先日、また現実逃避のため、僕は夜中にパソコンテレビ「GyaO」を見ていた。例によって懐かしプロレスチャンネルである。そこには、ブルーザー・ブロディが縮れた髪をなびかせて躍動していた。この人は一時期、本当に世界最強だったと思う。恵まれた体躯と無理やり作ったわけではないナチュラルな筋肉、パワーと跳躍力、そしてクレバーな試合運び。その表現力はやはり知性的で、古館伊知郎が「インテリジェンス・モンスター」と称したがうまい言い回しだ。哲学者を思わせるその風貌を見つつ、この人ももうこの世に居ないのだなと思うとまた感傷的になってしまった。テレビではマイケル・ヘイズ&テリー・ゴディ(フリーバーズ)vsケリー・フォン・エリック&ブロディのタッグマッチが行われていて、このうち3人はもう逝ったのかと思うと泣けてきた。
ブロディのフィニッシュと言えばそれはもちろんキングコング・ニードロップに決まっているわけで、以前ニードロップの記事を書いたときにも言及した。ただ、ブロディの技はそれだけではなく、ワンハンド・ボディスラムやジャックハマーにも似たブレーン・バスターなど叩きつける技、そしてドロップキックなどの足技が印象に残る。そして、ギロチンドロップを出すタイミングにも妙があった。
ブロディのギロチンドロップは相手を叩きつけたあとコーナー対角に下がって走りこんで放つ。これはニードロップと同じスタイルで、「あっここで決めるのか」と一瞬息を詰めたところでギロチンに移行する。肩透かしを食らったようでいて、まだ試合が続くのかという安堵の気持ちと余韻を残す。実際はニードロップを放つ際は拳を突き上げるポーズをするので判るのだが、それでも走りこむ迫力がそれを一瞬忘れさせるのだ。
ギロチンドロップとは、足を延ばして相手の首元に叩きつける技。ヒザを落とすニードロップとは違い、自分のモモの裏側からヒザの裏あたりが相手の首に決まるので、威力はニーに劣るが、ニードロップが危険すぎてヒザを相手の喉笛に落とせないのと違って確実に相手の首を狙うことが出来る。人間断頭台とはよく言ったもので、まさにギロチンを彷彿とさせる。海外でギロチンドロップという言葉が存在するのかどうか知らない。よくあちらではレッグドロップと表現する。「ギロチン」と称したのはもしかしたら日本かもしれないのだが不明。
この技をフィニッシュに用いていたのはあの「超人」ハルク・ホーガン。日本ではアックスボンバーをフィニッシュにしていたが、アメリカではこれでピンフォールを奪っていた。ホーガンのぶっとい脚を相手の首にめり込ませればそれはたまらんだろう。この「首を断ち切るように放つ」ギロチンドロップは、ニードロップが危険すぎて首に落とせないことを考えれば相当の必殺技と考えられるのではないか。
日本で印象に残るギロチンドロップとして思い出すのは、猪木が異種格闘技戦でモンスターマンと対戦した際、パイルドライバーを放った(このパイルドライバーは汗、もしくはモンスターマンが身体に塗っていたとされる油で滑り不完全なものとなったが、よく見ると川田が三沢戦で放つ脳天パワーボムに似ている)後に、とどめとしてかましたのが印象深い。これはやはり不完全で肩口に入ってしまったが、それでモンスターマンは肩を痛め試合続行不能となった。フィニッシュがいずれも美しく決まらなかったところが異種格闘技戦らしい。
フィニッシュに用いるのはニードロップなどと比べて地味なので、なかなか繋ぎ技の域を出ないのが残念でもある。北尾光司がプロレスに来たときに、当時ホーガンを模したスタイルをとっていたためギロチンをフィニッシュに使っていたが、あの太い脚はギロチンに適していたにせよ中途半端な印象がある。北尾のプロレスに対する姿勢が中途半端であったからかもしれないが。
その後、高山もフィニッシュに使用していたが、エベレストジャーマンとニーアタックがこれを凌駕したためもう使わなくなった。
ところで、コーナートップから放つダイビング・ギロチンドロップともなると、これは地味などとはとても呼べない技に変貌する。そもそもギロチンドロップとは、脚をマットに平行にして落とす技であるために、いわゆる「しりもちをつく」状態になる。これは自分にもかなりダメージがある技となり、ましてやコーナートップからダイブして放つともなれば、「ひとりアトミックドロップ状態」になってしまう。尻をマットに体重を乗せて打ち付けるのは痛いはずで、僕のようなヘルニア持ちの人間からしてみればあまりにも危険で冷や汗が出る。だが、レスラーは果敢にこの技に挑む。受身の上手いプロレスラーは、うまく背骨に響かないように落ちるのだろうが危険と隣り合わせには違いない。これを見てプロレスの凄さがわからない人とは本当に話をしたくなくなる。
決死のダイビング・ギロチンドロップの使い手は多々いる。かつて小橋健太は、この技をフィニッシュにしていた。最近はあまり見ることがない。危険だからであろうか。現在ではモハメド・ヨネが派手に叫びながら放つ。ヨネは昨今、筋肉バスターを尻もち式から後方倒れ式にしてしまったのだが、この技はまだ使っている。
