凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

コブラツイスト

2005年06月14日 | プロレス技あれこれ
 ネットサーフィンをしている最中に、「コブラツイストのような痛め技にも注目があつまって欲しいものです」という文章に出くわした。プロレスBBSか、何の時に見たのか忘れちゃって紹介出来ないのが申し訳ないのだけれど、僕の正直な感想は「そうか、コブラツイストって痛め技か、もう必殺技じゃないのか」という寂しい思いだった。
 しかし考えてみればそうだわな。それより、昨今はコブラツイスト自体を見る事が少なくなった。西村修がときどきやるけれども、彼は「思い出の技公開男」であるからしてやはりもう既にレトロな技なのだろうか、と猪木世代の僕は思うのである。
 かつてはみんな知っていた技で、「4の字固め」「逆エビ固め」と並んで子供がプロレスごっこでやる技ベスト3だったと思うのだが。

 コブラツイストは立ち関節技で、プロレス的に言うと「観客に見せやすい」技。かけられた相手の苦悶の表情もよくわかり実に素晴らしい技である。
 元祖は、手元の資料によるとサイクロン・アナヤとされているが、この選手についてはよく知らない。ルーテーズと戦っており、おそらく50年以上前の選手だろう。しかし、ディック・ハットンを創始者とする説もあって実際には真偽はわからない。
 この技を僕たちに知らしめたのは、なんと言ってもアントニオ猪木に違いない。僕がプロレスを見だした頃はもう既に猪木もフィニッシュには使っていなかったのだが、試合途中で必ずかけるコブラツイストは実に格好よかった。相手をロープに振り、再び接触するカウンターで魔術のように相手レスラーに絡みつく。特にカウンターで仕掛けなくてもいい技であると冷静に考えれば思うのだが、そこは魅せることを重点におく猪木の真骨頂である。リバース・インディアンデスロックを極めて観客に見得を切る場面と共に、このカウンターでのコブラツイストは無くてはならないものだったとも言える。
 コブラツイストはその後も基本技としては一応存在していて、既に拡散して無意識下の技ともなった感がある。必殺の可能性は内包していると思うのだが。

 しかし、そもそもコブラツイストはどこを痛めつけるのを主眼にしているのだろうか。
 日本名「アバラ折り」であるからしてアバラ骨を痛めつけるに決まっているだろう、と言われそうだが、アバラを痛めつけることは締め技では難しいのではないかと思われる。見た目、アバラ骨が前面に押し出されるように見えるのでそう言うだけのことではないだろうか。ただ、レスラーでないので真偽は判らないのだが。
 僕のつたない経験(小学生時代のプロレスごっこの経験ですが)では、この技はまず背骨ではないだろうか。自分の左足にまず相手の背中を押し付けている部分がバックブリーカー的である。締め付ければかなり効くだろう。そして上半身を捻る。ツイストだから当然。これは背骨だけでなく腰にもダメージがある。それ以上は掛ける人によってコブラツイストも個性があるので一概には言えないが。

 僕が考えるに、大別して二種類のコブラがあるように思う。ここではあくまで便宜的に、「ドリーファンクJr型」と「アントニオ猪木型」としてみる。
 この分け方の主眼は相手の右腕を極めるか、または首を極めるか、ということである。
 まずドリー型は、相手の、上に伸びた右腕を左腕でガッチリと極める。掛ける側のレスラーはほぼ上半身は直立した状態。相手の右腕、または右肩を極めるためにむしろ自分の身体は反らす傾向にある。
 そうなると、自分の右腕は空く。なので、ジャンボ鶴田は相手の腰を外に押し出すように力を加え、さらに相手に捻りを加えていた。えげつない。さらに鶴田は左腕で相手の右肩を極めつつ、相手の首を押さえつけて無理やり極めていた。これぞ拷問コブラと呼ばれるもので、それは痛そうだった。
 いわゆる卍固めという技は、コブラツイストを極めつつ相手の首を足で押し下げて極める、という技で、詳しくは卍固めを言及するときに書きたいが、鶴田の拷問コブラは、その卍固めの足で極めている部分を強引に左手でやっているようなものだ。えげつないことおびただしい。
 この技は渕や田上らが継承しているようだが、迫力は鶴田に及ばない。

 対して猪木型は、相手の首に腕を回して両手でクラッチし、首を極める。両手が首に回るぶん相手の右腕を極めるという要素は少なくなるが、右肩はしっかりと極め、首を引き上げるようにして極めていく。ドリー型に比べ身体の密着度が高く、逃げにくい。
 さて鶴田の「拷問コブラ」については前述したが、あれはドリー型の発展系であった。しかしもう一種類の拷問コブラ・猪木型が存在する。それは小橋健太がやる拷問コブラだ。
 猪木型は相手の首を両手でクラッチして極めるのが特徴であるが、その極め方が小橋はエグい。まるでフェイスロックのように締め上げる。この形は天龍が以前よくやっていたように記憶しているが、僕としては小橋の方が鮮烈だ。なんせあの剛腕で締め付けるのだから地獄。ここまでくれば立派なフィニッシュホールドである。小橋にはいくら剛腕とは言え猫も杓子もやるラリアットなどよりも、こういう「痛みのわかる技」を多用して欲しいと思うのだが。もっとやってくれよ小橋ぃ。

