである。
そのネーミングから想像出来るようにこれはメキシコのルチャリブレの技。ウラカン・ラミレスが元祖と言われる。相手の肩の上に乗り(肩車されているような状態ですね)、そのまま前方へ倒れこんで相手をエビ固めに丸め込む。高角度回転エビ固めだ。
これは相手の後ろから頭に飛びつくわけであるが、これが正面から飛びつけばもうフランケンシュタイナーと変わらない。そして、正面から飛びつく「ウラカン・ラナ・インベルティダ」という技もあるのである。ウラカン・ラナ・インベルティダの方がむしろメジャーになって、単にウラカン・ラナと言えばこのインベルティダを指すことすらある。
形状からすれば、ウラカン・ラナは相手の肩に乗る、という定義があるが、そんなもの技の攻防の中では何がなんだかわからない。相手の頭を足で挟み込むフランケンシュタイナーも、深く入れば(モモあたりで挟み込めば)もはや肩車とさほどかわりはないのである。そしてエビに固めればもうほとんど同じだ。プロレスに詳しくない人が見れば両者の違いには気づかないだろう。こんなことでいいのか。
フランケンシュタイナーは相手の脳天をマットに叩きつける「高角度パイルドライバー」とでも称すべきもの。回転エビ固めと同じでは必殺技の名が泣く。ぜひともフランケンシュナイダーを放てば体固めでフォールを奪って欲しい。
小技さんのブログにフランケンシュタイナーの掲載あります。イラスト参照してみてください。金村キンタローのフランケンシュタイナーはこちら♪ この状態から相手の脳天をマットに叩きつけるわけです。キクのですよねぇ。小技さん、いつもお世話になります。
フランケンシュタイナーという技は、その名の通りスタイナー兄弟の弟スコット・スタイナーの必殺技である。ジャンプして相手の頭を足に挟んで、(スタイナーからみて)後方に反って勢いよく回転するように挟んだ相手の頭を引っ張り込み、相手の脳天をマットにたたきつけるというえげつない技である。
相手の頭を足で挟んで倒す、という面から見ればそれはフライングヘッドシザースと同じ。形状が異なって見えるのは、相手の頭を挟む方向がフライングヘッドシザースの場合側面からのことが多いのに対し、フランケンシュタイナーは確実に相手の正面からである。そしてフライングヘッドシザースが相手を倒す、或いはその倒す過程で相手の首を捻って痛めることに主眼があるのに対し(だから投げるときに捻りを加える)、フランケンシュタイナーは相手の脳天をマットに突き刺す技である。捻って投げるのと違い正面から後方へ相手を投げるのであるから、相当の背筋力が必要となる。表現力に欠けるところはお許し下さい。
スタイナー兄弟は日本マット登場後すぐにファンを魅了した。パワーとスピード感。タッグチームとしてはウォリアーズ以来の衝撃だったかもしれない。兄リック・スタイナーの投げっぱなしジャーマンと弟スコットのフランケンシュタイナーは日本マットでも流行し模倣するレスラーが次々と現れた。流行技になったとも言える。
日本ではJr.ヘビー級の選手が多く使用した。ヘビー級では武藤敬司が第一人者だろう。武藤は少ない個性的な技で試合を組み立てる天才的レスラーだが、フランケンシュタイナーをレパートリーに加えることによってさらに魅力を増したと言える。なんと言っても派手。つなぎ技でなくシャニングウィザード、ムーンサルトプレス、4の字固めと並んで堂々のフォール技としている。前記の技を全て返されたとき、武藤はフランケンシュタイナーを繰り出す。蝶野との三冠へビー級の試合だったか(記憶があいまいなのだが)、「みんな技は返された。フランケンシュタイナーを持っていて本当に良かった」と語ったことがある。この技を信頼しているのだ。
日本ではさらに雪崩式フランケンシュタイナーまで生まれた。最初にやったのはライガーだったように憶えているが正確なところはわからない。武藤もこれをやり、破壊力は凄まじいと言える。
しかしながら、日本でこのフランケンシュタイナーが発展するとともに、ちょっと首をかしげる場面も出てくるのである。それはさんざん「第一人者」と言っているので矛盾するようだが武藤のフランケンシュタイナーにも言えることである。
元祖スコット・スタイナーは、このフランケンシュタイナーを必殺技としていて、あくまでもノックアウト・フォールを目指す。脳天をマットに叩きつけて失神、体固めで3カウントである。しかし日本で多く見られるフランケンシュタイナーは、叩きつけた段階で相手の両肩に座り込むような形状になるため、そのまま後ろ手に相手の足を取り、エビ固めのような状態でフォールを取る。うーん。こういう形だと、フランケンシュタイナーが固め技に見えちゃうじゃないか。
僕はジャーマンスープレックスよりバックドロップが好き、と以前に書いたことがあるが、それはバックドロップの方が相手をノックアウトして体固めでフォールだからである。ジャーマンはそのまま固めるので、ノックアウトじゃなくてもフォールが取れるように見える。そこに威力の強弱が見えてしまう。パワーボムも同様。テリー・ゴディはまっ逆さまに相手をマットに叩きつけて体固めでフォール。しかし日本では天龍をはじめとして、叩きつけた形状のままエビ固めにしてしまう。パワーボムの威力を信じて体固めにした方が3カウントに説得力が生まれるではないか。僕はずっとそう思っている。プロレスというものは、単純に3カウントを奪うだけを目標にすると力の優劣が見えない。相手に立ち上がる気力を失わせる破壊力のある技をフィニッシュにすることが魅力の原点ではないかと思うのだ。
クドクドと書いてしまったが、フランケンシュタイナーを放ち後ろ手でエビ固め、は技の価値を半減させてしまうように思える。やはり体固めで決めて欲しい。
そして、もうひとつ体固めにして欲しい理由がある。そのまま固めれば、それはウラカン・ラナと非常に近しい技になってしまうからである。
ウラカン・ラナというのは、いわゆるあっという間の固め技のひとつである。
そのネーミングから想像出来るようにこれはメキシコのルチャリブレの技。ウラカン・ラミレスが元祖と言われる。相手の肩の上に乗り(肩車されているような状態ですね)、そのまま前方へ倒れこんで相手をエビ固めに丸め込む。高角度回転エビ固めだ。
これは相手の後ろから頭に飛びつくわけであるが、これが正面から飛びつけばもうフランケンシュタイナーと変わらない。そして、正面から飛びつく「ウラカン・ラナ・インベルティダ」という技もあるのである。ウラカン・ラナ・インベルティダの方がむしろメジャーになって、単にウラカン・ラナと言えばこのインベルティダを指すことすらある。
形状からすれば、ウラカン・ラナは相手の肩に乗る、という定義があるが、そんなもの技の攻防の中では何がなんだかわからない。相手の頭を足で挟み込むフランケンシュタイナーも、深く入れば(モモあたりで挟み込めば)もはや肩車とさほどかわりはないのである。そしてエビに固めればもうほとんど同じだ。プロレスに詳しくない人が見れば両者の違いには気づかないだろう。こんなことでいいのか。
フランケンシュタイナーは相手の脳天をマットに叩きつける「高角度パイルドライバー」とでも称すべきもの。回転エビ固めと同じでは必殺技の名が泣く。ぜひともフランケンシュナイダーを放てば体固めでフォールを奪って欲しい。
小技さんのブログにフランケンシュタイナーの掲載あります。イラスト参照してみてください。金村キンタローのフランケンシュタイナーはこちら♪ この状態から相手の脳天をマットに叩きつけるわけです。キクのですよねぇ。小技さん、いつもお世話になります。
パソコンテレビ「GyaO」は誠にありがたい。これは、ストリーミング配信されるPCで見るテレビなのだが、今までのPCテレビはインプレスでもなんでも有料配信であったのに対しこれは無料なのである。なぜ無料かと言うとCMが入るからである。しかしCMくらい大したことではない。
各ジャンルのチャンネルがあり映画や音楽などいろいろ見られるが、僕はもちろんスポーツ→格闘技→プロレスと進む。現在、「黄金のプロレスラー列伝」シリーズが配信されていて楽しい。'60年代はじめのアメリカンプロレスの様子をこうやって知ることが出来る。ルーテーズを見られるのはレンタルビデオだけではなくなった。
今配信では、テーズの他アントニオ・ロッカ、ハンス・シュミット、バーン・ガニア、ボボ・ブラジルなどの勇姿が見られるが、中でも「地獄の料理人」シュミットは充実していた。僕は以前に「バックブリーカー Ⅱ」の記事の中でシュミット式バックブリーカーに触れ、「むろんシュミットのは古くて見たことはありません」と書いたことがあったがついに見ることが出来た。うれしいなぁ。そのバックブリーカーの記事には「シュミット式はたいていわき腹や腰の横にヒザをぶち当てるが、昔はちゃんと背中から落としていた由」と書いたが本当にシュミットは背中にヒザをブチ当てていた。うんうん。
しかし、この40年くらい前のプロレスというのは、いわゆる旧時代のプロレスであって、僕のような技マニアならともかく今のプロレスファンからすれば物足りないだろう。スピード感はさほどなく、技もキーロックやハンマーロック全盛で飛び技と言えばドロップキック程度。ボボ・ブラジルのココバットやフリッツ・フォン・エリックのストマッククローの威力は凄いが概して単調である。今のファンなら退屈してしまうだろう。
しかしながら、立体的技がほとんど無い中にあって、アントニオ・ロッカがフライングヘッドシザースを放っていたのには驚いた。そうかこの技はこんなに昔からあったのか。
アントニオ・ロッカと言えばアルゼンチンバックブリーカーの元祖であり、猪木がロッカを尊敬して自らを「アントニオ」と名乗ったことでも知られる。均整の取れた体躯で、髪は薄い。(そう言えばテーズにせよガニアにせよみんな髪が薄い。男性ホルモン過剰なのだろうか)
そのロッカがテーズにフライングヘッドシザースを放った。正確に言えばフライングと言うほど飛んでなくて、「ヘッドシザースホイップ」と言うほうが正確かもしれない。しかしこの時代を考えれば十分だろう。
立っている相手の頭を足で挟んでねじるように引っ張り倒す。自分の体重を相手の首にかけて引っ張り倒すことでかなりのダメージが考えられる。ジャンプして派手に相手の頭に足を絡ませれば「フライング~」と言うのかもしれないが境界線は明確でない。いずれにせよこの時代では魅せる技のひとつだったと言える。
さて、簡単にフライングでない「ヘッドシザース」という技にもふれておこう。これは単純と言えば単純で、相手の頭を両足で挟んで絞めるという技。ダメージを蓄積させるために使用し、ヘッドロックなどと同様に相手のスタミナを奪う。あまり動きがないために、今ではこの技は首4の字固めと同様「ちょっと休憩」的なニュアンスにも見える。むしろヘッドシザースをかけられた時に、倒立をしてその勢いでスッと首を抜いて逃げる西村修が有名で、西村に倒立逃げをさせるがためにヘッドシザースをかけるという現象が見られる。西村にヘッドシザースをかけると会場が沸くのだ。
ヘッドシザースといえばこのように単純な絞め技だが、「クロックヘッドシザース」となるとこれは関節技の様相を呈する。相手の頭を挟み込むまでは同じだが、それをねじり上げるように極める。頭は両足であさっての方向にねじ伏せられて首は捻られ呼吸も難しくなる。UWF系レスラーがよく使ったが中でも木戸修のはエグかった。
派生技に健介のストラングルホールドαがある。最も強い脚の力で首をひん曲げてしまうのだからえげつない。
簡単にと言いながら書きすぎた。
フライングヘッドシザースについて戻ると、とにかくこの技で印象深いのは僕には圧倒的にグラン浜田である。グラン浜田は、僕にとってはメキシカンプロレス、ルチャリブレの奥深さを知らしめてくれたレスラーである。
とにかく飛んだり跳ねたりの軽業的プロレスで、そのスピードは凄かった。メキシコ=ミルマスカラスの認識だった僕にとって、軽量級プロレスの華麗さ、美しさを教えてくれた。後にタイガーマスクが登場するが、グラン浜田なくしてタイガーも生まれなかったのではないだろうか。
その浜田のフライングヘッドシザースは、立ち姿勢の相手の頭(首)をジャンプして足で挟み、挟んだ相手の頭を支点としてねじ切るように自分の身体を回転させて相手を吹っ飛ばす。自らの体重が相手の首に完全にかかり、遠心力まで加わってその威力は凄く、しかも美しい。これ以上のフライングヘッドシザースを僕は知らない。
ヘビー級になると、相手の首をねじ切るといった感はなく、相手の頭を挟んだら前方に倒れこみ相手を倒す。形勢逆転に使用し、相手を倒すことに主眼が置かれる。
長州力なども「おやっ?」と思う場面で使用していたが、印象に残るのは坂口征二のフライングヘッドシザースだ。坂口はこのような技は滅多に使わないが、vsアンドレ・ザ・ジャイアント戦で使用した場面は今でも忘れがたい。
ボディスラムも通用しない人間山脈アンドレをマットに這わせることは至難の業であるが、坂口はアンドレにジャンプ一番飛びつき、フライングヘッドシザースをかけることによってアンドレを前方に倒した。それはもうド迫力で、この場面はビデオをダビングして今も所持している。
さて、このフライングヘッドシザースは、相手を倒すだけでなく、うまくやれば相手の脳天をマットに叩きつけることも可能である。それを実際に行っているのが「フランケンシュタイナー」という技であると思うのだが、もう長くなりすぎて言及出来ない。次回にまた続かせていただくことをお許し願いたい。
各ジャンルのチャンネルがあり映画や音楽などいろいろ見られるが、僕はもちろんスポーツ→格闘技→プロレスと進む。現在、「黄金のプロレスラー列伝」シリーズが配信されていて楽しい。'60年代はじめのアメリカンプロレスの様子をこうやって知ることが出来る。ルーテーズを見られるのはレンタルビデオだけではなくなった。
今配信では、テーズの他アントニオ・ロッカ、ハンス・シュミット、バーン・ガニア、ボボ・ブラジルなどの勇姿が見られるが、中でも「地獄の料理人」シュミットは充実していた。僕は以前に「バックブリーカー Ⅱ」の記事の中でシュミット式バックブリーカーに触れ、「むろんシュミットのは古くて見たことはありません」と書いたことがあったがついに見ることが出来た。うれしいなぁ。そのバックブリーカーの記事には「シュミット式はたいていわき腹や腰の横にヒザをぶち当てるが、昔はちゃんと背中から落としていた由」と書いたが本当にシュミットは背中にヒザをブチ当てていた。うんうん。
しかし、この40年くらい前のプロレスというのは、いわゆる旧時代のプロレスであって、僕のような技マニアならともかく今のプロレスファンからすれば物足りないだろう。スピード感はさほどなく、技もキーロックやハンマーロック全盛で飛び技と言えばドロップキック程度。ボボ・ブラジルのココバットやフリッツ・フォン・エリックのストマッククローの威力は凄いが概して単調である。今のファンなら退屈してしまうだろう。
しかしながら、立体的技がほとんど無い中にあって、アントニオ・ロッカがフライングヘッドシザースを放っていたのには驚いた。そうかこの技はこんなに昔からあったのか。
アントニオ・ロッカと言えばアルゼンチンバックブリーカーの元祖であり、猪木がロッカを尊敬して自らを「アントニオ」と名乗ったことでも知られる。均整の取れた体躯で、髪は薄い。(そう言えばテーズにせよガニアにせよみんな髪が薄い。男性ホルモン過剰なのだろうか)
そのロッカがテーズにフライングヘッドシザースを放った。正確に言えばフライングと言うほど飛んでなくて、「ヘッドシザースホイップ」と言うほうが正確かもしれない。しかしこの時代を考えれば十分だろう。
立っている相手の頭を足で挟んでねじるように引っ張り倒す。自分の体重を相手の首にかけて引っ張り倒すことでかなりのダメージが考えられる。ジャンプして派手に相手の頭に足を絡ませれば「フライング~」と言うのかもしれないが境界線は明確でない。いずれにせよこの時代では魅せる技のひとつだったと言える。