コーナーに上って回転して放つというウルトラC級(古い?)の技も使用されている。テレビではスコーピオのローリングギロチンがお馴染み。スコーピオはマットに背を向けて後方回転だが、前方回転のダイビングギロチンもある由。どんどんエスカレートしていく。
このダイビングギロチンドロップで、伝説となっているシーンがある。こう書くと頷く人も多いと思うが、あの15年前の横浜、ブル中野vsアジャ・コングの一戦である。
女子プロレスはあまり取り上げないのだけれど(キライではもちろんないのだが、体重の軽い選手が多いので)、ギロチンドロップをテーマに書くならこれを外すわけにはいかない。
当時、全日本女子プロレスはクラッシュも引退し少し人気に翳りが出た頃。ブルとアジャはともにヒールながら抗争を繰り広げていた。不可解な判定など遺恨試合が続き、完全決着のためノーレフリー・金網デスマッチを敢行する。そのラストシーンで、ブル中野はアジャに対し金網最上段からダイビングギロチンドロップを放ったのだ。
リングを取り囲む、外に逃げ出せないために聳える金網。コーナートップよりもまだ高い、地上4mとも言われる高さは僕なら目が眩むだろう。そこから、尻もちで落ちるのだ。考えただけでも恐ろしい。昔、よくジプシー・ジョーが金網最上段からダイブしていたが、ボディプレスやニードロップなら受身も取りやすい。しかし尻から落ちねばならないギロチンドロップは…。
ブル中野は、最上段に上がってまさに放つその時、目を閉じて合掌した。4mという高さへの恐怖。下にいるアジャ・コングの首をへし折ってしまうかもしれないという恐怖。そして、自分がマットに尻から落ちることによって骨盤が割れ背骨がひしゃげてしまうかもしれないことへの恐怖。様々な事が去来しただろう。
ブルは敢然と脚を伸ばして飛び降り、アジャをノックアウトした。
このシーンはプロレス雑誌の表紙を飾り、15年経った今でも伝説として語り継がれている。ギロチンドロップの凄さを永遠に伝える名試合である。
ブロディのフィニッシュと言えばそれはもちろんキングコング・ニードロップに決まっているわけで、以前ニードロップの記事を書いたときにも言及した。ただ、ブロディの技はそれだけではなく、ワンハンド・ボディスラムやジャックハマーにも似たブレーン・バスターなど叩きつける技、そしてドロップキックなどの足技が印象に残る。そして、ギロチンドロップを出すタイミングにも妙があった。
ブロディのギロチンドロップは相手を叩きつけたあとコーナー対角に下がって走りこんで放つ。これはニードロップと同じスタイルで、「あっここで決めるのか」と一瞬息を詰めたところでギロチンに移行する。肩透かしを食らったようでいて、まだ試合が続くのかという安堵の気持ちと余韻を残す。実際はニードロップを放つ際は拳を突き上げるポーズをするので判るのだが、それでも走りこむ迫力がそれを一瞬忘れさせるのだ。
ギロチンドロップとは、足を延ばして相手の首元に叩きつける技。ヒザを落とすニードロップとは違い、自分のモモの裏側からヒザの裏あたりが相手の首に決まるので、威力はニーに劣るが、ニードロップが危険すぎてヒザを相手の喉笛に落とせないのと違って確実に相手の首を狙うことが出来る。人間断頭台とはよく言ったもので、まさにギロチンを彷彿とさせる。海外でギロチンドロップという言葉が存在するのかどうか知らない。よくあちらではレッグドロップと表現する。「ギロチン」と称したのはもしかしたら日本かもしれないのだが不明。
この技をフィニッシュに用いていたのはあの「超人」ハルク・ホーガン。日本ではアックスボンバーをフィニッシュにしていたが、アメリカではこれでピンフォールを奪っていた。ホーガンのぶっとい脚を相手の首にめり込ませればそれはたまらんだろう。この「首を断ち切るように放つ」ギロチンドロップは、ニードロップが危険すぎて首に落とせないことを考えれば相当の必殺技と考えられるのではないか。
日本で印象に残るギロチンドロップとして思い出すのは、猪木が異種格闘技戦でモンスターマンと対戦した際、パイルドライバーを放った(このパイルドライバーは汗、もしくはモンスターマンが身体に塗っていたとされる油で滑り不完全なものとなったが、よく見ると川田が三沢戦で放つ脳天パワーボムに似ている)後に、とどめとしてかましたのが印象深い。これはやはり不完全で肩口に入ってしまったが、それでモンスターマンは肩を痛め試合続行不能となった。フィニッシュがいずれも美しく決まらなかったところが異種格闘技戦らしい。
フィニッシュに用いるのはニードロップなどと比べて地味なので、なかなか繋ぎ技の域を出ないのが残念でもある。北尾光司がプロレスに来たときに、当時ホーガンを模したスタイルをとっていたためギロチンをフィニッシュに使っていたが、あの太い脚はギロチンに適していたにせよ中途半端な印象がある。北尾のプロレスに対する姿勢が中途半端であったからかもしれないが。
