何故? と言われると返答に困るのだが、僕は昔からエルボードロップという技が好きである。様々なプロフィールにもお遊びとして「得意技:エルボードロップ」という一文をよく入れる。これによって、相手は僕のことを「プロレス好き」と認識してくれる。もちろん実際はやりませんけどね。
この技の解説も不要だろうと思う。ヒジを倒れている相手に向かって落とす、という単純かつ明快なもの。胸元に落とすことが最も多いが、首に近いところに落とすとこれはもう強烈無比の必殺技となる。
この技の元祖は、スタニスラウス・ズビスコだと言われている。この人は古い。20世紀初頭(100年前ですな)に活躍した伝説のレスラーで、同世代のレスラーと言えばハッケンシュミット、エド・ルイス、フランク・ゴッチ、ジョー・ステッカー…。たまらない名前ばかりだ。もちろんみんな見たことはない。当時のレスリングと言えば、ヘッドロックで一時間、ボディシザースで一時間…という途方もない力比べプロレスの時代で、ズビスコのエルボードロップは唯一の立体殺法だったかもしれない。ちょうどフランク・ゴッチのトーホールドが唯一の必殺関節技であったように。かのような時代から受け継がれている技で歴史もある。これから比べればバックドロップなんて新しい。
ズビスコのことはもう知る由もないのだが(しかしズビスコはなんと77歳まで現役だったと伝えられている。知っている人はいるかもしれない)、その直系の弟子と言えるのがあのジョニー・バレンタインである。
ジョニー・バレンタインも、もう既に僕達の世代にとっては幻のレスラーではあるのだが、エルボードロップの代名詞のような存在である。昭和41年の猪木東京プロレス旗揚げに参戦し、さんざん猪木を苦しめた。その金髪をなびかせてジャンプして落とすエルボードロップはまさに必殺であったと伝えられる。「毒針殺法」と言う言葉もこのときもしかしたら生まれたのではないか。見たかったレスラーであるが、昭和50年にセスナ墜落事故で大怪我をして引退。4年前に他界した。残念。
息子のグレッグ・バレンタインは何度も見たが、残念ながらさほど印象に残るレスラーではなかった。
僕達の世代で最も印象に残るエルボードロップと言えば、それはもうアブドーラ・ザ・ブッチャーにとどめをさすのではないか。
ブッチャーと言えば、デストロイヤーと並んで日本で最も愛された外国人レスラーと言ってもいいだろう。プロレスを知らない人でもブッチャーは知っている。見事なまでの悪役であり、リングに立てば必ず流血した。その深く傷が刻まれた額はとにかく憎々しげで、凶器攻撃を旨としていた怖ろしいレスラーだったが、何故か愛された。まん丸な体型、そしてちょっとした仕草にユーモアがあったからかもしれない。同様の極め付けのヒールとして同世代にタイガー・ジェット・シンが居たが、彼がTVコマーシャルに出るなどちょっと考えられない。不思議な魅力を持ったレスラーだった。
ブッチャーの試合と言うのは全編これ反則というもので、小道具を必ず隠し持っていて相手を襲う。テリー・ファンクの腕に突き立てたフォークは今も語り草だ。いとも簡単に額から大量の血を流し、その真っ赤に染まった顔面から狂気の目が爛々と光る、という、どちらかと言えば技で魅せるよりその存在感、佇まいが凄かった。そして流血を見た相手レスラーが攻め立てようとすると「地獄突き」を繰り出す。喉ボトケを目がけて手の先端を突き立てる。その独特の「カラテ」ポーズも様になっていた。
ブッチャーは「反則負け」になるのが仕事、という側面もあり、なかなかピンフォールを取ることはない。しかし、大事な試合や、相手がだらしない場合には最後にフォールを奪ってしまう。その必殺技がエルボードロップであった。
相手が倒れているその場所に向かって走りこみジャンプして、喉笛にヒジを落とす。あのブッチャーがジャンプ出来るというだけで凄いのに、そのヒジに全体重を預けノドにめり込ませるのであるから返せるわけがない。馬場さんも鶴田もこれを決められたら終わりである。最高峰の必殺技と言えよう。
ブッチャーについて語りすぎた。
さて、ランニング・エルボードロップと言う技がある。走りこんで助走を効かせエルボードロップに威力を増そうというもの。エルボーしか打たないダスティ・ローデスなどはフィニッシュにはやはり走りこんでいた。また体重の軽いJr.ヘビー級などでは迫力を増すために走って打つ。フィニッシュには結びつきにくいが。ヘビー級でもアニマル浜口などはランニングエルボードロップを連発してアピールしていた。