さて、簡単にフライングでない「ヘッドシザース」という技にもふれておこう。これは単純と言えば単純で、相手の頭を両足で挟んで絞めるという技。ダメージを蓄積させるために使用し、ヘッドロックなどと同様に相手のスタミナを奪う。あまり動きがないために、今ではこの技は首4の字固めと同様「ちょっと休憩」的なニュアンスにも見える。むしろヘッドシザースをかけられた時に、倒立をしてその勢いでスッと首を抜いて逃げる西村修が有名で、西村に倒立逃げをさせるがためにヘッドシザースをかけるという現象が見られる。西村にヘッドシザースをかけると会場が沸くのだ。
ヘッドシザースといえばこのように単純な絞め技だが、「クロックヘッドシザース」となるとこれは関節技の様相を呈する。相手の頭を挟み込むまでは同じだが、それをねじり上げるように極める。頭は両足であさっての方向にねじ伏せられて首は捻られ呼吸も難しくなる。UWF系レスラーがよく使ったが中でも木戸修のはエグかった。
派生技に健介のストラングルホールドαがある。最も強い脚の力で首をひん曲げてしまうのだからえげつない。
簡単にと言いながら書きすぎた。
フライングヘッドシザースについて戻ると、とにかくこの技で印象深いのは僕には圧倒的にグラン浜田である。グラン浜田は、僕にとってはメキシカンプロレス、ルチャリブレの奥深さを知らしめてくれたレスラーである。
とにかく飛んだり跳ねたりの軽業的プロレスで、そのスピードは凄かった。メキシコ=ミルマスカラスの認識だった僕にとって、軽量級プロレスの華麗さ、美しさを教えてくれた。後にタイガーマスクが登場するが、グラン浜田なくしてタイガーも生まれなかったのではないだろうか。
その浜田のフライングヘッドシザースは、立ち姿勢の相手の頭(首)をジャンプして足で挟み、挟んだ相手の頭を支点としてねじ切るように自分の身体を回転させて相手を吹っ飛ばす。自らの体重が相手の首に完全にかかり、遠心力まで加わってその威力は凄く、しかも美しい。これ以上のフライングヘッドシザースを僕は知らない。
ヘビー級になると、相手の首をねじ切るといった感はなく、相手の頭を挟んだら前方に倒れこみ相手を倒す。形勢逆転に使用し、相手を倒すことに主眼が置かれる。
長州力なども「おやっ?」と思う場面で使用していたが、印象に残るのは坂口征二のフライングヘッドシザースだ。坂口はこのような技は滅多に使わないが、vsアンドレ・ザ・ジャイアント戦で使用した場面は今でも忘れがたい。
ボディスラムも通用しない人間山脈アンドレをマットに這わせることは至難の業であるが、坂口はアンドレにジャンプ一番飛びつき、フライングヘッドシザースをかけることによってアンドレを前方に倒した。それはもうド迫力で、この場面はビデオをダビングして今も所持している。
さて、このフライングヘッドシザースは、相手を倒すだけでなく、うまくやれば相手の脳天をマットに叩きつけることも可能である。それを実際に行っているのが「フランケンシュタイナー」という技であると思うのだが、もう長くなりすぎて言及出来ない。次回にまた続かせていただくことをお許し願いたい。
何故? と言われると返答に困るのだが、僕は昔からエルボードロップという技が好きである。様々なプロフィールにもお遊びとして「得意技:エルボードロップ」という一文をよく入れる。これによって、相手は僕のことを「プロレス好き」と認識してくれる。もちろん実際はやりませんけどね。
この技の解説も不要だろうと思う。ヒジを倒れている相手に向かって落とす、という単純かつ明快なもの。胸元に落とすことが最も多いが、首に近いところに落とすとこれはもう強烈無比の必殺技となる。
この技の元祖は、スタニスラウス・ズビスコだと言われている。この人は古い。20世紀初頭(100年前ですな)に活躍した伝説のレスラーで、同世代のレスラーと言えばハッケンシュミット、エド・ルイス、フランク・ゴッチ、ジョー・ステッカー…。たまらない名前ばかりだ。もちろんみんな見たことはない。当時のレスリングと言えば、ヘッドロックで一時間、ボディシザースで一時間…という途方もない力比べプロレスの時代で、ズビスコのエルボードロップは唯一の立体殺法だったかもしれない。ちょうどフランク・ゴッチのトーホールドが唯一の必殺関節技であったように。かのような時代から受け継がれている技で歴史もある。これから比べればバックドロップなんて新しい。
ズビスコのことはもう知る由もないのだが(しかしズビスコはなんと77歳まで現役だったと伝えられている。知っている人はいるかもしれない)、その直系の弟子と言えるのがあのジョニー・バレンタインである。
ジョニー・バレンタインも、もう既に僕達の世代にとっては幻のレスラーではあるのだが、エルボードロップの代名詞のような存在である。昭和41年の猪木東京プロレス旗揚げに参戦し、さんざん猪木を苦しめた。その金髪をなびかせてジャンプして落とすエルボードロップはまさに必殺であったと伝えられる。「毒針殺法」と言う言葉もこのときもしかしたら生まれたのではないか。見たかったレスラーであるが、昭和50年にセスナ墜落事故で大怪我をして引退。4年前に他界した。残念。
息子のグレッグ・バレンタインは何度も見たが、残念ながらさほど印象に残るレスラーではなかった。
僕達の世代で最も印象に残るエルボードロップと言えば、それはもうアブドーラ・ザ・ブッチャーにとどめをさすのではないか。
ブッチャーと言えば、デストロイヤーと並んで日本で最も愛された外国人レスラーと言ってもいいだろう。プロレスを知らない人でもブッチャーは知っている。見事なまでの悪役であり、リングに立てば必ず流血した。その深く傷が刻まれた額はとにかく憎々しげで、凶器攻撃を旨としていた怖ろしいレスラーだったが、何故か愛された。まん丸な体型、そしてちょっとした仕草にユーモアがあったからかもしれない。同様の極め付けのヒールとして同世代にタイガー・ジェット・シンが居たが、彼がTVコマーシャルに出るなどちょっと考えられない。不思議な魅力を持ったレスラーだった。
ブッチャーの試合と言うのは全編これ反則というもので、小道具を必ず隠し持っていて相手を襲う。テリー・ファンクの腕に突き立てたフォークは今も語り草だ。いとも簡単に額から大量の血を流し、その真っ赤に染まった顔面から狂気の目が爛々と光る、という、どちらかと言えば技で魅せるよりその存在感、佇まいが凄かった。そして流血を見た相手レスラーが攻め立てようとすると「地獄突き」を繰り出す。喉ボトケを目がけて手の先端を突き立てる。その独特の「カラテ」ポーズも様になっていた。
ブッチャーは「反則負け」になるのが仕事、という側面もあり、なかなかピンフォールを取ることはない。しかし、大事な試合や、相手がだらしない場合には最後にフォールを奪ってしまう。その必殺技がエルボードロップであった。
相手が倒れているその場所に向かって走りこみジャンプして、喉笛にヒジを落とす。あのブッチャーがジャンプ出来るというだけで凄いのに、そのヒジに全体重を預けノドにめり込ませるのであるから返せるわけがない。馬場さんも鶴田もこれを決められたら終わりである。最高峰の必殺技と言えよう。
ブッチャーについて語りすぎた。
さて、ランニング・エルボードロップと言う技がある。走りこんで助走を効かせエルボードロップに威力を増そうというもの。エルボーしか打たないダスティ・ローデスなどはフィニッシュにはやはり走りこんでいた。また体重の軽いJr.ヘビー級などでは迫力を増すために走って打つ。フィニッシュには結びつきにくいが。ヘビー級でもアニマル浜口などはランニングエルボードロップを連発してアピールしていた。
ジャンピングエルボードロップは、前述のバレンタインやブッチャーも飛び上がって打つので広義で言えば同じことであるが、現在の武藤敬司や棚橋弘至は実にハデに飛び上がる。どちらかと言えばヒジの先端より二の腕あたりが中心となって当たっているのでダメージは少ないだろうがなんせカッコいい。ジャンプ中にいくつか動きを入れてハデにしているのもミソ。
さて、その場ジャンプではなくてコーナーからのエルボードロップ、つまりダイビング・エルボードロップとなると、まず確実にフォールに結び付けてもらいたいところなのだが、そうもいかないのが現状かもしれない。昔よく天龍がコーナートップからのエルボードロップを打っていたが、どうも受身を優先させている雰囲気がしてあまり絵にならなかった(天龍ファンすみません)。ヒジを狙ったところに怖々落とすというよりも、身体ごと相手に向かっていくという方が迫力が出るのではないか。
僕が印象に残るコーナーからのダイビングエルボードロップは、昔ちょっとだけ来日したデビット・シュルツのそれである。「催眠医師」だったか「催眠博士」だったかもう呼ばれ方も忘れてしまったが、彼のコーナーからのエルボードロップはスピードがあった。天龍がふわりと飛ぶ感じであったのに対し、コーナーポストを蹴って相手目がけてビュンと飛んでくる感じで迫力があった。回数は見ていないけれども打てば必ずピンフォールだったように記憶している。シュルツはさほど目立ったレスラーではなく二流だったかもしれないけれど、この一撃で僕には忘れられないレスラーとなっている。
ブッチャーはまだ現役である。ズビスコが77歳までやったことを思うとまだまだ。どすんと一発エルボードロップで会場を沸かせて欲しい。
この技の解説も不要だろうと思う。ヒジを倒れている相手に向かって落とす、という単純かつ明快なもの。胸元に落とすことが最も多いが、首に近いところに落とすとこれはもう強烈無比の必殺技となる。
この技の元祖は、スタニスラウス・ズビスコだと言われている。この人は古い。20世紀初頭(100年前ですな)に活躍した伝説のレスラーで、同世代のレスラーと言えばハッケンシュミット、エド・ルイス、フランク・ゴッチ、ジョー・ステッカー…。たまらない名前ばかりだ。もちろんみんな見たことはない。当時のレスリングと言えば、ヘッドロックで一時間、ボディシザースで一時間…という途方もない力比べプロレスの時代で、ズビスコのエルボードロップは唯一の立体殺法だったかもしれない。ちょうどフランク・ゴッチのトーホールドが唯一の必殺関節技であったように。かのような時代から受け継がれている技で歴史もある。これから比べればバックドロップなんて新しい。
ズビスコのことはもう知る由もないのだが(しかしズビスコはなんと77歳まで現役だったと伝えられている。知っている人はいるかもしれない)、その直系の弟子と言えるのがあのジョニー・バレンタインである。
ジョニー・バレンタインも、もう既に僕達の世代にとっては幻のレスラーではあるのだが、エルボードロップの代名詞のような存在である。昭和41年の猪木東京プロレス旗揚げに参戦し、さんざん猪木を苦しめた。その金髪をなびかせてジャンプして落とすエルボードロップはまさに必殺であったと伝えられる。「毒針殺法」と言う言葉もこのときもしかしたら生まれたのではないか。見たかったレスラーであるが、昭和50年にセスナ墜落事故で大怪我をして引退。4年前に他界した。残念。
息子のグレッグ・バレンタインは何度も見たが、残念ながらさほど印象に残るレスラーではなかった。
僕達の世代で最も印象に残るエルボードロップと言えば、それはもうアブドーラ・ザ・ブッチャーにとどめをさすのではないか。
ブッチャーと言えば、デストロイヤーと並んで日本で最も愛された外国人レスラーと言ってもいいだろう。プロレスを知らない人でもブッチャーは知っている。見事なまでの悪役であり、リングに立てば必ず流血した。その深く傷が刻まれた額はとにかく憎々しげで、凶器攻撃を旨としていた怖ろしいレスラーだったが、何故か愛された。まん丸な体型、そしてちょっとした仕草にユーモアがあったからかもしれない。同様の極め付けのヒールとして同世代にタイガー・ジェット・シンが居たが、彼がTVコマーシャルに出るなどちょっと考えられない。不思議な魅力を持ったレスラーだった。
ブッチャーの試合と言うのは全編これ反則というもので、小道具を必ず隠し持っていて相手を襲う。テリー・ファンクの腕に突き立てたフォークは今も語り草だ。いとも簡単に額から大量の血を流し、その真っ赤に染まった顔面から狂気の目が爛々と光る、という、どちらかと言えば技で魅せるよりその存在感、佇まいが凄かった。そして流血を見た相手レスラーが攻め立てようとすると「地獄突き」を繰り出す。喉ボトケを目がけて手の先端を突き立てる。その独特の「カラテ」ポーズも様になっていた。
ブッチャーは「反則負け」になるのが仕事、という側面もあり、なかなかピンフォールを取ることはない。しかし、大事な試合や、相手がだらしない場合には最後にフォールを奪ってしまう。その必殺技がエルボードロップであった。
相手が倒れているその場所に向かって走りこみジャンプして、喉笛にヒジを落とす。あのブッチャーがジャンプ出来るというだけで凄いのに、そのヒジに全体重を預けノドにめり込ませるのであるから返せるわけがない。馬場さんも鶴田もこれを決められたら終わりである。最高峰の必殺技と言えよう。
ブッチャーについて語りすぎた。
さて、ランニング・エルボードロップと言う技がある。走りこんで助走を効かせエルボードロップに威力を増そうというもの。エルボーしか打たないダスティ・ローデスなどはフィニッシュにはやはり走りこんでいた。また体重の軽いJr.ヘビー級などでは迫力を増すために走って打つ。フィニッシュには結びつきにくいが。ヘビー級でもアニマル浜口などはランニングエルボードロップを連発してアピールしていた。
ジャンピングエルボードロップは、前述のバレンタインやブッチャーも飛び上がって打つので広義で言えば同じことであるが、現在の武藤敬司や棚橋弘至は実にハデに飛び上がる。どちらかと言えばヒジの先端より二の腕あたりが中心となって当たっているのでダメージは少ないだろうがなんせカッコいい。ジャンプ中にいくつか動きを入れてハデにしているのもミソ。
さて、その場ジャンプではなくてコーナーからのエルボードロップ、つまりダイビング・エルボードロップとなると、まず確実にフォールに結び付けてもらいたいところなのだが、そうもいかないのが現状かもしれない。昔よく天龍がコーナートップからのエルボードロップを打っていたが、どうも受身を優先させている雰囲気がしてあまり絵にならなかった(天龍ファンすみません)。ヒジを狙ったところに怖々落とすというよりも、身体ごと相手に向かっていくという方が迫力が出るのではないか。
僕が印象に残るコーナーからのダイビングエルボードロップは、昔ちょっとだけ来日したデビット・シュルツのそれである。「催眠医師」だったか「催眠博士」だったかもう呼ばれ方も忘れてしまったが、彼のコーナーからのエルボードロップはスピードがあった。天龍がふわりと飛ぶ感じであったのに対し、コーナーポストを蹴って相手目がけてビュンと飛んでくる感じで迫力があった。回数は見ていないけれども打てば必ずピンフォールだったように記憶している。シュルツはさほど目立ったレスラーではなく二流だったかもしれないけれど、この一撃で僕には忘れられないレスラーとなっている。
ブッチャーはまだ現役である。ズビスコが77歳までやったことを思うとまだまだ。どすんと一発エルボードロップで会場を沸かせて欲しい。
時事的なことだけれども(にしては旧聞だけど^^;)、2005/7/18東京ドームでの三沢vs川田戦で、三沢はエルボーを打ちまくって勝った。三沢はときどきこういう試合をやって喜ばせてくれる。
こういうドームなどの大型大会でしかもメインであるのだから、大技でしめくくろうと思うのが普通である。なので、タイガードライバー'91か、エメラルドフロージョン垂直落下式(いつものエメラルドは背中落ちに堕落している)であろうと予想していた。事実、川田はパワーボム脳天落ちをやろうとしていたし三沢も'91をやりかけた(これは滑って不発)。
