本当はカート・アングルが来日することでもあるし、アングル・スラムとその周辺の技について書こうと思っていたのだが、いろいろ考えていると相手を担ぎ上げるという点で先に書かなければいけない技があった。バックフリップである。
バックフリップという技はどういうものであるかと言えば、つまり相手を横方向に肩に担ぎ上げて(そのとき相手の状態はうつ伏せ)、そのまま自ら後方に倒れて(相手に体重を預けるようにして)相手の背中からマットに叩きつける技である。自らが足を跳ね上げてジャンプするようにすれば体重の乗りに勢いがつきダメージが大きくなる。叩きつけた段階で完全に相手の身体の上に自分が逆立ち状態で乗っていれば完璧。つまり、肩から落ちるセントーンみたいなダメージが生じるだろう。これは効くはず。
ところで、よくバックフリップとブロックバスターが混同されていることがある。実況アナですら間違っていることがある(セントーンとサンセットフリップを間違えるように)。ブロックバスターとは、相手をボディスラムのように抱え上げ(肩に担ぎ上げるのではない)、そのまま後方にブリッジして投げる。基本的にはブリッジで投げるためスープレックスの一種とも思われ、相手の身体の上に自分の体重を預けることがない。
したがって、バックフリップは自分の体重が相手に乗れば乗るほどダメージが大きくなると思われる。重いレスラーがやると有利で、サモアの血を引くグレート・コキーナが多用した。その時は「サモアン・ドロップ」と呼ばれていたように記憶している。コキーナは「ヨコヅナ」のリングネームでもおなじみで、その230kgとも言われる体重で相手を押し潰した。ヨコヅナも早死にしたなぁ。確かまだ30代半ばだった。
バックフリップはなかなかフィニッシュホールドにはなりにくいが、マイク・ロトンドはこれでフォールを奪える貴重なレスラーだったと思う。スティーブ・ウィリアムスと共に世界最強タッグを制した「マイコーさん」。いいキャラクターで僕は好きである。
そういえば、ハックソー・ヒギンズはどうしただろうか。彼のバックフリップは強烈だった。肩の肉が盛り上がった体躯は、それだけでバックフリップを放つのに適した身体だった。バックフリップ一発で木村健悟のアバラを折り、猪木をKO寸前にまで攻め込んだヒギンズ。何故かすぐにフェイドアウトしてしまったのが残念である。二流だったのかなあ。
日本では、やはり思い出すのはアニマル浜口である。エアプレン・スピンでぐるぐる回して後ろへどすんとバックフリップ。定番である。浜口は体重がさほどではないので、なかなかフィニッシュには結びつかなかったのが残念だ。気合だけではなんともならない。でも勢いがあって格好よかった。
なお、全然違う話になってしまうのだが…。
バックフリップで投げる場合、相手をうつ伏せで横方向に、自分の肩に担ぎ上げる。この状態を僕はずっと「エアプレンスピン状態」と言ってきた。前述のマイク・ロトンドもアニマル浜口もエアプレンスピンで相手をぐるぐる回してからバックフリップに移行する。
しかしながら、エアプレンスピンはその名の通り「スピン」つまり回転を伴う技であり、相手の三半規管を狙う技。ただ担ぎ上げるだけでは「エアプレンスピン状態」とは言わない。でも「バーディクト(F5)」のときも「ランドスライド」のときも「エアプレンスピン状態」と書いてきた。なので謹んで訂正させていただきます(汗)。
じゃなんと言えばいいのかと言えばそれは「ファイアーマンズキャリー状態」というのがどうも正しいようである。「ファイアーマンズキャリー」というのは、消防士(ファイアーマン)がハシゴを担ぐ様子に似ているからそう呼ぶのだそうだが、つまり柔道で言う「肩車」であり、しゃがんで相手を側面から担ぎ上げて投げ飛ばすという技である。長州力が以前よく多用していたという記憶があるが、そのときは「ファイアーマンズキャリー」とは呼んではいなかったなあ。比較的新しい名称、「デスバレーボム」を高岩がやりだしたころから耳に入るようになってきたような記憶があるが、ちょっと検索するとかなり古い名称らしい。海外はともかく、少なくともあまり日本では聞き馴染みはなかったように思うのだが。これは僕の見方が悪かったのかもしれない。
「飛行機投げ」というのはこの「ファイアーマンズキャリー」と同じものなのか? どうも肩車は側面に投げる、飛行機投げはそのままブンと投げ飛ばすイメージあるのだが…。まだよくわからない。誰か明確にご教授していただけないものか。
閑話休題。バックフリップという技は、相手を横方向(ファイアーマンズキャリー状態)に担ぎ上げて後ろに落す。その際に自らの体重を相手に乗せることによって威力を発揮する。この決まり方で、実に近いなと思う技がある。相手を担ぎ上げるのに横方向ではなく縦方向に担ぐ技。つまり「水車落し」である。自分の体重を肩から相手にのしかからせる面においては同じであると言える。亜流とは言わないが同系統であると見られないか。
「水車落し」は、両足タックルから相手を担ぎ上げる。そして相手の片腕を取り固定して一気に後ろへひっくり返る。もちろん、サルマン・ハシミコフの必殺技である。そのひっくり返るスピードが速いので、完全に肩から体重が相手に乗る。最初に見たときは「え、こんな単純な技でフォールが奪えるの?」と疑問にも思ったが、何度も見てビデオでスロー再生などすると、かなりダメージが大きな技であることがわかった。自分の体重を完全に活用していた。しかし地味に映るのはしかたがなかったのだが、この技一本でハシミコフはIWGP王者にまで登りつめるのである。そこまで来ると技に貫禄が出てくる。
バックフリップから話がまた反れるが、一時期新日本プロレスを席巻した旧ソ連のアマレス軍団、いわゆる「レッドブル軍団」のことを懐かしく思い出す。
あの時猪木は、ソ連のペレストロイカ(懐かしいですね)を機に、ベールの向こうに居たアマレスのツワモノどもをリングに上げることに成功する。ソ連側の大将はソスラン・アンディエフ。フリースタイル重量級オリンピック二連覇。身長2mはあるという凄まじき男で、カレリンみたいなもんだったのだろう。カレリンはグレコだが。だが、アンディエフは交通事故かなんかで来日不可となってしまう(本当だったのだろうか)。なのでドーム大会では柔道のチョチョシビリが代役となって猪木を裏投げ三連発で破るという衝撃の結果となったのだが…それはさておき。
アンディエフが来なかったので、前評判では№2と言われていたハシミコフが大将格となる。ちょっと格が落ちるのかな、残念と思っていたらこのハシミコフがとんでもない男だった。あのビガロ(涙)との一戦は今でもまざまざと思い出される。研ぎ澄まされた刃同士の戦いに見えた。そして、ドロップキックやジャンピングハイキックを放つビガロを水車落しでフォールしてしまったのだ(当時はまだ水車落しという名称はなかった)。
ハシミコフは身長が低く(180mほどか)アンディエフと比べて迫力に欠けるのかと思っていたら、体重が140kgもあり、体重制限でオリンピックに出なかったとの話すらある実力者。重いのに動きが素早い。そして、ビクトル・ザンギエフ、ウラジミール・ベルコビッチ、チムール・ザラソフ、ワッハ・エブロエフらの面々。彼らはプロレス慣れするのにさほどの時間を要しなかった。確かマサ斉藤が「やつらの性格は怖ろしくトンパチである」と言ったとおり闘志むき出しでいかにもプロレス向きだったのだろう。何よりもそのスープレックスが凄かった。フロントスープレックスと言えば、胸と胸を合わせて投げるというイメージがあったが、彼らはそんなことお構いなしで自分の腕さえロック出来ればもうバンバン投げてくる。そして素早い。受身を取らせることをあまり意識していないのでそれがまた怖い。
その後、ブラッド・レイガンス(大好き♪)を参謀役に、USAアマレス軍団との抗争も始まる。バズ・ソイヤー(彼も死んだな)、スティーブ・ウィリアムス(死ぬなよ)らと実に危険な香りをプンプンさせながら戦った。普段ラフプレイの多いアメリカのレスラーが実にアマレス的実力も兼ね備えていたことがわかり、興奮したものだった。
ハシミコフはそして、ついにビッグバン・ベイダーを破りIWGP王者に輝く。もちろん必殺の水車落しで。この頃が頂点だったのだろうが、その後は様々な事情もあったのだろう、徐々に衰退し消えていくのである。旧ソ連の解体もあり、不安定な時代。惜しいな。しばらくしてハシミコフらはUインターにも登場するが、既に全盛期ではなかった。輝きは長くは続かなかったのだ。
水車落しは、藤田や中西らのアマレス系のレスラーが今も時折見せる。だが、フォールを奪えるような技として甦ったわけではない。あれは体重を完全に相手に浴びせるだけのスピードがないと通用しないのだ。そういう意味では、豆タンク的身体であの瞬発力を兼ね備えたハシミコフ一代の必殺技であったのかもしれない。
バックフリップから話が完全に反れてしまった。
バックフリップという技はどういうものであるかと言えば、つまり相手を横方向に肩に担ぎ上げて(そのとき相手の状態はうつ伏せ)、そのまま自ら後方に倒れて(相手に体重を預けるようにして)相手の背中からマットに叩きつける技である。自らが足を跳ね上げてジャンプするようにすれば体重の乗りに勢いがつきダメージが大きくなる。叩きつけた段階で完全に相手の身体の上に自分が逆立ち状態で乗っていれば完璧。つまり、肩から落ちるセントーンみたいなダメージが生じるだろう。これは効くはず。
ところで、よくバックフリップとブロックバスターが混同されていることがある。実況アナですら間違っていることがある(セントーンとサンセットフリップを間違えるように)。ブロックバスターとは、相手をボディスラムのように抱え上げ(肩に担ぎ上げるのではない)、そのまま後方にブリッジして投げる。基本的にはブリッジで投げるためスープレックスの一種とも思われ、相手の身体の上に自分の体重を預けることがない。
したがって、バックフリップは自分の体重が相手に乗れば乗るほどダメージが大きくなると思われる。重いレスラーがやると有利で、サモアの血を引くグレート・コキーナが多用した。その時は「サモアン・ドロップ」と呼ばれていたように記憶している。コキーナは「ヨコヅナ」のリングネームでもおなじみで、その230kgとも言われる体重で相手を押し潰した。ヨコヅナも早死にしたなぁ。確かまだ30代半ばだった。
バックフリップはなかなかフィニッシュホールドにはなりにくいが、マイク・ロトンドはこれでフォールを奪える貴重なレスラーだったと思う。スティーブ・ウィリアムスと共に世界最強タッグを制した「マイコーさん」。いいキャラクターで僕は好きである。
そういえば、ハックソー・ヒギンズはどうしただろうか。彼のバックフリップは強烈だった。肩の肉が盛り上がった体躯は、それだけでバックフリップを放つのに適した身体だった。バックフリップ一発で木村健悟のアバラを折り、猪木をKO寸前にまで攻め込んだヒギンズ。何故かすぐにフェイドアウトしてしまったのが残念である。二流だったのかなあ。
日本では、やはり思い出すのはアニマル浜口である。エアプレン・スピンでぐるぐる回して後ろへどすんとバックフリップ。定番である。浜口は体重がさほどではないので、なかなかフィニッシュには結びつかなかったのが残念だ。気合だけではなんともならない。でも勢いがあって格好よかった。
なお、全然違う話になってしまうのだが…。
バックフリップで投げる場合、相手をうつ伏せで横方向に、自分の肩に担ぎ上げる。この状態を僕はずっと「エアプレンスピン状態」と言ってきた。前述のマイク・ロトンドもアニマル浜口もエアプレンスピンで相手をぐるぐる回してからバックフリップに移行する。
しかしながら、エアプレンスピンはその名の通り「スピン」つまり回転を伴う技であり、相手の三半規管を狙う技。ただ担ぎ上げるだけでは「エアプレンスピン状態」とは言わない。でも「バーディクト(F5)」のときも「ランドスライド」のときも「エアプレンスピン状態」と書いてきた。なので謹んで訂正させていただきます(汗)。
じゃなんと言えばいいのかと言えばそれは「ファイアーマンズキャリー状態」というのがどうも正しいようである。「ファイアーマンズキャリー」というのは、消防士(ファイアーマン)がハシゴを担ぐ様子に似ているからそう呼ぶのだそうだが、つまり柔道で言う「肩車」であり、しゃがんで相手を側面から担ぎ上げて投げ飛ばすという技である。長州力が以前よく多用していたという記憶があるが、そのときは「ファイアーマンズキャリー」とは呼んではいなかったなあ。比較的新しい名称、「デスバレーボム」を高岩がやりだしたころから耳に入るようになってきたような記憶があるが、ちょっと検索するとかなり古い名称らしい。海外はともかく、少なくともあまり日本では聞き馴染みはなかったように思うのだが。これは僕の見方が悪かったのかもしれない。
「飛行機投げ」というのはこの「ファイアーマンズキャリー」と同じものなのか? どうも肩車は側面に投げる、飛行機投げはそのままブンと投げ飛ばすイメージあるのだが…。まだよくわからない。誰か明確にご教授していただけないものか。
閑話休題。バックフリップという技は、相手を横方向(ファイアーマンズキャリー状態)に担ぎ上げて後ろに落す。その際に自らの体重を相手に乗せることによって威力を発揮する。この決まり方で、実に近いなと思う技がある。相手を担ぎ上げるのに横方向ではなく縦方向に担ぐ技。つまり「水車落し」である。自分の体重を肩から相手にのしかからせる面においては同じであると言える。亜流とは言わないが同系統であると見られないか。
「水車落し」は、両足タックルから相手を担ぎ上げる。そして相手の片腕を取り固定して一気に後ろへひっくり返る。もちろん、サルマン・ハシミコフの必殺技である。そのひっくり返るスピードが速いので、完全に肩から体重が相手に乗る。最初に見たときは「え、こんな単純な技でフォールが奪えるの?」と疑問にも思ったが、何度も見てビデオでスロー再生などすると、かなりダメージが大きな技であることがわかった。自分の体重を完全に活用していた。しかし地味に映るのはしかたがなかったのだが、この技一本でハシミコフはIWGP王者にまで登りつめるのである。そこまで来ると技に貫禄が出てくる。
バックフリップから話がまた反れるが、一時期新日本プロレスを席巻した旧ソ連のアマレス軍団、いわゆる「レッドブル軍団」のことを懐かしく思い出す。
あの時猪木は、ソ連のペレストロイカ(懐かしいですね)を機に、ベールの向こうに居たアマレスのツワモノどもをリングに上げることに成功する。ソ連側の大将はソスラン・アンディエフ。フリースタイル重量級オリンピック二連覇。身長2mはあるという凄まじき男で、カレリンみたいなもんだったのだろう。カレリンはグレコだが。だが、アンディエフは交通事故かなんかで来日不可となってしまう(本当だったのだろうか)。なのでドーム大会では柔道のチョチョシビリが代役となって猪木を裏投げ三連発で破るという衝撃の結果となったのだが…それはさておき。
アンディエフが来なかったので、前評判では№2と言われていたハシミコフが大将格となる。ちょっと格が落ちるのかな、残念と思っていたらこのハシミコフがとんでもない男だった。あのビガロ(涙)との一戦は今でもまざまざと思い出される。研ぎ澄まされた刃同士の戦いに見えた。そして、ドロップキックやジャンピングハイキックを放つビガロを水車落しでフォールしてしまったのだ(当時はまだ水車落しという名称はなかった)。
ハシミコフは身長が低く(180mほどか)アンディエフと比べて迫力に欠けるのかと思っていたら、体重が140kgもあり、体重制限でオリンピックに出なかったとの話すらある実力者。重いのに動きが素早い。そして、ビクトル・ザンギエフ、ウラジミール・ベルコビッチ、チムール・ザラソフ、ワッハ・エブロエフらの面々。彼らはプロレス慣れするのにさほどの時間を要しなかった。確かマサ斉藤が「やつらの性格は怖ろしくトンパチである」と言ったとおり闘志むき出しでいかにもプロレス向きだったのだろう。何よりもそのスープレックスが凄かった。フロントスープレックスと言えば、胸と胸を合わせて投げるというイメージがあったが、彼らはそんなことお構いなしで自分の腕さえロック出来ればもうバンバン投げてくる。そして素早い。受身を取らせることをあまり意識していないのでそれがまた怖い。
その後、ブラッド・レイガンス(大好き♪)を参謀役に、USAアマレス軍団との抗争も始まる。バズ・ソイヤー(彼も死んだな)、スティーブ・ウィリアムス(死ぬなよ)らと実に危険な香りをプンプンさせながら戦った。普段ラフプレイの多いアメリカのレスラーが実にアマレス的実力も兼ね備えていたことがわかり、興奮したものだった。
ハシミコフはそして、ついにビッグバン・ベイダーを破りIWGP王者に輝く。もちろん必殺の水車落しで。この頃が頂点だったのだろうが、その後は様々な事情もあったのだろう、徐々に衰退し消えていくのである。旧ソ連の解体もあり、不安定な時代。惜しいな。しばらくしてハシミコフらはUインターにも登場するが、既に全盛期ではなかった。輝きは長くは続かなかったのだ。
水車落しは、藤田や中西らのアマレス系のレスラーが今も時折見せる。だが、フォールを奪えるような技として甦ったわけではない。あれは体重を完全に相手に浴びせるだけのスピードがないと通用しないのだ。そういう意味では、豆タンク的身体であの瞬発力を兼ね備えたハシミコフ一代の必殺技であったのかもしれない。
バックフリップから話が完全に反れてしまった。
ちょっと「プロレス技」という範疇から外れてしまうかもしれないのだが、最近のプロレス技の傾向について気になることがある。それは「雪崩式」という技の出し方についてである。
以前から思っていたことであるが、rollingmanさんのブログ「回転富士山」に「我が意を得たり」という記述があったのでちょっと紹介させていただく。rollingmanさんごめんなさい(汗)。
詳細はリンク先を読んでいただきたいが、全く同感である。
中邑の「ランドスライド」という技は、相手を肩に担ぎ上げ、前方に落とし(その際身体が当然横向けになっていたものを頭を下に向けた落下に切り替え)、脳天ないしは後頭部をマットに叩きつけるという技であるが、この技には多少無理がある、と僕は見ている。デスバレーボムやバーニングハンマー、或いはオリンピック予選スラムのように肩に担ぎ上げた相手をそのまま横方向に落すのであれば、身体を固定しているために受身も取りづらく説得力を持つのだが、前方に落すのであれば相手の身体を方向転換させなければならないためにタイミングが難しい。実際、中邑が帰国してこの技を最初に出したとき(相手は中西だったが)、見事に崩れて失敗している。パイルドライバーやパワーボムの方がより説得力がある、と思われる。なんで肩に担ぎ上げるのだろう。まだまだ未完成である技という印象が強い。
(おっと書きすぎた。肩に担ぎ上げる「エアプレンスピン」系の技についてはまた改めて書こうと思うのでここではこれ以上言及しない。ランドスライドについては、やはりrollingmanさんの必殺技には説得力が大事な場合に詳しい。)
問題は「雪崩式」という技の形態である。
コーナー最上段にいる相手に対して仕掛けるこの技の歴史は、さほど古いものではないと思われる。最初は「デッドリー・ドライブ」という技しかなかった。コーナーに昇ってニードロップ、或いはボディプレスなどを仕掛けようとする相手に対し、いち早く立ち上がって相手を下からとらえて放り投げる。ボディスラムの危険版。これは切り返し技で、相手がわざわざコーナートップに昇るように仕向ける技であったわけではない。
ただそれだけの「コーナー最上段にいる相手」に対する切り返しの技であったデッドリードライブであるが、もちろん普通のボディスラムより落差があり威力があるわけで、この技をコーナー最上段に相手がいなくても仕掛けるパワーファイターが出てくる。ウォリアーズが印象的だが、自ら抱え上げた相手をリフトアップして頭上高く持ち上げて投げる。それはそれで凄いものである。そういう発展も見られたわけでパワーを誇示する発展形だと思っていたのだが、この技はもうひとつ別方向の発展をする。コーナートップにいる相手に別の技を仕掛けてより落差を生み威力を増そうという方向である。
海外情報に疎いので誰が最初に始めたのかはよく知らないが、日本では国際プロレス時代の阿修羅原が「コーナートップにいる相手にブレーンバスター」を仕掛けたのが最初であるとされる。これが日本における「雪崩式」の始まりとなる。
これは一種衝撃的だった。その落差。当時垂直落下式は一般的でなく、背中落ちブレーンバスターに新しい可能性が生じた。いかにも危険だった。
その後、新日で藤波辰巳や木村健悟が使い出す。しかしこれも連発すれば色褪せる。何よりもスピーディプロレスに「間」が生じてしまう。これが問題だと思った。
相手がコーナーによっこらしょと上がるとすぐさま起き上がり、そのままデッドリードライブであればすぐに投げるわけだけれども、ブレーンバスターであれば相手の首に自分の腕を巻きつけ、態勢を整える。そしておもむろに投げるわけで、相手はその間コーナートップで待っているわけだ。いかにプロレスが「受け」の美学と言ってもこれはちょっと…とどうしても思う。技を仕掛けるときのダメージ度合いはもちろんトップに昇った相手が元気であるわけで、叩きつけられてのち起き上がった仕掛ける側の方がその時のダメージは大きいはずなのである。なのに黙って仕掛けられるとは。うーむ。藤波はそこに説得力を増そうと、必ず仕掛ける場合は先に腹部に一発パンチを入れてから態勢に入っていた。それにしても…。
プロレスは「受身の凄さ」を見るものという観点を知っている我々ファンはそれでもいいが、そうでない人にはまた揶揄される原因になる、と危惧した。ロープに飛ばされて跳ね返ってくる不思議を突っ込まれるどころではないぞ、と思った。
この技は一度終止符が打たれたことがある、と僕は思っている。猪木vs藤波シングル戦で、コーナーに昇った猪木に対し藤波が雪崩式を狙い駆け上がった。しかし何のダメージもない猪木は「そんな技受けてやんない」と言わんばかりに、駆け上がった藤波にナックルパートをかまし、マットに落ちた藤波に速攻ニードロップを決めた。
これで「雪崩式ブレーンバスター」は敗れたのである。完全防御されてしまった以上、これでもう雪崩式は終わり、と僕は思った。
しかしである。雪崩式は滅びなかった。新しいパターンとして、相手がコーナーに上がるのを待たない方式が登場した。相手を散々叩きのめしダメージを蓄積させ、そしてコーナーに相手をよっこらしょっと担ぎ上げ(驚)、相手をコーナートップに座らせてそして雪崩式を放つという新形態が生まれたのである。これだと相手がコーナートップで動けなくてなすがままであっても「待ってる」という感じはしない。相手はフラフラなのだから。
そしてどんどん雪崩式はエスカレートする。旧来の相手がコーナーに昇る形式も継続され、そして技もブレーンバスターにとどまらず、フランケンシュタイナー、DDT、そしてダブルアームスープレックス。相手を担ぎ上げコーナーに据えるわけだから対面式の技だけでなくてもよくなり、ジャーマンも飛び出し、あげくはツームストンパイルドライバーまで飛び出した。怖い。無茶をする。
もうこうなれば投げ技であればなんでも「雪崩式」にすることが可能だ。そして立ち位置も、相手がトップに座り投げ手がロープ二段目くらいだったものが、両者ともロープ最上段に立つようになった。どんどんエスカレートする。
「雪崩式垂直落下ブレーンバスター」なんてのはいったいなんだ。死んじゃうぞ。
さてそこで「雪崩式」にプロレスにおける問題点が生じてくるのである。
昔のプロレスというものは、相手をヘッドロック等で痛めつけダメージを蓄積させ、ボディスラムを何発かかましてフラフラになったところに自分のフィニッシュホールド(ルーテーズならバックドロップ)を持ってくる。そして一発で決める、という流れがあった。まともな技は最後。それが出れば終わり。それがプロレスだった。
しかし受身の向上とともに、観客もより過激なものを望みだす。馬場・猪木全盛時代にその傾向が生まれ、技を積み重ねていくようになる。それに従い「痛め技」「繋ぎ技」という概念が生まれ、旧来の技が一発で決まらなくなる。バックドロップやブレーンバスター、パイルドライバーが「繋ぎ」に堕ちてしまったのもこの頃。これはいたしかたない部分もある。観客もたくさんの技を見たい。だが、こういう傾向は必ず行き詰まりを生み出す。フィニッシュ技をどうすれば説得力ある「これなら決まり」というものに出来るかが名レスラーの見せ所ともなってきた。
100年を超えるプロレスの歴史で、新技はある程度出尽くした感のあるここしばらくは「技の復興と堕落」の繰り返しであるとも言える。バックドロップやブレーンバスターは「へそ投げ」「垂直落下」によって息を吹き返し、逆にジャーマンスープレックスやラリアートは痛め技へと堕ちた。しかしまた歴史は繰り返すだろう。スープレックスが復活する時代も来るやもしれない。そうしてレスラー達の才覚と努力でプロレスは保たれてきたとも言える。
しかし「雪崩式」というものはその箍を外した存在となってしまう可能性が高い。
「雪崩式」はレスラーにとって実に「安易な方向」ではないか。確かに威力は増す。コーナートップからバックドロップを放てば、急角度で落下し負荷も確実に大きくなる。だがそれは技のレベルが上がったのではない。完璧なバックドロップでなくても高みから落すことによって威力を倍増させる方向性はいかがなものか。
そして、そのことで従来の「バックドロップ」の神秘性が失われてしまうことになるのもまた事実ではないだろうか。実際、rollingmanさんのおっしゃるように「雪崩式エクスプロウジョン」を三沢が出すことによって、旧来の「エクスプロウジョン」が絶対的必殺技ではなくなってしまった。この事実は重い。
安易な方向性は次々に過激さを求め、ノアでは昨今必ず「断崖式(奈落式。エプロンや花道からマットのない場外へと落す)」が出る。危険だ。しかしこれをただ「凄い」と言っていてもいいのか。こういうものは本当の「奥の手(by rollingmanさん)」にすべきであって日常的に放たれれば必ず色褪せる。それに従って従来の「元技」までもが遺物となる可能性が高くなる。自分で自分の首を絞めるのだ。 「奥の手」は、例えばかつてのブル中野の金網最上段ギロチンドロップのようなものではなかったのか。
「プロレスは浪漫が大事」とrollingmanさんは喝破する。そのとおりだ。僕は、雪崩式は安直、とあえて言ってしまいたいと思う。これは技術ではない。物理的に道具(コーナートップや花道)を使って高角度、急速落下にしてワンランク上げるより、もっとレスラーは自分の技を磨いて欲しい。己の肉体だけを武器に、技量で相手を窮地に陥れるようにして欲しい。棚橋や中邑ら次代を担うとされるレスラーにそのことをもっと肝に銘じて欲しいのである。
以前から思っていたことであるが、rollingmanさんのブログ「回転富士山」に「我が意を得たり」という記述があったのでちょっと紹介させていただく。rollingmanさんごめんなさい(汗)。
中邑が修行の成果のひとつとしてひっさげてきた新必殺技「ランドスライド」ですが。
雪崩式はまだ早くないですかね・・・?
