先日コブラツイストについて記事を書いたが、この卍固めはその改良版と言っていいだろう。
伝説では、ジャイアント馬場がコブラツイストを使用しだしたのを見て、更に上をいく必殺技を編みださんとしてカールゴッチと練り上げ、卍固めをマスターしたといわれている。ゴッチ直伝という触れ込みで、当初オクトパスホールド(蛸固めですな)と発表され、後に一般公募で卍固めと命名された。上手いネーミングだ。蛸固めじゃあ如何になんでも厳しい。猪木のスペシャルホールドとして、アントニオ・スペシャルとも言われる。
しかし、これはやはり伝説らしい。ヨーロッパではわりに古くから使われていた技で、ゴッチ&猪木考案というわけではないらしい。
だが猪木が最も多用しポピュラーにしたことは事実で、猪木がいなければ埋もれていたに違いない。
猪木は実にこの技を大事に使う。ほぼタイトルマッチ或いは大一番、しかもフィニッシュとしてでないと使わない。濫用しないのがそのレスラーとしてのセンスだろう。
旧日本プロレスのワールドリーグ戦でクリス・マルコフを破り優勝したときの卍固めが有名だがこれはさすがに古くて見ていない。印象に残るのはビル・ロビンソンとのNWF世界ヘビー級選手権試合。この伝説の60分フルタイムドローで猪木が防衛した試合で、ロビンソンは後半、逆さ押さえ込みで一本とる。このままでいけばタイトル移動となるそのタイムアップ間近、猪木は卍固めをロビンソンに掛ける。ロビンソンが耐え切ればタイトル移動だったが、そのとき猪木は掛けた卍固めの重心を後ろにぐっと落した。つまりお尻をマットに近づけたわけで、それによってさらにロビンソンの首に負荷が増し、堪らずあと1分を切ったところでギブアップをしてしまう。1-1でドロー。スリリングな幕切れだった。
このロビンソン戦の重心を下げた卍固めは猪木の中でもベストだと思う。全体重が首に圧しかかりたまったものではない。これが本当の卍固めであると思う。
卍固めは、猪木の個性が最大限に発揮された技であり追随しようとするレスラーはあまりいなかった。大木金太郎が嫌がらせのように使用したこともあったが(元祖「掟破り」ですね)、全く別物であり常時使うには至らなかった。
猪木より後輩のレスラーではとても遠慮して使用できなかっただろう。しかし、天龍源一郎というレスラーは、猪木と別団体であることをいいことに卍固めを常用するという暴挙に出る。
余談になってしまうが書かずにはいられない。このことで、僕は天龍というレスラーをずいぶん長く好きになれなかった。馬場さんと猪木両方からフォールを奪ったことのある天龍というレスラーのファンはかなり多く、その人がもしこの文を見たら不快な感じがするかもしれないので先に謝っておくが、若い頃の天龍は実につまらないレスラーだったと思う(本当にごめんなさい)。延髄斬りと称するドタっとした回し蹴りも使っていた。その頃天龍のオリジナルと言えばコーナートップからのエルボードロップくらいではなかったか。あとは突っ張りを「天龍チョップ」と言っていてこれもダサかった。
その天龍が繰り出す卍固めは、両足がマットに着いているという考えられないエセ卍で、猪木の重心を落とした卍を知るものにとっては目を覆いたくなるようなシロモノだった。
天龍は身体も屈強でパワーもあるのに、なんでこんなセンスのないことをやるのか不思議だった。鶴田よりよっぽどレスラーらしい面構えをしているのに(本当にいい顔)、全然その雰囲気を生かせていない。もしかしたら猪木に対抗するために馬場さんが仕組んだのかと邪推もしたほどだ。もしそうだったとしたら天龍は当時鬱屈していたのかもしれない。
天龍を見直したのは、長州との抗争で見せた荒々しさからである。鶴田と組んだvs長州・谷津戦で、谷津からピンフォールを取ったときの「やったあ」という力の入った表情。長州という過激な匂いをぷんぷんさせるレスラーとの出会いで開眼したのではないか。その後天龍は全日を飛び出し、新たな波に身を投じる。使う技はパワーボムやDDTでいまいち僕は満足できなかったが、それさえも武骨さと映じるときもあり、輝きは増した。今は50歳半ばで最もプロレスラーらしいプロレスラーとして君臨している。
閑話休題。天龍に話が逸れてしまった。
卍固めにはその後、後継者は現われていない。これはしょうがないことだと思っている。 猫も杓子も卍固めでは興醒めだ。鈴木みのるが最近リスペクト的に使うが、これも身体が浮いて安定していない。技を掛けるときに、鈴木は相手の右腕を極めたあと、最後に首に左足を掛ける。猪木と掛け方が異なっており、これではうまくいかないのではないかと思う。もっと相手の首を極めている足を落とさないといけない。
僕はもう後継者は現われなくてもいいと思う。伝説の技がひとつくらいあってもいいではないか。