しかし最後はエルボーを何発か打って川田を沈めた。これは偶発的ではなくて「決めてやろう」というエルボーだった。試合後インタビューで三沢は「無駄な動きはやめた」と言っている。これは極めて重要で、ヘタな大技よりもエルボーの方に信頼をおいていると言うことである。かつて鶴田がジャンピングニーパットを信頼していたのと同じだ。つなぎ技として認知されているエルボーをドームのメインでフィニッシュに使うというのはエルボー好きの僕にとって実に見応えがあった。
エルボーパットという技は、つまりヒジでぶん殴る技である。正拳で殴ることが禁じられているプロレスにあって、チョップとともに相手にダメージを与える手技として有効なので、多くのレスラーが用いている。初めて使ったのは誰か、などということはもう考えなくてもいいだろう。
しかし、前述したようにたいていはつなぎの技である。本来人間の身体でコブシ以外では頭、ヒジ、ヒザが最も固い部分であり凶器となりうるはずである。であるがヒジでぶん殴って決めてやろうなどと考えるレスラーはほとんどいない。地味だからであろうか。
三沢は昔からエルボーにこだわりを持って使い続けている。プロレス的大技ももちろん使うが、エルボーを出さない試合はない。それに、このようなビッグ大会でフィニッシュに使うところに、エルボーの名手としての矜持が見て取れる。実際、見ていてもその衝突力は他のレスラーと一線を画している。体重の乗せ方が凄いのだな。三沢も一試合で何発も打つため、多少は強弱をつけて加減して放っているのだろうが、本気で打てば完全にフォールも取れる技としている。かつて、三沢はエルボーでスタン・ハンセンを失神に追い込んだことがあった。こうして時々破壊力を見せ付けるのがいい。観客も三沢のエルボーならフォールでも納得だろう。こうして、誰もがやるエルボーパットの価値を三沢は高めたのだ。
三沢はこのエルボーで様々な派生技も使う。まあワンツーエルボー、もしくは回転式エルボーなどは特に分類するほどでもないが。しかし、三沢は人間ロケット、トペ・スイシーダでエルボーを使う。ここまでくると完全にこだわりである。こういう個性を他のレスラーも大切にして欲しい。
エルボーと言えばこのエルボーパット以外ではもちろんエルボードロップがすぐ念頭に浮かぶだろうが、これは別立てで書きたいので今回は立ち技エルボーに限りたいと思う。そうなると、まず浮かぶのはエルボースタンプである。
エルボーパットが横から振り抜く形であるのに対し、エルボースタンプは上から振り下ろす形である。したがって顔面を狙うのではなく主として脳天や背中に打つこととなる。
すぐに思い出すのはスタン・ハンセンやディック・マードックである。そういえば彼らは両方ともロングホーンを出す、テキサス式のファイトである。アマリロ道場に何か秘密でもあるのか? それはわからないが彼らはエルボースタンプの連打で相手に徹底的にダメージを与える。マードックとテキサスアウトローズを結成していたダスティ・ローデスも多用する。ローデスってヒジ以外に技を使ったっけな、という感じさえある。
そのアマリロ道場の主、ドリー・ファンクJrはエルボースマッシュを多用する。これはつまり下から突き上げ型で、アゴの先端を狙って打つ。これはどちらかと言えば衝突力よりもスピードであった。子供の頃ドリーのエルボースマッシュを見て、何をやっているのかよくわからなかった。それほどスピーディーに相手のアゴを狙う。数打てばダメージが残りそうだ。最近は「プロレスレトロ技博物館」の西村修がよく放っている。
またこれは立ち技エルボーなのかよくわからないのだが、武藤敬司のスペースローリングエルボーなどは実に武藤らしいハデな技ですなあ。相手をコーナーに押し込んで、そこに向かってエルボーを放つ。普通にやればエルボーパットだが、側転してジャンプして打ち込む。効果はよく分からないがとにかくカッコいいな。これは真似するのは難しいだろう。いや出来るが、武藤のようにカッコよく出来るかどうか。
さて、もう一つ書きたいのだが、いや書こうかどうか迷ったのだがとりあえず書く。アックス・ボンバーである。
アックスボンバーは、言わずと知れたハルク・ホーガンの必殺技。相手をロープに振り、返ってきたところをカウンターで、自分の腕を立てたまま直角に曲げ(ガッツポーズみたいな感じと思ってください)、相手の顔面目がけて振りぬく。ヒジの内側あたりが顔面にめり込むようにヒットし、まずノックアウト。
ヒジを中心に腕全体を顔面に打ち込むわけで、これはエルボーパットの亜種と言える。三沢のエルボーが水平打ちならアックスボンバーは…腕を立てて振りぬく。ヒジを顔面目がけて打つことには変わりはない。
しかしですねぇ…。この技はどうもラリアットっぽい。昔の私蔵のビデオなどを見ていると、初期の頃は猪木の顔がひしゃげるようなアックスボンバーをホーガンは打っていたのだが、そのうちに二の腕あたりが首にヒットするようになり、下からカチ上げるような感じになっていった。そうなるともうラリアットなのだな。そもそもホーガンはハンセンへのライバル心からこの技を開発したといわれている。日本の後継者大森隆男も、やはりそんな感じ(ラリアット気味)になっている。
それで破壊力が消えるわけではないのだが、エルボーとは違った技になった。しょうがないのかな。ガッツポーズの腕をカウンターで顔面に喰らわすとなると、相当の腕力が必要(だから超人ハルクなわけだが)。しかしながら顔面を立てたヒジでぶん殴るという豪快な感じが「斧爆弾」には相応しいと思うのである、が。
エルボードロップについては後日。
小技さんのブログにエルボーの掲載あります。イラスト参照してみてください。三沢光晴のエルボーはこちら♪ また大森隆男のアックスボンバーはこちら♪ いつもお世話になっています。
こういうドームなどの大型大会でしかもメインであるのだから、大技でしめくくろうと思うのが普通である。なので、タイガードライバー'91か、エメラルドフロージョン垂直落下式(いつものエメラルドは背中落ちに堕落している)であろうと予想していた。事実、川田はパワーボム脳天落ちをやろうとしていたし三沢も'91をやりかけた(これは滑って不発)。
しかし最後はエルボーを何発か打って川田を沈めた。これは偶発的ではなくて「決めてやろう」というエルボーだった。試合後インタビューで三沢は「無駄な動きはやめた」と言っている。これは極めて重要で、ヘタな大技よりもエルボーの方に信頼をおいていると言うことである。かつて鶴田がジャンピングニーパットを信頼していたのと同じだ。つなぎ技として認知されているエルボーをドームのメインでフィニッシュに使うというのはエルボー好きの僕にとって実に見応えがあった。
エルボーパットという技は、つまりヒジでぶん殴る技である。正拳で殴ることが禁じられているプロレスにあって、チョップとともに相手にダメージを与える手技として有効なので、多くのレスラーが用いている。初めて使ったのは誰か、などということはもう考えなくてもいいだろう。
しかし、前述したようにたいていはつなぎの技である。本来人間の身体でコブシ以外では頭、ヒジ、ヒザが最も固い部分であり凶器となりうるはずである。であるがヒジでぶん殴って決めてやろうなどと考えるレスラーはほとんどいない。地味だからであろうか。
三沢は昔からエルボーにこだわりを持って使い続けている。プロレス的大技ももちろん使うが、エルボーを出さない試合はない。それに、このようなビッグ大会でフィニッシュに使うところに、エルボーの名手としての矜持が見て取れる。実際、見ていてもその衝突力は他のレスラーと一線を画している。体重の乗せ方が凄いのだな。三沢も一試合で何発も打つため、多少は強弱をつけて加減して放っているのだろうが、本気で打てば完全にフォールも取れる技としている。かつて、三沢はエルボーでスタン・ハンセンを失神に追い込んだことがあった。こうして時々破壊力を見せ付けるのがいい。観客も三沢のエルボーならフォールでも納得だろう。こうして、誰もがやるエルボーパットの価値を三沢は高めたのだ。
三沢はこのエルボーで様々な派生技も使う。まあワンツーエルボー、もしくは回転式エルボーなどは特に分類するほどでもないが。しかし、三沢は人間ロケット、トペ・スイシーダでエルボーを使う。ここまでくると完全にこだわりである。こういう個性を他のレスラーも大切にして欲しい。
エルボーと言えばこのエルボーパット以外ではもちろんエルボードロップがすぐ念頭に浮かぶだろうが、これは別立てで書きたいので今回は立ち技エルボーに限りたいと思う。そうなると、まず浮かぶのはエルボースタンプである。
エルボーパットが横から振り抜く形であるのに対し、エルボースタンプは上から振り下ろす形である。したがって顔面を狙うのではなく主として脳天や背中に打つこととなる。
すぐに思い出すのはスタン・ハンセンやディック・マードックである。そういえば彼らは両方ともロングホーンを出す、テキサス式のファイトである。アマリロ道場に何か秘密でもあるのか? それはわからないが彼らはエルボースタンプの連打で相手に徹底的にダメージを与える。マードックとテキサスアウトローズを結成していたダスティ・ローデスも多用する。ローデスってヒジ以外に技を使ったっけな、という感じさえある。
そのアマリロ道場の主、ドリー・ファンクJrはエルボースマッシュを多用する。これはつまり下から突き上げ型で、アゴの先端を狙って打つ。これはどちらかと言えば衝突力よりもスピードであった。子供の頃ドリーのエルボースマッシュを見て、何をやっているのかよくわからなかった。それほどスピーディーに相手のアゴを狙う。数打てばダメージが残りそうだ。最近は「プロレスレトロ技博物館」の西村修がよく放っている。
またこれは立ち技エルボーなのかよくわからないのだが、武藤敬司のスペースローリングエルボーなどは実に武藤らしいハデな技ですなあ。相手をコーナーに押し込んで、そこに向かってエルボーを放つ。普通にやればエルボーパットだが、側転してジャンプして打ち込む。効果はよく分からないがとにかくカッコいいな。これは真似するのは難しいだろう。いや出来るが、武藤のようにカッコよく出来るかどうか。
さて、もう一つ書きたいのだが、いや書こうかどうか迷ったのだがとりあえず書く。アックス・ボンバーである。
アックスボンバーは、言わずと知れたハルク・ホーガンの必殺技。相手をロープに振り、返ってきたところをカウンターで、自分の腕を立てたまま直角に曲げ(ガッツポーズみたいな感じと思ってください)、相手の顔面目がけて振りぬく。ヒジの内側あたりが顔面にめり込むようにヒットし、まずノックアウト。
ヒジを中心に腕全体を顔面に打ち込むわけで、これはエルボーパットの亜種と言える。三沢のエルボーが水平打ちならアックスボンバーは…腕を立てて振りぬく。ヒジを顔面目がけて打つことには変わりはない。
しかしですねぇ…。この技はどうもラリアットっぽい。昔の私蔵のビデオなどを見ていると、初期の頃は猪木の顔がひしゃげるようなアックスボンバーをホーガンは打っていたのだが、そのうちに二の腕あたりが首にヒットするようになり、下からカチ上げるような感じになっていった。そうなるともうラリアットなのだな。そもそもホーガンはハンセンへのライバル心からこの技を開発したといわれている。日本の後継者大森隆男も、やはりそんな感じ(ラリアット気味)になっている。
それで破壊力が消えるわけではないのだが、エルボーとは違った技になった。しょうがないのかな。ガッツポーズの腕をカウンターで顔面に喰らわすとなると、相当の腕力が必要(だから超人ハルクなわけだが)。しかしながら顔面を立てたヒジでぶん殴るという豪快な感じが「斧爆弾」には相応しいと思うのである、が。
エルボードロップについては後日。
小技さんのブログにエルボーの掲載あります。イラスト参照してみてください。三沢光晴のエルボーはこちら♪ また大森隆男のアックスボンバーはこちら♪ いつもお世話になっています。
プロレスファンでなくても4の字固めは誰でも知っている。僕の子供の頃はプロレスごっこでかける技としては逆エビ固めと双璧で、次にコブラツイストがくるだろうか。
今の子供たちはさておいて、僕達の世代でなぜ4の字固めがそんなに膾炙しているのかと言えば、それはデストロイヤーの功績だろう。
ジ・インテリジェンス・センセーショナル・ザ・デストロイヤーの初来日は昭和38年だという。生まれてないや。長じてから懐かしビデオで見たデストロイヤーはそりゃものすごい迫力で、力道山とのインター選手権で見せた凄みは怖ろしいものだった。力道山に4の字固めを仕掛け、最後に左足がかかった瞬間力道山が「あああ! !」と断末魔のような声を上げた試合を見たことがある人は多いと思う。あれを見れば誰でもデストロイヤーの悪魔のような凄さと、4の字固めの恐さを刻印されたのではないだろうか。
残念ながらそういう世代でない僕が4の字固めに親しんだのは、和田アキ子の「うわさのチャンネル」だった。おちゃらけたデストロイヤーがせんだみつおに4の字をかけ、苦しんでいるのをゴッドねぇちゃんが笑うという仕掛け。あれを見て子供はみんな真似をした。浸透したことはしたのだが、本当のデストロイヤーの恐さはあんなものではない。
元祖は誰か? これは残念ながら知らない。誰か教えてくれないだろうか? ただ、デストロイヤー以前に僕らの世代では伝説となっている使い手に「野生児」バディ・ロジャースがいる。かつてこの技でNWA世界王者に君臨した麗しのネイチェアボーイ、魅せるレスラーとして著名なロジャースを見ることが叶わなかったのは残念である。もっとも、ロジャースは来日していないので無理な話なのだが。
このキザでハンサムでありながらやることは凄いというプランをそのまま継承したのが「狂乱の貴公子」リック・フレアーであり、4の字をそのままフィニッシュに使うところもコピーである。ゴージャスな雰囲気を漂わせながらNWA世界王者を永年にわたって守り通したフレアーの千両役者ぶりを見て、ロジャースを想像するのみである。
しかしながら、実は4の字固めという技は地味である。なぜ地味かと言えば、マットに双方とも寝転んでしまうからである。かかってしまえば見栄えがしない。したがって、この技はかけるまでが魅せる勝負である。デストロイヤーのように何度もニースタンプを仕掛けて足を弱らせたり、またフレアーのようにニークラッシャーを放ったりして、どんどん相手を追い詰めていく。この4の字固めへの予兆が一種のクライマックスであって見ごたえがある。そして頃やよしと相手の足をスピニングトーホールドのように極め、自分の足を絡ませて最後に右足(デストロイヤーは左足だったと思うがそれでは4にならない)をフックする。この右足のフックまでにも一攻防あるのが常。
かかってしまえばあとはじわじわと責めあげるのみだが、寝技なので相手の苦悶の表情も見えない。なのでデストロイヤーは両手をバンバンマットに叩きつけてアピールする。フレアーは自分の半身を起こし、片手を上げて半身になって4の字を見せようとする。なかなかに大変である。
さて、4の字固めは裏返ると攻守逆転してかけた方が痛くなる、という話はよく言われる話。これがあるから裏返しの攻防で力が入り、観客を飽きさせないとも言えるのだが、これは難しい話だ。実際にやってみると裏返ってもやっぱりかけられた方も痛い。それにかけたほうも、確かにヒザ頭が下になるので痛いが、攻守逆転というほどではないような気がする。だがギミックと言い切ってしまうには自信がないので(僕らは遊びで本気の攻防をやっていないので)、神秘の世界と考えておくことにする。
印象に残る使い手として、他にジャック・ブリスコやパット・パターソンがいる。忘れてはいけないのがジョニー・パワーズ。彼の場合は「8の字固め」と称して猪木を苦しめたが、プロレスファンの間では「なんで8の字? 」という話は呑んでるとよく出る話。4の字の倍効くから8なのだよ、とか、パワーズはかけている自分の右足を相手の足の裏側に回してロックするため、見た目が双方4の字を形作るような形態になるため、4+4で8、またはその自分の足が4のようになるため上から見ると8に見える、などと諸説紛々である。こんな話をしながら呑んでいると楽しい。