まだ公開してからろくに見せてない技だというのに。雪崩式で出すというのは、普通のランドスライドでは決まらないことを認めたということではなかろうか。
(中略)
昨今のプロレスは高度になりすぎたが故に、かなりの危険技を決めないと勝負がつかない傾向があります。なので、奥の手を出さざるを得ない。
その傾向はNOAHマット上で顕著ですが、幻の必殺技と言われた小橋のバーニングハンマー、そして三沢のエメラルドフロウジョンはかなりの頻度で出されるようになってしまいました。その前段階の技では決まらなくなってしまったからです。前回のGHCヘビー級選手権、丸藤戦での三沢にいたっては、エメラルドフロウジョンのさらに奥の手のタイガードライバー'91まで出して返されて、雪崩式のエメラルドまで出す始末。
まあ中盤でも、場外に向かっての奈落式という超々危険技が次々と出てしまうわけですから、もう歯止めが利かなくなっているとしか言いようがない気がします。
詳細はリンク先を読んでいただきたいが、全く同感である。
中邑の「ランドスライド」という技は、相手を肩に担ぎ上げ、前方に落とし(その際身体が当然横向けになっていたものを頭を下に向けた落下に切り替え)、脳天ないしは後頭部をマットに叩きつけるという技であるが、この技には多少無理がある、と僕は見ている。デスバレーボムやバーニングハンマー、或いはオリンピック予選スラムのように肩に担ぎ上げた相手をそのまま横方向に落すのであれば、身体を固定しているために受身も取りづらく説得力を持つのだが、前方に落すのであれば相手の身体を方向転換させなければならないためにタイミングが難しい。実際、中邑が帰国してこの技を最初に出したとき(相手は中西だったが)、見事に崩れて失敗している。パイルドライバーやパワーボムの方がより説得力がある、と思われる。なんで肩に担ぎ上げるのだろう。まだまだ未完成である技という印象が強い。
(おっと書きすぎた。肩に担ぎ上げる「エアプレンスピン」系の技についてはまた改めて書こうと思うのでここではこれ以上言及しない。ランドスライドについては、やはりrollingmanさんの必殺技には説得力が大事な場合に詳しい。)
問題は「雪崩式」という技の形態である。
コーナー最上段にいる相手に対して仕掛けるこの技の歴史は、さほど古いものではないと思われる。最初は「デッドリー・ドライブ」という技しかなかった。コーナーに昇ってニードロップ、或いはボディプレスなどを仕掛けようとする相手に対し、いち早く立ち上がって相手を下からとらえて放り投げる。ボディスラムの危険版。これは切り返し技で、相手がわざわざコーナートップに昇るように仕向ける技であったわけではない。
ただそれだけの「コーナー最上段にいる相手」に対する切り返しの技であったデッドリードライブであるが、もちろん普通のボディスラムより落差があり威力があるわけで、この技をコーナー最上段に相手がいなくても仕掛けるパワーファイターが出てくる。ウォリアーズが印象的だが、自ら抱え上げた相手をリフトアップして頭上高く持ち上げて投げる。それはそれで凄いものである。そういう発展も見られたわけでパワーを誇示する発展形だと思っていたのだが、この技はもうひとつ別方向の発展をする。コーナートップにいる相手に別の技を仕掛けてより落差を生み威力を増そうという方向である。
海外情報に疎いので誰が最初に始めたのかはよく知らないが、日本では国際プロレス時代の阿修羅原が「コーナートップにいる相手にブレーンバスター」を仕掛けたのが最初であるとされる。これが日本における「雪崩式」の始まりとなる。
これは一種衝撃的だった。その落差。当時垂直落下式は一般的でなく、背中落ちブレーンバスターに新しい可能性が生じた。いかにも危険だった。
その後、新日で藤波辰巳や木村健悟が使い出す。しかしこれも連発すれば色褪せる。何よりもスピーディプロレスに「間」が生じてしまう。これが問題だと思った。
相手がコーナーによっこらしょと上がるとすぐさま起き上がり、そのままデッドリードライブであればすぐに投げるわけだけれども、ブレーンバスターであれば相手の首に自分の腕を巻きつけ、態勢を整える。そしておもむろに投げるわけで、相手はその間コーナートップで待っているわけだ。いかにプロレスが「受け」の美学と言ってもこれはちょっと…とどうしても思う。技を仕掛けるときのダメージ度合いはもちろんトップに昇った相手が元気であるわけで、叩きつけられてのち起き上がった仕掛ける側の方がその時のダメージは大きいはずなのである。なのに黙って仕掛けられるとは。うーむ。藤波はそこに説得力を増そうと、必ず仕掛ける場合は先に腹部に一発パンチを入れてから態勢に入っていた。それにしても…。
プロレスは「受身の凄さ」を見るものという観点を知っている我々ファンはそれでもいいが、そうでない人にはまた揶揄される原因になる、と危惧した。ロープに飛ばされて跳ね返ってくる不思議を突っ込まれるどころではないぞ、と思った。
この技は一度終止符が打たれたことがある、と僕は思っている。猪木vs藤波シングル戦で、コーナーに昇った猪木に対し藤波が雪崩式を狙い駆け上がった。しかし何のダメージもない猪木は「そんな技受けてやんない」と言わんばかりに、駆け上がった藤波にナックルパートをかまし、マットに落ちた藤波に速攻ニードロップを決めた。
これで「雪崩式ブレーンバスター」は敗れたのである。完全防御されてしまった以上、これでもう雪崩式は終わり、と僕は思った。
しかしである。雪崩式は滅びなかった。新しいパターンとして、相手がコーナーに上がるのを待たない方式が登場した。相手を散々叩きのめしダメージを蓄積させ、そしてコーナーに相手をよっこらしょっと担ぎ上げ(驚)、相手をコーナートップに座らせてそして雪崩式を放つという新形態が生まれたのである。これだと相手がコーナートップで動けなくてなすがままであっても「待ってる」という感じはしない。相手はフラフラなのだから。
そしてどんどん雪崩式はエスカレートする。旧来の相手がコーナーに昇る形式も継続され、そして技もブレーンバスターにとどまらず、フランケンシュタイナー、DDT、そしてダブルアームスープレックス。相手を担ぎ上げコーナーに据えるわけだから対面式の技だけでなくてもよくなり、ジャーマンも飛び出し、あげくはツームストンパイルドライバーまで飛び出した。怖い。無茶をする。
もうこうなれば投げ技であればなんでも「雪崩式」にすることが可能だ。そして立ち位置も、相手がトップに座り投げ手がロープ二段目くらいだったものが、両者ともロープ最上段に立つようになった。どんどんエスカレートする。
「雪崩式垂直落下ブレーンバスター」なんてのはいったいなんだ。死んじゃうぞ。
さてそこで「雪崩式」にプロレスにおける問題点が生じてくるのである。
昔のプロレスというものは、相手をヘッドロック等で痛めつけダメージを蓄積させ、ボディスラムを何発かかましてフラフラになったところに自分のフィニッシュホールド(ルーテーズならバックドロップ)を持ってくる。そして一発で決める、という流れがあった。まともな技は最後。それが出れば終わり。それがプロレスだった。
しかし受身の向上とともに、観客もより過激なものを望みだす。馬場・猪木全盛時代にその傾向が生まれ、技を積み重ねていくようになる。それに従い「痛め技」「繋ぎ技」という概念が生まれ、旧来の技が一発で決まらなくなる。バックドロップやブレーンバスター、パイルドライバーが「繋ぎ」に堕ちてしまったのもこの頃。これはいたしかたない部分もある。観客もたくさんの技を見たい。だが、こういう傾向は必ず行き詰まりを生み出す。フィニッシュ技をどうすれば説得力ある「これなら決まり」というものに出来るかが名レスラーの見せ所ともなってきた。
100年を超えるプロレスの歴史で、新技はある程度出尽くした感のあるここしばらくは「技の復興と堕落」の繰り返しであるとも言える。バックドロップやブレーンバスターは「へそ投げ」「垂直落下」によって息を吹き返し、逆にジャーマンスープレックスやラリアートは痛め技へと堕ちた。しかしまた歴史は繰り返すだろう。スープレックスが復活する時代も来るやもしれない。そうしてレスラー達の才覚と努力でプロレスは保たれてきたとも言える。
しかし「雪崩式」というものはその箍を外した存在となってしまう可能性が高い。
「雪崩式」はレスラーにとって実に「安易な方向」ではないか。確かに威力は増す。コーナートップからバックドロップを放てば、急角度で落下し負荷も確実に大きくなる。だがそれは技のレベルが上がったのではない。完璧なバックドロップでなくても高みから落すことによって威力を倍増させる方向性はいかがなものか。
そして、そのことで従来の「バックドロップ」の神秘性が失われてしまうことになるのもまた事実ではないだろうか。実際、rollingmanさんのおっしゃるように「雪崩式エクスプロウジョン」を三沢が出すことによって、旧来の「エクスプロウジョン」が絶対的必殺技ではなくなってしまった。この事実は重い。
安易な方向性は次々に過激さを求め、ノアでは昨今必ず「断崖式(奈落式。エプロンや花道からマットのない場外へと落す)」が出る。危険だ。しかしこれをただ「凄い」と言っていてもいいのか。こういうものは本当の「奥の手(by rollingmanさん)」にすべきであって日常的に放たれれば必ず色褪せる。それに従って従来の「元技」までもが遺物となる可能性が高くなる。自分で自分の首を絞めるのだ。 「奥の手」は、例えばかつてのブル中野の金網最上段ギロチンドロップのようなものではなかったのか。
「プロレスは浪漫が大事」とrollingmanさんは喝破する。そのとおりだ。僕は、雪崩式は安直、とあえて言ってしまいたいと思う。これは技術ではない。物理的に道具(コーナートップや花道)を使って高角度、急速落下にしてワンランク上げるより、もっとレスラーは自分の技を磨いて欲しい。己の肉体だけを武器に、技量で相手を窮地に陥れるようにして欲しい。棚橋や中邑ら次代を担うとされるレスラーにそのことをもっと肝に銘じて欲しいのである。
プロレスというものは、「プロ」である以上、その形態は興行であり、観客にその姿を見せて満足させるものでなくてはいけない。したがって、どっちが勝ったの負けたのということは二の次である。観客に満足感を与えることを第一義とすべきであり、その過程が最も重要なことであることは自明のことである。
話はそれるが、これは全てのプロスポーツに言えることではないかと思う。アマチュアであれば、それは自分のために競技を行ってももちろんいいわけであるが、プロであればそれは「観客」のために競技をしなくてはならない。金をとって見せているのだ。それはレスリングであっても、野球であってもサッカーであっても同じこと。したがって選手及び指揮者は見てくれる人のために競技をしなくてはいけないはずなのに、それが逸脱している様子をよく見る。ただ勝てばいいというものではないのだ。「勝って魅せる」ことが重要なのである。そこをよく分かっていないプロスポーツ選手が多すぎる。アマチュアリズムから全然脱却していない。高校野球とプロ野球、草サッカーとJリーグは「視点」が違うものなのだ。見ていて「面白く」なければそれはプロとして恥じ入るべきものであると思う。
閑話休題。
アントニオ猪木という人は、「魅せる」ということをよく理解していた。相手の5の力を7か8まで引き出して10の力で仕留める。「風車の理論」とは正にプロであることの証明である。
その「猪木の遺伝子」を受け継ぐレスラーは多いが、なかなか猪木の域までに到達することは難しい。勝負に拘った「首固め」などで王座が移動するようでは観客に欲求不満が残りカタルシスを与えられない。観客をいかに満足させるかがレスラーの尺度である。
そういう意味で、今最も「レスラーらしいレスラー」は、武藤敬司と秋山準ではないかと僕は思う。彼らは「観客の視点」を常に意識し、それに見合ったレスリングを展開する。
秋山準は今円熟期である。レスラーは若さと体力だけで成立するものではないからだ。秋山は昨今、ジャンピングニーを連発する(もちろん以前からの得意技であったが)。これも時期を見てのこと。観客がようやく「ジャンボ鶴田の幻影」を脱却しつつあるということを見極めてのことだろう。ここが重要。これは森嶋が鶴田の継承に失敗したことがひとつの契機となっていることに注目したい。観客が「まだ森嶋ではダメだ」と感じた後に、格上である秋山が多用するから納得出来るのだ。
秋山のフィニッシュホールドは「エクスプロイダー」である。これはまあ反り投げの一種である。相手の脇に自分の頭部を入れて両手で相手をホールドし(と言ってクラッチするわけではなく右手は頭部を抱え左手は下部を持ち上げる)、後ろに反り投げる。
投げた状態は相手が背中(もしくは側面)から落ちることになる。この技の角度を変え、垂直落下的に落すやり方もあり、それで繋ぎ技とフィニッシュとを使い分ける。重要な試合の場合には「リストクラッチ式エクスプロイダー」を放つ。これは相手の片腕(右腕)の手首を下部にそえた左手で掴み投げる技で、受身が取りにくく脳天から落ちる。
このエクスプロイダーという技は分類しにくい技である。「反り投げ」の範疇ではあるのだが、それじゃスープレックスなのか、と言われればまた難しい。飯塚高史のブリザードスープレックスと非常に似ているのではあるけれども。スープレックスの定義をゴッチ式とするならばこれはスープレックスではなくサルトなのだが(→スープレックスⅠ)、そこまで厳格にしなくてもよかろう。しかしブリッジは完璧にしていない。
よくこのエクスプロイダーは「裏投げ」の変形であるとも言われる。裏投げとは、柔道技にもあるがそれはバックドロップに似ている。しかしプロレスに伝播した裏投げはサンボ式で、馳浩が持ち込んだものとされる。書くと、正面から例えば右腕で相手の頭部(首)を抱え左手で腰やモモのあたりを持ち上げ後ろに反り投げる技で、脇に自分の頭部を差し込む以外はほぼ相似形に見える。
しかしながら、見ていると投げる形状がかなり違う。裏投げの場合、相手を跳ね上げて叩きつける形であるのに対しエクスプロイダーは反り投げの要素が大きい。ホールドを離すタイミングが微妙に違う。
また投げたあと、裏投げは自分の体が側面を向く、もしくはマットに対峙するような形になるのに対してエクスプロイダーは背中がマットにつくことが多い。よりスープレックスに近い形であるようにも見える。エクスプロイダーを反り投げとすれば裏投げは捻り投げではないのか。
これは見方も各人あるだろうし、僕の感じ方も加味されてしまうので一概には言えない。やっぱり裏投げだと思う人もいるだろう。だから難しいのだが、エクスプロイダーには裏投げよりももっと近い技があったように思う。それは、もうおわかりかと思われるが前田日明の「キャプチュード」である。
前田は12種類のスープレックスを持つ男とされたが、実際には12種類もの技を手を替え品を替えて出すことなど出来ない。最も多用したのはキャプチュードだったように思う。相手の蹴りを出した脚をそのまま抱えこみ(右足の蹴り足であれば当然左腕で)、そして右腕で頭部を抱えて後方へ反り投げる。美しい技だった。脚を捕えた左手と頭部を抱える右手をクラッチ出来れば完璧な技となり、相手は脳天からまっ逆さまである。実際はそこまでやると危険なので捻り投げの要素を加えてはいたが。
このキャプチュードの流れを汲むのがエクスプロイダーではないかと思われる。違いは、前田が脚を持つ際にモモの内側から手を入れてしっかり持ち上げる力が入るように持つのに対して、秋山は下部に手を回す際、モモの外側から持つ。内側から手を入れたほうがより相手を跳ね上げ落す力が加わるように思われる。その部分を補完するために秋山は相手の脇の下に頭部を差し入れて首の力も加えて投げる。これで投力は同等になる。
このように形状が変わった理由として、まず前田のキャプチュードが相手の蹴りを捕えて瞬時に投げる(だからcapture=捕獲なのだが)のと比較してエクスプロイダーはそうではない(むしろラリアートなどのカウンター攻撃の切り返しが多い)ということも挙げられると思うが、もうひとつ前田の方が秋山よりも身体に柔軟性があったことが挙げられると思うのだがどうだろうか。裏投げと違って相手をホールドしている時間が長い反り投げの場合、相手をマットに叩きつけようとすれば自分の身体が弧を描かなければ巧く相手を後方に叩きつけられない。秋山が身体が固い、とまでは言わないが、相手の脇の下に頭部を入れることによって、相手の身体が自分よりも飛び出る。これによって相手へのダメージを高めることが出来るのである。
前田のキャプチュードと秋山のエクスプロイダー。どちらが凄いかというのは状況にもよるが、秋山のには重さがある。前田の両手をクラッチした完璧キャプチュードと秋山のリストクラッチ式エクスプロイダーに甲乙はなかなかつけられないとは思うのだけれども。
さて、プロレスのネーミングは様々で最近は実に分かりにくい(汗)。「バックドロップ」「ネックハンギングツリー」のようになかなか形状をそのまま表わしてはくれなくなった。まあこういうことは昔からあることではあるけれども(キチンシンクとかね^^;)。
エクスプロイダーとはいったいなんなのか(笑)。まあ爆発(explosion)+スロイダーてなところだと思っていたら、実際はこんな感じであったらしい(→ambition☆日記)。ネットって検索すれば出てくるから便利だな(笑)。
話はそれるが、これは全てのプロスポーツに言えることではないかと思う。アマチュアであれば、それは自分のために競技を行ってももちろんいいわけであるが、プロであればそれは「観客」のために競技をしなくてはならない。金をとって見せているのだ。それはレスリングであっても、野球であってもサッカーであっても同じこと。したがって選手及び指揮者は見てくれる人のために競技をしなくてはいけないはずなのに、それが逸脱している様子をよく見る。ただ勝てばいいというものではないのだ。「勝って魅せる」ことが重要なのである。そこをよく分かっていないプロスポーツ選手が多すぎる。アマチュアリズムから全然脱却していない。高校野球とプロ野球、草サッカーとJリーグは「視点」が違うものなのだ。見ていて「面白く」なければそれはプロとして恥じ入るべきものであると思う。
閑話休題。
アントニオ猪木という人は、「魅せる」ということをよく理解していた。相手の5の力を7か8まで引き出して10の力で仕留める。「風車の理論」とは正にプロであることの証明である。
その「猪木の遺伝子」を受け継ぐレスラーは多いが、なかなか猪木の域までに到達することは難しい。勝負に拘った「首固め」などで王座が移動するようでは観客に欲求不満が残りカタルシスを与えられない。観客をいかに満足させるかがレスラーの尺度である。
そういう意味で、今最も「レスラーらしいレスラー」は、武藤敬司と秋山準ではないかと僕は思う。彼らは「観客の視点」を常に意識し、それに見合ったレスリングを展開する。
秋山準は今円熟期である。レスラーは若さと体力だけで成立するものではないからだ。秋山は昨今、ジャンピングニーを連発する(もちろん以前からの得意技であったが)。これも時期を見てのこと。観客がようやく「ジャンボ鶴田の幻影」を脱却しつつあるということを見極めてのことだろう。ここが重要。これは森嶋が鶴田の継承に失敗したことがひとつの契機となっていることに注目したい。観客が「まだ森嶋ではダメだ」と感じた後に、格上である秋山が多用するから納得出来るのだ。
秋山のフィニッシュホールドは「エクスプロイダー」である。これはまあ反り投げの一種である。相手の脇に自分の頭部を入れて両手で相手をホールドし(と言ってクラッチするわけではなく右手は頭部を抱え左手は下部を持ち上げる)、後ろに反り投げる。
投げた状態は相手が背中(もしくは側面)から落ちることになる。この技の角度を変え、垂直落下的に落すやり方もあり、それで繋ぎ技とフィニッシュとを使い分ける。重要な試合の場合には「リストクラッチ式エクスプロイダー」を放つ。これは相手の片腕(右腕)の手首を下部にそえた左手で掴み投げる技で、受身が取りにくく脳天から落ちる。
このエクスプロイダーという技は分類しにくい技である。「反り投げ」の範疇ではあるのだが、それじゃスープレックスなのか、と言われればまた難しい。飯塚高史のブリザードスープレックスと非常に似ているのではあるけれども。スープレックスの定義をゴッチ式とするならばこれはスープレックスではなくサルトなのだが(→スープレックスⅠ)、そこまで厳格にしなくてもよかろう。しかしブリッジは完璧にしていない。
よくこのエクスプロイダーは「裏投げ」の変形であるとも言われる。裏投げとは、柔道技にもあるがそれはバックドロップに似ている。しかしプロレスに伝播した裏投げはサンボ式で、馳浩が持ち込んだものとされる。書くと、正面から例えば右腕で相手の頭部(首)を抱え左手で腰やモモのあたりを持ち上げ後ろに反り投げる技で、脇に自分の頭部を差し込む以外はほぼ相似形に見える。
しかしながら、見ていると投げる形状がかなり違う。裏投げの場合、相手を跳ね上げて叩きつける形であるのに対しエクスプロイダーは反り投げの要素が大きい。ホールドを離すタイミングが微妙に違う。
また投げたあと、裏投げは自分の体が側面を向く、もしくはマットに対峙するような形になるのに対してエクスプロイダーは背中がマットにつくことが多い。よりスープレックスに近い形であるようにも見える。エクスプロイダーを反り投げとすれば裏投げは捻り投げではないのか。
これは見方も各人あるだろうし、僕の感じ方も加味されてしまうので一概には言えない。やっぱり裏投げだと思う人もいるだろう。だから難しいのだが、エクスプロイダーには裏投げよりももっと近い技があったように思う。それは、もうおわかりかと思われるが前田日明の「キャプチュード」である。
前田は12種類のスープレックスを持つ男とされたが、実際には12種類もの技を手を替え品を替えて出すことなど出来ない。最も多用したのはキャプチュードだったように思う。相手の蹴りを出した脚をそのまま抱えこみ(右足の蹴り足であれば当然左腕で)、そして右腕で頭部を抱えて後方へ反り投げる。美しい技だった。脚を捕えた左手と頭部を抱える右手をクラッチ出来れば完璧な技となり、相手は脳天からまっ逆さまである。実際はそこまでやると危険なので捻り投げの要素を加えてはいたが。
このキャプチュードの流れを汲むのがエクスプロイダーではないかと思われる。違いは、前田が脚を持つ際にモモの内側から手を入れてしっかり持ち上げる力が入るように持つのに対して、秋山は下部に手を回す際、モモの外側から持つ。内側から手を入れたほうがより相手を跳ね上げ落す力が加わるように思われる。その部分を補完するために秋山は相手の脇の下に頭部を差し入れて首の力も加えて投げる。これで投力は同等になる。
このように形状が変わった理由として、まず前田のキャプチュードが相手の蹴りを捕えて瞬時に投げる(だからcapture=捕獲なのだが)のと比較してエクスプロイダーはそうではない(むしろラリアートなどのカウンター攻撃の切り返しが多い)ということも挙げられると思うが、もうひとつ前田の方が秋山よりも身体に柔軟性があったことが挙げられると思うのだがどうだろうか。裏投げと違って相手をホールドしている時間が長い反り投げの場合、相手をマットに叩きつけようとすれば自分の身体が弧を描かなければ巧く相手を後方に叩きつけられない。秋山が身体が固い、とまでは言わないが、相手の脇の下に頭部を入れることによって、相手の身体が自分よりも飛び出る。これによって相手へのダメージを高めることが出来るのである。
前田のキャプチュードと秋山のエクスプロイダー。どちらが凄いかというのは状況にもよるが、秋山のには重さがある。前田の両手をクラッチした完璧キャプチュードと秋山のリストクラッチ式エクスプロイダーに甲乙はなかなかつけられないとは思うのだけれども。
さて、プロレスのネーミングは様々で最近は実に分かりにくい(汗)。「バックドロップ」「ネックハンギングツリー」のようになかなか形状をそのまま表わしてはくれなくなった。まあこういうことは昔からあることではあるけれども(キチンシンクとかね^^;)。
エクスプロイダーとはいったいなんなのか(笑)。まあ爆発(explosion)+スロイダーてなところだと思っていたら、実際はこんな感じであったらしい(→ambition☆日記)。ネットって検索すれば出てくるから便利だな(笑)。
ちょっと旧聞だけれども、9/16のミル・マスカラスが大阪プロレスに登場したのをTVで見た。マスカラスはもう64歳だと言う。僕がプロレスを見始めた時期は、それはもうマスカラス全盛時代で、あの「スカイ・ハイ」のテーマが流れるとそれだけで興奮したものだ。言わば伝説のレスラーであるが、この伝説をリアルで見ることが出来るのがプロレスの素晴らしさであり、また摩訶不思議な魅力であると思う。あまり深くは考えずに幸せを享受した。
6人タッグで、もちろんおいしいとこ取りで戦った訳だけれども(そりゃ64歳だもの)、身体に衰えが目立つのは当然だが、あの背筋を伸ばした姿勢を崩さないのが立派。タッグを組んだライガーもデルフィンもマスカラスとフライング・クロスチョップの「編隊飛行」が出来て嬉しそうだ。おそらくマスクの下はニヤニヤに違いない。彼らはレスラーだけれども同時にプロレスファンだからなあ。それよりおいしいのは対戦したビリーケン・キッド&秀吉&政宗で、政宗はマスカラスのフライング・ボディアタックに沈んだ。よかったねぇ。カウント2で返したりしたらバチがあたるぞ。
マスカラスのボディアタックは、スピード感こそないものの両手を反るように大きく広げて飛翔するスタイルは健在だった。これでなくちゃ。リングにそそぐライトを背負って逆光に映えるマスカラスの飛翔。スカイ・ハイですなあ。
さて、ここでちょっと考える。ボディアタックとボディプレスの違いはどこから出てくるのだろうか。
違いは一点しかない。それは相手が寝ているか、立っているかだけである。
これはつまり、エルボーパットとエルボードロップの違いと同じなのか。いやそうではあるまい。ボディアタックは、立っている相手に身体の正面からぶつかる。そのぶつかった衝撃が相手にダメージを与えるのか? いや、見ていると、ボディアタックを食らった場合必ずマットに背中から倒れこむ。そしてマットに叩きつけられる。相手とマットの間に挟まれて(プレスされ)衝撃をうける。ボディとボディがぶつかる衝撃というものはもちろんあるはずだが、両者とも身体の正面をぶつけ合っているのだから、ダメージはほぼ同じと見ていい。エルボーがぶつかってくるのとは違う。結局下になったからプレスされてキツいのだ。
ボディプレスは、倒れこんでいるところに相手が飛んでくる。相手の体重が衝撃となりプレスされる。
そうなると、ボディアタックとボディプレスのダメージは同じと見ていいのではないだろうか。受身の問題はあるけれども、身体の正面同士のぶつかり合いであり、これは同系統の技である。
しかし同系統とは言えマスカラスのはボディアタックであり、受ける側は立ち上がっていなくてはいけない。アトミックドロップを食った後でもマスカラスがコーナートップに上れば立ち上がらないと。受ける側もなかなか厳しい。
マスカラスのボディアタックはコーナー最上段から飛んでくるのだが、この技はロープに振ってカウンターでも使える。ジュニアではよくある技だが、ハンセンやブロディもこの技を使った。ブロディは迫力があった。あの鋼のような肉体が当った時には衝撃音が伝わるようで、先ほど「ダメージはほぼ同じと見ていい」と書いたが、ああいうのはまた別のような気がする。
また、「フライング・ボディシザース・ドロップ」という技とも類似しているが、あちらは一応「相手に飛び掛って身体を抱え込んで後方に倒れこむ」という技である。もっとも「空中銅締め落し」をちゃんとやっているレスラーは少なく、ぶつかる時に身体がヨコかタテかだけで区別される場合が多いのは確か。
さて、このボディアタックにはもうひとつの呼び名がある。もちろん「プランチャ」である。プランチャとはルチャ・リブレ(メキシカンプロレス)で言うボディアタックであるが、どうもTVのプロレス中継では場外にいる相手に対して放つボディアタックを「プランチャ」と言っているような気がしてしょうがない。あれは「プランチャ・スイシーダ」である。「スイシーダ」とは「自殺者」の意味で、場外に飛ぶというのは危険なことで自殺行為にも比するためこう呼ばれる。
さて、相手がマットに倒れたままの状態であればそれはボディプレスである。このボディプレスで思い出すのは、なんと言っても僕には"スーパーフライ"ジミー・スヌーカだ。スヌーカは相手が立っていてもかまわず飛んできたりするのでその場合はボディアタックである。
ヒールとしてリッキー・スティムボードらと抗争をくり広げたスヌーカは悪役らしくコーナートップで顔を歪ませ見得を切り、身体のバネを利かせて飛んでくる。その肉体はボディビルダー出身だけあって素晴らしく、手足が長いのでスーパーフライは映える。金のとれる飛翔だった。フォールを奪った後ニヤリと笑うそのふてぶてしさは「千両役者」であったと思う。最近は絵になる外人レスラーがいないなあ。金網デスマッチで、さらに高い位置から飛んでくるスヌーカを見たことがあるが、その迫力たるや凄まじい。今は外道がスーパーフライの名を受け継ぐが、頑張ってはいるもののあのスヌーカの迫力はなかなか出せない。
日本では山本小鉄だ。小鉄さんは身体はさほど大きくないが、コーナートップから高く飛んで空中で四肢をいったん広げるように勢いをつけ飛んでくる。出来るだけ体重を乗せようとする工夫で、相手に強いダメージを与える。
これが進化したものが野上彰の「ムササビボディプレス」で、あれはなかなかに美しい。四肢の広げ方が迫力を生むのだな。
さて、コーナートップからのボディプレスは、どんどん派手に進化していった。初代タイガーマスクが「ラウンディング・ボディプレス(コーナートップに後ろ向きに立ち、バック転をしてボディプレス)」を見せたときにはその華麗さに目を見張ったものだが、これをヘビー級でもやりだしたのは凄い。なんと言っても武藤敬司で、その後この技はムーンサルト・プレスと呼ばれる。この技は今では多くのレスラーが使う。ヘビー級でやると強烈なフィニッシュ・ホールドとはなり得るのだが…。
この技は確かに派手だが、正面から飛ぶのと違いバック転であるので、そのフォームの美しさに重点が置かれて、相手に体重を浴びせるという本来の目的からずれてしまっているのではないかと危惧する。こう書いていいのかどうか迷うが、ダメージは「スーパーフライ」などと比べて一歩も二歩も譲るように見えてしかたがない。肝心のプレスする瞬間は「相手の身体上になんとかヒットした」だけであるように見えてしょうがない。つまり「説得力に欠ける」と思ってしまう。なので僕はあまり好まない。しっかり相手を正面から見てプレスした方がいいように思うのだがどうだろうか。