ジャンピングエルボードロップは、前述のバレンタインやブッチャーも飛び上がって打つので広義で言えば同じことであるが、現在の武藤敬司や棚橋弘至は実にハデに飛び上がる。どちらかと言えばヒジの先端より二の腕あたりが中心となって当たっているのでダメージは少ないだろうがなんせカッコいい。ジャンプ中にいくつか動きを入れてハデにしているのもミソ。
さて、その場ジャンプではなくてコーナーからのエルボードロップ、つまりダイビング・エルボードロップとなると、まず確実にフォールに結び付けてもらいたいところなのだが、そうもいかないのが現状かもしれない。昔よく天龍がコーナートップからのエルボードロップを打っていたが、どうも受身を優先させている雰囲気がしてあまり絵にならなかった(天龍ファンすみません)。ヒジを狙ったところに怖々落とすというよりも、身体ごと相手に向かっていくという方が迫力が出るのではないか。
僕が印象に残るコーナーからのダイビングエルボードロップは、昔ちょっとだけ来日したデビット・シュルツのそれである。「催眠医師」だったか「催眠博士」だったかもう呼ばれ方も忘れてしまったが、彼のコーナーからのエルボードロップはスピードがあった。天龍がふわりと飛ぶ感じであったのに対し、コーナーポストを蹴って相手目がけてビュンと飛んでくる感じで迫力があった。回数は見ていないけれども打てば必ずピンフォールだったように記憶している。シュルツはさほど目立ったレスラーではなく二流だったかもしれないけれど、この一撃で僕には忘れられないレスラーとなっている。
ブッチャーはまだ現役である。ズビスコが77歳までやったことを思うとまだまだ。どすんと一発エルボードロップで会場を沸かせて欲しい。
この技の解説も不要だろうと思う。ヒジを倒れている相手に向かって落とす、という単純かつ明快なもの。胸元に落とすことが最も多いが、首に近いところに落とすとこれはもう強烈無比の必殺技となる。
この技の元祖は、スタニスラウス・ズビスコだと言われている。この人は古い。20世紀初頭(100年前ですな)に活躍した伝説のレスラーで、同世代のレスラーと言えばハッケンシュミット、エド・ルイス、フランク・ゴッチ、ジョー・ステッカー…。たまらない名前ばかりだ。もちろんみんな見たことはない。当時のレスリングと言えば、ヘッドロックで一時間、ボディシザースで一時間…という途方もない力比べプロレスの時代で、ズビスコのエルボードロップは唯一の立体殺法だったかもしれない。ちょうどフランク・ゴッチのトーホールドが唯一の必殺関節技であったように。かのような時代から受け継がれている技で歴史もある。これから比べればバックドロップなんて新しい。
ズビスコのことはもう知る由もないのだが(しかしズビスコはなんと77歳まで現役だったと伝えられている。知っている人はいるかもしれない)、その直系の弟子と言えるのがあのジョニー・バレンタインである。
ジョニー・バレンタインも、もう既に僕達の世代にとっては幻のレスラーではあるのだが、エルボードロップの代名詞のような存在である。昭和41年の猪木東京プロレス旗揚げに参戦し、さんざん猪木を苦しめた。その金髪をなびかせてジャンプして落とすエルボードロップはまさに必殺であったと伝えられる。「毒針殺法」と言う言葉もこのときもしかしたら生まれたのではないか。見たかったレスラーであるが、昭和50年にセスナ墜落事故で大怪我をして引退。4年前に他界した。残念。
息子のグレッグ・バレンタインは何度も見たが、残念ながらさほど印象に残るレスラーではなかった。
僕達の世代で最も印象に残るエルボードロップと言えば、それはもうアブドーラ・ザ・ブッチャーにとどめをさすのではないか。
ブッチャーと言えば、デストロイヤーと並んで日本で最も愛された外国人レスラーと言ってもいいだろう。プロレスを知らない人でもブッチャーは知っている。見事なまでの悪役であり、リングに立てば必ず流血した。その深く傷が刻まれた額はとにかく憎々しげで、凶器攻撃を旨としていた怖ろしいレスラーだったが、何故か愛された。まん丸な体型、そしてちょっとした仕草にユーモアがあったからかもしれない。同様の極め付けのヒールとして同世代にタイガー・ジェット・シンが居たが、彼がTVコマーシャルに出るなどちょっと考えられない。不思議な魅力を持ったレスラーだった。