その後、高山もフィニッシュに使用していたが、エベレストジャーマンとニーアタックがこれを凌駕したためもう使わなくなった。
ところで、コーナートップから放つダイビング・ギロチンドロップともなると、これは地味などとはとても呼べない技に変貌する。そもそもギロチンドロップとは、脚をマットに平行にして落とす技であるために、いわゆる「しりもちをつく」状態になる。これは自分にもかなりダメージがある技となり、ましてやコーナートップからダイブして放つともなれば、「ひとりアトミックドロップ状態」になってしまう。尻をマットに体重を乗せて打ち付けるのは痛いはずで、僕のようなヘルニア持ちの人間からしてみればあまりにも危険で冷や汗が出る。だが、レスラーは果敢にこの技に挑む。受身の上手いプロレスラーは、うまく背骨に響かないように落ちるのだろうが危険と隣り合わせには違いない。これを見てプロレスの凄さがわからない人とは本当に話をしたくなくなる。
決死のダイビング・ギロチンドロップの使い手は多々いる。かつて小橋健太は、この技をフィニッシュにしていた。最近はあまり見ることがない。危険だからであろうか。現在ではモハメド・ヨネが派手に叫びながら放つ。ヨネは昨今、筋肉バスターを尻もち式から後方倒れ式にしてしまったのだが、この技はまだ使っている。
コーナーに上って回転して放つというウルトラC級(古い?)の技も使用されている。テレビではスコーピオのローリングギロチンがお馴染み。スコーピオはマットに背を向けて後方回転だが、前方回転のダイビングギロチンもある由。どんどんエスカレートしていく。
このダイビングギロチンドロップで、伝説となっているシーンがある。こう書くと頷く人も多いと思うが、あの15年前の横浜、ブル中野vsアジャ・コングの一戦である。
女子プロレスはあまり取り上げないのだけれど(キライではもちろんないのだが、体重の軽い選手が多いので)、ギロチンドロップをテーマに書くならこれを外すわけにはいかない。
当時、全日本女子プロレスはクラッシュも引退し少し人気に翳りが出た頃。ブルとアジャはともにヒールながら抗争を繰り広げていた。不可解な判定など遺恨試合が続き、完全決着のためノーレフリー・金網デスマッチを敢行する。そのラストシーンで、ブル中野はアジャに対し金網最上段からダイビングギロチンドロップを放ったのだ。
リングを取り囲む、外に逃げ出せないために聳える金網。コーナートップよりもまだ高い、地上4mとも言われる高さは僕なら目が眩むだろう。そこから、尻もちで落ちるのだ。考えただけでも恐ろしい。昔、よくジプシー・ジョーが金網最上段からダイブしていたが、ボディプレスやニードロップなら受身も取りやすい。しかし尻から落ちねばならないギロチンドロップは…。
ブル中野は、最上段に上がってまさに放つその時、目を閉じて合掌した。4mという高さへの恐怖。下にいるアジャ・コングの首をへし折ってしまうかもしれないという恐怖。そして、自分がマットに尻から落ちることによって骨盤が割れ背骨がひしゃげてしまうかもしれないことへの恐怖。様々な事が去来しただろう。
ブルは敢然と脚を伸ばして飛び降り、アジャをノックアウトした。
このシーンはプロレス雑誌の表紙を飾り、15年経った今でも伝説として語り継がれている。ギロチンドロップの凄さを永遠に伝える名試合である。
金網をスルスルとブルが登っていった時から鬼気迫ってました。
あの金網の上に立って手を合わせた時点で「え?え?何するの?」って。
そしたらあのギロチンドロップ!!!
何も考えてなく体(本能)が動いたのか?
元からその策をフィニッシュとして考えていたのか???
あんなキップが良いレスラーは他に見たことないです。
あとホーガン、ギロチンいつだったかWWEの試合だったかな?で見ました。
最近も使ってるんだ♪って思ったんですよね。
PS 最近プロレス好きな我が家三男は「もとやチョップ~」って真似してます。
「何がもとやチョップよ
ブル中野さん、引退後は確かプロゴルファーを目指していましたが、その後どうなったんだろうな。
元彌チョップは、あそこまでヒドいとまあプロレスとは別物と世間は見てくれるものだと思っていましたが、「あれがプロレスなんだよ」という蔑む声をやっぱり聞きます。K-1ファンに多い(汗)。4mギロチンドロップを見せてやりたい。これでもプロレスを「その程度のもの」と言えるのか、と。
あれは女子プロ史上に残る戦いでしたね。
そして悪役の世代交代とともに一線から退いていきましたね。
現在古巣全女は無くなりちゃんとした引退セレモニーもなく今はリングの世界からゴルフの世界へ転身したますね。
ギロチンドロップ。怖い技です。椎間板ヘルニアになっちゃうよ(汗)。紅夜叉もよくやっていたようですが、これが原因で身体を痛め、結婚引退のきっかけとなったと言う話も聞いたことがあります。