また、後方回転を伴うので目測を誤りやすい。ヘタなやり方だとちゃんとダウンしている相手のボディに乗らない「失敗」も多い。飛びすぎてアゴがヒットしたり、また足りなくて腿がヒットしたりとか。自らの受身も難しいだろう。武藤がヒザを痛めたのも、ジャンプの踏み切りでではなく受身の問題ではないのか。自らのヒザをマットに強打する場合が多い。小橋健太もヒザを痛めてしまった。また忘れられないのは天山で、回転しそこねて頭からマットに落下した事故があった。怖ろしい。首を鍛えに鍛えまくっているレスラーだからよかったものの、普通なら死んでいる。
その他の「派手ボディプレス」も同じ事だと思う。確かに華麗ではあるが。ライガーがやる「シューティングスタープレス(コーナーに前向きに立って後方回転しながら落ちる)」などは目測も何もあったものではない。そりゃ格好いいことは確かだが。「スターダストプレス」などは捻りも加えている(この技は曰く付きだが)。さらにどんどん進む。スカイツイスタ-プレス。スプラッシュオブスーサイド。見ていて目が回りそうだ。関空トルネード。くいしんぼう仮面があれをやるのを見るのは大好きだが(カッコいいねー)ダメージは捻れば捻るほど増すのかな。うーむ。
個性を出すのはやはり大変なことなのだ。
もちろんダイビングしないボディプレスもある。超へピー級レスラーだと、その場ジャンプで相手を押し潰す。なんと言っても"人間空母"ヘイスタイック・カルホーンで、273kgの体重で相手を押し潰す。フライング・ソーセージと呼ばれた。クラッシャー・バンバンビガロやベイダー(ビッグバン・クラッシュだな)なども印象に残る。最近では曙か。あの体重は凄いが、脂肪も凄いためせっかくの体重なのにクッションが入ってしまうような気がしてしょうがない(しかしあのブヨブヨがのしかかってくるのはそれはそれで怖いが)。
華麗に映える技からグシャっと押し潰す技まで、ボディアタックは千差万別。しかし、やっぱりミル・マスカラスはカッコいい。そんなことを再認識した先日だった。
6人タッグで、もちろんおいしいとこ取りで戦った訳だけれども(そりゃ64歳だもの)、身体に衰えが目立つのは当然だが、あの背筋を伸ばした姿勢を崩さないのが立派。タッグを組んだライガーもデルフィンもマスカラスとフライング・クロスチョップの「編隊飛行」が出来て嬉しそうだ。おそらくマスクの下はニヤニヤに違いない。彼らはレスラーだけれども同時にプロレスファンだからなあ。それよりおいしいのは対戦したビリーケン・キッド&秀吉&政宗で、政宗はマスカラスのフライング・ボディアタックに沈んだ。よかったねぇ。カウント2で返したりしたらバチがあたるぞ。
マスカラスのボディアタックは、スピード感こそないものの両手を反るように大きく広げて飛翔するスタイルは健在だった。これでなくちゃ。リングにそそぐライトを背負って逆光に映えるマスカラスの飛翔。スカイ・ハイですなあ。
さて、ここでちょっと考える。ボディアタックとボディプレスの違いはどこから出てくるのだろうか。
違いは一点しかない。それは相手が寝ているか、立っているかだけである。
これはつまり、エルボーパットとエルボードロップの違いと同じなのか。いやそうではあるまい。ボディアタックは、立っている相手に身体の正面からぶつかる。そのぶつかった衝撃が相手にダメージを与えるのか? いや、見ていると、ボディアタックを食らった場合必ずマットに背中から倒れこむ。そしてマットに叩きつけられる。相手とマットの間に挟まれて(プレスされ)衝撃をうける。ボディとボディがぶつかる衝撃というものはもちろんあるはずだが、両者とも身体の正面をぶつけ合っているのだから、ダメージはほぼ同じと見ていい。エルボーがぶつかってくるのとは違う。結局下になったからプレスされてキツいのだ。
ボディプレスは、倒れこんでいるところに相手が飛んでくる。相手の体重が衝撃となりプレスされる。
そうなると、ボディアタックとボディプレスのダメージは同じと見ていいのではないだろうか。受身の問題はあるけれども、身体の正面同士のぶつかり合いであり、これは同系統の技である。
しかし同系統とは言えマスカラスのはボディアタックであり、受ける側は立ち上がっていなくてはいけない。アトミックドロップを食った後でもマスカラスがコーナートップに上れば立ち上がらないと。受ける側もなかなか厳しい。
マスカラスのボディアタックはコーナー最上段から飛んでくるのだが、この技はロープに振ってカウンターでも使える。ジュニアではよくある技だが、ハンセンやブロディもこの技を使った。ブロディは迫力があった。あの鋼のような肉体が当った時には衝撃音が伝わるようで、先ほど「ダメージはほぼ同じと見ていい」と書いたが、ああいうのはまた別のような気がする。
また、「フライング・ボディシザース・ドロップ」という技とも類似しているが、あちらは一応「相手に飛び掛って身体を抱え込んで後方に倒れこむ」という技である。もっとも「空中銅締め落し」をちゃんとやっているレスラーは少なく、ぶつかる時に身体がヨコかタテかだけで区別される場合が多いのは確か。
さて、このボディアタックにはもうひとつの呼び名がある。もちろん「プランチャ」である。プランチャとはルチャ・リブレ(メキシカンプロレス)で言うボディアタックであるが、どうもTVのプロレス中継では場外にいる相手に対して放つボディアタックを「プランチャ」と言っているような気がしてしょうがない。あれは「プランチャ・スイシーダ」である。「スイシーダ」とは「自殺者」の意味で、場外に飛ぶというのは危険なことで自殺行為にも比するためこう呼ばれる。
さて、相手がマットに倒れたままの状態であればそれはボディプレスである。このボディプレスで思い出すのは、なんと言っても僕には"スーパーフライ"ジミー・スヌーカだ。スヌーカは相手が立っていてもかまわず飛んできたりするのでその場合はボディアタックである。
ヒールとしてリッキー・スティムボードらと抗争をくり広げたスヌーカは悪役らしくコーナートップで顔を歪ませ見得を切り、身体のバネを利かせて飛んでくる。その肉体はボディビルダー出身だけあって素晴らしく、手足が長いのでスーパーフライは映える。金のとれる飛翔だった。フォールを奪った後ニヤリと笑うそのふてぶてしさは「千両役者」であったと思う。最近は絵になる外人レスラーがいないなあ。金網デスマッチで、さらに高い位置から飛んでくるスヌーカを見たことがあるが、その迫力たるや凄まじい。今は外道がスーパーフライの名を受け継ぐが、頑張ってはいるもののあのスヌーカの迫力はなかなか出せない。
日本では山本小鉄だ。小鉄さんは身体はさほど大きくないが、コーナートップから高く飛んで空中で四肢をいったん広げるように勢いをつけ飛んでくる。出来るだけ体重を乗せようとする工夫で、相手に強いダメージを与える。
これが進化したものが野上彰の「ムササビボディプレス」で、あれはなかなかに美しい。四肢の広げ方が迫力を生むのだな。
さて、コーナートップからのボディプレスは、どんどん派手に進化していった。初代タイガーマスクが「ラウンディング・ボディプレス(コーナートップに後ろ向きに立ち、バック転をしてボディプレス)」を見せたときにはその華麗さに目を見張ったものだが、これをヘビー級でもやりだしたのは凄い。なんと言っても武藤敬司で、その後この技はムーンサルト・プレスと呼ばれる。この技は今では多くのレスラーが使う。ヘビー級でやると強烈なフィニッシュ・ホールドとはなり得るのだが…。
この技は確かに派手だが、正面から飛ぶのと違いバック転であるので、そのフォームの美しさに重点が置かれて、相手に体重を浴びせるという本来の目的からずれてしまっているのではないかと危惧する。こう書いていいのかどうか迷うが、ダメージは「スーパーフライ」などと比べて一歩も二歩も譲るように見えてしかたがない。肝心のプレスする瞬間は「相手の身体上になんとかヒットした」だけであるように見えてしょうがない。つまり「説得力に欠ける」と思ってしまう。なので僕はあまり好まない。しっかり相手を正面から見てプレスした方がいいように思うのだがどうだろうか。
また、後方回転を伴うので目測を誤りやすい。ヘタなやり方だとちゃんとダウンしている相手のボディに乗らない「失敗」も多い。飛びすぎてアゴがヒットしたり、また足りなくて腿がヒットしたりとか。自らの受身も難しいだろう。武藤がヒザを痛めたのも、ジャンプの踏み切りでではなく受身の問題ではないのか。自らのヒザをマットに強打する場合が多い。小橋健太もヒザを痛めてしまった。また忘れられないのは天山で、回転しそこねて頭からマットに落下した事故があった。怖ろしい。首を鍛えに鍛えまくっているレスラーだからよかったものの、普通なら死んでいる。
その他の「派手ボディプレス」も同じ事だと思う。確かに華麗ではあるが。ライガーがやる「シューティングスタープレス(コーナーに前向きに立って後方回転しながら落ちる)」などは目測も何もあったものではない。そりゃ格好いいことは確かだが。「スターダストプレス」などは捻りも加えている(この技は曰く付きだが)。さらにどんどん進む。スカイツイスタ-プレス。スプラッシュオブスーサイド。見ていて目が回りそうだ。関空トルネード。くいしんぼう仮面があれをやるのを見るのは大好きだが(カッコいいねー)ダメージは捻れば捻るほど増すのかな。うーむ。
個性を出すのはやはり大変なことなのだ。
もちろんダイビングしないボディプレスもある。超へピー級レスラーだと、その場ジャンプで相手を押し潰す。なんと言っても"人間空母"ヘイスタイック・カルホーンで、273kgの体重で相手を押し潰す。フライング・ソーセージと呼ばれた。クラッシャー・バンバンビガロやベイダー(ビッグバン・クラッシュだな)なども印象に残る。最近では曙か。あの体重は凄いが、脂肪も凄いためせっかくの体重なのにクッションが入ってしまうような気がしてしょうがない(しかしあのブヨブヨがのしかかってくるのはそれはそれで怖いが)。
華麗に映える技からグシャっと押し潰す技まで、ボディアタックは千差万別。しかし、やっぱりミル・マスカラスはカッコいい。そんなことを再認識した先日だった。
前回からの続き。
トーホールドは、結局のところつま先を掴んで足を捻り、足首、ヒザ関節、股関節を痛める技である。例えばヒザ十時など逆関節技的な技、またアキレス腱固めなどの順関節技とはそこが違う。あくまで関節を捻って(つまり縦にしか曲がらない関節を横に回して)極めてしまう。これは怖ろしい。
アンクルホールドは、ちょっとアキレス腱固めに似ているような感じがする(裏アキレスね)。しかし、足首を横に捻じ曲げている以上トーホールドの変形と見たい。
そして、足のいくつかの関節を極めるわけだが、捻じ曲げる部分をどこに特化するかで技が分かれていくようにも思う。アンクルホールドは足首。ヒールホールドは膝。クロスヒールホールド(ヴォルク・ハンのやつね)はどっちなんだろう。ややこしい。
そういう範疇でいくと、ドラゴンスクリューという技も、これらの「足関節捻じ曲げ」の技の部類ではないかとも思える。あれはヒザの破壊だ。相手の身体が固定しているわけではないので自分と一緒に回転してしまうが、自分の回転のスピードが速いため、その時間差で関節を痛める。したがって、ドラゴンスクリューはゆっくりやってはダメ。素早く回転することで「相手の身体が残る」ことが重要なのだ。
藤波辰巳のドラゴン殺法のひとつだが、最初に見たときはビックリした。何をやったのかが一瞬わからなかった。しかしこれはよく見ると怖い技である。カールゴッチ由来の技だと言われたが、当時は相手の蹴りを受け止めて倒すという技という印象が強かったものの、あれは一歩間違えれば靭帯を損傷する。
あくまで僕の印象だが、藤波がヘビー級に転向した後は一時封印、とまではいかなくても頻度が減ったのではないだろうか。これはヘビー級で使われる方が怖い。掛けられる側の身体が重いため、身体が残る時間が長い。一緒に回ってしまうことがこの技の受身であるのだから。例えば曙などに仕掛けたとしたら、彼はおそらく一緒に回転することなど出来ないだろうから確実にヒザを破壊されてしまう。
そうして、ドラゴンスクリューは他のドラゴン殺法(ドラゴンロケットなど)とともに見る機会が減っていったのだが、これに再び脚光を浴びせたのが武藤敬司である。
印象深いのはやはりvs高田延彦で、武藤はこの技で高田のヒザを完全に破壊してしまった。そのあと4の字固めでフィニッシュとなるのだが、あれはその前のドラゴンスクリューで勝負がついていたとも言える。怖い。
その後も武藤はドラゴンスクリューを得意技として使い続けているが、以後は武藤は足首のホールドを離すのを早くしているようにも思える。そのことで、相手にかかる負担を軽減している。雪崩式も使うようになったが、これもどちらかと言えば相手をマットに叩きつけることを主眼としていてヒザ破壊を避けている。武藤のように高速回転を旨としていれば、そうしないと事故に繋がる。
武藤は天才的センスを持ったレスラーだが、派手にアピールする技を多用するためにいきおい危険性を伴う。武藤は技がキレ過ぎるために危ない。なので、ドラゴンスクリューしかり、またフェイスクラッシャーも離すのが早い。シャイニングウィザードも眉間ではなくこめかみを狙う回し蹴り的に変化した。残念ではあるがいたしかたないことだろう。ドラゴンスクリューを、最後まで足首をホールドして高速回転する危険性を考えるとそら怖ろしい。
話がそれた。
トーホールドと言って、どういう技を連想するかと言えば、それはやはりドリーファンクJr.の「スピニング・トーホールド」が浮かぶのではないだろうか。試みにトーホールドで検索したらスピニング・トーホールドばかりがヒットした。こちらの方がずっと認知されているものとわかる。
プロレスファンでこの技を知らない人はいないと思っていたが、しかしもうドリーの全盛時代からずいぶんと年月が流れた。今ではトーホールドと言えば例えば蝶野のSTF(ステップオーバートーホールド・ウィズフェイスロック)なんかの方が10代のファンには馴染み深いかもしれない。
現在は「プロレス技博物館」の西村修が使うが、西村も新日を離脱して地上波ではこの技が見られない状態が続いている。これだけ一世を風靡した技であるが、見たことがない、という若いファンが増えていくことが予想される。しかしこの技はファンクス(テリーも含めて)の印象があまりにも強すぎるために「物真似」にしか見えないので会得しても使用しにくいだろう。それだけ偉大な技であったとも言える。
技の解説はもう僕には荷が重過ぎるので知っていること前提で書くが、この技はドリーの父であるファンクシニアが、自ら経営する牧場で暴れる牛を押さえつけるために行ったやり方から発展させ完成したと言われる。子供の頃読んでいたコミック「プロレススーパースター列伝」ではそこのところが細かく描写されていた。トーを掴み(というより足首か)相手のヒザを曲げて足を差込み、内側に回転させて極める。ヒザが曲がっているので、完全にこれはヒザ関節の破壊を目的とする。
ファンク一家のまさしく「伝家の宝刀」であった。父シニアは、身体が小さく悪役としてでしか生きる道がなかったのだが、ヘビー級王者への憧れをひたすら持ち続け、二人の息子にその夢を託して鍛えぬいた。これがアマリロの「ファンク道場」の発祥である。そして二人ともデビューを果たし、ドリーは当時のNWA王者ジン・キニスキーを破ってついに一家念願のヘビー級王座に就き、スピニング・トーホールドをフィニッシュホールドとして4年3ヶ月もの間君臨した。僕がプロレスを見た最初の頃はドリーがまだチャンピオンで、ギリギリ間に合った世代と言える。NWA王者と言えば後にハリー・レイス、そしてリック・フレアーの代名詞となっていったが、僕はなんと言ってもドリーだ。悪役、そして綱渡り防衛の印象が強いレイスやフレアーと比べ、ドリーには風格があったように思う(三つ子の魂百まで、であって最初に見たチャンピオンの印象は強いのです)。
さて、スピニングトーホールドであるが、今ではこの技は実に難しいのではないかと思う。もちろん関節を極めるポイントなど難しい技であるということも承知しているが、「魅せる」というプロレスに不可欠な一点についてもこれはなかなか大変なのではないか。
この技は足首をホールドして、自らはスタンディングで極める技で、相手の上半身及び片足は全くのフリー状態であるので、反撃は可能だ。たいていは痛くてのたうちまわる様を掛けられた側は上半身で表現しているが、掛ける側は力を入れるとぐっと前がかりの姿勢になるため、相手に頭部を掴まれやすい。また、回転する段階で後ろ向きになる場面も生じるため空いている足で蹴飛ばされる場合もある。防御しやすい技と見られるように思える。なので黙って掛けられているのは説得力に欠ける。
また、内側に足首を極めただけでもう十分なのだが、それを派手にするために「回転」を加える。そうすると、どうしてもバレリーナのようにスピンというわけにはいかないため、下手をすると「ドタドタ」という印象が生じる。晩年のテリーのスピンなどは実に「ドタドタ」としていて、あれでは必殺技の値打ちが下がってしまう。かくしてスピニング・トーホールドは難しい技となるのだ。
あくまで印象だが、若い頃のドリーは「くるり」とスピンしていた。何歩も足をつかない。これが重要なのではないだろうか。この回転によって波のように痛みが襲ってくる。この迫力を生み出さないといけない。なので後継者が生まれにくいという側面もあるのだろう。
チャンピオンであった頃、また実力者として君臨していたころのドリーは、オールラウンドプレイヤーでありながら最後にオリジナルホールドを出す。その「伝家の宝刀」を抜く瞬間をゾクゾクして見ていたファンは多いだろう。
なので、簡単に真似出来るものではないのだ。ドリーの醸し出す雰囲気、風格のようなものも加味されてこの技は輝きを増す。クラシカルな匂いを持っていた頃のプロレスならではだったかもしれないが、そういう意味においては、「スピニング・トーホールド」は幻となってもいいような気さえしている。
トーホールドは、結局のところつま先を掴んで足を捻り、足首、ヒザ関節、股関節を痛める技である。例えばヒザ十時など逆関節技的な技、またアキレス腱固めなどの順関節技とはそこが違う。あくまで関節を捻って(つまり縦にしか曲がらない関節を横に回して)極めてしまう。これは怖ろしい。
アンクルホールドは、ちょっとアキレス腱固めに似ているような感じがする(裏アキレスね)。しかし、足首を横に捻じ曲げている以上トーホールドの変形と見たい。
そして、足のいくつかの関節を極めるわけだが、捻じ曲げる部分をどこに特化するかで技が分かれていくようにも思う。アンクルホールドは足首。ヒールホールドは膝。クロスヒールホールド(ヴォルク・ハンのやつね)はどっちなんだろう。ややこしい。
そういう範疇でいくと、ドラゴンスクリューという技も、これらの「足関節捻じ曲げ」の技の部類ではないかとも思える。あれはヒザの破壊だ。相手の身体が固定しているわけではないので自分と一緒に回転してしまうが、自分の回転のスピードが速いため、その時間差で関節を痛める。したがって、ドラゴンスクリューはゆっくりやってはダメ。素早く回転することで「相手の身体が残る」ことが重要なのだ。
藤波辰巳のドラゴン殺法のひとつだが、最初に見たときはビックリした。何をやったのかが一瞬わからなかった。しかしこれはよく見ると怖い技である。カールゴッチ由来の技だと言われたが、当時は相手の蹴りを受け止めて倒すという技という印象が強かったものの、あれは一歩間違えれば靭帯を損傷する。
あくまで僕の印象だが、藤波がヘビー級に転向した後は一時封印、とまではいかなくても頻度が減ったのではないだろうか。これはヘビー級で使われる方が怖い。掛けられる側の身体が重いため、身体が残る時間が長い。一緒に回ってしまうことがこの技の受身であるのだから。例えば曙などに仕掛けたとしたら、彼はおそらく一緒に回転することなど出来ないだろうから確実にヒザを破壊されてしまう。
そうして、ドラゴンスクリューは他のドラゴン殺法(ドラゴンロケットなど)とともに見る機会が減っていったのだが、これに再び脚光を浴びせたのが武藤敬司である。
印象深いのはやはりvs高田延彦で、武藤はこの技で高田のヒザを完全に破壊してしまった。そのあと4の字固めでフィニッシュとなるのだが、あれはその前のドラゴンスクリューで勝負がついていたとも言える。怖い。
その後も武藤はドラゴンスクリューを得意技として使い続けているが、以後は武藤は足首のホールドを離すのを早くしているようにも思える。そのことで、相手にかかる負担を軽減している。雪崩式も使うようになったが、これもどちらかと言えば相手をマットに叩きつけることを主眼としていてヒザ破壊を避けている。武藤のように高速回転を旨としていれば、そうしないと事故に繋がる。
武藤は天才的センスを持ったレスラーだが、派手にアピールする技を多用するためにいきおい危険性を伴う。武藤は技がキレ過ぎるために危ない。なので、ドラゴンスクリューしかり、またフェイスクラッシャーも離すのが早い。シャイニングウィザードも眉間ではなくこめかみを狙う回し蹴り的に変化した。残念ではあるがいたしかたないことだろう。ドラゴンスクリューを、最後まで足首をホールドして高速回転する危険性を考えるとそら怖ろしい。
話がそれた。
トーホールドと言って、どういう技を連想するかと言えば、それはやはりドリーファンクJr.の「スピニング・トーホールド」が浮かぶのではないだろうか。試みにトーホールドで検索したらスピニング・トーホールドばかりがヒットした。こちらの方がずっと認知されているものとわかる。
プロレスファンでこの技を知らない人はいないと思っていたが、しかしもうドリーの全盛時代からずいぶんと年月が流れた。今ではトーホールドと言えば例えば蝶野のSTF(ステップオーバートーホールド・ウィズフェイスロック)なんかの方が10代のファンには馴染み深いかもしれない。
現在は「プロレス技博物館」の西村修が使うが、西村も新日を離脱して地上波ではこの技が見られない状態が続いている。これだけ一世を風靡した技であるが、見たことがない、という若いファンが増えていくことが予想される。しかしこの技はファンクス(テリーも含めて)の印象があまりにも強すぎるために「物真似」にしか見えないので会得しても使用しにくいだろう。それだけ偉大な技であったとも言える。
技の解説はもう僕には荷が重過ぎるので知っていること前提で書くが、この技はドリーの父であるファンクシニアが、自ら経営する牧場で暴れる牛を押さえつけるために行ったやり方から発展させ完成したと言われる。子供の頃読んでいたコミック「プロレススーパースター列伝」ではそこのところが細かく描写されていた。トーを掴み(というより足首か)相手のヒザを曲げて足を差込み、内側に回転させて極める。ヒザが曲がっているので、完全にこれはヒザ関節の破壊を目的とする。
ファンク一家のまさしく「伝家の宝刀」であった。父シニアは、身体が小さく悪役としてでしか生きる道がなかったのだが、ヘビー級王者への憧れをひたすら持ち続け、二人の息子にその夢を託して鍛えぬいた。これがアマリロの「ファンク道場」の発祥である。そして二人ともデビューを果たし、ドリーは当時のNWA王者ジン・キニスキーを破ってついに一家念願のヘビー級王座に就き、スピニング・トーホールドをフィニッシュホールドとして4年3ヶ月もの間君臨した。僕がプロレスを見た最初の頃はドリーがまだチャンピオンで、ギリギリ間に合った世代と言える。NWA王者と言えば後にハリー・レイス、そしてリック・フレアーの代名詞となっていったが、僕はなんと言ってもドリーだ。悪役、そして綱渡り防衛の印象が強いレイスやフレアーと比べ、ドリーには風格があったように思う(三つ子の魂百まで、であって最初に見たチャンピオンの印象は強いのです)。
さて、スピニングトーホールドであるが、今ではこの技は実に難しいのではないかと思う。もちろん関節を極めるポイントなど難しい技であるということも承知しているが、「魅せる」というプロレスに不可欠な一点についてもこれはなかなか大変なのではないか。
この技は足首をホールドして、自らはスタンディングで極める技で、相手の上半身及び片足は全くのフリー状態であるので、反撃は可能だ。たいていは痛くてのたうちまわる様を掛けられた側は上半身で表現しているが、掛ける側は力を入れるとぐっと前がかりの姿勢になるため、相手に頭部を掴まれやすい。また、回転する段階で後ろ向きになる場面も生じるため空いている足で蹴飛ばされる場合もある。防御しやすい技と見られるように思える。なので黙って掛けられているのは説得力に欠ける。
また、内側に足首を極めただけでもう十分なのだが、それを派手にするために「回転」を加える。そうすると、どうしてもバレリーナのようにスピンというわけにはいかないため、下手をすると「ドタドタ」という印象が生じる。晩年のテリーのスピンなどは実に「ドタドタ」としていて、あれでは必殺技の値打ちが下がってしまう。かくしてスピニング・トーホールドは難しい技となるのだ。
あくまで印象だが、若い頃のドリーは「くるり」とスピンしていた。何歩も足をつかない。これが重要なのではないだろうか。この回転によって波のように痛みが襲ってくる。この迫力を生み出さないといけない。なので後継者が生まれにくいという側面もあるのだろう。
チャンピオンであった頃、また実力者として君臨していたころのドリーは、オールラウンドプレイヤーでありながら最後にオリジナルホールドを出す。その「伝家の宝刀」を抜く瞬間をゾクゾクして見ていたファンは多いだろう。
なので、簡単に真似出来るものではないのだ。ドリーの醸し出す雰囲気、風格のようなものも加味されてこの技は輝きを増す。クラシカルな匂いを持っていた頃のプロレスならではだったかもしれないが、そういう意味においては、「スピニング・トーホールド」は幻となってもいいような気さえしている。
トーホールドという技は、プロレス技としては相当にクラシックで、関節技第一号とも言われている。これが本当のことかどうかはよくわからないけれども、少なくともフランク・ゴッチの得意技であった。
フランク・ゴッチというレスラーは、デビューが1899年と言われるから前々世紀だ。まだプロレスは黎明期と言える段階であり、伝説のレスラーと言えるかもしれない。
アメリカン・ヘビー級王座保持者であり、当時統一世界ヘビー級王座(これはつまりヨーロッパヘビー級王者のこと)保持者であるジョージ・ハッケンシュミットと2時間に及ぶ死闘を繰り広げて統一王者となった。後にNWA世界ヘビー級初代王者と認定されている(当時はまだNWAは無かったため、つまりはNWAの権威付けでそうなっちゃったのだが)。あのプロレスの神様と言われるカール・ゴッチは、フランク・ゴッチに憧れてリングネームをクラウザーからゴッチに改めた。つまりはそういうレスラーである。
そのフランク・ゴッチのフィニッシュ・ホールドとも言われているのがトーホールドである。伝説の技と言ってもいいだろう。
ところで、このトーホールドという技、フランク・ゴッチはどのように仕掛けていたのかは、僕はよく知らないのだ。プロレス年表のようなものを見ればフランク・ゴッチ=トーホールドと書かれていてそうなのかと思うが、映像を見たこともなければ解説を読んだこともないのだ。
トーホールドであるので、トー(つま先)をホールドして相手を痛めつける技である。と言って、つま先を狙った技ではない。つま先を持って足を捻じ曲げる技である。かかとを起点としてつま先をぐいと横に曲げると足首が捻れる。足はもちろん前に向いているものであって、それを横に曲げると足首だけでなく連動してヒザ、股関節が捻れてしまう。あいたたた。これがトーホールドの基本である。
これをフランク・ゴッチは立ったまま掛けていたのかヒザを落としていたのか、或いは寝て掛けていたのか。内側に曲げていたのか外側に曲げていたのか。
クラシカルなトーホールドは、上田馬之助とかがスタンディングで掛けていたようにも思う。相手のもう片方の足を踏みつけ裏返らないようにして、とった足首を外側に曲げていた。相手の足は伸びている。しかし後に書こうと思うがスピニング・トーホールドになればヒザ関節を捻ることを主眼に置いているため内側に曲げている。もともとはどういう技だったのだろう。
さて、このトーホールドはプロレス技の基本となって、よく試合には出てくるが痛め技である。見方によっては単純な技であるため、なかなかフィニッシュに結びつける選手はいない(本来痛い技なのだけれど)。しかし、これに似た技は今でも必殺技として君臨している。ヒールホールドはその最たるものだろう。
ヒールホールドとは、足先を脇に挟み(脇に挟まなくてもいいけど固定し)、かかとを肘で引っ掛けて持ち上げるように極める。そうすると、ヒザ関節が極まってしまうのである。足首を固定してつま先を支点にかかとを持ち上げる(足首を身体に対して横に曲げる)ことによって、ヒザ関節が捻れる。一瞬にして膝の靭帯を損傷してしまう危険性があるため、禁じ手とされる場合も多い。総合格闘技をよく見ている人にはおなじみだろう。ヒール(かかと)ではなくヒザを破壊する技である。
プロレスは相手に怪我をさせるためにやっているわけではないので力加減が重要になる(八百長論ではない。ギブアップさせれば勝ちなのだから)。プロレス的には、痛みからギブアップさせると言うより、ヒールホールドが掛かった時点でヒザを破壊されてしまう恐怖が先に立ち、思わずギブアップ、という方が恐怖性が増す。さあ力を入れるぞ、再起不能にしちゃうぞ、と舌なめずりする残忍な顔が出来れば一流のレスラーだと思うのだが、そこまでの役者はなかなか居ない。鈴木みのるなんてのは、初期にはヒールホールドを使っていたパンクラスの男だから、舌なめずりが似合いそうなのだが。いずれにせよ難しい技である。
ところで、書くほうも難しい。関節技なんて書くんじゃなかった(後悔)。
見た目ヒールホールドと見間違う技にアンクルホールドがある。これはヒールホールドがヒザ関節への攻撃であるのに対し、あくまでアンクル(足首)である。
うつぶせの相手の足を取り、片手で足首の部分を抱え込んで、反対の手でつま先を掴む。相手の足が横向きになる。そのつま先を、足首を固定しながら押すようにすれば、足首の関節が極まる。見た目は足首にスリーパー・ホールドを掛けているような感じ。
これをフィニッシュにしているのが金本浩二である。金本は、この地味な技を派手にアピールする。まずうつぶせの相手にまず自らがスタンディングで掛け、会場に大見得を切る。相手がロープに逃げようともがくのを、極めた足首をぐっと引き寄せてリング中央に戻す。そしてさらにギブアップしない場合は自らもマットに倒れこんで足で相手を動けなくしてしまう。これでジ・エンド。なんともカッコいい。