ブッチャーの試合と言うのは全編これ反則というもので、小道具を必ず隠し持っていて相手を襲う。テリー・ファンクの腕に突き立てたフォークは今も語り草だ。いとも簡単に額から大量の血を流し、その真っ赤に染まった顔面から狂気の目が爛々と光る、という、どちらかと言えば技で魅せるよりその存在感、佇まいが凄かった。そして流血を見た相手レスラーが攻め立てようとすると「地獄突き」を繰り出す。喉ボトケを目がけて手の先端を突き立てる。その独特の「カラテ」ポーズも様になっていた。
ブッチャーは「反則負け」になるのが仕事、という側面もあり、なかなかピンフォールを取ることはない。しかし、大事な試合や、相手がだらしない場合には最後にフォールを奪ってしまう。その必殺技がエルボードロップであった。
相手が倒れているその場所に向かって走りこみジャンプして、喉笛にヒジを落とす。あのブッチャーがジャンプ出来るというだけで凄いのに、そのヒジに全体重を預けノドにめり込ませるのであるから返せるわけがない。馬場さんも鶴田もこれを決められたら終わりである。最高峰の必殺技と言えよう。
ブッチャーについて語りすぎた。
さて、ランニング・エルボードロップと言う技がある。走りこんで助走を効かせエルボードロップに威力を増そうというもの。エルボーしか打たないダスティ・ローデスなどはフィニッシュにはやはり走りこんでいた。また体重の軽いJr.ヘビー級などでは迫力を増すために走って打つ。フィニッシュには結びつきにくいが。ヘビー級でもアニマル浜口などはランニングエルボードロップを連発してアピールしていた。
ジャンピングエルボードロップは、前述のバレンタインやブッチャーも飛び上がって打つので広義で言えば同じことであるが、現在の武藤敬司や棚橋弘至は実にハデに飛び上がる。どちらかと言えばヒジの先端より二の腕あたりが中心となって当たっているのでダメージは少ないだろうがなんせカッコいい。ジャンプ中にいくつか動きを入れてハデにしているのもミソ。
さて、その場ジャンプではなくてコーナーからのエルボードロップ、つまりダイビング・エルボードロップとなると、まず確実にフォールに結び付けてもらいたいところなのだが、そうもいかないのが現状かもしれない。昔よく天龍がコーナートップからのエルボードロップを打っていたが、どうも受身を優先させている雰囲気がしてあまり絵にならなかった(天龍ファンすみません)。ヒジを狙ったところに怖々落とすというよりも、身体ごと相手に向かっていくという方が迫力が出るのではないか。
僕が印象に残るコーナーからのダイビングエルボードロップは、昔ちょっとだけ来日したデビット・シュルツのそれである。「催眠医師」だったか「催眠博士」だったかもう呼ばれ方も忘れてしまったが、彼のコーナーからのエルボードロップはスピードがあった。天龍がふわりと飛ぶ感じであったのに対し、コーナーポストを蹴って相手目がけてビュンと飛んでくる感じで迫力があった。回数は見ていないけれども打てば必ずピンフォールだったように記憶している。シュルツはさほど目立ったレスラーではなく二流だったかもしれないけれど、この一撃で僕には忘れられないレスラーとなっている。
ブッチャーはまだ現役である。ズビスコが77歳までやったことを思うとまだまだ。どすんと一発エルボードロップで会場を沸かせて欲しい。
リングサイドで見たブッチャーの試合は怖かったです。何てたってあのギザギザ額から滴る血を見せつけるように観客席をまわる(T_T)
もちろん!その頃ね私はかわいかったので(?)ポンと背中を叩くなんてできず、必死で逃げてました。
あまりプロレスを知らなかったので『何てこった(>_<)』って思ってたかな(´。`)
ブッチャーはプロレスの選手じゃない!と思ってたのですが何かの試合で彼がエルボーで決めた試合を見てビックリ。よーく見ると芸が細かい!ハチャメチャに見える凶器攻撃も計算済みってわかり、それからプロレスを観察しながら見るようになりました(^_^)v
私にとってブッチャーのエルボーはプロレスの面白さを教えてくれた技です。
PS 私はK-1やprideみたいに単純な殴り合いで誰が強いのか決めるのも好きだけどブッチャーみたいなマジのエンターテイメントプロレスって大好きです!