派生技と言っても、卍固めがコブラツイストの派生技であるのでそれ以上発展しようがない。ただ「幻の技」として猪木が「新卍固め」を公開したことがある。見た事はなく、写真が載っていた本を紛失してしまったので再現できないが、メキシカンストレッチに似た技だったと記憶している。これも猪木は封印してしまった。
他に似た技として、佐々木健介の「ストラングルホールドγ」がある。相手の首と右腕の極め方は卍固めに近い。しかしこれも部分的に似ているにすぎない。一種の拷問技ではあるのだが。
小技さんのブログに掲載あります。イラスト参照してみてください。卍固めの猪木版はこちら、鈴木みのる版はこちら。鈴木みのるの左足の位置が高くて(落ちきっていなくて)少し身体が傾いでいる部分に注目。うまく描けてますよねぇ。また、ストラングルホールドγはこちらに掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
伝説では、ジャイアント馬場がコブラツイストを使用しだしたのを見て、更に上をいく必殺技を編みださんとしてカールゴッチと練り上げ、卍固めをマスターしたといわれている。ゴッチ直伝という触れ込みで、当初オクトパスホールド(蛸固めですな)と発表され、後に一般公募で卍固めと命名された。上手いネーミングだ。蛸固めじゃあ如何になんでも厳しい。猪木のスペシャルホールドとして、アントニオ・スペシャルとも言われる。
しかし、これはやはり伝説らしい。ヨーロッパではわりに古くから使われていた技で、ゴッチ&猪木考案というわけではないらしい。
だが猪木が最も多用しポピュラーにしたことは事実で、猪木がいなければ埋もれていたに違いない。
猪木は実にこの技を大事に使う。ほぼタイトルマッチ或いは大一番、しかもフィニッシュとしてでないと使わない。濫用しないのがそのレスラーとしてのセンスだろう。
旧日本プロレスのワールドリーグ戦でクリス・マルコフを破り優勝したときの卍固めが有名だがこれはさすがに古くて見ていない。印象に残るのはビル・ロビンソンとのNWF世界ヘビー級選手権試合。この伝説の60分フルタイムドローで猪木が防衛した試合で、ロビンソンは後半、逆さ押さえ込みで一本とる。このままでいけばタイトル移動となるそのタイムアップ間近、猪木は卍固めをロビンソンに掛ける。ロビンソンが耐え切ればタイトル移動だったが、そのとき猪木は掛けた卍固めの重心を後ろにぐっと落した。つまりお尻をマットに近づけたわけで、それによってさらにロビンソンの首に負荷が増し、堪らずあと1分を切ったところでギブアップをしてしまう。1-1でドロー。スリリングな幕切れだった。
このロビンソン戦の重心を下げた卍固めは猪木の中でもベストだと思う。全体重が首に圧しかかりたまったものではない。これが本当の卍固めであると思う。
卍固めは、猪木の個性が最大限に発揮された技であり追随しようとするレスラーはあまりいなかった。大木金太郎が嫌がらせのように使用したこともあったが(元祖「掟破り」ですね)、全く別物であり常時使うには至らなかった。
猪木より後輩のレスラーではとても遠慮して使用できなかっただろう。しかし、天龍源一郎というレスラーは、猪木と別団体であることをいいことに卍固めを常用するという暴挙に出る。
余談になってしまうが書かずにはいられない。このことで、僕は天龍というレスラーをずいぶん長く好きになれなかった。馬場さんと猪木両方からフォールを奪ったことのある天龍というレスラーのファンはかなり多く、その人がもしこの文を見たら不快な感じがするかもしれないので先に謝っておくが、若い頃の天龍は実につまらないレスラーだったと思う(本当にごめんなさい)。延髄斬りと称するドタっとした回し蹴りも使っていた。その頃天龍のオリジナルと言えばコーナートップからのエルボードロップくらいではなかったか。あとは突っ張りを「天龍チョップ」と言っていてこれもダサかった。
その天龍が繰り出す卍固めは、両足がマットに着いているという考えられないエセ卍で、猪木の重心を落とした卍を知るものにとっては目を覆いたくなるようなシロモノだった。
天龍は身体も屈強でパワーもあるのに、なんでこんなセンスのないことをやるのか不思議だった。鶴田よりよっぽどレスラーらしい面構えをしているのに(本当にいい顔)、全然その雰囲気を生かせていない。もしかしたら猪木に対抗するために馬場さんが仕組んだのかと邪推もしたほどだ。もしそうだったとしたら天龍は当時鬱屈していたのかもしれない。
天龍を見直したのは、長州との抗争で見せた荒々しさからである。鶴田と組んだvs長州・谷津戦で、谷津からピンフォールを取ったときの「やったあ」という力の入った表情。長州という過激な匂いをぷんぷんさせるレスラーとの出会いで開眼したのではないか。その後天龍は全日を飛び出し、新たな波に身を投じる。使う技はパワーボムやDDTでいまいち僕は満足できなかったが、それさえも武骨さと映じるときもあり、輝きは増した。今は50歳半ばで最もプロレスラーらしいプロレスラーとして君臨している。