日本では、藤波が印象に残る。名勝負は昭和60年の対猪木戦で、猪木が藤波に「折れ! この野郎! ! 」と叫んだ伝説の試合。結局猪木の卍固めでレフェリーのルーテーズが試合を止めたが、試合後の藤波のインタビュー「(長州軍やUWF勢の大量離脱の後で)今猪木さんの足を折ったら、会社は、新日本はどうなってしまうんですか」と言ったことも深く印象に残っている。
現在の使い手として最も秀でているのはむろん武藤敬司。武藤は、デストロイヤーのニースタンプやフレアーのニークラッシャーと違い、まずヒザへの低空ドロップキック、そしてドラゴンスクリューで徐々に追い詰める。さすが天才武藤、試合の組み立てが上手い。
しかしながら、派手な技で会場を沸かせる武藤なのに、なんで4の字をフィニッシュで使用するのか? シャイニングウィザードなどの派手な技が武藤には似合うのに。この疑問の回答の一つが95年の東京ドームIWGPヘビーvs高田伸彦戦だろう。新日本対UWFインターの図式の中で、実質的ではあるが地味な関節技を多用するUWF勢に対し、武藤は最もプロレス的な関節技である4の字固めで勝って見せた。プロレスの牙城を4の字固めで守ったところに価値がある。あれは4の字固めでなければいけなかった。このために武藤は4の字固めを…と感動したものだ。
類似の技として、永田のナガタロックがある。安生も似たような技を使っていた記憶がある。4の字の方が効くのになぁとはいつも思っているのだが。また、天山が以前足卍固めというのをやっていた。なんだか複雑でうまく表現できない技。
現在は武藤以外は、みんな痛め技となっている。かつての裏返して攻守逆転という攻防は影が薄くなり、みんなロープへと逃れる。どんなにマット中央でかけても向かい合って寝転んだ関節技ではどうしてもロープが近い。そのために安直にみんなエスケープする。本当に極まれば動けないだろうとは思うのだが、もはや4の字固めでギブアップすれば弱く見える、というくらいに技の価値は落ちてきている。
4の字固めにこれ以上の発展は望めないのだが、例えば怪力レスラーである小橋や中西が意外な場面で使えば面白いのだが。タイトルマッチで、使うとは思わなかった中西がマット中央でがっちり極めればその意外性に驚くだろう。今はフォールと言えば垂直落下で脳天を狙うかラリアットでぶん殴るばかりのプロレスで、意外な古典技が復権すると面白いとは思うのだが。
小技さんのブログに4の字固めの掲載あります。イラスト参照してみてください。ミミ萩原の4の字固めはこちら♪ また武藤敬司の4の字固めは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
今の子供たちはさておいて、僕達の世代でなぜ4の字固めがそんなに膾炙しているのかと言えば、それはデストロイヤーの功績だろう。
ジ・インテリジェンス・センセーショナル・ザ・デストロイヤーの初来日は昭和38年だという。生まれてないや。長じてから懐かしビデオで見たデストロイヤーはそりゃものすごい迫力で、力道山とのインター選手権で見せた凄みは怖ろしいものだった。力道山に4の字固めを仕掛け、最後に左足がかかった瞬間力道山が「あああ! !」と断末魔のような声を上げた試合を見たことがある人は多いと思う。あれを見れば誰でもデストロイヤーの悪魔のような凄さと、4の字固めの恐さを刻印されたのではないだろうか。
残念ながらそういう世代でない僕が4の字固めに親しんだのは、和田アキ子の「うわさのチャンネル」だった。おちゃらけたデストロイヤーがせんだみつおに4の字をかけ、苦しんでいるのをゴッドねぇちゃんが笑うという仕掛け。あれを見て子供はみんな真似をした。浸透したことはしたのだが、本当のデストロイヤーの恐さはあんなものではない。
元祖は誰か? これは残念ながら知らない。誰か教えてくれないだろうか? ただ、デストロイヤー以前に僕らの世代では伝説となっている使い手に「野生児」バディ・ロジャースがいる。かつてこの技でNWA世界王者に君臨した麗しのネイチェアボーイ、魅せるレスラーとして著名なロジャースを見ることが叶わなかったのは残念である。もっとも、ロジャースは来日していないので無理な話なのだが。
このキザでハンサムでありながらやることは凄いというプランをそのまま継承したのが「狂乱の貴公子」リック・フレアーであり、4の字をそのままフィニッシュに使うところもコピーである。ゴージャスな雰囲気を漂わせながらNWA世界王者を永年にわたって守り通したフレアーの千両役者ぶりを見て、ロジャースを想像するのみである。
しかしながら、実は4の字固めという技は地味である。なぜ地味かと言えば、マットに双方とも寝転んでしまうからである。かかってしまえば見栄えがしない。したがって、この技はかけるまでが魅せる勝負である。デストロイヤーのように何度もニースタンプを仕掛けて足を弱らせたり、またフレアーのようにニークラッシャーを放ったりして、どんどん相手を追い詰めていく。この4の字固めへの予兆が一種のクライマックスであって見ごたえがある。そして頃やよしと相手の足をスピニングトーホールドのように極め、自分の足を絡ませて最後に右足(デストロイヤーは左足だったと思うがそれでは4にならない)をフックする。この右足のフックまでにも一攻防あるのが常。
かかってしまえばあとはじわじわと責めあげるのみだが、寝技なので相手の苦悶の表情も見えない。なのでデストロイヤーは両手をバンバンマットに叩きつけてアピールする。フレアーは自分の半身を起こし、片手を上げて半身になって4の字を見せようとする。なかなかに大変である。
さて、4の字固めは裏返ると攻守逆転してかけた方が痛くなる、という話はよく言われる話。これがあるから裏返しの攻防で力が入り、観客を飽きさせないとも言えるのだが、これは難しい話だ。実際にやってみると裏返ってもやっぱりかけられた方も痛い。それにかけたほうも、確かにヒザ頭が下になるので痛いが、攻守逆転というほどではないような気がする。だがギミックと言い切ってしまうには自信がないので(僕らは遊びで本気の攻防をやっていないので)、神秘の世界と考えておくことにする。
印象に残る使い手として、他にジャック・ブリスコやパット・パターソンがいる。忘れてはいけないのがジョニー・パワーズ。彼の場合は「8の字固め」と称して猪木を苦しめたが、プロレスファンの間では「なんで8の字? 」という話は呑んでるとよく出る話。4の字の倍効くから8なのだよ、とか、パワーズはかけている自分の右足を相手の足の裏側に回してロックするため、見た目が双方4の字を形作るような形態になるため、4+4で8、またはその自分の足が4のようになるため上から見ると8に見える、などと諸説紛々である。こんな話をしながら呑んでいると楽しい。
日本では、藤波が印象に残る。名勝負は昭和60年の対猪木戦で、猪木が藤波に「折れ! この野郎! ! 」と叫んだ伝説の試合。結局猪木の卍固めでレフェリーのルーテーズが試合を止めたが、試合後の藤波のインタビュー「(長州軍やUWF勢の大量離脱の後で)今猪木さんの足を折ったら、会社は、新日本はどうなってしまうんですか」と言ったことも深く印象に残っている。
現在の使い手として最も秀でているのはむろん武藤敬司。武藤は、デストロイヤーのニースタンプやフレアーのニークラッシャーと違い、まずヒザへの低空ドロップキック、そしてドラゴンスクリューで徐々に追い詰める。さすが天才武藤、試合の組み立てが上手い。
しかしながら、派手な技で会場を沸かせる武藤なのに、なんで4の字をフィニッシュで使用するのか? シャイニングウィザードなどの派手な技が武藤には似合うのに。この疑問の回答の一つが95年の東京ドームIWGPヘビーvs高田伸彦戦だろう。新日本対UWFインターの図式の中で、実質的ではあるが地味な関節技を多用するUWF勢に対し、武藤は最もプロレス的な関節技である4の字固めで勝って見せた。プロレスの牙城を4の字固めで守ったところに価値がある。あれは4の字固めでなければいけなかった。このために武藤は4の字固めを…と感動したものだ。
類似の技として、永田のナガタロックがある。安生も似たような技を使っていた記憶がある。4の字の方が効くのになぁとはいつも思っているのだが。また、天山が以前足卍固めというのをやっていた。なんだか複雑でうまく表現できない技。
現在は武藤以外は、みんな痛め技となっている。かつての裏返して攻守逆転という攻防は影が薄くなり、みんなロープへと逃れる。どんなにマット中央でかけても向かい合って寝転んだ関節技ではどうしてもロープが近い。そのために安直にみんなエスケープする。本当に極まれば動けないだろうとは思うのだが、もはや4の字固めでギブアップすれば弱く見える、というくらいに技の価値は落ちてきている。
4の字固めにこれ以上の発展は望めないのだが、例えば怪力レスラーである小橋や中西が意外な場面で使えば面白いのだが。タイトルマッチで、使うとは思わなかった中西がマット中央でがっちり極めればその意外性に驚くだろう。今はフォールと言えば垂直落下で脳天を狙うかラリアットでぶん殴るばかりのプロレスで、意外な古典技が復権すると面白いとは思うのだが。
小技さんのブログに4の字固めの掲載あります。イラスト参照してみてください。ミミ萩原の4の字固めはこちら♪ また武藤敬司の4の字固めは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
このことをさっきまで知らなかった。あまりにもショッキングでどう書いていいのかまだ模索中である。
僕は夜、PCを開いてネット接続すると、自分のブログを書き出す前にまず情報サイトを見る。その中の一つにみるくてぃーさんのプロレス愛溢れるブログがあり、ここで今日のプロレスニュースを見て、あーだこーだと考えるのが常である。今日も訪問して、目を疑うような記事に接することになってしまった。
「橋本真也さん急死!!」
そんな馬鹿な。確かに右肩を手術してリハビリ中なのは知っている。しかし、死ぬような話ではなかったはず。いったいどうなっているのだ? 詳細をリンクして下さっているのでニュースサイトに飛ぶ。
「“破壊王”のニックネームで親しまれたプロレスラーの橋本真也さんが11日午前、横浜市内の市立大付属市民総合医療センターで死去した。40歳だった。死因は脳内出血とみられる。」
愕然、である。なんでだ?!
彼と僕とは同い年である。そんなに早く逝ってしまっていいのか。先だって新日の5/14のドーム大会に武藤敬司、三沢光晴が参戦し、蝶野が「これで橋本さえリングに上がってくれれば…」という声明を出した。全くそのとおりで、闘魂三銃士に三沢が加わるプロレス・サミットは僕も本当に見たかった。今プロレス界の千両役者といえばやはり彼らであっただろうから。
プロレス技の記事を書いてこれで22回なのだけれども、その第一回目が「ブレーンバスター」だった。そのときに僕は、垂直落下式を復活させたのは橋本真也ではないだろうか? と書いた。僕の世代は垂直落下と言えばもちろんディック・マードックであった(キラー・カール・コックスはさすがに知らない)のだが、その垂直落下といえば「尻もち式」であった。よく考えれば橋本真也は違う。体重をぐっと相手の首に乗せて脳天を叩きつける。復活、と言うよりも「元祖」と言うべきであった。それに、橋本は「ブレーンバスター」ではなく「DDT」と自ら言っている。
DDTとブレーンバスターの違いは実はかなり難しい。分類学というほどたいそうなものではないのだけれど、ノーザンライトボムやジャックハマーとも系統的に分けなくてはならない。僕は単純に、相手の腕を自分の首に巻きつけるか否かという点で区別しようとしていた。だから、アントニオ・ドライバーや初代タイガーのタイガードライバーもDDTと同系統とみる。つまりフロントネックチャンスリーだ。その中で、相手の脳天をマットに突き刺すような角度で投げるのを「DDT」と言う。そんなふうに理解していた。橋本の垂直落下式DDTは、相手の腕を自分の首の後ろにもってくる。相手の抱え上げ方がブレーンバスターと同じだった。じゃあブレーンバスターじゃないの? と思ってしまうのだが、橋本曰く「足のステップがDDTなんだ」そうである。そうやって考えると、足を蹴り上げるようにステップを踏む。あれがDDTの証しなのか。難しいので橋本選手にもう一度教えを乞いたいが、残念ながらもうその術はない。橋本はさらにジャンプしてのDDTも放つ。あの橋本の体重がすべて脳天に集中してマットに突き刺さるということを想像しただけでも恐ろしい。100%フォールを奪える必殺技であった。あれだけ体重を乗せて放てるレスラーはもう出てはこまい。あれもやはりDDTなのだろうか? 橋本選手に解説を聞きたいのだがもうそれも詮無いこととなった。
しかし、本人はDDTを放っていたのだろうが、そのDDTが、既に痛め技の範疇となっていたブレーンバスターを復活させたのもまた事実である。橋本はやはり「元祖」でありブレーンバスターを甦らせたことには間違いはない。
橋本は1984年に新日本プロレスに入門。すぐに頭角をあらわした、というわけではなかったかもしれない。同期の武藤には最初水をあけられた感があった。スター性という面で武藤は素晴らしいものを確かに持っていたからだ。しかし、橋本の眼光は鋭かった。
僕は、デビューしてまだ間もないころの橋本の試合のVTRをまだ持っている。当時TV中継はまだ一時間枠で、時々若手の試合も放送したのだ。それは6人タッグで、木村健吾・山田恵一(ライガーですな)・武藤組vs星野勘太郎・小杉俊二・橋本組の試合。最も若手が武藤と橋本だ。まだ橋本が黒のショートタイツをはいているのでもしかしたらお宝映像かもしれない。当時は小杉がヤングライオン杯を制した時でノッていた。しかし一番若い橋本は負けじとぶつかっていた。ニールキックも当時から放っていて、蹴りは重かった。フロントスープレックスやブロックバスターなどの珍しい技も繰り出し、最後は木村健吾の稲妻レッグラリアートに沈んだ。しかし、その眼光の鋭さは、優しい目をした武藤よりも印象に残る。
その後海外遠征、そして凱旋帰国してからは「闘魂三銃士」として長州軍離脱、UWF離脱の後をよく埋めて頑張った。輝かしいタイトル歴も光る。エースとして新日を引っ張っていた。
しかし、小川直也戦以降、少し路線が変わってしまう。引退、そして千羽鶴による復活。しかし会社と対立し、解雇そしてゼロワン創設へと向かうのだ。
橋本は、自ら進んで荒海に出てしまったとも言える。そのことが、彼に無理を強いることになったのではないだろうか。全日、ノア、そしてハッスルと戦いの場をいくつも数え、団体枠を超えるキーマンともなった。よそで思惑があって出来ない試合もゼロワンなら出来る。このままでいけば、薩長同盟を成功させた坂本龍馬のようにプロレス団体の融和そして統一の礎になれたかもしれなかった。しかし…。
手術、そしてゼロワン崩壊宣言。負債を抱えた橋本だったが、レスラーはマットに上がらないと何も出来ない。リハビリに励む毎日であったと聞くが、精神的にもかなり無理があったのではないだろうか。焦りもあっただろう。そうした中で…。
11日午前、脳幹出血のため死亡。享年40歳。あまりにも早すぎる死。袈裟斬りチョップも水面蹴りも、何人たりとも反せない垂直落下式DDTも、もはや見ることはかなわない。ただ合掌。
僕は夜、PCを開いてネット接続すると、自分のブログを書き出す前にまず情報サイトを見る。その中の一つにみるくてぃーさんのプロレス愛溢れるブログがあり、ここで今日のプロレスニュースを見て、あーだこーだと考えるのが常である。今日も訪問して、目を疑うような記事に接することになってしまった。
「橋本真也さん急死!!」
そんな馬鹿な。確かに右肩を手術してリハビリ中なのは知っている。しかし、死ぬような話ではなかったはず。いったいどうなっているのだ? 詳細をリンクして下さっているのでニュースサイトに飛ぶ。
「“破壊王”のニックネームで親しまれたプロレスラーの橋本真也さんが11日午前、横浜市内の市立大付属市民総合医療センターで死去した。40歳だった。死因は脳内出血とみられる。」
愕然、である。なんでだ?!