金本は、この10月が来れば40歳である。もうそんな年か。小橋や健介や高山と同じだ(中西もか)。若手のイメージがずっと僕にはあったが、とんでもない話で大変なベテランである。かつては3代目タイガーマスクだった。しかし優等生でなくてはならないタイガーには合わないキャラクターであり、喧嘩番長である。関西弁でまくし立てるそのかすれた声はなかなかにいい。最近は「アニキ」と呼ばれる。どんどんいいキャラになっていくような気がする。ムーンサルトプレスやファルコンアローが必殺技として知られるが僕はこのアンクルホールドが好きだ。地味な関節技がこんなに絵になるのは金本のパワーだろう。先日、G1に出場してMVPとなったが、十分納得がいった。なんと言うか、意気を感じる。ジュニアの第一人者として、これからも若手を引っ張って欲しい。
スピニング・トーホールドまで話が行かなかった。次回に続く。
小技画伯のHPにイラストがあります。「小技のプロレス画集」で「金本浩二のアンクルホールド」
を描かれています。分かりやすいですねー。
画伯、いつもお世話になります。
フランク・ゴッチというレスラーは、デビューが1899年と言われるから前々世紀だ。まだプロレスは黎明期と言える段階であり、伝説のレスラーと言えるかもしれない。
アメリカン・ヘビー級王座保持者であり、当時統一世界ヘビー級王座(これはつまりヨーロッパヘビー級王者のこと)保持者であるジョージ・ハッケンシュミットと2時間に及ぶ死闘を繰り広げて統一王者となった。後にNWA世界ヘビー級初代王者と認定されている(当時はまだNWAは無かったため、つまりはNWAの権威付けでそうなっちゃったのだが)。あのプロレスの神様と言われるカール・ゴッチは、フランク・ゴッチに憧れてリングネームをクラウザーからゴッチに改めた。つまりはそういうレスラーである。
そのフランク・ゴッチのフィニッシュ・ホールドとも言われているのがトーホールドである。伝説の技と言ってもいいだろう。
ところで、このトーホールドという技、フランク・ゴッチはどのように仕掛けていたのかは、僕はよく知らないのだ。プロレス年表のようなものを見ればフランク・ゴッチ=トーホールドと書かれていてそうなのかと思うが、映像を見たこともなければ解説を読んだこともないのだ。
トーホールドであるので、トー(つま先)をホールドして相手を痛めつける技である。と言って、つま先を狙った技ではない。つま先を持って足を捻じ曲げる技である。かかとを起点としてつま先をぐいと横に曲げると足首が捻れる。足はもちろん前に向いているものであって、それを横に曲げると足首だけでなく連動してヒザ、股関節が捻れてしまう。あいたたた。これがトーホールドの基本である。
これをフランク・ゴッチは立ったまま掛けていたのかヒザを落としていたのか、或いは寝て掛けていたのか。内側に曲げていたのか外側に曲げていたのか。
クラシカルなトーホールドは、上田馬之助とかがスタンディングで掛けていたようにも思う。相手のもう片方の足を踏みつけ裏返らないようにして、とった足首を外側に曲げていた。相手の足は伸びている。しかし後に書こうと思うがスピニング・トーホールドになればヒザ関節を捻ることを主眼に置いているため内側に曲げている。もともとはどういう技だったのだろう。
さて、このトーホールドはプロレス技の基本となって、よく試合には出てくるが痛め技である。見方によっては単純な技であるため、なかなかフィニッシュに結びつける選手はいない(本来痛い技なのだけれど)。しかし、これに似た技は今でも必殺技として君臨している。ヒールホールドはその最たるものだろう。
ヒールホールドとは、足先を脇に挟み(脇に挟まなくてもいいけど固定し)、かかとを肘で引っ掛けて持ち上げるように極める。そうすると、ヒザ関節が極まってしまうのである。足首を固定してつま先を支点にかかとを持ち上げる(足首を身体に対して横に曲げる)ことによって、ヒザ関節が捻れる。一瞬にして膝の靭帯を損傷してしまう危険性があるため、禁じ手とされる場合も多い。総合格闘技をよく見ている人にはおなじみだろう。ヒール(かかと)ではなくヒザを破壊する技である。
プロレスは相手に怪我をさせるためにやっているわけではないので力加減が重要になる(八百長論ではない。ギブアップさせれば勝ちなのだから)。プロレス的には、痛みからギブアップさせると言うより、ヒールホールドが掛かった時点でヒザを破壊されてしまう恐怖が先に立ち、思わずギブアップ、という方が恐怖性が増す。さあ力を入れるぞ、再起不能にしちゃうぞ、と舌なめずりする残忍な顔が出来れば一流のレスラーだと思うのだが、そこまでの役者はなかなか居ない。鈴木みのるなんてのは、初期にはヒールホールドを使っていたパンクラスの男だから、舌なめずりが似合いそうなのだが。いずれにせよ難しい技である。
ところで、書くほうも難しい。関節技なんて書くんじゃなかった(後悔)。
見た目ヒールホールドと見間違う技にアンクルホールドがある。これはヒールホールドがヒザ関節への攻撃であるのに対し、あくまでアンクル(足首)である。
うつぶせの相手の足を取り、片手で足首の部分を抱え込んで、反対の手でつま先を掴む。相手の足が横向きになる。そのつま先を、足首を固定しながら押すようにすれば、足首の関節が極まる。見た目は足首にスリーパー・ホールドを掛けているような感じ。
これをフィニッシュにしているのが金本浩二である。金本は、この地味な技を派手にアピールする。まずうつぶせの相手にまず自らがスタンディングで掛け、会場に大見得を切る。相手がロープに逃げようともがくのを、極めた足首をぐっと引き寄せてリング中央に戻す。そしてさらにギブアップしない場合は自らもマットに倒れこんで足で相手を動けなくしてしまう。これでジ・エンド。なんともカッコいい。
金本は、この10月が来れば40歳である。もうそんな年か。小橋や健介や高山と同じだ(中西もか)。若手のイメージがずっと僕にはあったが、とんでもない話で大変なベテランである。かつては3代目タイガーマスクだった。しかし優等生でなくてはならないタイガーには合わないキャラクターであり、喧嘩番長である。関西弁でまくし立てるそのかすれた声はなかなかにいい。最近は「アニキ」と呼ばれる。どんどんいいキャラになっていくような気がする。ムーンサルトプレスやファルコンアローが必殺技として知られるが僕はこのアンクルホールドが好きだ。地味な関節技がこんなに絵になるのは金本のパワーだろう。先日、G1に出場してMVPとなったが、十分納得がいった。なんと言うか、意気を感じる。ジュニアの第一人者として、これからも若手を引っ張って欲しい。
スピニング・トーホールドまで話が行かなかった。次回に続く。
小技画伯のHPにイラストがあります。「小技のプロレス画集」で「金本浩二のアンクルホールド」
を描かれています。分かりやすいですねー。
画伯、いつもお世話になります。
関西ではプロレス中継がずいぶん遅れて放送される。真夜中の放送であるし好事家しか見ていないからそれでもいいが。先日ずいぶん遅れて、ようやくにして7・16ノア日本武道館の高山善廣復帰戦を見た。
この試合は、実に様々な裏面がある。高山は脳梗塞で倒れ、これが707日振りの復帰である。一時期は右半身不随とも伝えられ、甦ることは叶わないと思われていた高山がついにリングに還ってきた。それだけでもこの試合には価値があるが、タッグを組む予定だった小橋健太が、腎臓ガンが発見され緊急摘出手術。そして代打に「この男しかいない」と指名された佐々木健介は、実は左眼窩底骨折を負っていた。しかしこの怪我を隠し、病院から「外泊許可」で参戦。試合の翌日緊急手術を行う経過となったことは報道で知られるとおり。
プロレスを腐す人に、この男達の生き様を理解してもらおうとは今はもう思わない。しかし、彼らの身体を削りに削って魅せている姿をそんな目でしか見られない人たちのことを僕は不幸だと思う。大切なものをどこかに置き忘れて来た人たちに違いない。
さて、試合の経過を振り返る記事ではないので措くが、当代きっての巧者である三沢&秋山との対戦は実に見ごたえがあった。技マニアの僕にとって実に満足いく試合内容だった。高山のニーリフト。ドロップキック。ドラゴンスープレックス。ハイアングルバックドロップ。エベレストジャーマンスープレックスホールド。また健介のプランチャ。フェイスクラッシャー。逆一本背負い。ストラングルホールドγ。パワースラム。三沢のエルボーパット。エルボースイシーダ。フェイスロック。セントーン。エメラルドフロウジョン。秋山のジャンピングニーパット。エクスプロイダー。それぞれが代名詞とも言える技を惜しげもなく繰り出す。もうたまらない。
その中で、高山が最初に出した技が、三沢と組み合う前に放ったビッグブーツだった。このフロントキックは右足だった。一時期は言うことをきかなかった高山の右足。それだけで僕は鳥肌が立つほど感動した。その感触を確かめるように場外でも、またリングでも高山は何度も放っていた。やつは病に勝って還ってきたのだ。
さて、このビッグブーツと言う技、つまりはハイアングルのフロントキックである。前蹴り。僕はあまりこういう流行的な名称を好まず、スピアーも「弾丸タックルと呼べ」というくらいに古臭い頑なな男なのだけれども、今回は特別にそう呼ぶ。高山が還ってきたのだもの。
しかしながら、今フロントキックのことを何でも「ビッグブーツ」という風潮が目立つ。ビッグブーツと言うからにはやはりデカイ足をもつ大男が放ってこそだろう。日本では唯一、高山に相応しい。永田や川田がフロントハイキックを放っても、それをビッグブーツと言うにはいささか違和感が伴う。田上もいるが…日本では高山くらいにしていただきたい。
この名称の最初は誰だったのだろう。調べれば分かるかもしれないのだが不精している。僕が思い出すのは、ブルーザー・ブロディとハルクホーガンである。ホーガンはWCW時代からだったかもしれないなぁ。もっとも二人ともハイアングルのフロントキックは昔から使っていて、ネーミングの問題だけなのだけれど。あのブロディのでかいシューズは、ビッグブーツと呼ぶに相応しかったかもしれない。あの蹴り倒すようなブロディのフロントキックは迫力があったなぁ。
名称のことはともかく、このフロントハイキックは日本では相当馴染み深い。結局これは馬場さんの「十六文キック」だからである。
馬場さんの代名詞とも言える十六文キック。足のサイズからそう名づけられたと言われるが、実際は1文は約2.4cmである。そうなると16文は38cm強である。実際馬場さんの足はこんなに大きくなかった(31cmとも言われる。十分デカいが)。これはリングシューズのサイズが16号であったことに由来していて、サイズの規格と文が混同したことによる。
馬場さんのキックは、相手をロープに振って返ってきたところをカウンターで放つ。よく、晩年の馬場さんの試合振りから、ただ足を上げて待っているところに相手が突っ込んでくると言われて揶揄の原因ともなったのだが、馬場さんのキャリアはついに吸引力まで持つに至ったのである。そこを凄いと思わなくてはいけない。
それはともかく、十六文キックなんか効かないよ、という人に、全盛期の馬場さんの試合を見せてあげたい。昭和40年代前半の、インター選手権者だった、腕にも肩にも筋肉のついた見方によっては逆三角形の体躯とも言える馬場さんの雄姿を。あの頃の馬場さんは相手を蹴り倒していた。後年はヒットすれば後ろに重心が傾き倒れそうだった馬場さんだが、相手を蹴って前に踏み込んで止まり広い肩を揺すって大見得を切っていた、あの姿をもっと若い人にも知ってもらいたい。馬場さんは強かったのだよ。
さて、後にアンドレ・ザ・ジャイアントが18文キックなるフロントキックを放った。このフロントキックは「人間エグゾセミサイル(by古館伊知郎)」と呼ばれ、このキックからヒップドロップ(人間圧殺刑)に至る必殺コースがあるわけだが、これも18文あったわけではない。馬場さんよりも足が大きかったと言いたいだけのことである。
さて、ビッグブーツ、フロントハイキックはつまり前蹴りであり、なかなかフィニッシュに結びつかない技である。例外として十六文キックがあるが、これも三十二文ロケット砲の時代は繋ぎであり、ここ一番はネックブリーカードロップもあった。それでもフィニッシュ技として存在はしていたが、後年衰えてからはフィニッシュとしては難しくなった。
これを必殺技として甦らせたのは蝶野正洋である。もちろんヤクザ・キック(TVでは問題があるのでケンカ・キック)。まさに蹴り倒しのフロントハイキックである。これはいい。迫力が伝わる。蝶野のコスチュームやリングシューズもこの技に合っているように思う。見方によっては実に単純な技だが、足裏に憎悪を込めたように放つヤクザ・キックは説得力がある。相手の顔面が歪み、脳が揺れる様がよくわかる。
ところで、最近蝶野がフィニッシュとして使うシャイニング・ケンカ・キックというのはどうだろうか。相手のヒザの上に乗ることによって重心が後ろへと傾く。走りこむスピードだけで威力を出しているだけで「蹴り倒す」という本来の蝶野の蹴りの迫力が軽減されるような気がしてならない。シャイニングものは流行ではあるが、やはり片足をマットに踏みしめて思い切り蹴りを突き出した方がずっと説得力があるような気がするのだが。ちょっと残念。
高山は復帰戦、大いに暴れてその存在感を誇示し、最後は三沢のエメラルドフロウジョンから秋山のリストクラッチ・エクスプロイダーに沈んだ。負けたものの観客も十分満足である。高山ならではの素晴らしいプロレスを披露してくれた。彼が復帰することによってまたプロレス界も活性化してくるだろう。
一方で、怪我を隠し男気を見せた佐々木健介。TVの解説をした北斗晶の大人しさ、しゃべりのキレの悪さは、健介のことが本当に心配だったのだろう。しかしそのことを言うわけにはいかない。このプロレスという因果な職業を生業としてしまった夫婦の生き様というものもまたドラマだった。幸いにして既に健介は手術を終えて退院したが、まだ復帰のメドは立たない。また、この試合に出場するはずだった小橋健太も、摘出手術を終え、転移はなかったと発表されている。両人の早期の復帰をどうしても望んでしまうけれども、今はゆっくりと休んで欲しい。もう無理するな。プロレスという仕事は、身体を「異形の者」に保つために無理に無理を重ねている。今だけでもゆっくり休んでくれ。一年前の橋本真也ショックを僕達は忘れていない。頼むから自分の身体を第一に静養して欲しい。
この試合は、実に様々な裏面がある。高山は脳梗塞で倒れ、これが707日振りの復帰である。一時期は右半身不随とも伝えられ、甦ることは叶わないと思われていた高山がついにリングに還ってきた。それだけでもこの試合には価値があるが、タッグを組む予定だった小橋健太が、腎臓ガンが発見され緊急摘出手術。そして代打に「この男しかいない」と指名された佐々木健介は、実は左眼窩底骨折を負っていた。しかしこの怪我を隠し、病院から「外泊許可」で参戦。試合の翌日緊急手術を行う経過となったことは報道で知られるとおり。
プロレスを腐す人に、この男達の生き様を理解してもらおうとは今はもう思わない。しかし、彼らの身体を削りに削って魅せている姿をそんな目でしか見られない人たちのことを僕は不幸だと思う。大切なものをどこかに置き忘れて来た人たちに違いない。
さて、試合の経過を振り返る記事ではないので措くが、当代きっての巧者である三沢&秋山との対戦は実に見ごたえがあった。技マニアの僕にとって実に満足いく試合内容だった。高山のニーリフト。ドロップキック。ドラゴンスープレックス。ハイアングルバックドロップ。エベレストジャーマンスープレックスホールド。また健介のプランチャ。フェイスクラッシャー。逆一本背負い。ストラングルホールドγ。パワースラム。三沢のエルボーパット。エルボースイシーダ。フェイスロック。セントーン。エメラルドフロウジョン。秋山のジャンピングニーパット。エクスプロイダー。それぞれが代名詞とも言える技を惜しげもなく繰り出す。もうたまらない。
その中で、高山が最初に出した技が、三沢と組み合う前に放ったビッグブーツだった。このフロントキックは右足だった。一時期は言うことをきかなかった高山の右足。それだけで僕は鳥肌が立つほど感動した。その感触を確かめるように場外でも、またリングでも高山は何度も放っていた。やつは病に勝って還ってきたのだ。
さて、このビッグブーツと言う技、つまりはハイアングルのフロントキックである。前蹴り。僕はあまりこういう流行的な名称を好まず、スピアーも「弾丸タックルと呼べ」というくらいに古臭い頑なな男なのだけれども、今回は特別にそう呼ぶ。高山が還ってきたのだもの。
しかしながら、今フロントキックのことを何でも「ビッグブーツ」という風潮が目立つ。ビッグブーツと言うからにはやはりデカイ足をもつ大男が放ってこそだろう。日本では唯一、高山に相応しい。永田や川田がフロントハイキックを放っても、それをビッグブーツと言うにはいささか違和感が伴う。田上もいるが…日本では高山くらいにしていただきたい。
この名称の最初は誰だったのだろう。調べれば分かるかもしれないのだが不精している。僕が思い出すのは、ブルーザー・ブロディとハルクホーガンである。ホーガンはWCW時代からだったかもしれないなぁ。もっとも二人ともハイアングルのフロントキックは昔から使っていて、ネーミングの問題だけなのだけれど。あのブロディのでかいシューズは、ビッグブーツと呼ぶに相応しかったかもしれない。あの蹴り倒すようなブロディのフロントキックは迫力があったなぁ。
名称のことはともかく、このフロントハイキックは日本では相当馴染み深い。結局これは馬場さんの「十六文キック」だからである。
馬場さんの代名詞とも言える十六文キック。足のサイズからそう名づけられたと言われるが、実際は1文は約2.4cmである。そうなると16文は38cm強である。実際馬場さんの足はこんなに大きくなかった(31cmとも言われる。十分デカいが)。これはリングシューズのサイズが16号であったことに由来していて、サイズの規格と文が混同したことによる。
馬場さんのキックは、相手をロープに振って返ってきたところをカウンターで放つ。よく、晩年の馬場さんの試合振りから、ただ足を上げて待っているところに相手が突っ込んでくると言われて揶揄の原因ともなったのだが、馬場さんのキャリアはついに吸引力まで持つに至ったのである。そこを凄いと思わなくてはいけない。
それはともかく、十六文キックなんか効かないよ、という人に、全盛期の馬場さんの試合を見せてあげたい。昭和40年代前半の、インター選手権者だった、腕にも肩にも筋肉のついた見方によっては逆三角形の体躯とも言える馬場さんの雄姿を。あの頃の馬場さんは相手を蹴り倒していた。後年はヒットすれば後ろに重心が傾き倒れそうだった馬場さんだが、相手を蹴って前に踏み込んで止まり広い肩を揺すって大見得を切っていた、あの姿をもっと若い人にも知ってもらいたい。馬場さんは強かったのだよ。
さて、後にアンドレ・ザ・ジャイアントが18文キックなるフロントキックを放った。このフロントキックは「人間エグゾセミサイル(by古館伊知郎)」と呼ばれ、このキックからヒップドロップ(人間圧殺刑)に至る必殺コースがあるわけだが、これも18文あったわけではない。馬場さんよりも足が大きかったと言いたいだけのことである。
さて、ビッグブーツ、フロントハイキックはつまり前蹴りであり、なかなかフィニッシュに結びつかない技である。例外として十六文キックがあるが、これも三十二文ロケット砲の時代は繋ぎであり、ここ一番はネックブリーカードロップもあった。それでもフィニッシュ技として存在はしていたが、後年衰えてからはフィニッシュとしては難しくなった。
これを必殺技として甦らせたのは蝶野正洋である。もちろんヤクザ・キック(TVでは問題があるのでケンカ・キック)。まさに蹴り倒しのフロントハイキックである。これはいい。迫力が伝わる。蝶野のコスチュームやリングシューズもこの技に合っているように思う。見方によっては実に単純な技だが、足裏に憎悪を込めたように放つヤクザ・キックは説得力がある。相手の顔面が歪み、脳が揺れる様がよくわかる。
ところで、最近蝶野がフィニッシュとして使うシャイニング・ケンカ・キックというのはどうだろうか。相手のヒザの上に乗ることによって重心が後ろへと傾く。走りこむスピードだけで威力を出しているだけで「蹴り倒す」という本来の蝶野の蹴りの迫力が軽減されるような気がしてならない。シャイニングものは流行ではあるが、やはり片足をマットに踏みしめて思い切り蹴りを突き出した方がずっと説得力があるような気がするのだが。ちょっと残念。
高山は復帰戦、大いに暴れてその存在感を誇示し、最後は三沢のエメラルドフロウジョンから秋山のリストクラッチ・エクスプロイダーに沈んだ。負けたものの観客も十分満足である。高山ならではの素晴らしいプロレスを披露してくれた。彼が復帰することによってまたプロレス界も活性化してくるだろう。
一方で、怪我を隠し男気を見せた佐々木健介。TVの解説をした北斗晶の大人しさ、しゃべりのキレの悪さは、健介のことが本当に心配だったのだろう。しかしそのことを言うわけにはいかない。このプロレスという因果な職業を生業としてしまった夫婦の生き様というものもまたドラマだった。幸いにして既に健介は手術を終えて退院したが、まだ復帰のメドは立たない。また、この試合に出場するはずだった小橋健太も、摘出手術を終え、転移はなかったと発表されている。両人の早期の復帰をどうしても望んでしまうけれども、今はゆっくりと休んで欲しい。もう無理するな。プロレスという仕事は、身体を「異形の者」に保つために無理に無理を重ねている。今だけでもゆっくり休んでくれ。一年前の橋本真也ショックを僕達は忘れていない。頼むから自分の身体を第一に静養して欲しい。
この記事を投稿する本日(2006/7/11)は橋本真也の一周忌である。
あの日ネットで第一報を知り、なんでだ、どうしてだの思いの中で「プロレス技番外編・橋本真也のDDT」を憑かれるように書いてから一年が過ぎた。早い。月日の流れるのは早すぎる。
法要及び追悼興行は既に粛々とこなされていて、こうして記事を書くのもいまさらのような感もあるのだけれども、今日は命日であるので、あらためて追悼の意を表し記事上げさせていただく。
橋本の必殺技と言えば、あの垂直落下式のDDTがすぐに思い浮かぶのだけれども、袈裟斬りチョップとともにフライングニールキックも印象深い。あの巨体で軽々とジャンプして体重を乗せて放つキックは迫力の一言で、その破壊力に実に説得力があった。上記記事でもふれたが、まだヤングライオン時代の橋本がニールキックを放ったのを最初に見たときは、「このデブなにをする?!」という驚きが先に立った。日本ではニールキックと言えば第一人者が前田日明で、橋本のような体型から繰り出される技と言う認識が全く無かったからである。当時の橋本のニールキックはまだまだ未完成で、十分に体重を利しているとはまだ思えなかったのだが、徐々に洗練されて脚に体重が乗るようになり、必殺技としての風格が出てきたように思う。それに伴って実に「格好良く」なった。絵になるニールキックとして、前田が使わなくなって以降は第一人者と言ってよかったのではないか。衝突力、衝撃は天下一品であったと言えよう。
さて、このニールキック、つまり後ろ回し蹴りの一派であって、相手に対して後ろ向きに回転しつつジャンプして、自らの脚を相手にヒットさせていく。カウンターで放つ場合は自分の身体への回転力を高めるために、身体を反らせ横向きに倒れるようにして脚に体重を乗せて放つ。フライング・ニールキックである。まことに絵になる。
後ろ回し蹴りの範疇にはプロレス技に限っても様々なキックがあり、回転力を利して足裏をヒットさせるローリングソバット(タイガーマスクで御馴染み)や、回転を伴わず(じゃ回し蹴りじゃないけど)脚をぐっと伸ばして蹴り上げるトラースキック(カブキや、最近では丸藤)等がある。このニールキックという技の定義は、足裏や甲ではなく伸ばした足の側面(外腿から外踝まで範囲は広い)がヒットするところにあると思うのだが、小林邦昭がよくやっていたベニー・ユキーデ風の回し蹴りもニールキックなのだろうか。空手のいわゆる胴回し蹴りにルーツがあるとは思うのだが。
ちょっと恥ずかしい話をする。「ニールキック」ってどういう意味?
この名称が定着したのはおそらく前田日明からだろうと思うのだけれど、当初は「大車輪キック」と言っていた。それから、「レッグラリアート」だの様々な名称の試行錯誤を経て「ラウンディング・ニールキック」に定着したという記憶があるのだが、「ニールキック」のその「ニール」の意味を知らない。誰かご教授お願いできないだろうか。「kneel」ではヒザを曲げた状態を意味してこのニールキックの形状とはそぐわない。手を尽くして調べていない僕が安易に「教えて」では申し訳ないのだが、よくわかんないんです。
さて、橋本真也以前のこの技はもちろん前田日明の専売特許みたいなものだった。後ろ回し蹴りの使い手はもちろん前田が最初ではなく。先達は多く居る。相手の腕をとって捻ると見せかけ振り向きざまに蹴る佐藤昭雄のトリッキーなキックも印象深い。小林の独楽を回すようなキックも効きそうだ。踝があたるあの蹴りは川田に継承されているようにも思う。しかし前田はちょっと別格で、さすが蹴りに自信を持っていたのでニールキックは凄かった。身体が大きいので豪快さがあった。何と言っても白眉は大阪城ホールでのIWGPリーグ戦、vs藤波辰巳の一戦だろう。
攻めの前田に受けの藤波、その激しい攻防の中で、コーナーに追い詰められた藤波に前田はニールキックを放つ。その鋭い蹴りの、おそらく踵の部分が藤波のコメカミをとらえた。その瞬間の藤波の大流血に戦慄をおぼえた人も多いだろう。前田の蹴りがカマイタチのように鋭く、また踵がちょうどかすめる(当るか当らないかのギリギリ)具合であったためにカミソリのような現象を生み出したと解釈できるが、あの凄さを超えるニールキックはなかなか出てはこまい。あのようにカカトで頭部を狙う蹴りは、ある意味骨法の「浴びせ蹴り」にも近いしまた「踵落し」的な衝撃もある。流血はアクシデントだったかもしれないが、当時の前田は危険な匂いをプンプンさせていた。あの当時の前田の攻撃を受けて試合を成立させるのは、受けの天才藤波以外にはいなかったのではないだろうか。
このように前田のニールキックの象徴が「鋭さ」であったのなら、橋本のは「重さ」であり「衝突力」であっただろう。現在フライングニールキックの使い手は天山はじめ数多く居るが、それらのニールキックの元は橋本であったような気がする。切れ味主体の前田に対して、あくまで体重を利した衝突力を前面に出した橋本。あの巨体あってこその説得力だったと思う。現在の使い手はやはり橋本の影響下にあり、遠心力の利し方などは橋本のニールキックあらばこそだ。山崎一夫の引退の後は、天山にせよ大谷にせよ、橋本式のニールキックからの発展であるような気がする。暴論かもしれないけれども今日は命日であるので許してもらいたい。
大谷はスワンダイブ式のニールキックも使うが、あれは踏み込みが甘いような気がしてしょうがない。派手ではあるけれども、うまく体重を乗せるには踏み込みが重要だ。
さて、橋本の得意技として他に「水面蹴り」がある。これも見方によれば、超低空のニールキックとも言えなくもない(無理があるか)。低い後ろ回転蹴りによって相手の足を払いなぎ倒す。
ボクサーのトニー・ホームとの戦いに敗れ、治療のために中国に渡ったはずだったのだが、リベンジへの思い止まず中国武術を学び、「水面蹴り」をついに体得するに至ったと言うあのドラマ。
今まで橋本のニールキックは「重さ」「衝突力」というくくりで書いたが、この水面蹴りは間違いなく「鋭さ」だ。繰り出す動きが早い。あの巨体にも関わらず「鋭さ」を披露する橋本に努力の跡がしっかりと浮き出て感動した。
もうあの技は見ることが出来ない。一瞬にして足を刈るあの技には美学があったように思う。「マッケンロー」とは一味も二味も違う。
水面蹴りはもうプロレス界では良質な使い手もいない。僕は「刈龍怒」などという技は決して好きではないが、それでもいいから見せて欲しいと願う。叶わぬ話ではあるのだが。
あまりにも早く逝ってしまった橋本真也。彼の遺志を多くのレスラーに継いで欲しい。全てのレスラーと関係者が日本プロレス界の発展を最終目標と考えて欲しい。橋本が目指した「誰とでも戦えるリング」、そしてプロレス界の融和と発展を祈念して、この一周忌に黙祷を捧げたい。
あの日ネットで第一報を知り、なんでだ、どうしてだの思いの中で「プロレス技番外編・橋本真也のDDT」を憑かれるように書いてから一年が過ぎた。早い。月日の流れるのは早すぎる。
法要及び追悼興行は既に粛々とこなされていて、こうして記事を書くのもいまさらのような感もあるのだけれども、今日は命日であるので、あらためて追悼の意を表し記事上げさせていただく。
橋本の必殺技と言えば、あの垂直落下式のDDTがすぐに思い浮かぶのだけれども、袈裟斬りチョップとともにフライングニールキックも印象深い。あの巨体で軽々とジャンプして体重を乗せて放つキックは迫力の一言で、その破壊力に実に説得力があった。上記記事でもふれたが、まだヤングライオン時代の橋本がニールキックを放ったのを最初に見たときは、「このデブなにをする?!」という驚きが先に立った。日本ではニールキックと言えば第一人者が前田日明で、橋本のような体型から繰り出される技と言う認識が全く無かったからである。当時の橋本のニールキックはまだまだ未完成で、十分に体重を利しているとはまだ思えなかったのだが、徐々に洗練されて脚に体重が乗るようになり、必殺技としての風格が出てきたように思う。それに伴って実に「格好良く」なった。絵になるニールキックとして、前田が使わなくなって以降は第一人者と言ってよかったのではないか。衝突力、衝撃は天下一品であったと言えよう。
さて、このニールキック、つまり後ろ回し蹴りの一派であって、相手に対して後ろ向きに回転しつつジャンプして、自らの脚を相手にヒットさせていく。カウンターで放つ場合は自分の身体への回転力を高めるために、身体を反らせ横向きに倒れるようにして脚に体重を乗せて放つ。フライング・ニールキックである。まことに絵になる。
後ろ回し蹴りの範疇にはプロレス技に限っても様々なキックがあり、回転力を利して足裏をヒットさせるローリングソバット(タイガーマスクで御馴染み)や、回転を伴わず(じゃ回し蹴りじゃないけど)脚をぐっと伸ばして蹴り上げるトラースキック(カブキや、最近では丸藤)等がある。このニールキックという技の定義は、足裏や甲ではなく伸ばした足の側面(外腿から外踝まで範囲は広い)がヒットするところにあると思うのだが、小林邦昭がよくやっていたベニー・ユキーデ風の回し蹴りもニールキックなのだろうか。空手のいわゆる胴回し蹴りにルーツがあるとは思うのだが。
ちょっと恥ずかしい話をする。「ニールキック」ってどういう意味?
