ニードロップの伝説と言えば、キラー・コワルスキーの「ユーコン・エリック耳そぎ事件」がまず浮かぶ。
僕はもちろんコワルスキーを見ている世代ではなく、知ったのはコミックスの「プロレススーパースター列伝」である。「墓場の使者」と異名をとり、冷酷残忍な悪役として50~60年代に活躍した。この「ユーコン・エリック耳そぎ事件」とは、コーナーポストからのニードロップがユーコン・エリックの耳を直撃し、耳が削ぎ落ちてしまったというもの。その後片耳を失ったエリックはノイローゼになりピストル自殺、かたやコワルスキーも血の海に沈む耳を思いだして一切肉が食べられなくなり菜食主義者となった。そのため妖鬼のように痩せ不気味な風貌と変わり、しかし菜食主義者のためスタミナは無尽蔵にある…という前時代のプロレスストーリーの極みとも言うべき物語を作った。いやー子供の頃これを読んだ僕までしばらく肉を見るのがイヤになったほどだった。凄いですねえ。
コワルスキーは実際に見ることは出来なかったが、そのニードロップのスタイルを受け継いでいると言われたのがアントニオ猪木であった。猪木はニードロップを打つ際、コーナーポストに上がるのが実に早かった。他の大型レスラーはたいてい見得を切りながらゆっくりとポストの最上段に上がったものだが、猪木はボディスラムで相手を叩きつけると直ぐにスルスルとポストに上がり、起き上がる時間を与えずダイブした。だから自爆は少なかったように思う。ただ、ダメージ軽減の意味があるのだろうが、どちらかというとヒザの先端が当たるというより向う脛が当たっているように見えた。あれではフォールは取れない。繋ぎ技の範疇だったと思う。
思い出話は置いておいて、ニードロップには様々なレベルがある。向う脛を当てるのはともかくとして、その場でヒザを落す、ジャンプしてヒザを落す、走りこんで飛び上がって打つ、ロープからもしくはコーナーポストからダイブする、などに分類出来る。そりゃ勢いがついたり高いところから落せばダメージは大きいだろうが避けられる可能性も高い。
落す場所も、アタマ、胸、腹、足など様々である。
ニースタンプという技がある。ヒザを、それこそスタンプを打つ按配で相手に叩きつける。まあニードロップとどう違うのかと言われれば困るのだがなんとなしにスタンプっぽいのだ。足に打つ場合、相手の足を両手で押さえ、そのままヒザを浮かして打つ。デストロイヤーなどは足を手で押さえて上で倒立するような格好になってヒザを打ち下ろす。ありゃ効きそうだ。たいていは4の字固めへの繋ぎとして使うのだが、デストロイヤーの場合そのままフォールまで持って行ったのを見たことがある。4の字固めのためにニースタンプを打ち続け、得意技になってしまったのだな。しかしやはり繋ぎの範疇で、リック・フレアーもこれをやる。
その場で落したり飛んだりするニードロップも案外強烈で、例えばタイガーマスクなどは頭部にヒザを落す。ゲシっという音が聞こえてくるようだ。アタマガンガンするだろうな。頭部にコーナーポストからヒザ落としたりしたら死んじゃうから、その場ジャンプくらいがちょうどいいのかもしれない。にしても効きそうだ。
ヒザというのは人体で最も固い部分であり、拳で殴ることが禁止されているプロレスでは、ヒザ蹴りにせよ打撃技としては相手に最もダメージを与えることが出来るのではないかと思う。単純だが迫力がある。
僕らの世代で、誰しもが№1のニードロップだと認めるのがご存知ブルーザー・ブロディのキングコング・ニードロップだろう。相手をデッドリー・ドライブで倒し、自らはコーナー対角まで下がって、拳を突き出し(カッコいい!)勝利を確信して、走りこんでジャンプ一番、相手の胸板にヒザを落す。
ブロディは超大型レスラーだが身体能力が高く、驚くほど高くジャンプする。チリチリの髪が逆立ち、ズゴーンと落ちるド迫力は正しく千両役者である。僕は少年の頃、ブロディのニードロップをビデオに編集して集め、何度も繰り返し見ては悦に入っていた(←アホ)。しかし必ずピンフォールを奪える説得力のある技だった。あの頃はスタン・ハンセンのウェスタン・ラリアートと並んで二大必殺技だったと言ってもいいのではないか。当時世界最強かもしれなかったブロディももうこの世にいない。
さて、もう一つ書いておきたいのが、キラー・カーンのダブルニードロップである。