彼と僕とは同い年である。そんなに早く逝ってしまっていいのか。先だって新日の5/14のドーム大会に武藤敬司、三沢光晴が参戦し、蝶野が「これで橋本さえリングに上がってくれれば…」という声明を出した。全くそのとおりで、闘魂三銃士に三沢が加わるプロレス・サミットは僕も本当に見たかった。今プロレス界の千両役者といえばやはり彼らであっただろうから。
プロレス技の記事を書いてこれで22回なのだけれども、その第一回目が「ブレーンバスター」だった。そのときに僕は、垂直落下式を復活させたのは橋本真也ではないだろうか? と書いた。僕の世代は垂直落下と言えばもちろんディック・マードックであった(キラー・カール・コックスはさすがに知らない)のだが、その垂直落下といえば「尻もち式」であった。よく考えれば橋本真也は違う。体重をぐっと相手の首に乗せて脳天を叩きつける。復活、と言うよりも「元祖」と言うべきであった。それに、橋本は「ブレーンバスター」ではなく「DDT」と自ら言っている。
DDTとブレーンバスターの違いは実はかなり難しい。分類学というほどたいそうなものではないのだけれど、ノーザンライトボムやジャックハマーとも系統的に分けなくてはならない。僕は単純に、相手の腕を自分の首に巻きつけるか否かという点で区別しようとしていた。だから、アントニオ・ドライバーや初代タイガーのタイガードライバーもDDTと同系統とみる。つまりフロントネックチャンスリーだ。その中で、相手の脳天をマットに突き刺すような角度で投げるのを「DDT」と言う。そんなふうに理解していた。橋本の垂直落下式DDTは、相手の腕を自分の首の後ろにもってくる。相手の抱え上げ方がブレーンバスターと同じだった。じゃあブレーンバスターじゃないの? と思ってしまうのだが、橋本曰く「足のステップがDDTなんだ」そうである。そうやって考えると、足を蹴り上げるようにステップを踏む。あれがDDTの証しなのか。難しいので橋本選手にもう一度教えを乞いたいが、残念ながらもうその術はない。橋本はさらにジャンプしてのDDTも放つ。あの橋本の体重がすべて脳天に集中してマットに突き刺さるということを想像しただけでも恐ろしい。100%フォールを奪える必殺技であった。あれだけ体重を乗せて放てるレスラーはもう出てはこまい。あれもやはりDDTなのだろうか? 橋本選手に解説を聞きたいのだがもうそれも詮無いこととなった。
しかし、本人はDDTを放っていたのだろうが、そのDDTが、既に痛め技の範疇となっていたブレーンバスターを復活させたのもまた事実である。橋本はやはり「元祖」でありブレーンバスターを甦らせたことには間違いはない。
橋本は1984年に新日本プロレスに入門。すぐに頭角をあらわした、というわけではなかったかもしれない。同期の武藤には最初水をあけられた感があった。スター性という面で武藤は素晴らしいものを確かに持っていたからだ。しかし、橋本の眼光は鋭かった。
僕は、デビューしてまだ間もないころの橋本の試合のVTRをまだ持っている。当時TV中継はまだ一時間枠で、時々若手の試合も放送したのだ。それは6人タッグで、木村健吾・山田恵一(ライガーですな)・武藤組vs星野勘太郎・小杉俊二・橋本組の試合。最も若手が武藤と橋本だ。まだ橋本が黒のショートタイツをはいているのでもしかしたらお宝映像かもしれない。当時は小杉がヤングライオン杯を制した時でノッていた。しかし一番若い橋本は負けじとぶつかっていた。ニールキックも当時から放っていて、蹴りは重かった。フロントスープレックスやブロックバスターなどの珍しい技も繰り出し、最後は木村健吾の稲妻レッグラリアートに沈んだ。しかし、その眼光の鋭さは、優しい目をした武藤よりも印象に残る。
その後海外遠征、そして凱旋帰国してからは「闘魂三銃士」として長州軍離脱、UWF離脱の後をよく埋めて頑張った。輝かしいタイトル歴も光る。エースとして新日を引っ張っていた。
しかし、小川直也戦以降、少し路線が変わってしまう。引退、そして千羽鶴による復活。しかし会社と対立し、解雇そしてゼロワン創設へと向かうのだ。
橋本は、自ら進んで荒海に出てしまったとも言える。そのことが、彼に無理を強いることになったのではないだろうか。全日、ノア、そしてハッスルと戦いの場をいくつも数え、団体枠を超えるキーマンともなった。よそで思惑があって出来ない試合もゼロワンなら出来る。このままでいけば、薩長同盟を成功させた坂本龍馬のようにプロレス団体の融和そして統一の礎になれたかもしれなかった。しかし…。
手術、そしてゼロワン崩壊宣言。負債を抱えた橋本だったが、レスラーはマットに上がらないと何も出来ない。リハビリに励む毎日であったと聞くが、精神的にもかなり無理があったのではないだろうか。焦りもあっただろう。そうした中で…。
11日午前、脳幹出血のため死亡。享年40歳。あまりにも早すぎる死。袈裟斬りチョップも水面蹴りも、何人たりとも反せない垂直落下式DDTも、もはや見ることはかなわない。ただ合掌。
ネットの友人である明石屋のにぃちゃんは、普段はパチンコなどギャンブル中心にブログを書いているのだけれども、先日ジャンボ鶴田について言及していた。彼と僕とは主としてプロレス談義友達なので、もっとプロレスのエントリを増やしてくれればいいと思うのだがどうもパチスロばっかりやっていて、ギャンブルに疎い僕は困っている。
明石屋のにぃちゃんは、ジャンボが亡くなって5年、その後K-1やPRIDEブームで格闘技ファンの裾野は広がったけれども、「さてその中にジャンボ鶴田というレスラーの事を知ってる人は何人ぐらい居るんでしょう?」と書く。うーんそうか。もう最近の若い人たちはジャンボ鶴田の全盛期なんて確かに知らないだろうな。一線を引いてもう10年以上経っている。全盛時はもっと以前だ。
無類のスタミナ、かなり激しい試合をこなしているにもかかわらず飄々とした姿。最後まで本気でやっているのかわからなかったほど余裕を見せていたそのレスリング姿勢に、いったい全力を出したらどこまでこの男は強いのだろうと思わせる「鶴田最強伝説」が必然的に生まれた。
この記事はプロレス技についてなので、ジャンボについて書こうと思えば当然四種類のスープレックスであり、ジャンピングニーパットでありバックドロップなのだが、それらはもう既に書いてしまったので、ここではジャンボのもう一つの必殺技「フライング・ボディシザース・ドロップ(空中胴締め落とし)」について少し書いてみたい。
フライング・ボディシザース・ドロップ。この技はもともとは鉄人ルーテーズの三大必殺技の一つ(他はバックドロップ、旧式パイルドライバー)として知られていた。見た目は実に単純で、立っている相手に正面から走りこんで飛びつき、そのまま後ろに浴びせ倒す。飛びつくから「フライング」なのだが、どこが「ボディシザース」なのかは見た目ではよくわからない。一瞬で「胴を締める」などという芸当は出来ないからだ。ルーテーズのこの技はもちろんリアルで見たことなどはなくて、写真に頼るしかないのだけれど、テーズは相手に飛びつく際に足を大きく広げていて胴を締めている様子などない。しかし、相手の頭部を抱え込むように両手を使っていて、そのことで首を引っ込める等の頭部の受身をとり難くしており、そのまま体を預けて浴びせ倒すことにより相手は頭部の受身がとれなくて後頭部をしたたかマットに叩きつけてしまう。なので、むしろボディシザースというよりネックブリーカードロップにダメージとしては近いのではないか。後頭部をマットに叩きつける技。つまり、馬場さんが得意だった河津落とし、また最近では丸藤の使う不知火のように、頭部を固定してマットに叩きつける技、として認識した方がいいのではないか。むろん胴締めより後頭部叩きつけの方が効く。そんなふうに解釈していた。
この技をジャンボ鶴田はルーテーズに教えられ、自己の必殺技として完成させていくわけだが、その前にもう一人だけ使い手に言及したい。トミー・リッチである。
僕はフライング・ボディシザース・ドロップという技を初めて見たのは、このトミー・リッチというレスラーによってだった。デストロイヤーもやっていたと言われるけれどもあんまり記憶がない。トミー・リッチは、かつてハリー・レイスからNWA世界ヘビーを獲ったこともあるという触れ込みで(実質は3日チャンピオンだったらしいが)全日本プロレスに来日参戦した。その時にこのフライング・ボディシザース・ドロップをフォール技として携えて来たわけであるが、正直その技を公開したときに僕は見て驚いた。
それまで写真等でしかこの技は知らなくて、いくらルーテーズの必殺技だからと言って相手に体を預けて倒すというだけの、言わばフライング・ボディアタックの縦バージョンくらいの感覚しか持っていなかった。しかしトミー・リッチは違ったのだ。
相手にまず飛びつく。それは当然だが、そのあと、開いていた足を閉じて相手の両腕を押さえつけた。これは確かに胴締めだ。そして相手の頭を抱えるようにして後ろへバタンと倒れた。もちろん全体重を預けている。相手は腕も首も押さえられ受身が取れない。感じとしては、ボディアタックのようなスピード感は無く「相手に乗っかってしがみつき、そののちに後方に倒れる」と書けばいいのだろうか。こんな技だったのかと驚いた。僕はその時、先代貴ノ花に北の富士が完全に乗っかってゆっくりと後方に倒れ、北の富士が庇い手をついた大相撲の一番を思い出していた。
若手(阿修羅原だったかな)はこの技でピンフォールを取られていた。ジャンボのUNベルトにも挑戦してジャンボを苦しめたような記憶がある。
「どこが胴締め?」と前述したが、トミー・リッチのは胴締め落しであったと思う。本家ルーテーズも、さっきは写真で見ただけの印象で「後頭部叩きつけ」技だと書いたが、本来はこのような技だったのかもしれない。
トミー・リッチは残念ながら一流のレスラーとはとても呼べず、その後も日本マットで活躍はしていない。だが、彼のフライング・ボディシザース・ドロップは僕にとっては鮮烈なのである。
僕の記憶では、ジャンボがフライング・ボディシザース・ドロップをルーテーズより伝えられたのはその後ではなかったかと思う。間違っていたらごめんなさい。
ジャンボ鶴田のボディシザース・ドロップは、トミー・リッチのような「抱え込んで倒す」という感じではなく、もっと勢いがついていたように記憶している。胴締めはなされていなかったが、酷いときには相手の頭を両手で掴んで後方へ叩きつけるように放っていた。これは酷い。フライング・ボディアタックと後頭部叩きつけを同時にやるようなもので、こいつは効くだろう。トミー・リッチとどちらが正統か、という問いには答えられない。どっちも凄かった。ただ、スピード感はジャンボの方があり、打点も高かった。そして、体固めではなく手四つでフォールを奪っていた。これもルーテーズのフォールの仕方と同じ。
ただ惜しむらくは、あまり完全に決まったボディシザース・ドロップを見る機会が少なかったこと。TV観戦が主体だったため、ジャンボの試合はやはり大一番が多く、そういう試合ではやはりバックドロップをフォール技として使っていたため、ボディシザース・ドロップは見る機会が少なかった。実際は多用していたと思うのだが、バックドロップほど電波に乗る機会が無かったように思う。バックドロップの方が派手だったということもあろう。
現在は、鶴田リスペクトとして森嶋が使用している。しかしまだボディアタックの域を出ていないように思う。森嶋は体重があるのでそれでも十分効くのだが、本物ではないように思う。新日では吉江が使っていて、これもボディアタックだ。むしろ吉江のはヒップドロップか、もしくは雷電ドロップ(懐かしいな)に近い様相を呈していて、これはこれで見ごたえがあるが技の系譜からは少しずれるのではないかと思う。決して森嶋や吉江がダメだと言っているのではないので念のため。体重を生かすにはそっちの方がいいかもしれないのだから。
他に使い手はいたかなぁ。冬木も死んじゃったし。
ジャンボ鶴田が亡くなって5年(2005/7時点)。天龍も長州も現役であるのに、まことに惜しい。生きていれば54歳なので、現役でバリバリというわけにはいかないだろうが、伝説にしてしまうのにはあまりに惜しすぎる。ジャンボなら、例えばミルコのハイキックを食らっても腰を落とした程度で立ち上がって「オー!」と拳を突き上げてくれそうな気がする。もちろんプロレスファンの贔屓目であることは間違いないのだが、「最後まで全力を出さなかった格闘家」としてその最強伝説は生き続ける。
明石屋のにぃちゃんは、ジャンボが亡くなって5年、その後K-1やPRIDEブームで格闘技ファンの裾野は広がったけれども、「さてその中にジャンボ鶴田というレスラーの事を知ってる人は何人ぐらい居るんでしょう?」と書く。うーんそうか。もう最近の若い人たちはジャンボ鶴田の全盛期なんて確かに知らないだろうな。一線を引いてもう10年以上経っている。全盛時はもっと以前だ。
無類のスタミナ、かなり激しい試合をこなしているにもかかわらず飄々とした姿。最後まで本気でやっているのかわからなかったほど余裕を見せていたそのレスリング姿勢に、いったい全力を出したらどこまでこの男は強いのだろうと思わせる「鶴田最強伝説」が必然的に生まれた。
この記事はプロレス技についてなので、ジャンボについて書こうと思えば当然四種類のスープレックスであり、ジャンピングニーパットでありバックドロップなのだが、それらはもう既に書いてしまったので、ここではジャンボのもう一つの必殺技「フライング・ボディシザース・ドロップ(空中胴締め落とし)」について少し書いてみたい。
フライング・ボディシザース・ドロップ。この技はもともとは鉄人ルーテーズの三大必殺技の一つ(他はバックドロップ、旧式パイルドライバー)として知られていた。見た目は実に単純で、立っている相手に正面から走りこんで飛びつき、そのまま後ろに浴びせ倒す。飛びつくから「フライング」なのだが、どこが「ボディシザース」なのかは見た目ではよくわからない。一瞬で「胴を締める」などという芸当は出来ないからだ。ルーテーズのこの技はもちろんリアルで見たことなどはなくて、写真に頼るしかないのだけれど、テーズは相手に飛びつく際に足を大きく広げていて胴を締めている様子などない。しかし、相手の頭部を抱え込むように両手を使っていて、そのことで首を引っ込める等の頭部の受身をとり難くしており、そのまま体を預けて浴びせ倒すことにより相手は頭部の受身がとれなくて後頭部をしたたかマットに叩きつけてしまう。なので、むしろボディシザースというよりネックブリーカードロップにダメージとしては近いのではないか。後頭部をマットに叩きつける技。つまり、馬場さんが得意だった河津落とし、また最近では丸藤の使う不知火のように、頭部を固定してマットに叩きつける技、として認識した方がいいのではないか。むろん胴締めより後頭部叩きつけの方が効く。そんなふうに解釈していた。
この技をジャンボ鶴田はルーテーズに教えられ、自己の必殺技として完成させていくわけだが、その前にもう一人だけ使い手に言及したい。トミー・リッチである。
僕はフライング・ボディシザース・ドロップという技を初めて見たのは、このトミー・リッチというレスラーによってだった。デストロイヤーもやっていたと言われるけれどもあんまり記憶がない。トミー・リッチは、かつてハリー・レイスからNWA世界ヘビーを獲ったこともあるという触れ込みで(実質は3日チャンピオンだったらしいが)全日本プロレスに来日参戦した。その時にこのフライング・ボディシザース・ドロップをフォール技として携えて来たわけであるが、正直その技を公開したときに僕は見て驚いた。
それまで写真等でしかこの技は知らなくて、いくらルーテーズの必殺技だからと言って相手に体を預けて倒すというだけの、言わばフライング・ボディアタックの縦バージョンくらいの感覚しか持っていなかった。しかしトミー・リッチは違ったのだ。
相手にまず飛びつく。それは当然だが、そのあと、開いていた足を閉じて相手の両腕を押さえつけた。これは確かに胴締めだ。そして相手の頭を抱えるようにして後ろへバタンと倒れた。もちろん全体重を預けている。相手は腕も首も押さえられ受身が取れない。感じとしては、ボディアタックのようなスピード感は無く「相手に乗っかってしがみつき、そののちに後方に倒れる」と書けばいいのだろうか。こんな技だったのかと驚いた。僕はその時、先代貴ノ花に北の富士が完全に乗っかってゆっくりと後方に倒れ、北の富士が庇い手をついた大相撲の一番を思い出していた。
若手(阿修羅原だったかな)はこの技でピンフォールを取られていた。ジャンボのUNベルトにも挑戦してジャンボを苦しめたような記憶がある。
「どこが胴締め?」と前述したが、トミー・リッチのは胴締め落しであったと思う。本家ルーテーズも、さっきは写真で見ただけの印象で「後頭部叩きつけ」技だと書いたが、本来はこのような技だったのかもしれない。
トミー・リッチは残念ながら一流のレスラーとはとても呼べず、その後も日本マットで活躍はしていない。だが、彼のフライング・ボディシザース・ドロップは僕にとっては鮮烈なのである。
僕の記憶では、ジャンボがフライング・ボディシザース・ドロップをルーテーズより伝えられたのはその後ではなかったかと思う。間違っていたらごめんなさい。
ジャンボ鶴田のボディシザース・ドロップは、トミー・リッチのような「抱え込んで倒す」という感じではなく、もっと勢いがついていたように記憶している。胴締めはなされていなかったが、酷いときには相手の頭を両手で掴んで後方へ叩きつけるように放っていた。これは酷い。フライング・ボディアタックと後頭部叩きつけを同時にやるようなもので、こいつは効くだろう。トミー・リッチとどちらが正統か、という問いには答えられない。どっちも凄かった。ただ、スピード感はジャンボの方があり、打点も高かった。そして、体固めではなく手四つでフォールを奪っていた。これもルーテーズのフォールの仕方と同じ。