この名称が定着したのはおそらく前田日明からだろうと思うのだけれど、当初は「大車輪キック」と言っていた。それから、「レッグラリアート」だの様々な名称の試行錯誤を経て「ラウンディング・ニールキック」に定着したという記憶があるのだが、「ニールキック」のその「ニール」の意味を知らない。誰かご教授お願いできないだろうか。「kneel」ではヒザを曲げた状態を意味してこのニールキックの形状とはそぐわない。手を尽くして調べていない僕が安易に「教えて」では申し訳ないのだが、よくわかんないんです。
さて、橋本真也以前のこの技はもちろん前田日明の専売特許みたいなものだった。後ろ回し蹴りの使い手はもちろん前田が最初ではなく。先達は多く居る。相手の腕をとって捻ると見せかけ振り向きざまに蹴る佐藤昭雄のトリッキーなキックも印象深い。小林の独楽を回すようなキックも効きそうだ。踝があたるあの蹴りは川田に継承されているようにも思う。しかし前田はちょっと別格で、さすが蹴りに自信を持っていたのでニールキックは凄かった。身体が大きいので豪快さがあった。何と言っても白眉は大阪城ホールでのIWGPリーグ戦、vs藤波辰巳の一戦だろう。
攻めの前田に受けの藤波、その激しい攻防の中で、コーナーに追い詰められた藤波に前田はニールキックを放つ。その鋭い蹴りの、おそらく踵の部分が藤波のコメカミをとらえた。その瞬間の藤波の大流血に戦慄をおぼえた人も多いだろう。前田の蹴りがカマイタチのように鋭く、また踵がちょうどかすめる(当るか当らないかのギリギリ)具合であったためにカミソリのような現象を生み出したと解釈できるが、あの凄さを超えるニールキックはなかなか出てはこまい。あのようにカカトで頭部を狙う蹴りは、ある意味骨法の「浴びせ蹴り」にも近いしまた「踵落し」的な衝撃もある。流血はアクシデントだったかもしれないが、当時の前田は危険な匂いをプンプンさせていた。あの当時の前田の攻撃を受けて試合を成立させるのは、受けの天才藤波以外にはいなかったのではないだろうか。
このように前田のニールキックの象徴が「鋭さ」であったのなら、橋本のは「重さ」であり「衝突力」であっただろう。現在フライングニールキックの使い手は天山はじめ数多く居るが、それらのニールキックの元は橋本であったような気がする。切れ味主体の前田に対して、あくまで体重を利した衝突力を前面に出した橋本。あの巨体あってこその説得力だったと思う。現在の使い手はやはり橋本の影響下にあり、遠心力の利し方などは橋本のニールキックあらばこそだ。山崎一夫の引退の後は、天山にせよ大谷にせよ、橋本式のニールキックからの発展であるような気がする。暴論かもしれないけれども今日は命日であるので許してもらいたい。
大谷はスワンダイブ式のニールキックも使うが、あれは踏み込みが甘いような気がしてしょうがない。派手ではあるけれども、うまく体重を乗せるには踏み込みが重要だ。
さて、橋本の得意技として他に「水面蹴り」がある。これも見方によれば、超低空のニールキックとも言えなくもない(無理があるか)。低い後ろ回転蹴りによって相手の足を払いなぎ倒す。
ボクサーのトニー・ホームとの戦いに敗れ、治療のために中国に渡ったはずだったのだが、リベンジへの思い止まず中国武術を学び、「水面蹴り」をついに体得するに至ったと言うあのドラマ。
今まで橋本のニールキックは「重さ」「衝突力」というくくりで書いたが、この水面蹴りは間違いなく「鋭さ」だ。繰り出す動きが早い。あの巨体にも関わらず「鋭さ」を披露する橋本に努力の跡がしっかりと浮き出て感動した。
もうあの技は見ることが出来ない。一瞬にして足を刈るあの技には美学があったように思う。「マッケンロー」とは一味も二味も違う。
水面蹴りはもうプロレス界では良質な使い手もいない。僕は「刈龍怒」などという技は決して好きではないが、それでもいいから見せて欲しいと願う。叶わぬ話ではあるのだが。
あまりにも早く逝ってしまった橋本真也。彼の遺志を多くのレスラーに継いで欲しい。全てのレスラーと関係者が日本プロレス界の発展を最終目標と考えて欲しい。橋本が目指した「誰とでも戦えるリング」、そしてプロレス界の融和と発展を祈念して、この一周忌に黙祷を捧げたい。
ジョン・テンタが亡くなった。享年42歳。死亡原因については錯綜していて、メディアによって白血病、そして膀胱癌とも言われている。2年前から闘病生活であったらしいので、どちらも本当なのかもしれない。でもこれはやはり、身体を無理をしてでも大きく保たなければならない宿命にあるレスラーの壮絶な殉職だろう。テリーゴディや橋本真也のときと同じ感想しか出てこない。アースクエイク。僕はWWEはあまり見ない視聴者なのだけれども、テンタは日本にとっては馴染みが深すぎる。
そもそも日本との関わりは、テンタが大相撲に入門したときから始まる。約20年前、佐渡ケ嶽部屋に所属、琴天山(琴天太)として3場所連続優勝。結局相撲界では1敗もすることなく角界を去った。このデビュー24連勝という記録は今も破られていない。プロレスラーに転身後も日本とは関わりが深く、当初は全日本プロレス入り。その後アメリカに主戦場を移すも、日本でSWS、WAR、そしてUWFインターにも参戦した。忘れることができないのは北尾との例の「八百長発言」の一戦である。
テンタはアメリカマットにおいて、WWFに所属してホーガンと抗争を繰り広げた。その際に「アースクエイク(地震)」というリングネームを名乗ったことが、またひとつ彼の寿命を縮めさせたのではないか。こんなリングネームでは身体を大きく保たざるを得ない。そもそもアマレス出身でゲーリー・オブライト(彼も30代で死んだ)のライバルでもあり、アメフトもこなした運動神経の良さを前面に打ち出すプランを封印し、身体の大きさを誇示せざるを得なかったこと。そのフィニッシュホールドはアマレス仕込みのスープレックスではなく、体重を利したヒップドロップであった。
僕の心づもりでは、ボディプレス、セントーンについて言及してからヒップドロップについて書こうと思っていたのだが、ちょっと繰り上げて記事にする。テンタの得意技であったからである。
ヒップドロップというのは、見方によっては単純な技である。仰向けに倒れた相手に、臀部から体重を乗せて圧し掛かっていく。例えばリックフレアーのように、相手の足をマットに引っ掛けさせてそこにヒップを落として痛め、4の字固めに移行する繋ぎ技としてのヒップドロップもあるが、フィニッシュに結び付けるには全体重を相手のボディに落とすヒップドロップでないといけない。
全体重を相手に浴びせる技については、他にボディプレス(身体の前面から)、セントーン(背中から)がある。エルボードロップやニードロップもそうかもしれないが、これはちょっと微妙なところ。強いてあげればアトミック・ボムズ・アウェイ(飛び降り踏みつけ)か。このディック・ザ・ブルーザーの得意技はコーナー上段からのフットスタンプと言えるのだが、テンタほどの体重があるレスラーがやれば相手は腹腔破裂してしまうだろう。相手を押しつぶすほどの体重を持つレスラーにとってベストな全体重浴びせ技はやはりヒップドロップしかないのではないか。
ボディプレスは放った際自らの両手、ヒザをマットにつくパターンが多く(これは自らが受身を取る必要性があるからだが)、全体重ともやはり言いにくい。またセントーンは全体重が確実に乗るが、背中から落ちるという特殊性上、ジャンプせざるを得ない。こう書くと問題があるかもだが、力の加減が出来ない。ヒップドロップであれば、狙ったところに(腹でも胸でも)落としやすく、しかも両足を先にマットに着地させることが可能なので、相手によって加減(この加減ということで八百長だと連想されても困るのだが、プロレスは相手に怪我をさせることを目的とはしていない)出来る。体重の如何によって、ヒップドロップは自由自在に放つことが出来るのだ。
さて、「見方によっては単純な技」と書いたが、奥が深くないかと言われればそうではない。この技を日本中に知らしめたのはもちろんサンダー杉山の「雷電ドロップ」である。
もうサンダー杉山が亡くなって4、5年は経つが、僕は残念ながら杉山の全盛期を記憶している年代ではない。僕が記憶している杉山は既に子供番組に出演していたかわいいおっちゃんだ。ただ、雷電ドロップの名はその頃もまだ轟いていた。小学生のプロレスごっこにも登場していた(余談だが、僕は小さい頃「大臀ドロップ」だと思っていた)。ある意味日本中を席巻した技とも言える。
サンダー杉山の凄さは、その体格から想像できない身体のバネとジャンプ力だ。助走もなしにゴムまりのように相手レスラーの上でジャンプする。その際相撲のマタ割りのように大きく開脚する。派手だ。いかにも必殺技の匂いがする。そして相手に2度、3度とヒップドロップを落とす。ダメージは計り知れない。「絵になる」ヒップドロップだった。杉山はアマレス五輪代表でスープレックスもこなした技師(わざし)だが、自らの丸い身体を誇示するためにヒップドロップをフィニッシュにしたのだろう。テンタとの共通点が見える。
僕らの世代で馴染み深いヒップドロップと言えば、アンドレ・ザ・ジャイアントのそれであろう。アンドレはまず相手をロープに振り18文キック(人間エグゾセミサイルby古館伊知郎)を放つ。そして倒れた相手によっこらしょっと言わんばかりに腰を落としていく。もう相手は返すことなど絶対に出来ない。必殺フルコースである。
アンドレは器用なレスラーであって他にもいろいろ技は出来ただろう。しかし、その巨大な「人間山脈」と言われた身体を誇示するにはこのフィニッシュしかなかったようにも思われる。アンドレがセントーンをやっていたら相手は病院送りだろう。また、杉山のようにジャンプしてヒップドロップを打ち込めば肋骨は折れ内臓は破裂する危険性もある。なので、ドタドタと腰を下ろす式のヒップドロップしか出来なかった。言ってみれば「手加減」である。200kgを軽くオーバーしていたアンドレの「乗せる」だけのヒップドロップだった。ヒッププレスと言うべきか。そのアンドレもやはり身体を維持出来ず46歳で死んだ。
トップロープからのヒップドロップもある。使い手の第一人者はペドロ・モラレスだろう。ドロップキックを得意とし強靭な背筋力を誇ったモラレスのヒップドロップは迫力の一言だが、モラレスは体重が110kgほど。アンドレがやってはいけない技である。またサンダー杉山は後年「大雷電」と呼ばれるトップロープからの雷電ドロップを放ったが、杉山もあんな丸い身体で120kgくらいなのである。
さて、ちょっと関係ない話かもしれないが、ヒップアタックという技がある。カウンターで臀部をヒットさせる技で、越中詩郎の代名詞とも言える技であるが、どうも僕はあまり好きではない。ヒップよりも当然ニーなどの硬い部分の方が効くと思うからであって、ダメージの蓄積において説得力に欠けると思っているからである(尻を顔面にヒットさせられるという精神的屈辱的ダメージはあるが)。しかし越中くらい徹底して使うと技も力を持ってくるものであって、あそこまでやらないと一人前にはなれない。だから、他のレスラーはやらない方がいい(女子プロレスでは以前から使われているが、女子の尻圧というアングルを考えるとこの場合はよしとしたい…僕の論理の破綻)。しかし、最近のTV実況を聞いていると、若いアナウンサーが「鍛え上げた尾骶骨に魂を込めて!」などと言っている。アホかいな。尾骶骨なんぞ鍛えられるわけもなく、尾骶骨をヒットさせれば越中の方にダメージが強くなるのは当たり前のことで、アナウンサーも何でも言えばいいというものではないと思うが。
しかしながらこうして書いていると、テンタだけの追悼にとどまらず、サンダー杉山やアンドレも早く亡くなっていることに愕然とする。ヒップドロップを絵になる必殺技たらしめんとすればそれなりの体格が必要で、そのことがまたレスラーの寿命を縮めていることに気が付く。正に身体を切り売りする職業なのだ。今ヒップドロップを使うレスラー、僕の大好きな吉江や、楽しい泉田純らは身体のケアには十分気をつけて欲しい。
そもそも日本との関わりは、テンタが大相撲に入門したときから始まる。約20年前、佐渡ケ嶽部屋に所属、琴天山(琴天太)として3場所連続優勝。結局相撲界では1敗もすることなく角界を去った。このデビュー24連勝という記録は今も破られていない。プロレスラーに転身後も日本とは関わりが深く、当初は全日本プロレス入り。その後アメリカに主戦場を移すも、日本でSWS、WAR、そしてUWFインターにも参戦した。忘れることができないのは北尾との例の「八百長発言」の一戦である。
テンタはアメリカマットにおいて、WWFに所属してホーガンと抗争を繰り広げた。その際に「アースクエイク(地震)」というリングネームを名乗ったことが、またひとつ彼の寿命を縮めさせたのではないか。こんなリングネームでは身体を大きく保たざるを得ない。そもそもアマレス出身でゲーリー・オブライト(彼も30代で死んだ)のライバルでもあり、アメフトもこなした運動神経の良さを前面に打ち出すプランを封印し、身体の大きさを誇示せざるを得なかったこと。そのフィニッシュホールドはアマレス仕込みのスープレックスではなく、体重を利したヒップドロップであった。
僕の心づもりでは、ボディプレス、セントーンについて言及してからヒップドロップについて書こうと思っていたのだが、ちょっと繰り上げて記事にする。テンタの得意技であったからである。
ヒップドロップというのは、見方によっては単純な技である。仰向けに倒れた相手に、臀部から体重を乗せて圧し掛かっていく。例えばリックフレアーのように、相手の足をマットに引っ掛けさせてそこにヒップを落として痛め、4の字固めに移行する繋ぎ技としてのヒップドロップもあるが、フィニッシュに結び付けるには全体重を相手のボディに落とすヒップドロップでないといけない。
全体重を相手に浴びせる技については、他にボディプレス(身体の前面から)、セントーン(背中から)がある。エルボードロップやニードロップもそうかもしれないが、これはちょっと微妙なところ。強いてあげればアトミック・ボムズ・アウェイ(飛び降り踏みつけ)か。このディック・ザ・ブルーザーの得意技はコーナー上段からのフットスタンプと言えるのだが、テンタほどの体重があるレスラーがやれば相手は腹腔破裂してしまうだろう。相手を押しつぶすほどの体重を持つレスラーにとってベストな全体重浴びせ技はやはりヒップドロップしかないのではないか。
ボディプレスは放った際自らの両手、ヒザをマットにつくパターンが多く(これは自らが受身を取る必要性があるからだが)、全体重ともやはり言いにくい。またセントーンは全体重が確実に乗るが、背中から落ちるという特殊性上、ジャンプせざるを得ない。こう書くと問題があるかもだが、力の加減が出来ない。ヒップドロップであれば、狙ったところに(腹でも胸でも)落としやすく、しかも両足を先にマットに着地させることが可能なので、相手によって加減(この加減ということで八百長だと連想されても困るのだが、プロレスは相手に怪我をさせることを目的とはしていない)出来る。体重の如何によって、ヒップドロップは自由自在に放つことが出来るのだ。
さて、「見方によっては単純な技」と書いたが、奥が深くないかと言われればそうではない。この技を日本中に知らしめたのはもちろんサンダー杉山の「雷電ドロップ」である。
もうサンダー杉山が亡くなって4、5年は経つが、僕は残念ながら杉山の全盛期を記憶している年代ではない。僕が記憶している杉山は既に子供番組に出演していたかわいいおっちゃんだ。ただ、雷電ドロップの名はその頃もまだ轟いていた。小学生のプロレスごっこにも登場していた(余談だが、僕は小さい頃「大臀ドロップ」だと思っていた)。ある意味日本中を席巻した技とも言える。
サンダー杉山の凄さは、その体格から想像できない身体のバネとジャンプ力だ。助走もなしにゴムまりのように相手レスラーの上でジャンプする。その際相撲のマタ割りのように大きく開脚する。派手だ。いかにも必殺技の匂いがする。そして相手に2度、3度とヒップドロップを落とす。ダメージは計り知れない。「絵になる」ヒップドロップだった。杉山はアマレス五輪代表でスープレックスもこなした技師(わざし)だが、自らの丸い身体を誇示するためにヒップドロップをフィニッシュにしたのだろう。テンタとの共通点が見える。
僕らの世代で馴染み深いヒップドロップと言えば、アンドレ・ザ・ジャイアントのそれであろう。アンドレはまず相手をロープに振り18文キック(人間エグゾセミサイルby古館伊知郎)を放つ。そして倒れた相手によっこらしょっと言わんばかりに腰を落としていく。もう相手は返すことなど絶対に出来ない。必殺フルコースである。
アンドレは器用なレスラーであって他にもいろいろ技は出来ただろう。しかし、その巨大な「人間山脈」と言われた身体を誇示するにはこのフィニッシュしかなかったようにも思われる。アンドレがセントーンをやっていたら相手は病院送りだろう。また、杉山のようにジャンプしてヒップドロップを打ち込めば肋骨は折れ内臓は破裂する危険性もある。なので、ドタドタと腰を下ろす式のヒップドロップしか出来なかった。言ってみれば「手加減」である。200kgを軽くオーバーしていたアンドレの「乗せる」だけのヒップドロップだった。ヒッププレスと言うべきか。そのアンドレもやはり身体を維持出来ず46歳で死んだ。
トップロープからのヒップドロップもある。使い手の第一人者はペドロ・モラレスだろう。ドロップキックを得意とし強靭な背筋力を誇ったモラレスのヒップドロップは迫力の一言だが、モラレスは体重が110kgほど。アンドレがやってはいけない技である。またサンダー杉山は後年「大雷電」と呼ばれるトップロープからの雷電ドロップを放ったが、杉山もあんな丸い身体で120kgくらいなのである。
さて、ちょっと関係ない話かもしれないが、ヒップアタックという技がある。カウンターで臀部をヒットさせる技で、越中詩郎の代名詞とも言える技であるが、どうも僕はあまり好きではない。ヒップよりも当然ニーなどの硬い部分の方が効くと思うからであって、ダメージの蓄積において説得力に欠けると思っているからである(尻を顔面にヒットさせられるという精神的屈辱的ダメージはあるが)。しかし越中くらい徹底して使うと技も力を持ってくるものであって、あそこまでやらないと一人前にはなれない。だから、他のレスラーはやらない方がいい(女子プロレスでは以前から使われているが、女子の尻圧というアングルを考えるとこの場合はよしとしたい…僕の論理の破綻)。しかし、最近のTV実況を聞いていると、若いアナウンサーが「鍛え上げた尾骶骨に魂を込めて!」などと言っている。アホかいな。尾骶骨なんぞ鍛えられるわけもなく、尾骶骨をヒットさせれば越中の方にダメージが強くなるのは当たり前のことで、アナウンサーも何でも言えばいいというものではないと思うが。
しかしながらこうして書いていると、テンタだけの追悼にとどまらず、サンダー杉山やアンドレも早く亡くなっていることに愕然とする。ヒップドロップを絵になる必殺技たらしめんとすればそれなりの体格が必要で、そのことがまたレスラーの寿命を縮めていることに気が付く。正に身体を切り売りする職業なのだ。今ヒップドロップを使うレスラー、僕の大好きな吉江や、楽しい泉田純らは身体のケアには十分気をつけて欲しい。
フェイスロックなのかフェースロックなのか…それはさておき。
最近TVでプロレスを見ていると、永田のナガタロックや蝶野のSTFなどがフィニッシュとして幅を利かせている。よく見ればこれらはみんなフェイスロックを含んだ複合技なのだけれども、単独でフェイスロックを使用しているレスラーも多い。
フェイスロックという技はつまり「顔面固め」である。これは拷問技ではあるが道場技であって、僕がプロレスを見始めた頃はあまり脚光を浴びる技ではなかった。もちろん「地味」であるからであろう。両腕で顔面を締め付ける技であり、痛そうだが動きがない。繋ぎ技として、ダメージを蓄積させるには実に有効だが、さすがにフィニッシュには結びつかない技だった。
先日、桜庭和志がTVでフェイスロックの解説をやっていた。右腕(左腕でもそりゃいいのだが)の下腕部分を顔面の急所に押し付けて締め上げる。ヘッドロックの項でも書いたが、頬骨の下には急所があり、そこを締め付けられると涙が出るほど痛い(by佐山聡)。その部分、もしくは鼻の下(ここも急所)に腕を押し付けて引き付けるように締める。桜庭は右腕で急所を極め、左腕はスリーパーホールドをかけるように後頭部に添えて後ろから顔面を押すようにする。スリーパーが顎の下ではなくてちょっと外れて顔面に入っている感じか。後方から体重と共に腕力で押し付けるのでまさに拷問であるが、これは総合格闘技式フェイスロック。プロレスでは後頭部にあまり手を回さない。やはり見た目がスリーパーと混同してしまうからだろう。
フェイスロックがいかに恐ろしい技であるかの伝説として、猪木のvsパク・ソンナン戦がある。謎の多い試合と言われ、TV中継もなく僕ももちろん見たわけではないが、例の「目をくり抜いた」と言われる試合である(実際には指が目に入ったがもちろんくり抜いてなどいない)。約30年前に韓国で行われたこの試合で、猪木はパク・ソンナンにフェイスロックを仕掛け、締め抜いてパクの前歯が唇を突き破って飛び出してしまったと言う。ちょっと鳥肌が立つ。
そんなキラー猪木伝説はともかく、僕がフェイスロックを見てこりゃ凄いなと思ったのは木戸修のそれだった。新日を出てUWFに身を投じ、また新日に帰ってきた木戸だったが、UWFは関節技を主体にしていた団体でもあり、出戻りの頃も地味なフェイスロックを多用していた。
まあしかしその締め付けのえげつなかった事。ありゃあ涙が出るだろうな。記憶で書いて申し訳ないが、木戸は両手を相手の顔面の前でクラッチし、手首あたりの骨を相手の顔面の急所にめり込ませるようにして(佐山式ヘッドロックの要領です)、脇を締め自分の体でサンドイッチ状態にして極めていた。じっくりじっくりと締め上げる姿はまさに職人で、そもそも地味な木戸には似合っていた。拷問技とはこういうものかと認識させてくれたように思う。
さて、フェイスロックに一躍脚光を浴びさせたのは三沢光晴である。ジャンボ鶴田をギブアップさせたことでも有名であり、ついにフェイスロックが天下を取ったとちょっと感動したものだ。
三沢のフェイスロックは顔面を極める威力もさることながら、マットに座る相手の片腕を足でフックして、抵抗を許さず逃げにくくすると同時に、首を捻じ切るような負荷も与えていた。つまりストレッチプラム的ダメージがあるわけで、一種の複合技と言えなくもない。
木戸や三沢がやる如く、フェイスロックは見せ方によっては圧倒的迫力が出るのだが、どうしてもしりもちをついたように座る相手に覆いかぶさるように極めるため、地味な印象をどうも拭えない。だが実際は効く技であるために、多くの複合技を生むことになる。
前述した蝶野のSTF(ステップオーバー・トーホールド・ウィズフェイスロック)やナガタロック2などはその花形だろう。フェイスロックと同時に足や腕を極めることで拷問技的雰囲気を出す。しかし、フェイスロックに焦点がいかなくなるのはこれはいたし方ないところ。
ナガタロック2などはフェイスロックであるのかどうかも怪しい。フェイスロックという技は前述の通り顔面の急所を極める技であるが、ナガタロックは相手の左腕を両足で挟んで、うつぶせの相手に乗っかるようにして顔面に腕を回すため、顔面締めの印象が薄い。それでも顔の急所に引っかかっていればフェイスロックなのだろうけれども、どちらかと言うと顔面に腕を回して上体を反らす、つまりキャメルクラッチ的要素の方が強く見えるときもある。顔面締めと上体反らしの複合技と言えばそれまでだが。この技は、クリス・ベノワのクロスフェイスに酷似しており、また邪道の「クロスフェイス・オブ・JADO」もそうだが、やはり上体反らしに主眼があるようにも思える。キャメルクラッチの変形とも言えなくもない。
TAKAみちのくのジャストフェイスロックも上体をグッと反らせて締める。これはフェイスロックと名乗っているのだがやっぱりキャメルクラッチ的である。TAKAみちのく氏は最近自分のブログで「フェイスをロックしていない」ことを認め(笑)、「ジャストフェースロック2006」という技を編み出した。どんな技かと言えば僕は未見なので説明出来ない。是非記事を読んでいただきたい。→TAKAみちのくの独り言「ジャストフェースロック2006」 しかし読んでもよくイメージがわかない。すみません(汗)。
さて、フェイスロックよりも有名なフェイスロックがある、とチキンウィングフェイスロックのことを書き出そうと思ったのだが、もしかしたら若いファンには馴染みがないのかもしれないなぁと思い、時代の流れを思う。
この技を日本に定着させたのはUWFでありスーパータイガー(初代タイガーマスク)であるのは間違いないが、それも20年以上前の話だ。第一次UWFの、ラッシャー木村や剛竜馬が抜け、藤原、高田、木戸、山崎らが参戦し、蜜月期、そしてタイガーと前田が対立したりして崩壊するそのつかの間の時間(全盛時は一年間くらいか)に、日本中で流行った技であったと思うのだが(言いすぎかな)。第一次UWFの期間ずっとチキンウィングフェイスロックが使われていたかと言えばそうではなく、タイガーも後期はあまり使用しなくなっていたし、崩壊後、新日参戦の頃はUWFと言えばアキレス腱固めが代名詞のようになっていた。チキンウィングフェイスロックの時代は極めて短い。しかしこれほど短期間にファンを捉えた技も少ないのではないか。もうUWFと言っても「なんの話?」と言われるご時世ではあるけれども。
チキンウィングフェイスロックとは、チキンウィングとフェイスロックの複合技であるのだが(当たり前だ)、実に文章で説明がしにくい。相手の背後に回って左腕を相手の後手になった片腕の肘下に差込み上部に引き上げるようにして極め(チキンウィング)、右腕を相手顔面に回してフェイスロックを極めて、その極めている自分の左右の手を相手の肩口あたりでクラッチする…ああうまく書けない。検索していただければ画像がいくらでも出てくるので参照してください(丸投げ)。いかに拷問技であるのかがわかっていただけると思う。
むろんこの技はそれ以前からも使われていて、僕はボブ・バックランドが使ったのを見たことがある。立ち姿勢で掛け、両手をクラッチ出来ず中途半端であったがギブアップを奪っていた。また現在もUWF系のレスラーが多少使用しているらしいが、残念ながら廃れたと言っていいのではないか。実に痛さが見た目でわかる技であり、誰か使えばいいのになぁと思うのだが。カッキーなんか似合うのにと思っていたら引退。これほど一世を風靡した技なのに、と実に惜しく思うのである。
最近TVでプロレスを見ていると、永田のナガタロックや蝶野のSTFなどがフィニッシュとして幅を利かせている。よく見ればこれらはみんなフェイスロックを含んだ複合技なのだけれども、単独でフェイスロックを使用しているレスラーも多い。
フェイスロックという技はつまり「顔面固め」である。これは拷問技ではあるが道場技であって、僕がプロレスを見始めた頃はあまり脚光を浴びる技ではなかった。もちろん「地味」であるからであろう。両腕で顔面を締め付ける技であり、痛そうだが動きがない。繋ぎ技として、ダメージを蓄積させるには実に有効だが、さすがにフィニッシュには結びつかない技だった。
先日、桜庭和志がTVでフェイスロックの解説をやっていた。右腕(左腕でもそりゃいいのだが)の下腕部分を顔面の急所に押し付けて締め上げる。ヘッドロックの項でも書いたが、頬骨の下には急所があり、そこを締め付けられると涙が出るほど痛い(by佐山聡)。その部分、もしくは鼻の下(ここも急所)に腕を押し付けて引き付けるように締める。桜庭は右腕で急所を極め、左腕はスリーパーホールドをかけるように後頭部に添えて後ろから顔面を押すようにする。スリーパーが顎の下ではなくてちょっと外れて顔面に入っている感じか。後方から体重と共に腕力で押し付けるのでまさに拷問であるが、これは総合格闘技式フェイスロック。プロレスでは後頭部にあまり手を回さない。やはり見た目がスリーパーと混同してしまうからだろう。