この技は、ニューヨークであのアンドレ・ザ・ジャイアントの足を折ったと喧伝され(プロレスにはこういう伝説って欲しいな。コワルスキー然り、サンマルチノの首を折ったハンセン然り)、凱旋帰国した小沢正志は一躍ビッグネームとなった。
ダブル・ニードロップとはつまり両ヒザを揃えて落すもので、正座してニードロップする感じか。当たれば効果絶大だが、相手が避けると逃げ道がない。自爆すればそれは厳しいことになる。キラー・カーンが場外に倒れている相手にエプロンからニードロップを敢行し、自爆したのを見たことがある。ヒザのお皿が割れちゃうぞ。
しかし決まれば必殺である。ロープに昇って打つ場合、古館伊知郎は「アルバトロス殺法!!」と叫んだ。今もって意味はよくわからないのだが語感はいい。キラー・カーンとアホウドリに共通点はあるのだろうか。
カーンさんは引退して「居酒屋カンちゃん」をやっている由。歌舞伎町らしいので、お近くの方は是非お寄りを。
僕はもちろんコワルスキーを見ている世代ではなく、知ったのはコミックスの「プロレススーパースター列伝」である。「墓場の使者」と異名をとり、冷酷残忍な悪役として50~60年代に活躍した。この「ユーコン・エリック耳そぎ事件」とは、コーナーポストからのニードロップがユーコン・エリックの耳を直撃し、耳が削ぎ落ちてしまったというもの。その後片耳を失ったエリックはノイローゼになりピストル自殺、かたやコワルスキーも血の海に沈む耳を思いだして一切肉が食べられなくなり菜食主義者となった。そのため妖鬼のように痩せ不気味な風貌と変わり、しかし菜食主義者のためスタミナは無尽蔵にある…という前時代のプロレスストーリーの極みとも言うべき物語を作った。いやー子供の頃これを読んだ僕までしばらく肉を見るのがイヤになったほどだった。凄いですねえ。
コワルスキーは実際に見ることは出来なかったが、そのニードロップのスタイルを受け継いでいると言われたのがアントニオ猪木であった。猪木はニードロップを打つ際、コーナーポストに上がるのが実に早かった。他の大型レスラーはたいてい見得を切りながらゆっくりとポストの最上段に上がったものだが、猪木はボディスラムで相手を叩きつけると直ぐにスルスルとポストに上がり、起き上がる時間を与えずダイブした。だから自爆は少なかったように思う。ただ、ダメージ軽減の意味があるのだろうが、どちらかというとヒザの先端が当たるというより向う脛が当たっているように見えた。あれではフォールは取れない。繋ぎ技の範疇だったと思う。
思い出話は置いておいて、ニードロップには様々なレベルがある。向う脛を当てるのはともかくとして、その場でヒザを落す、ジャンプしてヒザを落す、走りこんで飛び上がって打つ、ロープからもしくはコーナーポストからダイブする、などに分類出来る。そりゃ勢いがついたり高いところから落せばダメージは大きいだろうが避けられる可能性も高い。
落す場所も、アタマ、胸、腹、足など様々である。
ニースタンプという技がある。ヒザを、それこそスタンプを打つ按配で相手に叩きつける。まあニードロップとどう違うのかと言われれば困るのだがなんとなしにスタンプっぽいのだ。足に打つ場合、相手の足を両手で押さえ、そのままヒザを浮かして打つ。デストロイヤーなどは足を手で押さえて上で倒立するような格好になってヒザを打ち下ろす。ありゃ効きそうだ。たいていは4の字固めへの繋ぎとして使うのだが、デストロイヤーの場合そのままフォールまで持って行ったのを見たことがある。4の字固めのためにニースタンプを打ち続け、得意技になってしまったのだな。しかしやはり繋ぎの範疇で、リック・フレアーもこれをやる。
その場で落したり飛んだりするニードロップも案外強烈で、例えばタイガーマスクなどは頭部にヒザを落す。ゲシっという音が聞こえてくるようだ。アタマガンガンするだろうな。頭部にコーナーポストからヒザ落としたりしたら死んじゃうから、その場ジャンプくらいがちょうどいいのかもしれない。にしても効きそうだ。
ヒザというのは人体で最も固い部分であり、拳で殴ることが禁止されているプロレスでは、ヒザ蹴りにせよ打撃技としては相手に最もダメージを与えることが出来るのではないかと思う。単純だが迫力がある。