ただ惜しむらくは、あまり完全に決まったボディシザース・ドロップを見る機会が少なかったこと。TV観戦が主体だったため、ジャンボの試合はやはり大一番が多く、そういう試合ではやはりバックドロップをフォール技として使っていたため、ボディシザース・ドロップは見る機会が少なかった。実際は多用していたと思うのだが、バックドロップほど電波に乗る機会が無かったように思う。バックドロップの方が派手だったということもあろう。
現在は、鶴田リスペクトとして森嶋が使用している。しかしまだボディアタックの域を出ていないように思う。森嶋は体重があるのでそれでも十分効くのだが、本物ではないように思う。新日では吉江が使っていて、これもボディアタックだ。むしろ吉江のはヒップドロップか、もしくは雷電ドロップ(懐かしいな)に近い様相を呈していて、これはこれで見ごたえがあるが技の系譜からは少しずれるのではないかと思う。決して森嶋や吉江がダメだと言っているのではないので念のため。体重を生かすにはそっちの方がいいかもしれないのだから。
他に使い手はいたかなぁ。冬木も死んじゃったし。
ジャンボ鶴田が亡くなって5年(2005/7時点)。天龍も長州も現役であるのに、まことに惜しい。生きていれば54歳なので、現役でバリバリというわけにはいかないだろうが、伝説にしてしまうのにはあまりに惜しすぎる。ジャンボなら、例えばミルコのハイキックを食らっても腰を落とした程度で立ち上がって「オー!」と拳を突き上げてくれそうな気がする。もちろんプロレスファンの贔屓目であることは間違いないのだが、「最後まで全力を出さなかった格闘家」としてその最強伝説は生き続ける。
先日コブラツイストについて記事を書いたが、この卍固めはその改良版と言っていいだろう。
伝説では、ジャイアント馬場がコブラツイストを使用しだしたのを見て、更に上をいく必殺技を編みださんとしてカールゴッチと練り上げ、卍固めをマスターしたといわれている。ゴッチ直伝という触れ込みで、当初オクトパスホールド(蛸固めですな)と発表され、後に一般公募で卍固めと命名された。上手いネーミングだ。蛸固めじゃあ如何になんでも厳しい。猪木のスペシャルホールドとして、アントニオ・スペシャルとも言われる。
しかし、これはやはり伝説らしい。ヨーロッパではわりに古くから使われていた技で、ゴッチ&猪木考案というわけではないらしい。
だが猪木が最も多用しポピュラーにしたことは事実で、猪木がいなければ埋もれていたに違いない。
猪木は実にこの技を大事に使う。ほぼタイトルマッチ或いは大一番、しかもフィニッシュとしてでないと使わない。濫用しないのがそのレスラーとしてのセンスだろう。
旧日本プロレスのワールドリーグ戦でクリス・マルコフを破り優勝したときの卍固めが有名だがこれはさすがに古くて見ていない。印象に残るのはビル・ロビンソンとのNWF世界ヘビー級選手権試合。この伝説の60分フルタイムドローで猪木が防衛した試合で、ロビンソンは後半、逆さ押さえ込みで一本とる。このままでいけばタイトル移動となるそのタイムアップ間近、猪木は卍固めをロビンソンに掛ける。ロビンソンが耐え切ればタイトル移動だったが、そのとき猪木は掛けた卍固めの重心を後ろにぐっと落した。つまりお尻をマットに近づけたわけで、それによってさらにロビンソンの首に負荷が増し、堪らずあと1分を切ったところでギブアップをしてしまう。1-1でドロー。スリリングな幕切れだった。
このロビンソン戦の重心を下げた卍固めは猪木の中でもベストだと思う。全体重が首に圧しかかりたまったものではない。これが本当の卍固めであると思う。
卍固めは、猪木の個性が最大限に発揮された技であり追随しようとするレスラーはあまりいなかった。大木金太郎が嫌がらせのように使用したこともあったが(元祖「掟破り」ですね)、全く別物であり常時使うには至らなかった。
猪木より後輩のレスラーではとても遠慮して使用できなかっただろう。しかし、天龍源一郎というレスラーは、猪木と別団体であることをいいことに卍固めを常用するという暴挙に出る。
余談になってしまうが書かずにはいられない。このことで、僕は天龍というレスラーをずいぶん長く好きになれなかった。馬場さんと猪木両方からフォールを奪ったことのある天龍というレスラーのファンはかなり多く、その人がもしこの文を見たら不快な感じがするかもしれないので先に謝っておくが、若い頃の天龍は実につまらないレスラーだったと思う(本当にごめんなさい)。延髄斬りと称するドタっとした回し蹴りも使っていた。その頃天龍のオリジナルと言えばコーナートップからのエルボードロップくらいではなかったか。あとは突っ張りを「天龍チョップ」と言っていてこれもダサかった。
その天龍が繰り出す卍固めは、両足がマットに着いているという考えられないエセ卍で、猪木の重心を落とした卍を知るものにとっては目を覆いたくなるようなシロモノだった。
天龍は身体も屈強でパワーもあるのに、なんでこんなセンスのないことをやるのか不思議だった。鶴田よりよっぽどレスラーらしい面構えをしているのに(本当にいい顔)、全然その雰囲気を生かせていない。もしかしたら猪木に対抗するために馬場さんが仕組んだのかと邪推もしたほどだ。もしそうだったとしたら天龍は当時鬱屈していたのかもしれない。
天龍を見直したのは、長州との抗争で見せた荒々しさからである。鶴田と組んだvs長州・谷津戦で、谷津からピンフォールを取ったときの「やったあ」という力の入った表情。長州という過激な匂いをぷんぷんさせるレスラーとの出会いで開眼したのではないか。その後天龍は全日を飛び出し、新たな波に身を投じる。使う技はパワーボムやDDTでいまいち僕は満足できなかったが、それさえも武骨さと映じるときもあり、輝きは増した。今は50歳半ばで最もプロレスラーらしいプロレスラーとして君臨している。
閑話休題。天龍に話が逸れてしまった。
卍固めにはその後、後継者は現われていない。これはしょうがないことだと思っている。 猫も杓子も卍固めでは興醒めだ。鈴木みのるが最近リスペクト的に使うが、これも身体が浮いて安定していない。技を掛けるときに、鈴木は相手の右腕を極めたあと、最後に首に左足を掛ける。猪木と掛け方が異なっており、これではうまくいかないのではないかと思う。もっと相手の首を極めている足を落とさないといけない。
僕はもう後継者は現われなくてもいいと思う。伝説の技がひとつくらいあってもいいではないか。
派生技と言っても、卍固めがコブラツイストの派生技であるのでそれ以上発展しようがない。ただ「幻の技」として猪木が「新卍固め」を公開したことがある。見た事はなく、写真が載っていた本を紛失してしまったので再現できないが、メキシカンストレッチに似た技だったと記憶している。これも猪木は封印してしまった。
他に似た技として、佐々木健介の「ストラングルホールドγ」がある。相手の首と右腕の極め方は卍固めに近い。しかしこれも部分的に似ているにすぎない。一種の拷問技ではあるのだが。
小技さんのブログに掲載あります。イラスト参照してみてください。卍固めの猪木版はこちら、鈴木みのる版はこちら。鈴木みのるの左足の位置が高くて(落ちきっていなくて)少し身体が傾いでいる部分に注目。うまく描けてますよねぇ。また、ストラングルホールドγはこちらに掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
伝説では、ジャイアント馬場がコブラツイストを使用しだしたのを見て、更に上をいく必殺技を編みださんとしてカールゴッチと練り上げ、卍固めをマスターしたといわれている。ゴッチ直伝という触れ込みで、当初オクトパスホールド(蛸固めですな)と発表され、後に一般公募で卍固めと命名された。上手いネーミングだ。蛸固めじゃあ如何になんでも厳しい。猪木のスペシャルホールドとして、アントニオ・スペシャルとも言われる。
しかし、これはやはり伝説らしい。ヨーロッパではわりに古くから使われていた技で、ゴッチ&猪木考案というわけではないらしい。
だが猪木が最も多用しポピュラーにしたことは事実で、猪木がいなければ埋もれていたに違いない。
猪木は実にこの技を大事に使う。ほぼタイトルマッチ或いは大一番、しかもフィニッシュとしてでないと使わない。濫用しないのがそのレスラーとしてのセンスだろう。
旧日本プロレスのワールドリーグ戦でクリス・マルコフを破り優勝したときの卍固めが有名だがこれはさすがに古くて見ていない。印象に残るのはビル・ロビンソンとのNWF世界ヘビー級選手権試合。この伝説の60分フルタイムドローで猪木が防衛した試合で、ロビンソンは後半、逆さ押さえ込みで一本とる。このままでいけばタイトル移動となるそのタイムアップ間近、猪木は卍固めをロビンソンに掛ける。ロビンソンが耐え切ればタイトル移動だったが、そのとき猪木は掛けた卍固めの重心を後ろにぐっと落した。つまりお尻をマットに近づけたわけで、それによってさらにロビンソンの首に負荷が増し、堪らずあと1分を切ったところでギブアップをしてしまう。1-1でドロー。スリリングな幕切れだった。
このロビンソン戦の重心を下げた卍固めは猪木の中でもベストだと思う。全体重が首に圧しかかりたまったものではない。これが本当の卍固めであると思う。
卍固めは、猪木の個性が最大限に発揮された技であり追随しようとするレスラーはあまりいなかった。大木金太郎が嫌がらせのように使用したこともあったが(元祖「掟破り」ですね)、全く別物であり常時使うには至らなかった。
猪木より後輩のレスラーではとても遠慮して使用できなかっただろう。しかし、天龍源一郎というレスラーは、猪木と別団体であることをいいことに卍固めを常用するという暴挙に出る。
余談になってしまうが書かずにはいられない。このことで、僕は天龍というレスラーをずいぶん長く好きになれなかった。馬場さんと猪木両方からフォールを奪ったことのある天龍というレスラーのファンはかなり多く、その人がもしこの文を見たら不快な感じがするかもしれないので先に謝っておくが、若い頃の天龍は実につまらないレスラーだったと思う(本当にごめんなさい)。延髄斬りと称するドタっとした回し蹴りも使っていた。その頃天龍のオリジナルと言えばコーナートップからのエルボードロップくらいではなかったか。あとは突っ張りを「天龍チョップ」と言っていてこれもダサかった。
その天龍が繰り出す卍固めは、両足がマットに着いているという考えられないエセ卍で、猪木の重心を落とした卍を知るものにとっては目を覆いたくなるようなシロモノだった。
天龍は身体も屈強でパワーもあるのに、なんでこんなセンスのないことをやるのか不思議だった。鶴田よりよっぽどレスラーらしい面構えをしているのに(本当にいい顔)、全然その雰囲気を生かせていない。もしかしたら猪木に対抗するために馬場さんが仕組んだのかと邪推もしたほどだ。もしそうだったとしたら天龍は当時鬱屈していたのかもしれない。
天龍を見直したのは、長州との抗争で見せた荒々しさからである。鶴田と組んだvs長州・谷津戦で、谷津からピンフォールを取ったときの「やったあ」という力の入った表情。長州という過激な匂いをぷんぷんさせるレスラーとの出会いで開眼したのではないか。その後天龍は全日を飛び出し、新たな波に身を投じる。使う技はパワーボムやDDTでいまいち僕は満足できなかったが、それさえも武骨さと映じるときもあり、輝きは増した。今は50歳半ばで最もプロレスラーらしいプロレスラーとして君臨している。
閑話休題。天龍に話が逸れてしまった。
卍固めにはその後、後継者は現われていない。これはしょうがないことだと思っている。 猫も杓子も卍固めでは興醒めだ。鈴木みのるが最近リスペクト的に使うが、これも身体が浮いて安定していない。技を掛けるときに、鈴木は相手の右腕を極めたあと、最後に首に左足を掛ける。猪木と掛け方が異なっており、これではうまくいかないのではないかと思う。もっと相手の首を極めている足を落とさないといけない。
僕はもう後継者は現われなくてもいいと思う。伝説の技がひとつくらいあってもいいではないか。
派生技と言っても、卍固めがコブラツイストの派生技であるのでそれ以上発展しようがない。ただ「幻の技」として猪木が「新卍固め」を公開したことがある。見た事はなく、写真が載っていた本を紛失してしまったので再現できないが、メキシカンストレッチに似た技だったと記憶している。これも猪木は封印してしまった。
他に似た技として、佐々木健介の「ストラングルホールドγ」がある。相手の首と右腕の極め方は卍固めに近い。しかしこれも部分的に似ているにすぎない。一種の拷問技ではあるのだが。
小技さんのブログに掲載あります。イラスト参照してみてください。卍固めの猪木版はこちら、鈴木みのる版はこちら。鈴木みのるの左足の位置が高くて(落ちきっていなくて)少し身体が傾いでいる部分に注目。うまく描けてますよねぇ。また、ストラングルホールドγはこちらに掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
ネットサーフィンをしている最中に、「コブラツイストのような痛め技にも注目があつまって欲しいものです」という文章に出くわした。プロレスBBSか、何の時に見たのか忘れちゃって紹介出来ないのが申し訳ないのだけれど、僕の正直な感想は「そうか、コブラツイストって痛め技か、もう必殺技じゃないのか」という寂しい思いだった。
しかし考えてみればそうだわな。それより、昨今はコブラツイスト自体を見る事が少なくなった。西村修がときどきやるけれども、彼は「思い出の技公開男」であるからしてやはりもう既にレトロな技なのだろうか、と猪木世代の僕は思うのである。
かつてはみんな知っていた技で、「4の字固め」「逆エビ固め」と並んで子供がプロレスごっこでやる技ベスト3だったと思うのだが。
コブラツイストは立ち関節技で、プロレス的に言うと「観客に見せやすい」技。かけられた相手の苦悶の表情もよくわかり実に素晴らしい技である。
元祖は、手元の資料によるとサイクロン・アナヤとされているが、この選手についてはよく知らない。ルーテーズと戦っており、おそらく50年以上前の選手だろう。しかし、ディック・ハットンを創始者とする説もあって実際には真偽はわからない。
この技を僕たちに知らしめたのは、なんと言ってもアントニオ猪木に違いない。僕がプロレスを見だした頃はもう既に猪木もフィニッシュには使っていなかったのだが、試合途中で必ずかけるコブラツイストは実に格好よかった。相手をロープに振り、再び接触するカウンターで魔術のように相手レスラーに絡みつく。特にカウンターで仕掛けなくてもいい技であると冷静に考えれば思うのだが、そこは魅せることを重点におく猪木の真骨頂である。リバース・インディアンデスロックを極めて観客に見得を切る場面と共に、このカウンターでのコブラツイストは無くてはならないものだったとも言える。
コブラツイストはその後も基本技としては一応存在していて、既に拡散して無意識下の技ともなった感がある。必殺の可能性は内包していると思うのだが。
しかし、そもそもコブラツイストはどこを痛めつけるのを主眼にしているのだろうか。
日本名「アバラ折り」であるからしてアバラ骨を痛めつけるに決まっているだろう、と言われそうだが、アバラを痛めつけることは締め技では難しいのではないかと思われる。見た目、アバラ骨が前面に押し出されるように見えるのでそう言うだけのことではないだろうか。ただ、レスラーでないので真偽は判らないのだが。
僕のつたない経験(小学生時代のプロレスごっこの経験ですが)では、この技はまず背骨ではないだろうか。自分の左足にまず相手の背中を押し付けている部分がバックブリーカー的である。締め付ければかなり効くだろう。そして上半身を捻る。ツイストだから当然。これは背骨だけでなく腰にもダメージがある。それ以上は掛ける人によってコブラツイストも個性があるので一概には言えないが。
僕が考えるに、大別して二種類のコブラがあるように思う。ここではあくまで便宜的に、「ドリーファンクJr型」と「アントニオ猪木型」としてみる。
この分け方の主眼は相手の右腕を極めるか、または首を極めるか、ということである。
まずドリー型は、相手の、上に伸びた右腕を左腕でガッチリと極める。掛ける側のレスラーはほぼ上半身は直立した状態。相手の右腕、または右肩を極めるためにむしろ自分の身体は反らす傾向にある。
そうなると、自分の右腕は空く。なので、ジャンボ鶴田は相手の腰を外に押し出すように力を加え、さらに相手に捻りを加えていた。えげつない。さらに鶴田は左腕で相手の右肩を極めつつ、相手の首を押さえつけて無理やり極めていた。これぞ拷問コブラと呼ばれるもので、それは痛そうだった。
いわゆる卍固めという技は、コブラツイストを極めつつ相手の首を足で押し下げて極める、という技で、詳しくは卍固めを言及するときに書きたいが、鶴田の拷問コブラは、その卍固めの足で極めている部分を強引に左手でやっているようなものだ。えげつないことおびただしい。
この技は渕や田上らが継承しているようだが、迫力は鶴田に及ばない。
対して猪木型は、相手の首に腕を回して両手でクラッチし、首を極める。両手が首に回るぶん相手の右腕を極めるという要素は少なくなるが、右肩はしっかりと極め、首を引き上げるようにして極めていく。ドリー型に比べ身体の密着度が高く、逃げにくい。