フェイスロックがいかに恐ろしい技であるかの伝説として、猪木のvsパク・ソンナン戦がある。謎の多い試合と言われ、TV中継もなく僕ももちろん見たわけではないが、例の「目をくり抜いた」と言われる試合である(実際には指が目に入ったがもちろんくり抜いてなどいない)。約30年前に韓国で行われたこの試合で、猪木はパク・ソンナンにフェイスロックを仕掛け、締め抜いてパクの前歯が唇を突き破って飛び出してしまったと言う。ちょっと鳥肌が立つ。
そんなキラー猪木伝説はともかく、僕がフェイスロックを見てこりゃ凄いなと思ったのは木戸修のそれだった。新日を出てUWFに身を投じ、また新日に帰ってきた木戸だったが、UWFは関節技を主体にしていた団体でもあり、出戻りの頃も地味なフェイスロックを多用していた。
まあしかしその締め付けのえげつなかった事。ありゃあ涙が出るだろうな。記憶で書いて申し訳ないが、木戸は両手を相手の顔面の前でクラッチし、手首あたりの骨を相手の顔面の急所にめり込ませるようにして(佐山式ヘッドロックの要領です)、脇を締め自分の体でサンドイッチ状態にして極めていた。じっくりじっくりと締め上げる姿はまさに職人で、そもそも地味な木戸には似合っていた。拷問技とはこういうものかと認識させてくれたように思う。
さて、フェイスロックに一躍脚光を浴びさせたのは三沢光晴である。ジャンボ鶴田をギブアップさせたことでも有名であり、ついにフェイスロックが天下を取ったとちょっと感動したものだ。
三沢のフェイスロックは顔面を極める威力もさることながら、マットに座る相手の片腕を足でフックして、抵抗を許さず逃げにくくすると同時に、首を捻じ切るような負荷も与えていた。つまりストレッチプラム的ダメージがあるわけで、一種の複合技と言えなくもない。
木戸や三沢がやる如く、フェイスロックは見せ方によっては圧倒的迫力が出るのだが、どうしてもしりもちをついたように座る相手に覆いかぶさるように極めるため、地味な印象をどうも拭えない。だが実際は効く技であるために、多くの複合技を生むことになる。
前述した蝶野のSTF(ステップオーバー・トーホールド・ウィズフェイスロック)やナガタロック2などはその花形だろう。フェイスロックと同時に足や腕を極めることで拷問技的雰囲気を出す。しかし、フェイスロックに焦点がいかなくなるのはこれはいたし方ないところ。
ナガタロック2などはフェイスロックであるのかどうかも怪しい。フェイスロックという技は前述の通り顔面の急所を極める技であるが、ナガタロックは相手の左腕を両足で挟んで、うつぶせの相手に乗っかるようにして顔面に腕を回すため、顔面締めの印象が薄い。それでも顔の急所に引っかかっていればフェイスロックなのだろうけれども、どちらかと言うと顔面に腕を回して上体を反らす、つまりキャメルクラッチ的要素の方が強く見えるときもある。顔面締めと上体反らしの複合技と言えばそれまでだが。この技は、クリス・ベノワのクロスフェイスに酷似しており、また邪道の「クロスフェイス・オブ・JADO」もそうだが、やはり上体反らしに主眼があるようにも思える。キャメルクラッチの変形とも言えなくもない。
TAKAみちのくのジャストフェイスロックも上体をグッと反らせて締める。これはフェイスロックと名乗っているのだがやっぱりキャメルクラッチ的である。TAKAみちのく氏は最近自分のブログで「フェイスをロックしていない」ことを認め(笑)、「ジャストフェースロック2006」という技を編み出した。どんな技かと言えば僕は未見なので説明出来ない。是非記事を読んでいただきたい。→TAKAみちのくの独り言「ジャストフェースロック2006」 しかし読んでもよくイメージがわかない。すみません(汗)。
さて、フェイスロックよりも有名なフェイスロックがある、とチキンウィングフェイスロックのことを書き出そうと思ったのだが、もしかしたら若いファンには馴染みがないのかもしれないなぁと思い、時代の流れを思う。
この技を日本に定着させたのはUWFでありスーパータイガー(初代タイガーマスク)であるのは間違いないが、それも20年以上前の話だ。第一次UWFの、ラッシャー木村や剛竜馬が抜け、藤原、高田、木戸、山崎らが参戦し、蜜月期、そしてタイガーと前田が対立したりして崩壊するそのつかの間の時間(全盛時は一年間くらいか)に、日本中で流行った技であったと思うのだが(言いすぎかな)。第一次UWFの期間ずっとチキンウィングフェイスロックが使われていたかと言えばそうではなく、タイガーも後期はあまり使用しなくなっていたし、崩壊後、新日参戦の頃はUWFと言えばアキレス腱固めが代名詞のようになっていた。チキンウィングフェイスロックの時代は極めて短い。しかしこれほど短期間にファンを捉えた技も少ないのではないか。もうUWFと言っても「なんの話?」と言われるご時世ではあるけれども。
チキンウィングフェイスロックとは、チキンウィングとフェイスロックの複合技であるのだが(当たり前だ)、実に文章で説明がしにくい。相手の背後に回って左腕を相手の後手になった片腕の肘下に差込み上部に引き上げるようにして極め(チキンウィング)、右腕を相手顔面に回してフェイスロックを極めて、その極めている自分の左右の手を相手の肩口あたりでクラッチする…ああうまく書けない。検索していただければ画像がいくらでも出てくるので参照してください(丸投げ)。いかに拷問技であるのかがわかっていただけると思う。
むろんこの技はそれ以前からも使われていて、僕はボブ・バックランドが使ったのを見たことがある。立ち姿勢で掛け、両手をクラッチ出来ず中途半端であったがギブアップを奪っていた。また現在もUWF系のレスラーが多少使用しているらしいが、残念ながら廃れたと言っていいのではないか。実に痛さが見た目でわかる技であり、誰か使えばいいのになぁと思うのだが。カッキーなんか似合うのにと思っていたら引退。これほど一世を風靡した技なのに、と実に惜しく思うのである。
僕はタックルという技が好きで、いいタックルが出てくると思わず喝采をしてしまうほどだ。中西学というレスラーが好きだからタックルが好きなのかとも考えたりもするが。
しかしながら、タックルという技の定義はどこにあるのかと自問するとまだ迷ってしまう。「身体ごと相手にぶつかってダメージを与える」ということを定義としてもいいのだけれど、例えば曙がコーナーに相手を押し込んでぶつかっていく「ぶちかまし」は「ボディプレス」と言うべきでタックルとは違うような気もする。じゃ胸や腹を全面に出してぶつかればボディプレスで肩口からぶつかればタックルか? いやそればかりではない。どう考えていいのかわからないので雰囲気で書いていくことにする。
このタックルという技がどこから派生したのかを考えると、その多様性がわかる。アメフト。ラグビー。レスリング。相撲。それぞれに違ったタックルがある。目的も違う。
これは言ってしまえば単純な技なので、昔から連綿と受け継がれてきたものだろう。相手に身体でぶつかって倒す、ということは、ダウンをまず目標とするプロレスでは基本だろう。
このタックルをフォール技にまで高めたのは、レオ・ノメリーニであることは有名な話だ。力道山がアメリカ遠征で75戦して3敗しかしなかったという伝説があるが、この3敗の相手が「赤サソリ」タム・ライス、「鋼鉄男」フレッド・アトキンス、そしてこの弾丸タックルのノメリーニである。ノメリーニはそもそもアメフトの選手で、そのタックルがどんなものだったかはある程度想像がつく。
「想像がつく」などと書いていて自分でも情けないのだが、僕はノメリーニの試合を見たことがないのだ。ちょっと恥ずかしい。見たい見たいと思ってはいるのだが(探せばプロレス名勝負集なんてDVDは売ってるだろう)まだ未見である。ただ、よくわからないのは、いろいろな資料にはノメリーニの必殺技は「フライングタックル」と書かれていて、つまり相手にジャンプして飛び掛っていったということなのだろうか? また、写真資料ではよくノメリーニは出てくるのだが、どうもタックルのインパクトの写真がない。よくあるのは、相手をぶち倒したあと片手を上部に上げている写真で(わかりにくくてすみません)、これだとちょっとアメフト式タックルには見えず、またフライングにも見えず…結局よくわかんないのです。
アメフト式タックルで思い出すのは僕の世代ではやはりスタン・ハンセンとブルーザー・ブロディのツープラトン攻撃で、両者ともアメフトのスター選手だったことからよくタッグでタックル攻撃をした。あの人間離れした男達が二人してぶつかっていくわけで、その衝突力は凄まじいものだっただろう。たいていやられた方は吹っ飛んでいた。僕はタックルと言えばあの肩口からぶつかる突進型のショルダータックルをすぐ想像する。
対して、アマレス式タックルというのは、相手に衝撃を与えるというより倒すことを主眼としている。肩口からぶつかるというより、相手の下半身を狙って両脚をすくう様に仕掛ける。総合格闘技でも時々見られる。やはりアマレス出身者が得意とする技で、ボブ・バックランドなどは相手の足元にすっと入り込んでダウンを奪っていた。(話がそれるが、バックランドが全盛期を過ぎてUWFに参戦した時、タックルにいこうとして体勢低く前に出る度に相手に蹴りを打たれ、顔面出血していた。あれは悲しかったな。)
ラグビー式のタックルも相手をマットに倒すことが主眼なので、アマレスと似た感じになるだろう。阿修羅原はタックルをやっていたかな? 話がヘンな方向にいくけれども、東三四郎が(いきなりコミックですが)柔道の試合で柳相手にタックル一本で攻める場面があった。あれが好き(笑)。あれは結局柔道の「双手刈り」になるわけで、うまくやれば相手の後頭部をマットに叩きつけることになる。
しかし、ノメリーニ以降、タックルは繋ぎ技であり、フォールを奪う技という位置づけではなかった。突進型のレスラーはいいタックルを見せたが、それでフォールというわけではない。テイクダウン目的か、ダメージ蓄積のために放っていた。
ところが昨今このタックルは(昨今でもないか)、フォールを狙える技としての位置づけに進化した。「スピアー」と呼ばれる技の登場である。
普通のショルダータックルよりも低い体勢で飛び込み、しかもアマレス式のようにテイクダウンを目的とするものでなく、肩口から相手の腹部を目がけて一直線にタックルをかます。肩でやるキチン・シンク、いや加速が加わるだけにさらに衝突力が増す。スピアーとは槍の意味だが、確かに投げ放たれた槍のような威力がある。
新日のG1リーグ戦(あれ、何年だったかな)で、鈴木健想が安田忠夫に決めたスピアーを記憶している人は多いだろう。入場曲が終り、田中アナのコールも終りゴングが鳴っても、宮本武蔵を決め込んでなかなか現われない鈴木。カウントが始まり、相手の安田がイラついてリング下の棚橋と丁々発止をやっているときに鈴木が走ってリングに飛び込み、いきなりスピアーをかました。安田はそのままフォールを奪われてしまった。これは一分に満たず秒殺であったはずである。衝撃が伝わったのではないか。
このスピアー、海外ではビル・ゴールドバーグがやる。スピアーからジャックハマーへの流れは最も得意とするところだ。希望を言えば、ブレーンバスターに見えて実は高角度ボディスラムであるジャックハマーでフォールを奪うより、スピアーで決めてくれればいいのになあ。
日本では杉浦貢がよくやるが、何と言っても中西学である。杉浦もいいのだけれど、やはり体重とパワーで勝る中西のスピアーはド迫力である。中西のスピアーを最初に見たとき(その時はまだスピアーという名前は浸透していなかったように思うが。高速タックルだったかと)、全身に鳥肌が立つような興奮を覚えた。この破壊力、この衝突力! これはプロレス史上に残る必殺技になる可能性がある、とそのとき感じた。
しかしながら…。中西のタックル、つまりスピアーは残念ながら繋ぎ技の域を出ていない。いいと思うんだけどなあ。中西はアルゼンチンバックブリーカーに拘って、タッグマッチでカットが入って決まらないのにすぐに相手を担ごうとする。いや、アルゼンチンが悪いと言っているわけではない。ありゃ確かに凄い技だ。しかしながら、あの強力アルゼンチンはシングルの、しかもタイトルマッチに伝家の宝刀として抜くのが相応しいようにも思う(タイガー・ジェット・シンのアルゼンチンのように)。また中西は最近、ヘラクレスカッターというアルゼンチンの派生技をフィニッシュホールドにしていて、こういう技も使えるのだぞとアタマの良さを誇示しているようにも思えるが、確かにヘラクレスカッターもいいけれどそれでアルゼンチンの神話が崩れていくのも確かなのだよ。アルゼンチンじゃ決まらない、と自ら示しているようにも見えてしまうぞ。
タックルを使えよ中西ぃ。あんたの相手のハラにぶちかますタックルは実は一撃必殺の可能性があるぞ。ラリアートとかを重ねていくよりも、いいチョップも持っているのだし、ブルドッキングヘッドロックで相手を弱らせ、棒立ちになったところに弾丸タックル一閃! これであんたのパワーはめちゃくちゃアピール出来るぞ。もう年齢的にあとがないことでもあるし、強い中西をもっと見せて欲しいと心から願うのである。マナバウアーってなんだよ。泣けてくる。
なお、スピアーという名称はオシャレすぎて。ノメリーニの頃の「弾丸タックル」という名称の方が無骨な感じがして僕は好き。余計なことですが。
しかしながら、タックルという技の定義はどこにあるのかと自問するとまだ迷ってしまう。「身体ごと相手にぶつかってダメージを与える」ということを定義としてもいいのだけれど、例えば曙がコーナーに相手を押し込んでぶつかっていく「ぶちかまし」は「ボディプレス」と言うべきでタックルとは違うような気もする。じゃ胸や腹を全面に出してぶつかればボディプレスで肩口からぶつかればタックルか? いやそればかりではない。どう考えていいのかわからないので雰囲気で書いていくことにする。
このタックルという技がどこから派生したのかを考えると、その多様性がわかる。アメフト。ラグビー。レスリング。相撲。それぞれに違ったタックルがある。目的も違う。
これは言ってしまえば単純な技なので、昔から連綿と受け継がれてきたものだろう。相手に身体でぶつかって倒す、ということは、ダウンをまず目標とするプロレスでは基本だろう。
このタックルをフォール技にまで高めたのは、レオ・ノメリーニであることは有名な話だ。力道山がアメリカ遠征で75戦して3敗しかしなかったという伝説があるが、この3敗の相手が「赤サソリ」タム・ライス、「鋼鉄男」フレッド・アトキンス、そしてこの弾丸タックルのノメリーニである。ノメリーニはそもそもアメフトの選手で、そのタックルがどんなものだったかはある程度想像がつく。
「想像がつく」などと書いていて自分でも情けないのだが、僕はノメリーニの試合を見たことがないのだ。ちょっと恥ずかしい。見たい見たいと思ってはいるのだが(探せばプロレス名勝負集なんてDVDは売ってるだろう)まだ未見である。ただ、よくわからないのは、いろいろな資料にはノメリーニの必殺技は「フライングタックル」と書かれていて、つまり相手にジャンプして飛び掛っていったということなのだろうか? また、写真資料ではよくノメリーニは出てくるのだが、どうもタックルのインパクトの写真がない。よくあるのは、相手をぶち倒したあと片手を上部に上げている写真で(わかりにくくてすみません)、これだとちょっとアメフト式タックルには見えず、またフライングにも見えず…結局よくわかんないのです。
アメフト式タックルで思い出すのは僕の世代ではやはりスタン・ハンセンとブルーザー・ブロディのツープラトン攻撃で、両者ともアメフトのスター選手だったことからよくタッグでタックル攻撃をした。あの人間離れした男達が二人してぶつかっていくわけで、その衝突力は凄まじいものだっただろう。たいていやられた方は吹っ飛んでいた。僕はタックルと言えばあの肩口からぶつかる突進型のショルダータックルをすぐ想像する。
対して、アマレス式タックルというのは、相手に衝撃を与えるというより倒すことを主眼としている。肩口からぶつかるというより、相手の下半身を狙って両脚をすくう様に仕掛ける。総合格闘技でも時々見られる。やはりアマレス出身者が得意とする技で、ボブ・バックランドなどは相手の足元にすっと入り込んでダウンを奪っていた。(話がそれるが、バックランドが全盛期を過ぎてUWFに参戦した時、タックルにいこうとして体勢低く前に出る度に相手に蹴りを打たれ、顔面出血していた。あれは悲しかったな。)
ラグビー式のタックルも相手をマットに倒すことが主眼なので、アマレスと似た感じになるだろう。阿修羅原はタックルをやっていたかな? 話がヘンな方向にいくけれども、東三四郎が(いきなりコミックですが)柔道の試合で柳相手にタックル一本で攻める場面があった。あれが好き(笑)。あれは結局柔道の「双手刈り」になるわけで、うまくやれば相手の後頭部をマットに叩きつけることになる。
しかし、ノメリーニ以降、タックルは繋ぎ技であり、フォールを奪う技という位置づけではなかった。突進型のレスラーはいいタックルを見せたが、それでフォールというわけではない。テイクダウン目的か、ダメージ蓄積のために放っていた。
ところが昨今このタックルは(昨今でもないか)、フォールを狙える技としての位置づけに進化した。「スピアー」と呼ばれる技の登場である。
普通のショルダータックルよりも低い体勢で飛び込み、しかもアマレス式のようにテイクダウンを目的とするものでなく、肩口から相手の腹部を目がけて一直線にタックルをかます。肩でやるキチン・シンク、いや加速が加わるだけにさらに衝突力が増す。スピアーとは槍の意味だが、確かに投げ放たれた槍のような威力がある。
新日のG1リーグ戦(あれ、何年だったかな)で、鈴木健想が安田忠夫に決めたスピアーを記憶している人は多いだろう。入場曲が終り、田中アナのコールも終りゴングが鳴っても、宮本武蔵を決め込んでなかなか現われない鈴木。カウントが始まり、相手の安田がイラついてリング下の棚橋と丁々発止をやっているときに鈴木が走ってリングに飛び込み、いきなりスピアーをかました。安田はそのままフォールを奪われてしまった。これは一分に満たず秒殺であったはずである。衝撃が伝わったのではないか。
このスピアー、海外ではビル・ゴールドバーグがやる。スピアーからジャックハマーへの流れは最も得意とするところだ。希望を言えば、ブレーンバスターに見えて実は高角度ボディスラムであるジャックハマーでフォールを奪うより、スピアーで決めてくれればいいのになあ。
日本では杉浦貢がよくやるが、何と言っても中西学である。杉浦もいいのだけれど、やはり体重とパワーで勝る中西のスピアーはド迫力である。中西のスピアーを最初に見たとき(その時はまだスピアーという名前は浸透していなかったように思うが。高速タックルだったかと)、全身に鳥肌が立つような興奮を覚えた。この破壊力、この衝突力! これはプロレス史上に残る必殺技になる可能性がある、とそのとき感じた。
しかしながら…。中西のタックル、つまりスピアーは残念ながら繋ぎ技の域を出ていない。いいと思うんだけどなあ。中西はアルゼンチンバックブリーカーに拘って、タッグマッチでカットが入って決まらないのにすぐに相手を担ごうとする。いや、アルゼンチンが悪いと言っているわけではない。ありゃ確かに凄い技だ。しかしながら、あの強力アルゼンチンはシングルの、しかもタイトルマッチに伝家の宝刀として抜くのが相応しいようにも思う(タイガー・ジェット・シンのアルゼンチンのように)。また中西は最近、ヘラクレスカッターというアルゼンチンの派生技をフィニッシュホールドにしていて、こういう技も使えるのだぞとアタマの良さを誇示しているようにも思えるが、確かにヘラクレスカッターもいいけれどそれでアルゼンチンの神話が崩れていくのも確かなのだよ。アルゼンチンじゃ決まらない、と自ら示しているようにも見えてしまうぞ。
タックルを使えよ中西ぃ。あんたの相手のハラにぶちかますタックルは実は一撃必殺の可能性があるぞ。ラリアートとかを重ねていくよりも、いいチョップも持っているのだし、ブルドッキングヘッドロックで相手を弱らせ、棒立ちになったところに弾丸タックル一閃! これであんたのパワーはめちゃくちゃアピール出来るぞ。もう年齢的にあとがないことでもあるし、強い中西をもっと見せて欲しいと心から願うのである。マナバウアーってなんだよ。泣けてくる。
なお、スピアーという名称はオシャレすぎて。ノメリーニの頃の「弾丸タックル」という名称の方が無骨な感じがして僕は好き。余計なことですが。
ノアの武道館での試合(2006/3/5)のTV中継を関西地方では今頃やっていた。プロレスというものは結果を知っていても楽しめるので何日後であっても痛痒感はさほど感じない。
さて、三沢光晴vs森嶋猛の試合を楽しんで見た。見ていて面白いのはやはり森嶋のトンパチぶりで、解説の高山が「テリーゴディみたいだな」と言っていたが、まさにそんな感じで全身で三沢にぶつかっていたのは気持ちがよかった。
ただ、森嶋の攻撃がラリアートに偏っていたのは「ああまたこればっかり」と最初は閉口したものの、そのうちに気にならなくなった。こういうものなのかもしれない、という諦めの気持ちより前に気になったのは、「森嶋はこのラリアートという技をどういうふうにとらえているのだろうか」ということだった。
僕はプロレスが好きで、こうしていくつかプロレス技の記事を書いているのだけれども、ウエスタンラリアートについて書くことは今まで避けていた。
なんで避けていたかと言えば、それはご想像どおりだと思うけれども、僕もご多分に漏れず「猫も杓子もラリアート」に飽いていたからである。ラリアートを絶対にやらない、というだけでそのレスラーを好きになったりする。やらないことがもはや個性だ。それほど多くのレスラーがやる。なので、ラリアートについて書くことは愚痴になる。また、僕にとっては意外なのだが、ラリアートという技が好きな人は結構多いのである。なので、書いても反感を買うだけ、という意識もあった。
この技の元祖はもちろんスタン・ハンセンであることは誰もが知っている。
ハンセンは、初来日は全日だったが、花開いたのは猪木率いる新日登場からである。当時の触れ込みは「MSGでブルーノ・サンマルチノの首をへし折った男」。もちろん実際にへし折ったら死んじゃってるし怪我をさせたということであるが、その「へし折った」必殺技がラリアートであると言われた(実際はラリアートで怪我をしたのではないらしいが、とにかくそういう触れ込みだった)。
この技はハンセンが元祖、と書いたが、似たような技はもちろんあった。「クロスライン」「クローズライン」とかよく呼ばれている。伸ばした腕を首に当てる、ということは単純なことなのでちょっとした拍子にそうなっちゃうこともあるだろう。ただハンセンはその圧倒的な腕力と突進力でこれを必殺技とした。ただ伸ばした腕を首に当てるのではなく、喉笛を腕でぶん殴るという勢いで、そりゃやられたら悶絶だろう。この技は牧童が牛などの家畜を捕まえるために使う投げ縄(lariat)から名づけられていて、かつてプロフットボーラーだったハンセンが、相手をブロックするためのタックルが発展したものと言うのが定説であるが、他にも、例えば馬場さんのネックブリーカードロップをヒントにしたとか、様々なことが言われている。
とにかくこの技は衝撃的だった。とにかく一撃必殺。ハンセンは殴ったりエルボーをぶちかましたりするのは全て右腕でやる。黒いサポーターをはめた左腕は攻撃には使わない。そして最後の最後、十分に相手を痛めつけフォールを取る段階において、相手をロープに振り左のサポーターをくっと引き上げる。伝家の宝刀を抜く瞬間である。実に格好いい。そして相手の首目がけて腕を一閃。もはやこの技を喰らったら何人たりとも起き上がれはしないのだ。
これほど必殺技らしい必殺技はなかった。もちろん他に使うレスラーはおらず(猪木の"逆"ラリアートは別として)、ハンセンの独壇場。むろんハンセンだから、あの腕だから必殺技足りうるのであって、とてもその域に達するレスラーはおらず追随出来なかったというのが本当のところだろう。
だが、封印は解かれるときが来る。誰が最初に掟を破ったのか。海外事情もあるのでよくわからないが、日本では犯人はわかっている。新日では長州力、全日では阿修羅原である。
この二人は、それぞれの団体で最もハンセンのラリアートを受けたレスラーとして、言わば体感して会得した、ということになっている。
長州のラリアートを最初に見たときは、「お、ついにやったか」という感覚だった。まだこの時は現在の「猫も杓子もラリアート」という状態になるとは予想していない。僕の感覚では是でもなく非でもなかった。
ただ、もう少し長州は批判されてもよかったのではないか。長州はまず、ラリアートを一撃必殺の最高峰の技にはしていない。長州の中では、バックドロップ、サソリ固めと並ぶ三大得意技の一つだった。ここに、まずその後のラリアートの堕落の萌芽が見て取れる。徐々に僕は長州のラリアートを苦々しく思うようになった。
次に、長州は一試合で何発もラリアートを放った。ハンセンが一撃必殺を重要視し、その左腕はエルボーも打たず最後に宝刀を抜くためにとっておく、とするように大事に大事に爆発させてきた技なのに、長州はいとも簡単に何度も放つ。神秘性が完全に失われる。水戸黄門は一度しか印籠は出さないしウルトラマンはスペシウム光線を最後にしか出さない。これでこそ値打ちがあるはずなのに。
そして、長州は自分でラリアートを放ちながら、自分の腕を痛めてしまっている場面を見かけることがある。ここに至っては言語道断(とまで言うと長州ファンは怒るだろうな)であると僕は思った。
こうしてラリアート伝説は死んでしまったのである。
リキラリアートだのヒットマンラリアートだの、亜流がどんどん生まれ、「ジャンボラリアット」が出るに至っては「なんでなんだー」と叫びたいほどだった。完全に痛め技に堕落した。この技は残念なことに単純であるのが致命傷だったのかもしれない。誰でも出来る。もちろんハンセンの腕力、タイミング、そしてなにより立ち昇る"匂い"のようなものは誰も真似出来なかったわけであるが。
もうだから、やらないことが偉い。闘魂三銃士はやらなかった。ハンセンへのリスペクトか没個性になりたくなかったのか。
さて、冒頭に戻る。森嶋のラリアートを見ていて思ったのは、明らかに森嶋はラリアートを「痛め技」として使っていることだ。最初からガンガン使っているしフォールに行こうともしない。これを見ながら、森嶋は果たして何歳だったっけ? ということが頭に浮かんだ。
レスラー名鑑を見ると、森嶋は1978年生まれ、まだ27歳である。若いんだな。
ということは、森嶋がもう物心ついたときには既に長州はリキラリアートをばんばん放っていたわけだし、プロレスに興味を持ち始めたころは既にマット界は「猫も杓子も」の時代だっただろう。森嶋はラリアートを痛め技としてしか認識していないに相違ない。森嶋の入門時にハンセンはまだ現役だったのだが、その頃はもう引退間近でかつてのハンセンではなかった。
もう歴史は動いている。1サイクルも2サイクルも回っているのだ。おそらく僕よりももっと上のプロレスファンはこういう苦々しい思いをずっとしてきたのに違いない。ルーテーズのバックドロップを知るファンは、そのバックドロップを誰もがやり、しかも「抱え投げ」といった邪道が同じバックドロップという名称で呼ばれることに対して激しく怒りを覚えただろう。カールゴッチのジャーマンスープレックスを知るファンは、現在のろくにブリッジもしない「投げっぱなし」ばかりの痛め技ジャーマンに対してはたまらない思いだろう。歴史は繰り返してきたのだ。今の若いプロレスファンであれば、武藤や蝶野がラリアートを断固としてやらない姿はむしろ奇異に映っているかもしれないのか。
もはや僕は諦めた。ハンセンのラリアートの記憶は絶対に忘れたくはないが、偏見を持つのは控えなくてはならないのだろう。小橋の剛腕ラリアート。小橋は今日本で一番強いと思うし、他の技を使えばもっと映えるのにとも思うのだが、小橋のショートレンジラリアートがあそこまで支持されているという事実。また小島聡のハンセン直伝と呼ばれるラリアート。僕はなぜそこまで小島がラリアートに拘るのかがよくわからないのだがこれもファンの圧倒的支持を受けている。そういう時代なのだ。