閑話休題。天龍に話が逸れてしまった。
卍固めにはその後、後継者は現われていない。これはしょうがないことだと思っている。 猫も杓子も卍固めでは興醒めだ。鈴木みのるが最近リスペクト的に使うが、これも身体が浮いて安定していない。技を掛けるときに、鈴木は相手の右腕を極めたあと、最後に首に左足を掛ける。猪木と掛け方が異なっており、これではうまくいかないのではないかと思う。もっと相手の首を極めている足を落とさないといけない。
僕はもう後継者は現われなくてもいいと思う。伝説の技がひとつくらいあってもいいではないか。
派生技と言っても、卍固めがコブラツイストの派生技であるのでそれ以上発展しようがない。ただ「幻の技」として猪木が「新卍固め」を公開したことがある。見た事はなく、写真が載っていた本を紛失してしまったので再現できないが、メキシカンストレッチに似た技だったと記憶している。これも猪木は封印してしまった。
他に似た技として、佐々木健介の「ストラングルホールドγ」がある。相手の首と右腕の極め方は卍固めに近い。しかしこれも部分的に似ているにすぎない。一種の拷問技ではあるのだが。
小技さんのブログに掲載あります。イラスト参照してみてください。卍固めの猪木版はこちら、鈴木みのる版はこちら。鈴木みのるの左足の位置が高くて(落ちきっていなくて)少し身体が傾いでいる部分に注目。うまく描けてますよねぇ。また、ストラングルホールドγはこちらに掲載されています。またお世話になります。(*- -)(*_ _)ペコリ
たしかメキシコに古くから伝わる同じような技があって、ドラゲーの元イタコネが集団でかけてたような…。
その技は、かけてる側の体は斜めに傾き、サーフボード・ストレッチのようで全然いたそうじゃなかったです。
マッスル・スパーク(キン肉マン)のような技でした。
しかし、サーフボードストレッチというのは、掛け方によっては柔軟体操に見えてしまうのもまた問題でして…。
>全然いたそうじゃなかったです
笑ってしまいました(笑)。
枠の中にはめて書こうとするのは無理があるかもなんて思ってます。
と、話ズレついでに
男気にあふれた天龍、大好きでした!
さて、卍の話で質問ですが猪木の場合は必殺技(ギブアップ技?)としてフィニッシュに近いところで多用していましたが他のレスラーはそうでもない気がして。最近のプロレスは固めたら決まる!って技は少ないのでしょうか?
猪木の話を書くのって難しいですよねぇ。賛否両論出てくるし(苦笑)。それに猪木自体が茫洋としていますし(笑)。
天龍を「つまらないレスラーだった」と書くのも勇気がいりましたよ(笑)。
卍固めは、猪木リスペクトの形で鈴木みのるが出す以外はもう他のレスラーでは繰り出せないでしょう。それほどイメージが定着している。
固めたら終わり、という技は現在では難しいですねぇ。UWF全盛期は盛んでしたが。今は打撃技か投げ技。秋山のフロントネックロック、或いは金本のアンクルホールド、というのが僕はフィニッシュとしては好きですが。天山のアナコンダクロスも絶対ではない。中西がアルゼンチンでギブアップをとれる器であればいいのですが…ブツブツ(笑)。
プロレスネタをたくさん読ませていただくうちに、自分でもワザを覚えて誰かにかけてみたくなってきました。
アブナイか・・(爆笑)
しかし、技を掛けるのでしたらやはり打撃技がおすすめで(笑)。ジャンピングニーパットなどをマスターされるとどんな痴漢も一発K.O.(笑)。投げ技はアスファルトの地面などでやれば相手が受身がとれないと過剰防衛になってしまう危険性があります。また、今回書きましたコブラツイストや卍固めは、もし男性相手にかけるとかえって相手を喜ばせる危険性がありますのですすめません(笑)。
延髄蹴りと並ぶ猪木の得意技
何人かのレスラーが真似をして使いましたが
やはり猪木しか似合わない技だと思います。
絵にならないんですわな。真似してもカッコよくないんやもん。^^;
こんな刺激的なブログに出遭えて幸せです。
よろしくお願い致します。
さて、ロビンソン戦。
ロビンソンがスモール・パッケージ・ホールドでテクニシャン振りを見せたのに対し、猪木は「どちらが強いか」をはっきりさせるためにこの技でギブアップを取りましたね。1対1ではありましたが、どちらが強いかはっきりした試合でもありました。そういう相手にしか使わない「大技」ですよね。猪木が嫌いなタイプのダスティ・ローデスなどには、「技など不要」とばかりに殴って失神させたりしてましたもんね。
ロビンソン戦の卍固めのお話が出来る方と出会えて本当にうれしく思っています。確かに世界一の卍でしたね。あのグッと重心を落としたところ…。
猪木は相手によってファイトスタイルをかなり変えますよね(笑)。その白眉はあの伝説の「グレートアントニオ私刑試合」でしょうか。風車の理論もあったものではありません(汗)。