あれだけ魅せるプロレスができる人はなかなかいませんよね。
ブッチャーはプロレスの選手じゃない!と思ってたのですが何かの試合で彼がエルボーで
決めた試合を見てビックリ。よーく見ると芸が細かい!ハチャメチャに見える凶器攻撃も
計算済みってわかり、それからプロレスを観察しながら見るようになりました(^_^)v
私にとってブッチャーのエルボーはプロレスの面白さを教えてくれた技です。
PS 私はK-1やprideみたいに単純な殴り合いで誰が強いのか決めるのも好きだけどブッ
チャーみたいなマジのエンターテイメントプロレスって大好きです!
あれだけ魅せるプロレスができる人はなかなかいませんよね。
(jasminteaさんのコメントの中の、顔文字の「<(半角)」の部分をタグと間違えて反応してしまったようで、せっかく頂いた後半部分が消えてしまいました。m(_ _;)m ただし頂いたコメントはメールでも僕に送られる設定にしていたため、再現させていただきました。どうもすみません^^; 凛太郎)
プロレスのギミックの体現者としてブッチャーを嫌うファンも居ますが、必ず流血する凄み、その迫力、そして様々な人間模様を表現し哀愁までその佇まいに漂わせることの出来るレスラーは彼しかいません。
実力が伴っての、技術が伴ってのヒールだと思います。よく実力的に落ち目になってからのヒール転向がありますが、そういう「でもしかヒール」ではなく、ヒールでしか生きる術がなかったブッチャーというレスラーの生き様を考えると実にドラマが見えてくるのです。それはK-1ファイターとは対極かもしれませんが、ブッチャーの凄みもわかって欲しいのです。
いつもご迷惑をおかけしています
今、エラ・フィッツジェラルドを聴きながら
エルボードロップについて書いています。
いやぁ、至福の時をありがとうございます。
確かにブッチャーのそれは印象に残っていますね。あの体重でやられたら僕たちなら内臓が飛び出してますよね(失礼)
それと、玄人好みのするところでは
ドリーファンクJrのエルボーなどいかがでしょうか。フィニッシュへ持っていくための
方程式の一部のようにさりげなく確実に打っていたような気がします。
ブッチャーも決して嫌いではないのですが、
テリー・ファンクの腕にフォークを突き刺したことは今でも許せません。
「テリー、もうリングにあがるな、またやられる」高校3年生の僕は信じられない光景に唖然としていたのを覚えています。
でも、また上がって行くんですよね。
兄のドリーは、それでもタッグロープを
しっかり握って見つめている。
すみません、また泣けてきました。
エルボー・ドロップ。
郷愁を誘うはずですね。
この美しい技が、そんなに古い技だとは知りませんでした。
ドリーのエルボー。エルボースマッシュを2、3発相手のアゴの先端にヒットさせ、倒れたところに自らも身体を沈めて倒れこむようにエルボードロップを放つ。決してハデにジャンプせずに狙ったところに確実に落とすその職人芸的姿は実にクールでしたねぇ。テリーの熱さとは対称的な静かなファイトスタイルが魅力でした。
ジョーさんの熱い思いが伝わってきます。テリーの勇気に僕たちはいろいろなものを貰ったような気がします。
あの頃のプロレスが大好きでした。
ブッチャーのあの怖い顔、今でもしっかり覚えてます。現役なんですね。すごい。
ファンク兄弟のテーマやミルマスカラスのテーマ
♪スカイハイがどこからか聞こえてくると、わくわくしちゃいます。
エルボードロップは、プロレス好きな兄によくやられて、泣かされた思い出があります。
今の、K1などのマジな戦い…それなりにすごいと思いますが、私はあの頃のエンターテイメント性に溢れたプロレスが大好きです。
ファンク兄弟ではやっぱり、テリーのファンでした。テンガロンハット欲しかったな。
ちなみに、今のひそかな夢は小川直也(←この字でいいのかな?)にお姫様抱っこしてもらうことと、アントニオ猪木と一緒に1・2・3ダァーを
することです。