僕の好きなプロレスの姿はそこにはないかもしれない。ただ、森嶋のトンパチな腕のぶん回しを見ていると多少の希望も持てる。彼の面構えはいい。人形師辻村ジュサブローが金太郎さんを作ったら森嶋そっくりになるのではないか。彼がもし、ラリアートを封印するようなことになったら、森嶋は日本を背負って立つレスラーになれるのではないか。頑張れよ。中西みたいにならないでくれ(なんで?)。
さて、三沢光晴vs森嶋猛の試合を楽しんで見た。見ていて面白いのはやはり森嶋のトンパチぶりで、解説の高山が「テリーゴディみたいだな」と言っていたが、まさにそんな感じで全身で三沢にぶつかっていたのは気持ちがよかった。
ただ、森嶋の攻撃がラリアートに偏っていたのは「ああまたこればっかり」と最初は閉口したものの、そのうちに気にならなくなった。こういうものなのかもしれない、という諦めの気持ちより前に気になったのは、「森嶋はこのラリアートという技をどういうふうにとらえているのだろうか」ということだった。
僕はプロレスが好きで、こうしていくつかプロレス技の記事を書いているのだけれども、ウエスタンラリアートについて書くことは今まで避けていた。
なんで避けていたかと言えば、それはご想像どおりだと思うけれども、僕もご多分に漏れず「猫も杓子もラリアート」に飽いていたからである。ラリアートを絶対にやらない、というだけでそのレスラーを好きになったりする。やらないことがもはや個性だ。それほど多くのレスラーがやる。なので、ラリアートについて書くことは愚痴になる。また、僕にとっては意外なのだが、ラリアートという技が好きな人は結構多いのである。なので、書いても反感を買うだけ、という意識もあった。
この技の元祖はもちろんスタン・ハンセンであることは誰もが知っている。
ハンセンは、初来日は全日だったが、花開いたのは猪木率いる新日登場からである。当時の触れ込みは「MSGでブルーノ・サンマルチノの首をへし折った男」。もちろん実際にへし折ったら死んじゃってるし怪我をさせたということであるが、その「へし折った」必殺技がラリアートであると言われた(実際はラリアートで怪我をしたのではないらしいが、とにかくそういう触れ込みだった)。
この技はハンセンが元祖、と書いたが、似たような技はもちろんあった。「クロスライン」「クローズライン」とかよく呼ばれている。伸ばした腕を首に当てる、ということは単純なことなのでちょっとした拍子にそうなっちゃうこともあるだろう。ただハンセンはその圧倒的な腕力と突進力でこれを必殺技とした。ただ伸ばした腕を首に当てるのではなく、喉笛を腕でぶん殴るという勢いで、そりゃやられたら悶絶だろう。この技は牧童が牛などの家畜を捕まえるために使う投げ縄(lariat)から名づけられていて、かつてプロフットボーラーだったハンセンが、相手をブロックするためのタックルが発展したものと言うのが定説であるが、他にも、例えば馬場さんのネックブリーカードロップをヒントにしたとか、様々なことが言われている。
とにかくこの技は衝撃的だった。とにかく一撃必殺。ハンセンは殴ったりエルボーをぶちかましたりするのは全て右腕でやる。黒いサポーターをはめた左腕は攻撃には使わない。そして最後の最後、十分に相手を痛めつけフォールを取る段階において、相手をロープに振り左のサポーターをくっと引き上げる。伝家の宝刀を抜く瞬間である。実に格好いい。そして相手の首目がけて腕を一閃。もはやこの技を喰らったら何人たりとも起き上がれはしないのだ。
これほど必殺技らしい必殺技はなかった。もちろん他に使うレスラーはおらず(猪木の"逆"ラリアートは別として)、ハンセンの独壇場。むろんハンセンだから、あの腕だから必殺技足りうるのであって、とてもその域に達するレスラーはおらず追随出来なかったというのが本当のところだろう。
だが、封印は解かれるときが来る。誰が最初に掟を破ったのか。海外事情もあるのでよくわからないが、日本では犯人はわかっている。新日では長州力、全日では阿修羅原である。
この二人は、それぞれの団体で最もハンセンのラリアートを受けたレスラーとして、言わば体感して会得した、ということになっている。
長州のラリアートを最初に見たときは、「お、ついにやったか」という感覚だった。まだこの時は現在の「猫も杓子もラリアート」という状態になるとは予想していない。僕の感覚では是でもなく非でもなかった。
ただ、もう少し長州は批判されてもよかったのではないか。長州はまず、ラリアートを一撃必殺の最高峰の技にはしていない。長州の中では、バックドロップ、サソリ固めと並ぶ三大得意技の一つだった。ここに、まずその後のラリアートの堕落の萌芽が見て取れる。徐々に僕は長州のラリアートを苦々しく思うようになった。
次に、長州は一試合で何発もラリアートを放った。ハンセンが一撃必殺を重要視し、その左腕はエルボーも打たず最後に宝刀を抜くためにとっておく、とするように大事に大事に爆発させてきた技なのに、長州はいとも簡単に何度も放つ。神秘性が完全に失われる。水戸黄門は一度しか印籠は出さないしウルトラマンはスペシウム光線を最後にしか出さない。これでこそ値打ちがあるはずなのに。
そして、長州は自分でラリアートを放ちながら、自分の腕を痛めてしまっている場面を見かけることがある。ここに至っては言語道断(とまで言うと長州ファンは怒るだろうな)であると僕は思った。
こうしてラリアート伝説は死んでしまったのである。
リキラリアートだのヒットマンラリアートだの、亜流がどんどん生まれ、「ジャンボラリアット」が出るに至っては「なんでなんだー」と叫びたいほどだった。完全に痛め技に堕落した。この技は残念なことに単純であるのが致命傷だったのかもしれない。誰でも出来る。もちろんハンセンの腕力、タイミング、そしてなにより立ち昇る"匂い"のようなものは誰も真似出来なかったわけであるが。
もうだから、やらないことが偉い。闘魂三銃士はやらなかった。ハンセンへのリスペクトか没個性になりたくなかったのか。
さて、冒頭に戻る。森嶋のラリアートを見ていて思ったのは、明らかに森嶋はラリアートを「痛め技」として使っていることだ。最初からガンガン使っているしフォールに行こうともしない。これを見ながら、森嶋は果たして何歳だったっけ? ということが頭に浮かんだ。
レスラー名鑑を見ると、森嶋は1978年生まれ、まだ27歳である。若いんだな。
ということは、森嶋がもう物心ついたときには既に長州はリキラリアートをばんばん放っていたわけだし、プロレスに興味を持ち始めたころは既にマット界は「猫も杓子も」の時代だっただろう。森嶋はラリアートを痛め技としてしか認識していないに相違ない。森嶋の入門時にハンセンはまだ現役だったのだが、その頃はもう引退間近でかつてのハンセンではなかった。
もう歴史は動いている。1サイクルも2サイクルも回っているのだ。おそらく僕よりももっと上のプロレスファンはこういう苦々しい思いをずっとしてきたのに違いない。ルーテーズのバックドロップを知るファンは、そのバックドロップを誰もがやり、しかも「抱え投げ」といった邪道が同じバックドロップという名称で呼ばれることに対して激しく怒りを覚えただろう。カールゴッチのジャーマンスープレックスを知るファンは、現在のろくにブリッジもしない「投げっぱなし」ばかりの痛め技ジャーマンに対してはたまらない思いだろう。歴史は繰り返してきたのだ。今の若いプロレスファンであれば、武藤や蝶野がラリアートを断固としてやらない姿はむしろ奇異に映っているかもしれないのか。
もはや僕は諦めた。ハンセンのラリアートの記憶は絶対に忘れたくはないが、偏見を持つのは控えなくてはならないのだろう。小橋の剛腕ラリアート。小橋は今日本で一番強いと思うし、他の技を使えばもっと映えるのにとも思うのだが、小橋のショートレンジラリアートがあそこまで支持されているという事実。また小島聡のハンセン直伝と呼ばれるラリアート。僕はなぜそこまで小島がラリアートに拘るのかがよくわからないのだがこれもファンの圧倒的支持を受けている。そういう時代なのだ。
僕の好きなプロレスの姿はそこにはないかもしれない。ただ、森嶋のトンパチな腕のぶん回しを見ていると多少の希望も持てる。彼の面構えはいい。人形師辻村ジュサブローが金太郎さんを作ったら森嶋そっくりになるのではないか。彼がもし、ラリアートを封印するようなことになったら、森嶋は日本を背負って立つレスラーになれるのではないか。頑張れよ。中西みたいにならないでくれ(なんで?)。
ブロック・レスナーの「バーディクト(F5)」という技には、説得力がないと僕は思っている。
これは一種の爆弾発言かもしれないし、お前はプロレスの見方がなっていない、と言われればそれまでなのだけれども。
これは、実際に効く、効かないはもちろん僕は受けたこともないしわからない。そりゃ効くのかもしれない。ただ、どう効いているのかについてがよくわからないのだ。その意味での「説得力がない」である。
この技は、相手をエアプレン・スピンの状態で担ぎ上げ回転する。回転と言ってもエアプレン・スピンのようにぐるぐる回すわけではない。勢いをつける目的である。そして、ロックを離し相手をうつ伏せの状態のままマットに叩きつける。レスナーはでかいので、まあ2階から落とされるような状況だろう。しかしただ落とすだけなら相手もプロレスラーであり受身を取るのでさほどのダメージはない。このバーディクトの主眼は、これがフェイスバスターであることにある。相手をマットに落とす時に、自らも倒れ込みながら相手の頭を腕でマットに叩きつけるようにする。ここで、フェイスバスターとしてのダメージを加えるのである。このようにバーディクトは普通フェイスバスターの亜種であると言われ、そこにノックアウト技の価値が生まれる。
しかしながら、新日本プロレスに登場して以来のレスナーをTVで見ていると、どうもちゃんとフェイスをバスターしていない。本来であれば、エアプレンスピンから相手を空中に放り出し、相手がマットに落下するその間にレスナーは体勢を入れ替えて相手の後頭部をしっかりと腕でロックし、頭部に体重をかけて落とし、顔面をマットに叩きつければならない。そうすればフェイスバスターの完成である。しかしながら、バーディクトは旋回させるために遠心力が加わり、自らも倒れこまなくてはならないために空中で頭部をロックするという作業がいつも完全に出来ていないように見える。頭部に自らの体重を乗せないと相手は普通受身が取れるのでさほどダメージを与えられないのではないか。
これは、エアプレンスピンの状態で既に相手の頭部をロックしているのに、回転して投げることでそのロックを一旦外し、さらに空中でロックしなおすという作業が加わることによる弊害である。無理がある技なのだ。相手をエアプレン状態に担ぎ上げて頭部を落とす技は、小橋のバーニングハンマーや高岩のデスバレーボムがある。いかにも効きそうだ。これは受身がとれない。しかしバーディクトは、受身の余地がある。前述のように完全に決まれば凄いが、なかなか無理があって決まらない。
余談になるが、これに似た技に中西のヘラクレスカッターがある。これはバーディクトとは逆に相手をアルゼンチンバックブリーカーの状態に担ぎ上げ、やはり旋回して落とす。相手は背中から落下するが、その時やはり相手の頭部をロックするようにして体重をかけ、後頭部を打ち付ける。こっちはネックブリーカードロップになる。この場合、相手が落ちる際上向きなので、遠心力でうまく相手のアゴに腕が引っかかる。なのでうまくロックできるが、バーディクトは下向きなので引っかかる部分がない(後頭部なので)。なのでロックが出来ないのだ。
(※F5についてはコメント欄のWWE_FANさんのお話を参照)
かと言ってバーディクトという技が嫌いだと言っているのではない。怪力レスナーに似合う派手な技だと思っている。ただ、これが不完全なフェイスバスターであるために、フィニッシュとするには(?)なのだ。もっと豪腕を活かした技の方がいいのに。
そもそも、フェイスバスターという技はどんな技なのだろうと考えてみる。端的に言えば、相手の顔面をマットに叩きつける技だ。顔面には凹凸があり、マットに叩きつけると痛そうだ(汗)。鼻の骨が折れそうな感がある。
顔面砕きがフェイスバスターであり、厳密な技の定義はないと言ってもいいのではないか。ドリル・ア・ホールパイルドライバーの体勢で、脳天を落とすのではなく前に落とす。ブレーンバスターの要領で相手を持ち上げ、後方ないし垂直に落とすのではなく前方に落とす。いずれも顔面砕きとなる。後方に落とすと、後頭部と背中を打ち付ける技となるが、前方に落とすと顔面砕きになる。これは、前方に落とすということによってマットと自分の体の距離感が把握しやすいので、「胸と腹を打ち付ける」ことになりにくいからだろう。ただ頭部をロックしているので顔面は叩きつけられてしまう。こうやって考えると、マットに自分の顔が叩きつけられるのが見えるわけで、恐怖感は凄いものがあるだろう。
吉江のやる、カナディアンバックブリーカーの体勢から前方へ倒す、リバースオクラホマスタンピートのようなカナディアンハンマーも顔面砕きになる。この場合、吉江は相手の頭部をロックしているわけではないが、吉江の腹が後頭部からのしかかってくるわけで(怖)、160㎏の体重が顔面を押し潰す。普通は鼻の骨が折れますな。
もっと端的に顔面だけを打ち付ける技もある。カーフブランディング(仔牛の焼印押し)もネックブリーカーの要素と共にフェイスバスターである。あれが完璧に決まれば顔面は破壊される。ダブルアーム式フェースバスターというのもある。ダブルアームスープレックスで投げるように持ち上げて前方へ落とす。タイガードライバーの前倒しと言ってもいい。これは両腕ロックなので怖い。
いちばん端的な技はフェイスクラッシャーである。武藤敬司は、相手をコーナーに叩きつけエルボーを放った後、相手の頭を掴んでマットの中央に走りこみ顔面を叩きつける。派手だ。以前にヘッドロックⅡで書いたが、ブルドッキングヘッドロックもフェイスクラッシャーに近い打ち方がある(アドリアン・アドニス等)。
これらを考えてみると、実際フェイスバスターは恐怖感たっぷりの技だが、あまりフィニッシュには結びついていないことがわかる。「痛め技」の範疇だ。難しい言い方になるけれども、本当に鼻の頭をマットに叩きつけたら怪我をしてしまう。鼻の骨など鍛えようがないからだ。ここには暗黙の了解があるのではないか。なのである程度の加減が必要となり(相手に怪我を負わせるのがプロレスの目的ではない)、結局フィニッシュには結びつかないことになるのではないだろうか(八百長論ではありません。僕はプロレス大好き)。
そうすると「バーディクト」は、実に珍しいフォールのとれるフェイスバスターということになるのだが、前述したようにフェイスバスターとしての説得力に欠ける(と、思う)。
レスナーが「フェイスクラッシャー」をやればもの凄いことになるのではないか。もちろん鼻の頭を叩きつけたら大怪我になるので、そこはうまくコントロールして前頭部をマットに叩きつける。あの豪腕でやればアタマはグラングランして、確実にフォールに結びつくのではないだろうか。少なくとも自然落下に頼るバーディクトよりも説得力は格段に生まれると思うのだがどうだろうか。
といいつつ、明日の両国での曙との一戦は楽しみでもある。レスナーが曙にバーディクトを仕掛けられるのか。曙相手であれば、あの215㎏の体重が自らを押し潰す。バーディクトにも説得力が生まれるだろう。
これは一種の爆弾発言かもしれないし、お前はプロレスの見方がなっていない、と言われればそれまでなのだけれども。
これは、実際に効く、効かないはもちろん僕は受けたこともないしわからない。そりゃ効くのかもしれない。ただ、どう効いているのかについてがよくわからないのだ。その意味での「説得力がない」である。
この技は、相手をエアプレン・スピンの状態で担ぎ上げ回転する。回転と言ってもエアプレン・スピンのようにぐるぐる回すわけではない。勢いをつける目的である。そして、ロックを離し相手をうつ伏せの状態のままマットに叩きつける。レスナーはでかいので、まあ2階から落とされるような状況だろう。しかしただ落とすだけなら相手もプロレスラーであり受身を取るのでさほどのダメージはない。このバーディクトの主眼は、これがフェイスバスターであることにある。相手をマットに落とす時に、自らも倒れ込みながら相手の頭を腕でマットに叩きつけるようにする。ここで、フェイスバスターとしてのダメージを加えるのである。このようにバーディクトは普通フェイスバスターの亜種であると言われ、そこにノックアウト技の価値が生まれる。
しかしながら、新日本プロレスに登場して以来のレスナーをTVで見ていると、どうもちゃんとフェイスをバスターしていない。本来であれば、エアプレンスピンから相手を空中に放り出し、相手がマットに落下するその間にレスナーは体勢を入れ替えて相手の後頭部をしっかりと腕でロックし、頭部に体重をかけて落とし、顔面をマットに叩きつければならない。そうすればフェイスバスターの完成である。しかしながら、バーディクトは旋回させるために遠心力が加わり、自らも倒れこまなくてはならないために空中で頭部をロックするという作業がいつも完全に出来ていないように見える。頭部に自らの体重を乗せないと相手は普通受身が取れるのでさほどダメージを与えられないのではないか。
これは、エアプレンスピンの状態で既に相手の頭部をロックしているのに、回転して投げることでそのロックを一旦外し、さらに空中でロックしなおすという作業が加わることによる弊害である。無理がある技なのだ。相手をエアプレン状態に担ぎ上げて頭部を落とす技は、小橋のバーニングハンマーや高岩のデスバレーボムがある。いかにも効きそうだ。これは受身がとれない。しかしバーディクトは、受身の余地がある。前述のように完全に決まれば凄いが、なかなか無理があって決まらない。
余談になるが、これに似た技に中西のヘラクレスカッターがある。これはバーディクトとは逆に相手をアルゼンチンバックブリーカーの状態に担ぎ上げ、やはり旋回して落とす。相手は背中から落下するが、その時やはり相手の頭部をロックするようにして体重をかけ、後頭部を打ち付ける。こっちはネックブリーカードロップになる。この場合、相手が落ちる際上向きなので、遠心力でうまく相手のアゴに腕が引っかかる。なのでうまくロックできるが、バーディクトは下向きなので引っかかる部分がない(後頭部なので)。なのでロックが出来ないのだ。
(※F5についてはコメント欄のWWE_FANさんのお話を参照)
かと言ってバーディクトという技が嫌いだと言っているのではない。怪力レスナーに似合う派手な技だと思っている。ただ、これが不完全なフェイスバスターであるために、フィニッシュとするには(?)なのだ。もっと豪腕を活かした技の方がいいのに。
そもそも、フェイスバスターという技はどんな技なのだろうと考えてみる。端的に言えば、相手の顔面をマットに叩きつける技だ。顔面には凹凸があり、マットに叩きつけると痛そうだ(汗)。鼻の骨が折れそうな感がある。
顔面砕きがフェイスバスターであり、厳密な技の定義はないと言ってもいいのではないか。ドリル・ア・ホールパイルドライバーの体勢で、脳天を落とすのではなく前に落とす。ブレーンバスターの要領で相手を持ち上げ、後方ないし垂直に落とすのではなく前方に落とす。いずれも顔面砕きとなる。後方に落とすと、後頭部と背中を打ち付ける技となるが、前方に落とすと顔面砕きになる。これは、前方に落とすということによってマットと自分の体の距離感が把握しやすいので、「胸と腹を打ち付ける」ことになりにくいからだろう。ただ頭部をロックしているので顔面は叩きつけられてしまう。こうやって考えると、マットに自分の顔が叩きつけられるのが見えるわけで、恐怖感は凄いものがあるだろう。
吉江のやる、カナディアンバックブリーカーの体勢から前方へ倒す、リバースオクラホマスタンピートのようなカナディアンハンマーも顔面砕きになる。この場合、吉江は相手の頭部をロックしているわけではないが、吉江の腹が後頭部からのしかかってくるわけで(怖)、160㎏の体重が顔面を押し潰す。普通は鼻の骨が折れますな。
もっと端的に顔面だけを打ち付ける技もある。カーフブランディング(仔牛の焼印押し)もネックブリーカーの要素と共にフェイスバスターである。あれが完璧に決まれば顔面は破壊される。ダブルアーム式フェースバスターというのもある。ダブルアームスープレックスで投げるように持ち上げて前方へ落とす。タイガードライバーの前倒しと言ってもいい。これは両腕ロックなので怖い。
いちばん端的な技はフェイスクラッシャーである。武藤敬司は、相手をコーナーに叩きつけエルボーを放った後、相手の頭を掴んでマットの中央に走りこみ顔面を叩きつける。派手だ。以前にヘッドロックⅡで書いたが、ブルドッキングヘッドロックもフェイスクラッシャーに近い打ち方がある(アドリアン・アドニス等)。
これらを考えてみると、実際フェイスバスターは恐怖感たっぷりの技だが、あまりフィニッシュには結びついていないことがわかる。「痛め技」の範疇だ。難しい言い方になるけれども、本当に鼻の頭をマットに叩きつけたら怪我をしてしまう。鼻の骨など鍛えようがないからだ。ここには暗黙の了解があるのではないか。なのである程度の加減が必要となり(相手に怪我を負わせるのがプロレスの目的ではない)、結局フィニッシュには結びつかないことになるのではないだろうか(八百長論ではありません。僕はプロレス大好き)。
そうすると「バーディクト」は、実に珍しいフォールのとれるフェイスバスターということになるのだが、前述したようにフェイスバスターとしての説得力に欠ける(と、思う)。
レスナーが「フェイスクラッシャー」をやればもの凄いことになるのではないか。もちろん鼻の頭を叩きつけたら大怪我になるので、そこはうまくコントロールして前頭部をマットに叩きつける。あの豪腕でやればアタマはグラングランして、確実にフォールに結びつくのではないだろうか。少なくとも自然落下に頼るバーディクトよりも説得力は格段に生まれると思うのだがどうだろうか。
といいつつ、明日の両国での曙との一戦は楽しみでもある。レスナーが曙にバーディクトを仕掛けられるのか。曙相手であれば、あの215㎏の体重が自らを押し潰す。バーディクトにも説得力が生まれるだろう。
"無我"西村修が新日本プロレスを離脱して"フリーバード"として自由なマットに戦場を求めた(2006/2月時点)。この名レスラーが新日を離れたということは、地上波で西村の試合を見る機会が激減したということで残念ではあるのだけれども、西村修の今後の活躍にエールを送りたい。
西村修というレスラーは、言ってみれば中堅レスラーである。派手なタイトル暦もないし(IWGPタッグくらいか)、メインを張ることも少なかった。しかしながら、外見も端正な顔立ちと均整の取れた身体、黒いタイツで個性を誇示することがなかったにもかかわらず、その実「超個性派レスラー」との印象が強い。それは彼の「頑固なレスリング姿勢」による。
個性を発揮しているのは珍しい技を使うからではない。それどころか、スタイルは全くのところ前時代的である。得意技はスピニングトーホールド、コブラツイスト、エルボースマッシュ、ドロップキックとクラシカルな技ばかりである。そういった技を頑固に使い続けることが逆に個性を生むという効果を生み出している。入場シーンからして古臭い。ロングガウンをしっかりと着込み、コールされると両手を上げて前に進む。ドリーファンクJrをはじめいにしえのレスラーの佇まいを彷彿とさせるスタイルにこだわり、天敵・長州力を「ラリアートプロレス」と切って捨てる。プロレス博物館に展示したいほどの戦いぶりは、かえって今の若いファンには新鮮に映じたかもしれない。
その西村修のフィニッシュホールドは、なんと「逆さ押さえ込み」である。
この逆さ押さえ込みという技、相手と背中合わせになって両腕を絡め、そのまま前方にかがむようにして相手を背中の上に乗せ、そして両肩をマットにつける。一瞬のフォール技である。相手にダメージを与えてノックアウト、あるいは立ち上がる気力を失わせて3カウントを奪うというプロレス技の真髄とはかけ離れた、ただカウントだけを奪うことを目的とした技である。
僕は、以前からこのブログで言い続けていることは、プロレスのフィニッシュ・ホールドというものは「ノックアウトを狙う技であって欲しい」ということである。なので、体固めで終わるのを至上としている。パワーボムもエビに固めてしまうのでは相手に余力があっても勝ってしまうように見えることから、叩きつけたあと体固めに移行して欲しいと思っている。あのプロレス最高の技と言われるジャーマンスープレックスホールドでさえ、そのまま固めてしまうということに少々の不満があり、バックドロップの方を上位に置く考えだ(バックドロップホールドは前述の理由で当然不満)。プロレスの必殺技というものは、相手をノックアウトするかあるいは立ち上がらせる気力を失わせるものであって欲しい。理由は、プロレスというものは相手の肩を3秒間マットにつけることを競うスポーツではなく、どっちが強いかを争う戦いであるからである。
然るに、リバースクラッチホールド、逆さ押さえ込みという技はその「相手の肩を3秒間マットにつける」ことだけを目的としているので、プロレス技としては邪道であると思っている。
こういう技は結構多い。ローリングクラッチホールド(回転エビ固め)。スモールパッケージホールド(小包首固め)。ジャパニーズ・レッグロールクラッチ(回転足折固め)。スクールボーイ(横回転エビ固め)。グラウンドコブラツイスト。ウラカン・ラナ。オースイスープレックス。いずれも相手がまだ戦う余力を残しているのに勝ってしまう。電光石火の決め技と言えば聞こえはいいが、「勝負に負けて試合に勝つ」的要素が強い、はっきり言えばつまらない技である。
この逆さ押さえ込みで印象に残る試合がいくつかある。まず1975年のNWF世界ヘビ-、猪木vsビル・ロビンソンである。白熱した試合の中で、ロビンソンは一瞬の隙を衝いて猪木を逆さ押さえ込みにとる。確かに電光石火。3カウントを奪われた猪木は「いったい何が起こったんだ」と言わんばかりにあたりを見回し、それを見ながらロビンソンが勝ち名乗り、という場面はよく憶えている。これでこの試合が終りならこれは凡戦という評価だったかもしれないが、名勝負たる所以はこの逆さ押さえ込みが複線であったという点にある。
試合は選手権試合であり三本勝負。猪木はこの"イレギュラー"で取られた一本を返さねばタイトルが移動する。ダブルアームスープレックスで負けたのなら観客も納得がいくのだが、こんな早技で決まってしまっては返す返すも残念、という気持ちを視聴者全員が持ったと思う。そしてタイムアップ寸前の猪木の卍固め。このドラマティックな展開は、猪木が逆さ押さえ込みで一本取られているからこそ生まれた。猪木よ、早く「逆さ押さえ込み」でひょいと取られた一本をなんとか返してくれ。こんなんでNWFが移動してはたまらない。人間風車やワンハンドバックブリーカーで猪木がフォールを奪われていたならこんな気持ちにはならなかったに相違ない。稀代の名レスラーであった二人が成し得た「逆さ押さえ込みの活かし方」であった。逆説的な活かし方である。
もうひとつ印象に残る逆さ押さえ込みは、あの1979年のプロレス・オールスター戦の馬場・猪木vsブッチャー・シンである。これが何故逆さ押さえ込みで決まって良かったのかは村松友視氏の名著「私プロレスの味方です」に詳細があるので繰り返しは避けたいが、確かにあのとき、この複雑な状況を解決するにはこの技しかなかったのである。これもまた逆説的な「一瞬の決め技」の活かし方であった。
こんな場合でないと「逆さ押さえ込み」という技は僕は評価できないと思っている。しかし、しかしこんな僕が、西村修の逆さ押さえ込みを心待ちにして試合を見るのである。いったいそれは何故か?