僕らの世代で、誰しもが№1のニードロップだと認めるのがご存知ブルーザー・ブロディのキングコング・ニードロップだろう。相手をデッドリー・ドライブで倒し、自らはコーナー対角まで下がって、拳を突き出し(カッコいい!)勝利を確信して、走りこんでジャンプ一番、相手の胸板にヒザを落す。
ブロディは超大型レスラーだが身体能力が高く、驚くほど高くジャンプする。チリチリの髪が逆立ち、ズゴーンと落ちるド迫力は正しく千両役者である。僕は少年の頃、ブロディのニードロップをビデオに編集して集め、何度も繰り返し見ては悦に入っていた(←アホ)。しかし必ずピンフォールを奪える説得力のある技だった。あの頃はスタン・ハンセンのウェスタン・ラリアートと並んで二大必殺技だったと言ってもいいのではないか。当時世界最強かもしれなかったブロディももうこの世にいない。
さて、もう一つ書いておきたいのが、キラー・カーンのダブルニードロップである。
この技は、ニューヨークであのアンドレ・ザ・ジャイアントの足を折ったと喧伝され(プロレスにはこういう伝説って欲しいな。コワルスキー然り、サンマルチノの首を折ったハンセン然り)、凱旋帰国した小沢正志は一躍ビッグネームとなった。
ダブル・ニードロップとはつまり両ヒザを揃えて落すもので、正座してニードロップする感じか。当たれば効果絶大だが、相手が避けると逃げ道がない。自爆すればそれは厳しいことになる。キラー・カーンが場外に倒れている相手にエプロンからニードロップを敢行し、自爆したのを見たことがある。ヒザのお皿が割れちゃうぞ。
しかし決まれば必殺である。ロープに昇って打つ場合、古館伊知郎は「アルバトロス殺法!!」と叫んだ。今もって意味はよくわからないのだが語感はいい。キラー・カーンとアホウドリに共通点はあるのだろうか。
カーンさんは引退して「居酒屋カンちゃん」をやっている由。歌舞伎町らしいので、お近くの方は是非お寄りを。
ハンセンとのコンビすごかったですよね。
ブロディが亡くなった時のこと今でも思い出します。鶴田もブロディも短い命でしたね。
(話ズレていますが鶴田のバックドロップは鳥肌立ちました!)
本当に今は魅せるレスラーがいない、、と最後は毎度おなじみのグチになってしまいます
PS キラーカーンも懐かしいぃ
なお、ここで書くのもヘンですが、小林惠子氏の本は「すり替えられた天皇」です。しかしかなり飛躍した説ですよ^^;
二人の試合は1954年にモトリオールフォーラムで行われたのですが、それ以前からコワルスキーは菜食主義者であったそうです。
ワード検索で“killer Kowalski”とグーグルで検索すると英語の記事がいくつか出てきます。それらの記事を読むとあれはほんと事故だったのです。そして次の日にはコワルスキーは病院を訪れお互い談笑したことが語られています。
菜食主義になったのは、カナダのプロレス試合において英国とニュージーランドから来た選手が菜食主義だったことに起因すると本人の弁です。それは1953年のことなのです。
梶原一騎のあのプロレス列伝は子供向けのでたらめ本です。彼は巨人の星、あしたのジョー、タイガーマスクなど名作まんがの原作をいくつも書きましたが、漫画の原作者なんて結局紙芝居作家程度にしか評価されないことに一生コンプレックスを感じ、ノイローゼになり、そこから病気になったのではないかと私は想像するのです。ちょっとかわいそうな作家です。
デストロイヤーのあのニースタンプは確かに痛そうです。
彼はブラッシ―とのWWA世界戦では相手の肩を押さえてこのニースタンプを浴びせたところ、鎖骨にひびを入れ―いや脱臼だったか?とにかく怪我をさせて勝っているのです。
でもこれは彼のオリジナルホールドではありません。パットオコーナーが盛んに使っていた技だそうです。ディック・ベイヤーは当時そばで見て知ってたんでしょうね。これ本人の話です。
ただ、なんでレスラーなのに菜食主義者であったか、という肝心な本当の話は僕も知りませんでした(大汗)。ありがとうこざいます。
ニースタンプもパット・オコーナー譲りなのですか。オコーナーというのは偉大なレスラーなのですね。確か馬場さんのネックブリーカードロップもオコーナー由来ではなかったかなあ。僕はレフリーをやっているオコーナーしか知りません。もっと早く生まれたかった(笑)。