さて鶴田の「拷問コブラ」については前述したが、あれはドリー型の発展系であった。しかしもう一種類の拷問コブラ・猪木型が存在する。それは小橋健太がやる拷問コブラだ。
猪木型は相手の首を両手でクラッチして極めるのが特徴であるが、その極め方が小橋はエグい。まるでフェイスロックのように締め上げる。この形は天龍が以前よくやっていたように記憶しているが、僕としては小橋の方が鮮烈だ。なんせあの剛腕で締め付けるのだから地獄。ここまでくれば立派なフィニッシュホールドである。小橋にはいくら剛腕とは言え猫も杓子もやるラリアットなどよりも、こういう「痛みのわかる技」を多用して欲しいと思うのだが。もっとやってくれよ小橋ぃ。
さて、派生技にはもちろん卍固めがあるが、これについては別立てで書きたいのでここでは言及しない。
他に派生技はないようであるが、似ている技、として、川田のストレッチプラムがある。最近川田は立ちストレッチプラムをあまり極めないが、あれは立ってやるとコブラツイストに近い。自分の左足に相手の背中を押し付けて身体を捻るように締めればその部分はコブラだ。あとは相手の首と右腕を極めるわけで、近い技ではないかと思う。ドラゴンスリーパーにも近いが。
グラウンドコブラという技は、コブラツイストと言うより一瞬のフォール技であろう。コブラツイストの姿勢のまま後方に倒れてフォールする。コブラツイストが掛かっているから反せない、という寸法。
思い出すのは、猪木vs長州の試合。昭和59年だったろうか、正規軍vs維新軍の5vs5勝ち抜き戦が行われた時、やはり最後は猪木vs長州となり、猪木が卍固めで勝った。山本小鉄が放送席から出てレフェリーストップの裁定を下した伝説の試合である。あのときはまだ猪木が貫禄で勝っていた。しかし、半年も経たなかったと思うが、夏に蔵前で再び猪木vs長州は実現する。その時はかなり長州が押し、猪木も決定的な力の差を見せられずに最後はグラウンドコブラで長州をフォールした。猪木はもうグラウンドコブラみたいな一瞬の返し技のようなものでしか長州に勝てなくなったのか。実力の接近をまざまざと感じたグラウンドコブラだった。
そのひと月後くらいに長州維新軍は新日を離脱したように記憶している。グラウンドコブラを見るとその時の思い出が甦る。
しかし考えてみればそうだわな。それより、昨今はコブラツイスト自体を見る事が少なくなった。西村修がときどきやるけれども、彼は「思い出の技公開男」であるからしてやはりもう既にレトロな技なのだろうか、と猪木世代の僕は思うのである。
かつてはみんな知っていた技で、「4の字固め」「逆エビ固め」と並んで子供がプロレスごっこでやる技ベスト3だったと思うのだが。
コブラツイストは立ち関節技で、プロレス的に言うと「観客に見せやすい」技。かけられた相手の苦悶の表情もよくわかり実に素晴らしい技である。
元祖は、手元の資料によるとサイクロン・アナヤとされているが、この選手についてはよく知らない。ルーテーズと戦っており、おそらく50年以上前の選手だろう。しかし、ディック・ハットンを創始者とする説もあって実際には真偽はわからない。
この技を僕たちに知らしめたのは、なんと言ってもアントニオ猪木に違いない。僕がプロレスを見だした頃はもう既に猪木もフィニッシュには使っていなかったのだが、試合途中で必ずかけるコブラツイストは実に格好よかった。相手をロープに振り、再び接触するカウンターで魔術のように相手レスラーに絡みつく。特にカウンターで仕掛けなくてもいい技であると冷静に考えれば思うのだが、そこは魅せることを重点におく猪木の真骨頂である。リバース・インディアンデスロックを極めて観客に見得を切る場面と共に、このカウンターでのコブラツイストは無くてはならないものだったとも言える。
コブラツイストはその後も基本技としては一応存在していて、既に拡散して無意識下の技ともなった感がある。必殺の可能性は内包していると思うのだが。
しかし、そもそもコブラツイストはどこを痛めつけるのを主眼にしているのだろうか。
日本名「アバラ折り」であるからしてアバラ骨を痛めつけるに決まっているだろう、と言われそうだが、アバラを痛めつけることは締め技では難しいのではないかと思われる。見た目、アバラ骨が前面に押し出されるように見えるのでそう言うだけのことではないだろうか。ただ、レスラーでないので真偽は判らないのだが。
僕のつたない経験(小学生時代のプロレスごっこの経験ですが)では、この技はまず背骨ではないだろうか。自分の左足にまず相手の背中を押し付けている部分がバックブリーカー的である。締め付ければかなり効くだろう。そして上半身を捻る。ツイストだから当然。これは背骨だけでなく腰にもダメージがある。それ以上は掛ける人によってコブラツイストも個性があるので一概には言えないが。
僕が考えるに、大別して二種類のコブラがあるように思う。ここではあくまで便宜的に、「ドリーファンクJr型」と「アントニオ猪木型」としてみる。
この分け方の主眼は相手の右腕を極めるか、または首を極めるか、ということである。
まずドリー型は、相手の、上に伸びた右腕を左腕でガッチリと極める。掛ける側のレスラーはほぼ上半身は直立した状態。相手の右腕、または右肩を極めるためにむしろ自分の身体は反らす傾向にある。
そうなると、自分の右腕は空く。なので、ジャンボ鶴田は相手の腰を外に押し出すように力を加え、さらに相手に捻りを加えていた。えげつない。さらに鶴田は左腕で相手の右肩を極めつつ、相手の首を押さえつけて無理やり極めていた。これぞ拷問コブラと呼ばれるもので、それは痛そうだった。
いわゆる卍固めという技は、コブラツイストを極めつつ相手の首を足で押し下げて極める、という技で、詳しくは卍固めを言及するときに書きたいが、鶴田の拷問コブラは、その卍固めの足で極めている部分を強引に左手でやっているようなものだ。えげつないことおびただしい。
この技は渕や田上らが継承しているようだが、迫力は鶴田に及ばない。
対して猪木型は、相手の首に腕を回して両手でクラッチし、首を極める。両手が首に回るぶん相手の右腕を極めるという要素は少なくなるが、右肩はしっかりと極め、首を引き上げるようにして極めていく。ドリー型に比べ身体の密着度が高く、逃げにくい。
さて鶴田の「拷問コブラ」については前述したが、あれはドリー型の発展系であった。しかしもう一種類の拷問コブラ・猪木型が存在する。それは小橋健太がやる拷問コブラだ。
猪木型は相手の首を両手でクラッチして極めるのが特徴であるが、その極め方が小橋はエグい。まるでフェイスロックのように締め上げる。この形は天龍が以前よくやっていたように記憶しているが、僕としては小橋の方が鮮烈だ。なんせあの剛腕で締め付けるのだから地獄。ここまでくれば立派なフィニッシュホールドである。小橋にはいくら剛腕とは言え猫も杓子もやるラリアットなどよりも、こういう「痛みのわかる技」を多用して欲しいと思うのだが。もっとやってくれよ小橋ぃ。
さて、派生技にはもちろん卍固めがあるが、これについては別立てで書きたいのでここでは言及しない。
他に派生技はないようであるが、似ている技、として、川田のストレッチプラムがある。最近川田は立ちストレッチプラムをあまり極めないが、あれは立ってやるとコブラツイストに近い。自分の左足に相手の背中を押し付けて身体を捻るように締めればその部分はコブラだ。あとは相手の首と右腕を極めるわけで、近い技ではないかと思う。ドラゴンスリーパーにも近いが。
グラウンドコブラという技は、コブラツイストと言うより一瞬のフォール技であろう。コブラツイストの姿勢のまま後方に倒れてフォールする。コブラツイストが掛かっているから反せない、という寸法。
思い出すのは、猪木vs長州の試合。昭和59年だったろうか、正規軍vs維新軍の5vs5勝ち抜き戦が行われた時、やはり最後は猪木vs長州となり、猪木が卍固めで勝った。山本小鉄が放送席から出てレフェリーストップの裁定を下した伝説の試合である。あのときはまだ猪木が貫禄で勝っていた。しかし、半年も経たなかったと思うが、夏に蔵前で再び猪木vs長州は実現する。その時はかなり長州が押し、猪木も決定的な力の差を見せられずに最後はグラウンドコブラで長州をフォールした。猪木はもうグラウンドコブラみたいな一瞬の返し技のようなものでしか長州に勝てなくなったのか。実力の接近をまざまざと感じたグラウンドコブラだった。
そのひと月後くらいに長州維新軍は新日を離脱したように記憶している。グラウンドコブラを見るとその時の思い出が甦る。
なんでもありのプロレスにも禁じ手がある。
金的、目潰し、噛み付きなどはやってはいけない。これはもちろん他の格闘技も同様。また、髪の毛やトランクスを掴んではいけない。これも当たり前のこと。それ以外はたいていのことはやっても良く、プロレスがking of sportsと呼ばれるのもあらゆる手を使って相手を攻めていいというルールがあればこそ。他では出来ない頭突きや肘打ちなども認められている。ストリートファイト(喧嘩)の次にルールの制約がない格闘技ジャンルである。だからこそ面白いのだ。
しかし、一つだけ他の格闘技にあってプロレスでは反則と言われる技がある。
それは拳で殴ることである。
「体のいずれの箇所をもナックルパート(正拳)で殴打してはならない。」
(プロレスリング競技者規約 競技者の禁止事項 第一条の1 新日本プロレス)
殴っちゃいかんのだ。プロレスはグローブをつけず基本は素手で行う。なので、最も危険なパンチは禁止されている。この点だけが他の格闘技と一線を画す部分である。
したがって、先日小島を破って天山がIWGPを奪い返したがパンチを多用していた。あれは反則なのだ。ただ、5秒以内であれば反則は行ってもよい、というプロレス独特の「5秒ルール」があるが故に見逃されていただけのこと。猪木の「ナックルアロー」も同様に反則だ。
しかし、人間というもの、戦うときにはどうしても「手」が出る。それが戦闘本能というもの。その時にレスラーはどうするか。
そういうときには、平手打ちであったり、掌底突きであったり、空手チョップを繰り出すのである。これなら正拳ではないので反則にならないのだ。
その中でもチョップ(手刀)は、手の側面の固い部分を鋭角的に相手に打ち込む技であり、正拳に次いで威力を発揮する技である。なおchopとは「叩き切る」という意味。
チョップについて書こうとしたのだが前置きが長くなりすぎた。
さて、チョップと言えば力道山の空手チョップ。もちろんチョップという技は手刀として空手などで古くからある技ではあるが、プロレスに取り入れたのは力道山が最初であると言われる。当時「相撲のツッパリから発想して空手チョップを考え出した」と力道山が語ったという伝説があったが、これは疑問である。しかし、力士時代突っ張りを得意としていた力道山の腕力はチョップを打つのに向いていたのだろう。「空手」という欧米では神秘の格闘技に、更に神秘的な「相撲」のエッセンスを入れた力道山のセンスは敬服されるべき。
もちろん僕は力道山を知る世代ではないので「懐かしビデオ」で見ているに過ぎないが、最初の力道山のチョップは今で言う「袈裟切りチョップ」であった。相手の首の側面部に向かって打ち下ろす形で、相手の頚動脈を狙う。これでシャープ兄弟などはキリキリ舞いだった。
その後、力道山は「水平打ち」を多用するようになる。これは、相手のノド笛を狙って手刀を打つというえげつない技で、やられる側はたまったものではない。ノドボトケに手刀を打ち込むなんて、考えただけで恐ろしい。ウェスタンラリアートよりダメージは大きいのではないだろうか? 腕より手刀の方が固いだろうし。
さて、この力道山の水平チョップは、力道山の死とともに封印されてしまったように思う。鍛えようのないノドボトケを狙うチョップなど事故に繋がる。アメリカでは州によってルールが違うらしいが、明確に「禁止技」としていた所もあった由。
その後、後を継いだ馬場さんが「脳天唐竹割り」を使い出す。これは相手の脳天に打ち込むチョップで、水平打ちに比べて痛め技になるのは否めないが、迫力はある。馬場vsブルーノ・サンマルチノで、必殺技ベアハッグに捕えられた馬場さんが、サンマルチノに何発も脳天チョップを叩き込み逆に相手をぶっ倒したことがあった。馬場さんならではの迫力である。後年、チョンと相手の頭にチョップを入れていたように見えた馬場さんでよく揶揄の対象となったが、あれでも会場で見ると、手の骨と頭蓋骨のぶつかる音がカーンと聞こえたものだ。それを思うと、若い頃のジャンプして脳天に叩き込んでいたチョップの威力が想像できる。
馬場さんは水平打ちもやったが、どちらかと言えば、もう既に「チョップ」ではなかったように思う。つまり、手の側面部でなくて掌が当たっていたからだ。ダメージの軽減だろう。打ち込む部分もノドボトケではなく胸板が多かった。
この「胸板へのダメージ軽減型チョップ」はその後のレスラーに受け継がれていく。水平打ちはもはや絶滅したと言っていい。もうチョップという名称は、手の側面部を使う場合に限って使うようにした方がいいのではないか。胸板に平手で打ち込むのは「チョップ」ではないと思う。
小橋健太というレスラーは大好きである。寡黙で男気があり、しかも強い。今おそらく日本で一番強いレスラーだろう。だからこそ…と思うのだが、あの「マシンガン水平チョップ」は止めた方がいいのではないかと僕は思っている。
先日、天龍の胸板の血管を弾けさせたチョップはTVで見た。効くのだろうとは思っている。しかし、あれはプロレスで言うギミックがかなり色濃く出てしまっているように思える。真面目な小橋がやるから余計目立つのだ。先日のも、我慢して受け続けた天龍の方を評価したくなる。あんなに何回も連発して打たなくても、小橋なら重いのを一発でいいではないか。どうしてもあの連発チョップは少し、僕には安っぽくみえる(小橋ファンがもし読んだらイヤな気分になるでしょうが、小橋は本当に強いのだから自分の強さの表現プランももう少し工夫した方がいいと思う)。
形勢逆転にチョップが使われることもあり、なかなかに格好いい。橋本真也が、相手がラリアートを打ち込もうとする腕を袈裟斬りチョップで叩き落すときなど思わず声が出てしまったりする。この橋本真也が打ち込む袈裟斬りチョップこそ、今に残る本物のチョップである。平手を当てるのではなく完全に鋭角的に打ち込んでいる。手刀、という言葉を使えるのは橋本真也の渾身の一発である。
橋本はラリアットも使わず、キックとともにこの袈裟斬りチョップで試合を組み立てる。見るからに痛そうである。早く元気になって本物の手刀を打ち込んでもらいたい。
また、トップロープからの脳天打ち、また小川直也のようなキカン気のレスラーに打つ耳そぎチョップなど、使い方が多岐にわたって面白い。また水平打ちこそ絶滅したものの、小橋が打つローリング袈裟切りチョップなどは明らかに必殺技の匂いをプンプンさせており、まだまだチョップは生き続けている。
というところで終わろうと思ったのだが、特殊チョップ技について書くのを忘れていた。
クロスチョップという技がある。両手の手刀をクロスさせて相手のノドに打ち込むもので、ノドボトケを直接狙う形にはならず、理屈ではかなり効く技のはずであるが、なんとなしにマイナーなイメージを僕が持ってしまうのは、ラッシャー木村が多用していたせいもあろう。打ち込むときに木村はちょっと足がドタドタしてしまうのであまり格好がよくなかったからだ。最近では中西がこれをやるが、洗練された技になる可能性はある。
これがフライング・クロスチョップともなると実に華麗な技となる。もちろんミル・マスカラスの必殺技で、とにかくカッコいい。いい後継者が現われないものか。
モンゴリアンチョップという技は、つまりダブルの袈裟斬りチョップと言う言い方も出来る。両方の頚動脈を狙うのでダメージはかなりあるはずなのだが、なんとなしに軽い感じがしてしまうのは何故だろう。もちろんキラーカーンの技であったわけで、カーンの奇声を発しながら相手に打ち込んでいく姿はなかなか悪役的で絵になったのだが、他のレスラーではなかなかあの域に達するのは難しい。天山がよく打つが、彼は打つ前にひとポーズ入れるのでなおさら軽い。あのポーズはギミック的要素が強すぎて、やはりタイトル戦では小島にそこを衝かれていた。なかなか難しいのである。
金的、目潰し、噛み付きなどはやってはいけない。これはもちろん他の格闘技も同様。また、髪の毛やトランクスを掴んではいけない。これも当たり前のこと。それ以外はたいていのことはやっても良く、プロレスがking of sportsと呼ばれるのもあらゆる手を使って相手を攻めていいというルールがあればこそ。他では出来ない頭突きや肘打ちなども認められている。ストリートファイト(喧嘩)の次にルールの制約がない格闘技ジャンルである。だからこそ面白いのだ。
しかし、一つだけ他の格闘技にあってプロレスでは反則と言われる技がある。
それは拳で殴ることである。
「体のいずれの箇所をもナックルパート(正拳)で殴打してはならない。」
(プロレスリング競技者規約 競技者の禁止事項 第一条の1 新日本プロレス)
殴っちゃいかんのだ。プロレスはグローブをつけず基本は素手で行う。なので、最も危険なパンチは禁止されている。この点だけが他の格闘技と一線を画す部分である。
したがって、先日小島を破って天山がIWGPを奪い返したがパンチを多用していた。あれは反則なのだ。ただ、5秒以内であれば反則は行ってもよい、というプロレス独特の「5秒ルール」があるが故に見逃されていただけのこと。猪木の「ナックルアロー」も同様に反則だ。
しかし、人間というもの、戦うときにはどうしても「手」が出る。それが戦闘本能というもの。その時にレスラーはどうするか。