こんな話がある。「西村修の逆さ押さえ込みは普通の電光石火の返し技と違って、パワーボムを食らったようなダメージがある。だから返せないのだ」と。誰がこの発言をしたのか今ちょっと忘れてしまったのだが、なるほど高角度から逆さ押さえ込みを"落とせ"ば、それなりの効果は期待できる。相手をハイジャックバックブリーカーのように背中に乗せ一気に落とす。逆パワーボムである。そういう技は過去にあった。確かダイナマイト関西の「通天閣スペシャル」がそうである。後頭部をしたたか打つのでフォールに説得力が生まれる。
西村修の逆さ押さえ込みは単なる逆さ押さえ込みではない、ということなのか。いやしかし仮にそうであったとしても逆さ押さえ込みは逆さ押さえ込みである。その「後頭部を叩きつける」迫力は残念ながら伝わってこない。
では何故西村修の逆さ押さえ込みは映えるのか。それは西村の試合スタイルによるのだ。
西村修は完全に「受身」のレスラーである。中堅どころというポジションがそうさせるのか、相手の技を受けに受けまくる。やられっぱなしの印象がある試合も多い。しかし西村のレスラーとしての資質が実に優れている。まず異常に身体が柔らかい(だから「いかレスラー」なのだが)。なのでそうそう技が極まらない。そうして攻めに攻められ、見ている側に「判官贔屓」の心情が生まれる。西村がんばれ! ! そういう気持ちに観客がなった時に「逆さ押さえ込み」を出すのだ。相手の技を受けまくり、相手を「悪役」に思わせる術を持っている。だから一瞬の返し技で勝っても「やったぜ」と思ってしまうのだ。この試合運びの巧みさ。これは「相手の5の力を8か9まで引っ張り出して10の力で仕留める」猪木の「風車の理論」の応用系ではないか。猪木のような絶対的強さを持たない中堅レスラーであればこそ、こういう「逆さ押さえ込み」でドラマを作り出せる西村修の凄さが見て取れる。逆さ押さえ込みを活かせる稀有なレスラーではないか。そういえばフルタイムドローという試合を何度もやってみせてそこにドラマを生じさせるのも西村の得意とするところである。
西村にIWGPシングルを獲って欲しかった。そして、何度かリックフレアーばりに綱渡り防衛をして欲しかった。弱く見えても防衛に説得力を見出せるのは西村しかいない。こう言えば、人は僕を「お前は西村のマジックにかかっているのだ」と言うだろう。しかし、見ている人間をマジックにかけるレスラーなどそうはいない。
新日は西村を活かしきれず、とうとう西村は新天地を求めることとなった。頑張れ西村修。そのファイトスタイルを活かせるマットはどこかに必ずあるはずだ。そして西村でないと活かせない「逆さ押さえ込み」を使い続けて欲しい。
小技さんのHPに逆さ押さえ込みの掲載あります。イラスト参照してみてください。小技のプロレス画集に掲載されています。小技さん、またお世話になります。
西村修というレスラーは、言ってみれば中堅レスラーである。派手なタイトル暦もないし(IWGPタッグくらいか)、メインを張ることも少なかった。しかしながら、外見も端正な顔立ちと均整の取れた身体、黒いタイツで個性を誇示することがなかったにもかかわらず、その実「超個性派レスラー」との印象が強い。それは彼の「頑固なレスリング姿勢」による。
個性を発揮しているのは珍しい技を使うからではない。それどころか、スタイルは全くのところ前時代的である。得意技はスピニングトーホールド、コブラツイスト、エルボースマッシュ、ドロップキックとクラシカルな技ばかりである。そういった技を頑固に使い続けることが逆に個性を生むという効果を生み出している。入場シーンからして古臭い。ロングガウンをしっかりと着込み、コールされると両手を上げて前に進む。ドリーファンクJrをはじめいにしえのレスラーの佇まいを彷彿とさせるスタイルにこだわり、天敵・長州力を「ラリアートプロレス」と切って捨てる。プロレス博物館に展示したいほどの戦いぶりは、かえって今の若いファンには新鮮に映じたかもしれない。
その西村修のフィニッシュホールドは、なんと「逆さ押さえ込み」である。
この逆さ押さえ込みという技、相手と背中合わせになって両腕を絡め、そのまま前方にかがむようにして相手を背中の上に乗せ、そして両肩をマットにつける。一瞬のフォール技である。相手にダメージを与えてノックアウト、あるいは立ち上がる気力を失わせて3カウントを奪うというプロレス技の真髄とはかけ離れた、ただカウントだけを奪うことを目的とした技である。
僕は、以前からこのブログで言い続けていることは、プロレスのフィニッシュ・ホールドというものは「ノックアウトを狙う技であって欲しい」ということである。なので、体固めで終わるのを至上としている。パワーボムもエビに固めてしまうのでは相手に余力があっても勝ってしまうように見えることから、叩きつけたあと体固めに移行して欲しいと思っている。あのプロレス最高の技と言われるジャーマンスープレックスホールドでさえ、そのまま固めてしまうということに少々の不満があり、バックドロップの方を上位に置く考えだ(バックドロップホールドは前述の理由で当然不満)。プロレスの必殺技というものは、相手をノックアウトするかあるいは立ち上がらせる気力を失わせるものであって欲しい。理由は、プロレスというものは相手の肩を3秒間マットにつけることを競うスポーツではなく、どっちが強いかを争う戦いであるからである。
然るに、リバースクラッチホールド、逆さ押さえ込みという技はその「相手の肩を3秒間マットにつける」ことだけを目的としているので、プロレス技としては邪道であると思っている。
こういう技は結構多い。ローリングクラッチホールド(回転エビ固め)。スモールパッケージホールド(小包首固め)。ジャパニーズ・レッグロールクラッチ(回転足折固め)。スクールボーイ(横回転エビ固め)。グラウンドコブラツイスト。ウラカン・ラナ。オースイスープレックス。いずれも相手がまだ戦う余力を残しているのに勝ってしまう。電光石火の決め技と言えば聞こえはいいが、「勝負に負けて試合に勝つ」的要素が強い、はっきり言えばつまらない技である。
この逆さ押さえ込みで印象に残る試合がいくつかある。まず1975年のNWF世界ヘビ-、猪木vsビル・ロビンソンである。白熱した試合の中で、ロビンソンは一瞬の隙を衝いて猪木を逆さ押さえ込みにとる。確かに電光石火。3カウントを奪われた猪木は「いったい何が起こったんだ」と言わんばかりにあたりを見回し、それを見ながらロビンソンが勝ち名乗り、という場面はよく憶えている。これでこの試合が終りならこれは凡戦という評価だったかもしれないが、名勝負たる所以はこの逆さ押さえ込みが複線であったという点にある。
試合は選手権試合であり三本勝負。猪木はこの"イレギュラー"で取られた一本を返さねばタイトルが移動する。ダブルアームスープレックスで負けたのなら観客も納得がいくのだが、こんな早技で決まってしまっては返す返すも残念、という気持ちを視聴者全員が持ったと思う。そしてタイムアップ寸前の猪木の卍固め。このドラマティックな展開は、猪木が逆さ押さえ込みで一本取られているからこそ生まれた。猪木よ、早く「逆さ押さえ込み」でひょいと取られた一本をなんとか返してくれ。こんなんでNWFが移動してはたまらない。人間風車やワンハンドバックブリーカーで猪木がフォールを奪われていたならこんな気持ちにはならなかったに相違ない。稀代の名レスラーであった二人が成し得た「逆さ押さえ込みの活かし方」であった。逆説的な活かし方である。
もうひとつ印象に残る逆さ押さえ込みは、あの1979年のプロレス・オールスター戦の馬場・猪木vsブッチャー・シンである。これが何故逆さ押さえ込みで決まって良かったのかは村松友視氏の名著「私プロレスの味方です」に詳細があるので繰り返しは避けたいが、確かにあのとき、この複雑な状況を解決するにはこの技しかなかったのである。これもまた逆説的な「一瞬の決め技」の活かし方であった。
こんな場合でないと「逆さ押さえ込み」という技は僕は評価できないと思っている。しかし、しかしこんな僕が、西村修の逆さ押さえ込みを心待ちにして試合を見るのである。いったいそれは何故か?
こんな話がある。「西村修の逆さ押さえ込みは普通の電光石火の返し技と違って、パワーボムを食らったようなダメージがある。だから返せないのだ」と。誰がこの発言をしたのか今ちょっと忘れてしまったのだが、なるほど高角度から逆さ押さえ込みを"落とせ"ば、それなりの効果は期待できる。相手をハイジャックバックブリーカーのように背中に乗せ一気に落とす。逆パワーボムである。そういう技は過去にあった。確かダイナマイト関西の「通天閣スペシャル」がそうである。後頭部をしたたか打つのでフォールに説得力が生まれる。
西村修の逆さ押さえ込みは単なる逆さ押さえ込みではない、ということなのか。いやしかし仮にそうであったとしても逆さ押さえ込みは逆さ押さえ込みである。その「後頭部を叩きつける」迫力は残念ながら伝わってこない。
では何故西村修の逆さ押さえ込みは映えるのか。それは西村の試合スタイルによるのだ。
西村修は完全に「受身」のレスラーである。中堅どころというポジションがそうさせるのか、相手の技を受けに受けまくる。やられっぱなしの印象がある試合も多い。しかし西村のレスラーとしての資質が実に優れている。まず異常に身体が柔らかい(だから「いかレスラー」なのだが)。なのでそうそう技が極まらない。そうして攻めに攻められ、見ている側に「判官贔屓」の心情が生まれる。西村がんばれ! ! そういう気持ちに観客がなった時に「逆さ押さえ込み」を出すのだ。相手の技を受けまくり、相手を「悪役」に思わせる術を持っている。だから一瞬の返し技で勝っても「やったぜ」と思ってしまうのだ。この試合運びの巧みさ。これは「相手の5の力を8か9まで引っ張り出して10の力で仕留める」猪木の「風車の理論」の応用系ではないか。猪木のような絶対的強さを持たない中堅レスラーであればこそ、こういう「逆さ押さえ込み」でドラマを作り出せる西村修の凄さが見て取れる。逆さ押さえ込みを活かせる稀有なレスラーではないか。そういえばフルタイムドローという試合を何度もやってみせてそこにドラマを生じさせるのも西村の得意とするところである。
西村にIWGPシングルを獲って欲しかった。そして、何度かリックフレアーばりに綱渡り防衛をして欲しかった。弱く見えても防衛に説得力を見出せるのは西村しかいない。こう言えば、人は僕を「お前は西村のマジックにかかっているのだ」と言うだろう。しかし、見ている人間をマジックにかけるレスラーなどそうはいない。
新日は西村を活かしきれず、とうとう西村は新天地を求めることとなった。頑張れ西村修。そのファイトスタイルを活かせるマットはどこかに必ずあるはずだ。そして西村でないと活かせない「逆さ押さえ込み」を使い続けて欲しい。
小技さんのHPに逆さ押さえ込みの掲載あります。イラスト参照してみてください。小技のプロレス画集に掲載されています。小技さん、またお世話になります。
先日、TVのプロレス中継で若手の試合を放送していた。もうプロレス中継が深夜30分枠になってからはこういう試合はほとんど放送されず、そういった意味で嬉しい。ノアも新日本も若手が育っている。次代を担う若手達の溌剌とした姿は未来を感じさせてくれる。
新日本では若手を「ヤングライオン」と呼ぶ。後藤洋央紀、田口隆祐、長尾浩志、安沢明也らが懸命にアピールを繰り返す姿には見ていても力が入る。みんなここから育っていったのだ。
かつてのカール・ゴッチ杯。藤波が第一回優勝、そして藤原喜明、北沢幹之(魁勝司~レフリーになった)。小沢正志(キラーカーン)や木村健吾も居た。この後しばらく若手主体のカップ戦が行われなかったのは残念だが(佐山や前田や平田、そして高田や山崎の世代も見たかった)、10年後にヤングライオン杯となって復活する。第一回の優勝は小杉俊二だった。相手は山田恵一(現ライガー)。この時の本命の後藤達俊が怪我をして決勝に出られず、松葉杖で花道から悔しそうに観戦していた姿を今も思い出す。
時は流れてその後ヤングライオンは闘魂三銃士に、そして天山(当時は山本広吉だった)、小島、中西、石澤(カシン)、また永田、大谷、西村、高岩、吉江。また次は鈴木健三(健想)、棚橋、柴田、真壁。若手層が分厚いときでないとヤングライオン杯は開催されない。そういった意味では、現在の後藤や長尾の今後の伸長、そして下克上に非常に期待がかかる。がんばってくれぃ! !
ヤングライオンたちの試合を見ていて気分がいいのは、基本に忠実だということだ。いかにもプロレス技という基本技で堂々と勝負している。ボストンクラブ、ドロップキック、バックドロップ。長尾のチョークスラムや後藤の回天もあるが、それらはほんの一部である。基本技の中で凄みを見せようとしている。いいなあ。
その中で目立った技のひとつに、腕ひしぎ逆十字固めがある。うーん、もうこの技もプロレス技の基本なのだよなあ。
プロレスの基本関節技と言えば、それはトーホールドであったりハンマーロックであったりするのだと古い世代の僕は思うのだけれども、この逆十字固めも完全に基本技として定着した。この技を見て、なんだか流行技のように見えてしまう感覚と言うのは相当古いと言わざるを得ないだろう。
もっとも、この腕ひしぎ逆十字固め、ルーツはかなり古い。それはそうで、元々は柔道の関節技である。相手の腕を挟むようにして両脚で身体を押さえつけ、相手の腕を伸ばしてヒジを逆関節に極める。相手の腕が伸びきったらそれで極まり。ヘタをするとヒジを脱臼したり靱帯断裂もする怖ろしい技である。
これは柔道はもちろん、古来柔術からロシアのサンボにまで応用され利用されている。プロレスでもかなり古くから道場では基本技として使われていたと言われるが、脚光を浴びたのはそんなに古いことでもない。僕が知らないだけなのかもしれないけれど、プロレスのリングで僕が最初に見たのは、「赤鬼」ウィリアム・ルスカの技である。
猪木の異種格闘技戦vsルスカ。これは相当に凄い試合だった。ルスカは五輪金メダリストであり、見るからに強そうだった。村松友視氏が言う「ルスカは最強だった」説。プロレスのリングではルスカの払い腰も威力が軽減されてしまう。不利な条件で、しかも他の格闘家たちが譲らなかったラウンド制でもなく長時間の戦いをしたルスカ。相手の土俵で戦った男の中の男と言っていいかもしれない。アリとはそこが違う。
ルスカとは二試合やったが、前述の理由で投げが通じにくいと判断してか、関節技を出してきた。これが僕がはじめて見た腕ひしぎ十字固めだった。
猪木の腕は伸びきり、もう脱臼かあるいは折れるしかないという場面で、猪木は腕の負荷を少しでも軽減しようとブリッジで耐えていく。今でも名場面だと思う。
この試合で猪木は腕ひしぎ十字固めの威力をまざまざと思い知ったのだろう。この技を猪木も取り入れていく。本来、見た目は地味な技である。寝転がってかける技であり見栄えはしない。しかし、この「ルスカの伝説」によってこの技の価値が飛躍的に上がったのだと思う。説得力を持った技は輝く。猪木がやはり異種格闘技戦で、ウイリー・ウィリアムスに場外でかけた逆十字固めは様々な憶測を生み、また伝説を上塗りした。
さて、なにげなく呼んでいるこの「腕ひしぎ逆十字固め」、不思議なことに気が付く。なんで「逆」なのだろう? と。
柔道技としては正式には「腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)」である。逆ではない。相手がうつ伏せの状態で極めると「裏十字固め」と呼ばれることはあるが、逆十字ではない。なんでプロレスでは「逆」と呼ばれるのか。
答えはよくわからない。知っている方がいれば教えて欲しい。ただ僕の推測だが、これは「掟破りの逆サソリ」の逆なのかもしれないなあと言うこと。猪木がスタンハンセンに驚きのラリアートをかました時、それは「逆ラリアート」と呼ばれた。相手の得意技を逆手にとって使う場合に使用する「逆」。これが、ルスカの十字固めを盗み取った猪木が使う「逆十字」であったのかもしれない。古館伊知郎がいかにも言いそうなネーミングである。これが定着してしまったのでは? と推測する。でもこれは僕の推測であって本当のところは知りません。
その後、猪木は盛大にこの技を使い出す。ラッシャー木村の腕をブランブランにさせた衝撃の場面も憶えている。それに伴い、猪木以外の選手もどんどん使い出すようになった。
関節技の宝庫、UWFで重要な技とされたことがこの技の流行に拍車をかけたように思われる。かかったら最後、という拷問技としてもっとも脚光を浴びた時代ではなかったのだろうか。
そうしているうちに、二流レスラーも使い出し徐々に痛め技になっていく。驚いたのは、馬場さんが逆十字を使ったことだ(馬場さんはもちろん二流ではない)。
PWFスタンハンセン戦で、馬場さんはハンセンのラリアート殺しで左腕にアームブリーカーを何度も仕掛け、そのあげくにハンセンを逆十字固めにとった。実況アナウンサーが「またアームブリーカー、そして、ダブルアーム! !」などと言う意味不明の実況をしたことを記憶している。ダブルアームとは笑止だが、それだけ全日本プロレスではこの技が使われていなかった証拠だろう。そのあとさすがにダブルアームはおかしいと思ったか「アームバーです!」と叫んだ。アームバーとは十字固めを指す場合もあるが、多くは腕を引っ張る技を言う。混乱しているらしい。後にアナウンサーは狼狽から立ち直って「腕ひしぎ。これは柔道の技です」と訂正していたが。腕ひしぎ"逆十字"と言わずわざわざ柔道技とことわったところに当時の新日と全日の対立構造が見えて面白いし、馬場さんが猪木の必殺技である逆十字固めを痛め技として使ったところにも深遠な部分が見え隠れする。
馬場さんまで使えばもう解禁である。みんなが使う技となった。
この技でちょっと驚いたのは、ソ連のレスリング軍団が新日本に乗り込んだ際、ザンギエフが使った「飛びつき逆十字固め」である。相手を倒さないとかけられなかった逆十字固めが、立ち状態でもかけられる。これは画期的だったしなによりカッコよかった。レスリングの技ではないだろう。おそらく「サンボ」からの応用ではないだろうか。
現在「ビクトル式逆十字固め」という技がある。ケンドー・カシンが得意とし、前述の後藤洋央紀も使う。飛びついて倒すだけではなく相手の肩に乗って相手を一回転させて極める。綺麗な技なのだが、これはビクトル・ザンギエフのビクトルなのか? しかし相手を前方回転してテイクダウンさせる「ビクトル投げ」という技があり(これはサンボの大御所ビクトル古賀から)、どっちからかよく知らない。形状から言えばビクトル古賀っぽいが。あれ、飛びつき逆十字ってウラジミール・ベルコビッチだったっけ? 記憶がだんだん曖昧になってきたので追究をやめる。
「ビクトル式逆十字固め」もそうだが、入り方で様々に分類されるようにもなった。「ミノルスペシャル」というのもある。田中稔もこんな言い方しないでよ。もう書き解くのは大儀だ。「ミノルスペシャル2」もある。ノーザンライトスープレックスと連動している。
次世代のエース中邑真輔も三角絞めとともに逆十字固めをフィニッシュにしている。中邑は「スタンド式逆十字固め」を使う。相手が立っていようがお構いナシだ。ヘビー級では寝かせるのも大変なので、それなら立ったまま仕掛けてしまえ、という技。
逆十字固めは現在も隆盛である。ビシッと極まれば必殺。ルスカ以来のもはや伝統技である。中途半端には使わないように願っている。
小技さんのブログに腕ひしぎ逆十字固めの掲載あります。イラスト参照してみてください。中邑真輔のスタンド式逆十字固めはこちら♪ また通常の逆十字固めは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。
小技さん、最近はお仕事もお忙しく、妖精などバリエーション豊かなイラストが多いのですが、それはもちろん素晴らしくて感嘆していますけれどもまたお時間があればプロレス技の画もお願いします~♪
新日本では若手を「ヤングライオン」と呼ぶ。後藤洋央紀、田口隆祐、長尾浩志、安沢明也らが懸命にアピールを繰り返す姿には見ていても力が入る。みんなここから育っていったのだ。
かつてのカール・ゴッチ杯。藤波が第一回優勝、そして藤原喜明、北沢幹之(魁勝司~レフリーになった)。小沢正志(キラーカーン)や木村健吾も居た。この後しばらく若手主体のカップ戦が行われなかったのは残念だが(佐山や前田や平田、そして高田や山崎の世代も見たかった)、10年後にヤングライオン杯となって復活する。第一回の優勝は小杉俊二だった。相手は山田恵一(現ライガー)。この時の本命の後藤達俊が怪我をして決勝に出られず、松葉杖で花道から悔しそうに観戦していた姿を今も思い出す。
時は流れてその後ヤングライオンは闘魂三銃士に、そして天山(当時は山本広吉だった)、小島、中西、石澤(カシン)、また永田、大谷、西村、高岩、吉江。また次は鈴木健三(健想)、棚橋、柴田、真壁。若手層が分厚いときでないとヤングライオン杯は開催されない。そういった意味では、現在の後藤や長尾の今後の伸長、そして下克上に非常に期待がかかる。がんばってくれぃ! !
ヤングライオンたちの試合を見ていて気分がいいのは、基本に忠実だということだ。いかにもプロレス技という基本技で堂々と勝負している。ボストンクラブ、ドロップキック、バックドロップ。長尾のチョークスラムや後藤の回天もあるが、それらはほんの一部である。基本技の中で凄みを見せようとしている。いいなあ。
その中で目立った技のひとつに、腕ひしぎ逆十字固めがある。うーん、もうこの技もプロレス技の基本なのだよなあ。
プロレスの基本関節技と言えば、それはトーホールドであったりハンマーロックであったりするのだと古い世代の僕は思うのだけれども、この逆十字固めも完全に基本技として定着した。この技を見て、なんだか流行技のように見えてしまう感覚と言うのは相当古いと言わざるを得ないだろう。
もっとも、この腕ひしぎ逆十字固め、ルーツはかなり古い。それはそうで、元々は柔道の関節技である。相手の腕を挟むようにして両脚で身体を押さえつけ、相手の腕を伸ばしてヒジを逆関節に極める。相手の腕が伸びきったらそれで極まり。ヘタをするとヒジを脱臼したり靱帯断裂もする怖ろしい技である。
これは柔道はもちろん、古来柔術からロシアのサンボにまで応用され利用されている。プロレスでもかなり古くから道場では基本技として使われていたと言われるが、脚光を浴びたのはそんなに古いことでもない。僕が知らないだけなのかもしれないけれど、プロレスのリングで僕が最初に見たのは、「赤鬼」ウィリアム・ルスカの技である。
猪木の異種格闘技戦vsルスカ。これは相当に凄い試合だった。ルスカは五輪金メダリストであり、見るからに強そうだった。村松友視氏が言う「ルスカは最強だった」説。プロレスのリングではルスカの払い腰も威力が軽減されてしまう。不利な条件で、しかも他の格闘家たちが譲らなかったラウンド制でもなく長時間の戦いをしたルスカ。相手の土俵で戦った男の中の男と言っていいかもしれない。アリとはそこが違う。
ルスカとは二試合やったが、前述の理由で投げが通じにくいと判断してか、関節技を出してきた。これが僕がはじめて見た腕ひしぎ十字固めだった。
猪木の腕は伸びきり、もう脱臼かあるいは折れるしかないという場面で、猪木は腕の負荷を少しでも軽減しようとブリッジで耐えていく。今でも名場面だと思う。
この試合で猪木は腕ひしぎ十字固めの威力をまざまざと思い知ったのだろう。この技を猪木も取り入れていく。本来、見た目は地味な技である。寝転がってかける技であり見栄えはしない。しかし、この「ルスカの伝説」によってこの技の価値が飛躍的に上がったのだと思う。説得力を持った技は輝く。猪木がやはり異種格闘技戦で、ウイリー・ウィリアムスに場外でかけた逆十字固めは様々な憶測を生み、また伝説を上塗りした。
さて、なにげなく呼んでいるこの「腕ひしぎ逆十字固め」、不思議なことに気が付く。なんで「逆」なのだろう? と。
柔道技としては正式には「腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)」である。逆ではない。相手がうつ伏せの状態で極めると「裏十字固め」と呼ばれることはあるが、逆十字ではない。なんでプロレスでは「逆」と呼ばれるのか。
答えはよくわからない。知っている方がいれば教えて欲しい。ただ僕の推測だが、これは「掟破りの逆サソリ」の逆なのかもしれないなあと言うこと。猪木がスタンハンセンに驚きのラリアートをかました時、それは「逆ラリアート」と呼ばれた。相手の得意技を逆手にとって使う場合に使用する「逆」。これが、ルスカの十字固めを盗み取った猪木が使う「逆十字」であったのかもしれない。古館伊知郎がいかにも言いそうなネーミングである。これが定着してしまったのでは? と推測する。でもこれは僕の推測であって本当のところは知りません。
その後、猪木は盛大にこの技を使い出す。ラッシャー木村の腕をブランブランにさせた衝撃の場面も憶えている。それに伴い、猪木以外の選手もどんどん使い出すようになった。
関節技の宝庫、UWFで重要な技とされたことがこの技の流行に拍車をかけたように思われる。かかったら最後、という拷問技としてもっとも脚光を浴びた時代ではなかったのだろうか。
そうしているうちに、二流レスラーも使い出し徐々に痛め技になっていく。驚いたのは、馬場さんが逆十字を使ったことだ(馬場さんはもちろん二流ではない)。
PWFスタンハンセン戦で、馬場さんはハンセンのラリアート殺しで左腕にアームブリーカーを何度も仕掛け、そのあげくにハンセンを逆十字固めにとった。実況アナウンサーが「またアームブリーカー、そして、ダブルアーム! !」などと言う意味不明の実況をしたことを記憶している。ダブルアームとは笑止だが、それだけ全日本プロレスではこの技が使われていなかった証拠だろう。そのあとさすがにダブルアームはおかしいと思ったか「アームバーです!」と叫んだ。アームバーとは十字固めを指す場合もあるが、多くは腕を引っ張る技を言う。混乱しているらしい。後にアナウンサーは狼狽から立ち直って「腕ひしぎ。これは柔道の技です」と訂正していたが。腕ひしぎ"逆十字"と言わずわざわざ柔道技とことわったところに当時の新日と全日の対立構造が見えて面白いし、馬場さんが猪木の必殺技である逆十字固めを痛め技として使ったところにも深遠な部分が見え隠れする。
馬場さんまで使えばもう解禁である。みんなが使う技となった。
この技でちょっと驚いたのは、ソ連のレスリング軍団が新日本に乗り込んだ際、ザンギエフが使った「飛びつき逆十字固め」である。相手を倒さないとかけられなかった逆十字固めが、立ち状態でもかけられる。これは画期的だったしなによりカッコよかった。レスリングの技ではないだろう。おそらく「サンボ」からの応用ではないだろうか。
現在「ビクトル式逆十字固め」という技がある。ケンドー・カシンが得意とし、前述の後藤洋央紀も使う。飛びついて倒すだけではなく相手の肩に乗って相手を一回転させて極める。綺麗な技なのだが、これはビクトル・ザンギエフのビクトルなのか? しかし相手を前方回転してテイクダウンさせる「ビクトル投げ」という技があり(これはサンボの大御所ビクトル古賀から)、どっちからかよく知らない。形状から言えばビクトル古賀っぽいが。あれ、飛びつき逆十字ってウラジミール・ベルコビッチだったっけ? 記憶がだんだん曖昧になってきたので追究をやめる。
「ビクトル式逆十字固め」もそうだが、入り方で様々に分類されるようにもなった。「ミノルスペシャル」というのもある。田中稔もこんな言い方しないでよ。もう書き解くのは大儀だ。「ミノルスペシャル2」もある。ノーザンライトスープレックスと連動している。
次世代のエース中邑真輔も三角絞めとともに逆十字固めをフィニッシュにしている。中邑は「スタンド式逆十字固め」を使う。相手が立っていようがお構いナシだ。ヘビー級では寝かせるのも大変なので、それなら立ったまま仕掛けてしまえ、という技。
逆十字固めは現在も隆盛である。ビシッと極まれば必殺。ルスカ以来のもはや伝統技である。中途半端には使わないように願っている。
小技さんのブログに腕ひしぎ逆十字固めの掲載あります。イラスト参照してみてください。中邑真輔のスタンド式逆十字固めはこちら♪ また通常の逆十字固めは、小技さんの素晴らしいHP小技のプロレス画集に掲載されています。
小技さん、最近はお仕事もお忙しく、妖精などバリエーション豊かなイラストが多いのですが、それはもちろん素晴らしくて感嘆していますけれどもまたお時間があればプロレス技の画もお願いします~♪