そういうときには、平手打ちであったり、掌底突きであったり、空手チョップを繰り出すのである。これなら正拳ではないので反則にならないのだ。
その中でもチョップ(手刀)は、手の側面の固い部分を鋭角的に相手に打ち込む技であり、正拳に次いで威力を発揮する技である。なおchopとは「叩き切る」という意味。
チョップについて書こうとしたのだが前置きが長くなりすぎた。
さて、チョップと言えば力道山の空手チョップ。もちろんチョップという技は手刀として空手などで古くからある技ではあるが、プロレスに取り入れたのは力道山が最初であると言われる。当時「相撲のツッパリから発想して空手チョップを考え出した」と力道山が語ったという伝説があったが、これは疑問である。しかし、力士時代突っ張りを得意としていた力道山の腕力はチョップを打つのに向いていたのだろう。「空手」という欧米では神秘の格闘技に、更に神秘的な「相撲」のエッセンスを入れた力道山のセンスは敬服されるべき。
もちろん僕は力道山を知る世代ではないので「懐かしビデオ」で見ているに過ぎないが、最初の力道山のチョップは今で言う「袈裟切りチョップ」であった。相手の首の側面部に向かって打ち下ろす形で、相手の頚動脈を狙う。これでシャープ兄弟などはキリキリ舞いだった。
その後、力道山は「水平打ち」を多用するようになる。これは、相手のノド笛を狙って手刀を打つというえげつない技で、やられる側はたまったものではない。ノドボトケに手刀を打ち込むなんて、考えただけで恐ろしい。ウェスタンラリアートよりダメージは大きいのではないだろうか? 腕より手刀の方が固いだろうし。
さて、この力道山の水平チョップは、力道山の死とともに封印されてしまったように思う。鍛えようのないノドボトケを狙うチョップなど事故に繋がる。アメリカでは州によってルールが違うらしいが、明確に「禁止技」としていた所もあった由。
その後、後を継いだ馬場さんが「脳天唐竹割り」を使い出す。これは相手の脳天に打ち込むチョップで、水平打ちに比べて痛め技になるのは否めないが、迫力はある。馬場vsブルーノ・サンマルチノで、必殺技ベアハッグに捕えられた馬場さんが、サンマルチノに何発も脳天チョップを叩き込み逆に相手をぶっ倒したことがあった。馬場さんならではの迫力である。後年、チョンと相手の頭にチョップを入れていたように見えた馬場さんでよく揶揄の対象となったが、あれでも会場で見ると、手の骨と頭蓋骨のぶつかる音がカーンと聞こえたものだ。それを思うと、若い頃のジャンプして脳天に叩き込んでいたチョップの威力が想像できる。
馬場さんは水平打ちもやったが、どちらかと言えば、もう既に「チョップ」ではなかったように思う。つまり、手の側面部でなくて掌が当たっていたからだ。ダメージの軽減だろう。打ち込む部分もノドボトケではなく胸板が多かった。
この「胸板へのダメージ軽減型チョップ」はその後のレスラーに受け継がれていく。水平打ちはもはや絶滅したと言っていい。もうチョップという名称は、手の側面部を使う場合に限って使うようにした方がいいのではないか。胸板に平手で打ち込むのは「チョップ」ではないと思う。
小橋健太というレスラーは大好きである。寡黙で男気があり、しかも強い。今おそらく日本で一番強いレスラーだろう。だからこそ…と思うのだが、あの「マシンガン水平チョップ」は止めた方がいいのではないかと僕は思っている。
先日、天龍の胸板の血管を弾けさせたチョップはTVで見た。効くのだろうとは思っている。しかし、あれはプロレスで言うギミックがかなり色濃く出てしまっているように思える。真面目な小橋がやるから余計目立つのだ。先日のも、我慢して受け続けた天龍の方を評価したくなる。あんなに何回も連発して打たなくても、小橋なら重いのを一発でいいではないか。どうしてもあの連発チョップは少し、僕には安っぽくみえる(小橋ファンがもし読んだらイヤな気分になるでしょうが、小橋は本当に強いのだから自分の強さの表現プランももう少し工夫した方がいいと思う)。
形勢逆転にチョップが使われることもあり、なかなかに格好いい。橋本真也が、相手がラリアートを打ち込もうとする腕を袈裟斬りチョップで叩き落すときなど思わず声が出てしまったりする。この橋本真也が打ち込む袈裟斬りチョップこそ、今に残る本物のチョップである。平手を当てるのではなく完全に鋭角的に打ち込んでいる。手刀、という言葉を使えるのは橋本真也の渾身の一発である。
橋本はラリアットも使わず、キックとともにこの袈裟斬りチョップで試合を組み立てる。見るからに痛そうである。早く元気になって本物の手刀を打ち込んでもらいたい。
また、トップロープからの脳天打ち、また小川直也のようなキカン気のレスラーに打つ耳そぎチョップなど、使い方が多岐にわたって面白い。また水平打ちこそ絶滅したものの、小橋が打つローリング袈裟切りチョップなどは明らかに必殺技の匂いをプンプンさせており、まだまだチョップは生き続けている。
というところで終わろうと思ったのだが、特殊チョップ技について書くのを忘れていた。
クロスチョップという技がある。両手の手刀をクロスさせて相手のノドに打ち込むもので、ノドボトケを直接狙う形にはならず、理屈ではかなり効く技のはずであるが、なんとなしにマイナーなイメージを僕が持ってしまうのは、ラッシャー木村が多用していたせいもあろう。打ち込むときに木村はちょっと足がドタドタしてしまうのであまり格好がよくなかったからだ。最近では中西がこれをやるが、洗練された技になる可能性はある。
これがフライング・クロスチョップともなると実に華麗な技となる。もちろんミル・マスカラスの必殺技で、とにかくカッコいい。いい後継者が現われないものか。
モンゴリアンチョップという技は、つまりダブルの袈裟斬りチョップと言う言い方も出来る。両方の頚動脈を狙うのでダメージはかなりあるはずなのだが、なんとなしに軽い感じがしてしまうのは何故だろう。もちろんキラーカーンの技であったわけで、カーンの奇声を発しながら相手に打ち込んでいく姿はなかなか悪役的で絵になったのだが、他のレスラーではなかなかあの域に達するのは難しい。天山がよく打つが、彼は打つ前にひとポーズ入れるのでなおさら軽い。あのポーズはギミック的要素が強すぎて、やはりタイトル戦では小島にそこを衝かれていた。なかなか難しいのである。
総合格闘技全盛のこの時代、プロレスなどごく一部のファンしか見ていないのではないかと思われるほどである。僕もいちおうPRIDEなどは見ていてそれなりに面白いのだけれど、やはり長年プロレスを見続けたものにとっては消化不良の試合が多い。
それは判定勝負になったりする場合とか、相手の技を受けるという概念がないので膠着したり逆に一瞬で勝負が決したり…という点が主たるものである。総合ファンから見ればそれがいいところなのであり、消化不良などと言うと「あんたアホか」と言われるので、あまり大きな声では言えない。
具体的に最も歯がゆい場面はと聞かれれば、それは「マウントポジション」の場面、つまり馬乗りのシーンである。普通は上になった選手がガンガンパンチを降らせてK.O.の場面だが、最近は防御も発達してなかなかそうはいかない。懸命にガードして防ぐ。相手の両腕を排し続ける。そうして膠着してきたとき…。
僕はどうしても、「なんで頭突きをしないんだー!」と思っちゃうのですね。相手の両腕をガードしている時は頭部がガラ空きの場合が多い。そこに一発ヘッドバットを打てばいいじゃんか!とイラついてしまうのである。これは無論プロレスの発想で、総合では頭突きは当然禁止である。
頭突きという技は人間の本能みたいなもので、元祖が誰とか言う論議も出来ないほどである。
しかし頭を相手にぶつける、という実に単純極まりない技は、立体的プロレス全盛の現在にあっては、それだけで相手をノックアウトする、というパターンはほぼ実現することはない。だがかつては必殺技だった時代があった。その使い手で最も著名なのはボボ・ブラジルである。
そのヘッドバットは、「アイアン・ヘッドバット」もしくは「ココ・バット」と呼ばれ、フリッツ・フォン・エリックの「アイアン・クロー」と並び伝説の技である。僕はむろんブラジルの全盛期を知る年代ではなく、後年の老いたブラジルしか知らないのだけれども、幸い最盛期のブラジルをビデオで数回見たことがある。馬場さんとのインター選手権で、ブラジルは2mを超える馬場さんの脳天にジャンプしてヘッドバットを叩き込み、痛さに馬場さんが崩れ落ちてフォール、という場面を見た。それは実に説得力があった。特に技術が勝っているわけでもなくただ己の頭の固さだけを武器に、身長に勝る相手や白人のベビーフェイスにひたすら骨と骨をぶつけ合って勝つ、というある意味悲壮感まで漂うドラマを見せつけてくれた。こういう劇的な技は前述のエリックの鉄の爪と双璧で、まさに「プロレス」であったと言っていい。
日本には大木金太郎が居た。大木は、相手の髪を掴み、正面或いは側面にガツンと自らの固い頭をぶつけて相手の戦う気力を失わせた。「一本足頭突き」または「原爆頭突き」と呼ばれ、全盛期を築いた。
ただあまりにも単純な技であり、それを中心として試合を組み立てるのはよっぽどの凄さがないと成立しない。日本の中興の人として藤原喜明が居るが、組長もUWFの精神的支柱となってからはむしろ「関節技の鬼」として名を馳せたので、頭突きを打つことは徐々に少なくなっていったのは残念だった。
その後は頭突きは繋ぎ技としての地位に甘んじている。ラッシャー木村もいなくなり、現在の使い手はやはり天山広吉だろうが、彼もフィニッシュに用いる事はしていない。しかし頭は固いのだろう。時折見せる一発のヘッドバットで、相手の体が崩れ落ちるときがある。モンゴリアンチョップを放つよりよっぽど説得力があるので、大事な試合のときはうまく使って欲しい。
流れを変える技として、案外頭突きを得意としないレスラーも使う場合もある。猪木は異種格闘技戦などで効果的に使っていたと思う。他の格闘技ではほとんど見られない技であり、不意をつくとダメージも大きい。フィニッシュに使うのはもはや難しいが、上手く使えばまだまだ脚光を浴びる可能性は持っている。
ところで、ダイビング・ヘッドバットとなると今でも充分にフィニッシュを奪う技として通用している。トップロープからジャンプして頭を相手の身体にぶち込めば、相当のダメージは奪える。この場合、頭と頭がぶつかるのは勢いから言ってかなり危険なので、実施しているレスラーはほとんど居ない。主として肩口(稀に腹部)に頭を叩き込む。
NWA世界王者として君臨し一時代を築いたハーリー・レイスは、ブレーンバスターと並んでこの技をフィニッシュにしていた。重量級のレイスがダイブして頭を相手の肩口に叩き込めば、確かに迫力はあった。
しかし、僕個人の好みの問題だが、あのレイスの丸い身体がロープ上段から落ちてくる様は、どうもコケシを落としたようであまり好きではなかった。手の使い方がちょっと中途半端で、自分の受身をとることを優先した感もあり、ちょっとこじんまりした印象だったと思う。あくまで僕個人の見方です。
僕が好きだったのはダイナマイト・キッドのダイビング・ヘッドバットである。イギリスの貴公子然とした長髪をバッサリと切り、初代タイガーマスクと抗争を繰り広げていた頃は坊主頭だった。その彼が、ツームストン・パイルドライバーをゲシッと決め、倒れた相手にロープ最上段から落す坊主頭のヘッドバットは切れ味抜群で、まるで自らの受身を捨てたように全体重を頭に乗せて放ったような迫力があった。これはカッコよかったですねぇ。散々やられたタイガーマスクが、同じパターン(パイルドライバー→ヘッドバット)でフィニッシュするようになったのも、よっぽどキッドのヘッドバットが効いたからではないだろうか。
現在ではやはり天山らが使うが、なかなかキッドの迫力には及ばない。伸び悩む猛牛天山には、小細工より猪突猛進が合う。詰めの甘さはヘッドバットで補えるのではないか、と昨今思う。ノアの選手もしばしば使う。橋誠などは頑張っているが、まだまだ凄みに欠ける。頑張ってほしいものである。
危険で総合格闘技では使えないプロレスならではの技。迫力ある使い手の出現を願う。
それは判定勝負になったりする場合とか、相手の技を受けるという概念がないので膠着したり逆に一瞬で勝負が決したり…という点が主たるものである。総合ファンから見ればそれがいいところなのであり、消化不良などと言うと「あんたアホか」と言われるので、あまり大きな声では言えない。
具体的に最も歯がゆい場面はと聞かれれば、それは「マウントポジション」の場面、つまり馬乗りのシーンである。普通は上になった選手がガンガンパンチを降らせてK.O.の場面だが、最近は防御も発達してなかなかそうはいかない。懸命にガードして防ぐ。相手の両腕を排し続ける。そうして膠着してきたとき…。
僕はどうしても、「なんで頭突きをしないんだー!」と思っちゃうのですね。相手の両腕をガードしている時は頭部がガラ空きの場合が多い。そこに一発ヘッドバットを打てばいいじゃんか!とイラついてしまうのである。これは無論プロレスの発想で、総合では頭突きは当然禁止である。
頭突きという技は人間の本能みたいなもので、元祖が誰とか言う論議も出来ないほどである。
しかし頭を相手にぶつける、という実に単純極まりない技は、立体的プロレス全盛の現在にあっては、それだけで相手をノックアウトする、というパターンはほぼ実現することはない。だがかつては必殺技だった時代があった。その使い手で最も著名なのはボボ・ブラジルである。
そのヘッドバットは、「アイアン・ヘッドバット」もしくは「ココ・バット」と呼ばれ、フリッツ・フォン・エリックの「アイアン・クロー」と並び伝説の技である。僕はむろんブラジルの全盛期を知る年代ではなく、後年の老いたブラジルしか知らないのだけれども、幸い最盛期のブラジルをビデオで数回見たことがある。馬場さんとのインター選手権で、ブラジルは2mを超える馬場さんの脳天にジャンプしてヘッドバットを叩き込み、痛さに馬場さんが崩れ落ちてフォール、という場面を見た。それは実に説得力があった。特に技術が勝っているわけでもなくただ己の頭の固さだけを武器に、身長に勝る相手や白人のベビーフェイスにひたすら骨と骨をぶつけ合って勝つ、というある意味悲壮感まで漂うドラマを見せつけてくれた。こういう劇的な技は前述のエリックの鉄の爪と双璧で、まさに「プロレス」であったと言っていい。
日本には大木金太郎が居た。大木は、相手の髪を掴み、正面或いは側面にガツンと自らの固い頭をぶつけて相手の戦う気力を失わせた。「一本足頭突き」または「原爆頭突き」と呼ばれ、全盛期を築いた。
ただあまりにも単純な技であり、それを中心として試合を組み立てるのはよっぽどの凄さがないと成立しない。日本の中興の人として藤原喜明が居るが、組長もUWFの精神的支柱となってからはむしろ「関節技の鬼」として名を馳せたので、頭突きを打つことは徐々に少なくなっていったのは残念だった。
その後は頭突きは繋ぎ技としての地位に甘んじている。ラッシャー木村もいなくなり、現在の使い手はやはり天山広吉だろうが、彼もフィニッシュに用いる事はしていない。しかし頭は固いのだろう。時折見せる一発のヘッドバットで、相手の体が崩れ落ちるときがある。モンゴリアンチョップを放つよりよっぽど説得力があるので、大事な試合のときはうまく使って欲しい。
流れを変える技として、案外頭突きを得意としないレスラーも使う場合もある。猪木は異種格闘技戦などで効果的に使っていたと思う。他の格闘技ではほとんど見られない技であり、不意をつくとダメージも大きい。フィニッシュに使うのはもはや難しいが、上手く使えばまだまだ脚光を浴びる可能性は持っている。
ところで、ダイビング・ヘッドバットとなると今でも充分にフィニッシュを奪う技として通用している。トップロープからジャンプして頭を相手の身体にぶち込めば、相当のダメージは奪える。この場合、頭と頭がぶつかるのは勢いから言ってかなり危険なので、実施しているレスラーはほとんど居ない。主として肩口(稀に腹部)に頭を叩き込む。
NWA世界王者として君臨し一時代を築いたハーリー・レイスは、ブレーンバスターと並んでこの技をフィニッシュにしていた。重量級のレイスがダイブして頭を相手の肩口に叩き込めば、確かに迫力はあった。
しかし、僕個人の好みの問題だが、あのレイスの丸い身体がロープ上段から落ちてくる様は、どうもコケシを落としたようであまり好きではなかった。手の使い方がちょっと中途半端で、自分の受身をとることを優先した感もあり、ちょっとこじんまりした印象だったと思う。あくまで僕個人の見方です。
僕が好きだったのはダイナマイト・キッドのダイビング・ヘッドバットである。イギリスの貴公子然とした長髪をバッサリと切り、初代タイガーマスクと抗争を繰り広げていた頃は坊主頭だった。その彼が、ツームストン・パイルドライバーをゲシッと決め、倒れた相手にロープ最上段から落す坊主頭のヘッドバットは切れ味抜群で、まるで自らの受身を捨てたように全体重を頭に乗せて放ったような迫力があった。これはカッコよかったですねぇ。散々やられたタイガーマスクが、同じパターン(パイルドライバー→ヘッドバット)でフィニッシュするようになったのも、よっぽどキッドのヘッドバットが効いたからではないだろうか。
現在ではやはり天山らが使うが、なかなかキッドの迫力には及ばない。伸び悩む猛牛天山には、小細工より猪突猛進が合う。詰めの甘さはヘッドバットで補えるのではないか、と昨今思う。ノアの選手もしばしば使う。橋誠などは頑張っているが、まだまだ凄みに欠ける。頑張ってほしいものである。
危険で総合格闘技では使えないプロレスならではの技。迫力ある使い手の出現を願う。