 さて、派生技にはもちろん卍固めがあるが、これについては別立てで書きたいのでここでは言及しない。
 他に派生技はないようであるが、似ている技、として、川田のストレッチプラムがある。最近川田は立ちストレッチプラムをあまり極めないが、あれは立ってやるとコブラツイストに近い。自分の左足に相手の背中を押し付けて身体を捻るように締めればその部分はコブラだ。あとは相手の首と右腕を極めるわけで、近い技ではないかと思う。ドラゴンスリーパーにも近いが。

 グラウンドコブラという技は、コブラツイストと言うより一瞬のフォール技であろう。コブラツイストの姿勢のまま後方に倒れてフォールする。コブラツイストが掛かっているから反せない、という寸法。
 思い出すのは、猪木vs長州の試合。昭和59年だったろうか、正規軍vs維新軍の5vs5勝ち抜き戦が行われた時、やはり最後は猪木vs長州となり、猪木が卍固めで勝った。山本小鉄が放送席から出てレフェリーストップの裁定を下した伝説の試合である。あのときはまだ猪木が貫禄で勝っていた。しかし、半年も経たなかったと思うが、夏に蔵前で再び猪木vs長州は実現する。その時はかなり長州が押し、猪木も決定的な力の差を見せられずに最後はグラウンドコブラで長州をフォールした。猪木はもうグラウンドコブラみたいな一瞬の返し技のようなものでしか長州に勝てなくなったのか。実力の接近をまざまざと感じたグラウンドコブラだった。
 そのひと月後くらいに長州維新軍は新日を離脱したように記憶している。グラウンドコブラを見るとその時の思い出が甦る。

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6 コメント

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Unknown (明石屋_1955)
2005-06-16 23:52:14
確かに最近では決め技というより痛め技に成り下がってますね。 本当の使い手がいないというのもありますけどね。 高山などが決め技にしたら凄いと思うんですけどね。
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>明石屋_1955さん  (凛太郎)
2005-06-17 22:48:50
痛め技になっちゃったのは名手が居ないからなのです。小橋がちゃんと使ってくれたら復活するはずなんです。(゜ー゜)(。_。)ウンウン

僕はコブラって結構派手な技だと思うんですけどねぇ。立ち関節なんやからさぁ。

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やっぱ、昭和のプロレスが好きやねん! (オランダの薔薇)
2005-06-18 22:40:43
ども(笑)、話に混ぜてください。

確かに、名手が居ないこともありますが、

受け手の問題もあるのでは…



昨日、CSスカイ・Aで、『ワールドプロレスリング』の再放送していました。

内容は、88ジャパン・カップ イリミネーション・タッグリーグでした。

そこで、亡くなったディック・マードックの延髄斬りの受けっぷりといったら、本当に効いている印象を視聴者に植え付けますもの…



コブラ・ツイストに関しては、ジョニー・パワーズあたりの顔芸なんか、最高でしたよね。



昔のレスラーの方が演技が巧かったんでしょうかね…

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(-_-;) うーん… (凛太郎)
2005-06-19 00:01:18
コメントありがとうございます。

オランダの薔薇さんのおっしゃることはよくわかるのですが…。



どうも、狭量であることは自分でもわかってはいるのですが(汗)、ジョニーパワーズの例の目を見開いた苦悶の表情を「顔芸」と言い切ってしまうにはまだ抵抗があります(笑)。 いや、顔芸には間違いないんですよ。ただねぇ…。



マードックが延髄斬りを受けて一回転する様を「ありゃ演技だな」と切り捨てて技の価値まで軽く見る人たちとずっとケンカしてきたものですから(笑)。まだまだ未熟者でありんす。m(_ _;)m



オランダの薔薇さんのお話は傾聴に値すると思っています。受け手不在が、武藤のシャイニングウィザードを膝蹴りから回し腿蹴りにしてしまったと僕は思っています。受け手の問題は実に重要なことなのです。



お気を悪くされないでくださいね(滝汗)。
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Unknown (モンゴール)
2013-02-13 02:55:41
いつも深夜遅くに申し訳有りません。久々に投稿させて戴きます。

'コブラツイスト,はレスリングでは通称'ギロチン,と名付けられています-寝技のみの使用で立ち技では使い、では無く、使えません。動く事の出来ない相手にのみ仕掛ける事の出来る技です-。
首を切り落とされる位苦しい技、と云う意味の様です。

効く部位は下半身と上半身が互い違いに捩られる態勢になりますので、腰椎・脊椎・胸骨全般・肩関節・(頚・頭骨を強固に固めた場合)頚関節及び頭蓋骨、になります。

競技で許されている-認められている-のはレスリングとブラジリアン柔術のみです(柔術でも禁止になったかもしれません)。

かなり多くのグラップリングやサブミッションレスリングでも禁止ですので、それだけ強烈且つ危険な技と云う事なのではないでしょうか。

当方も使い、使われもしましたが使う場合は手順が面倒(但し効き目は抜群)、使われた時は兎に角痛い、苦しい技でした。

いつも通り拙い内容ですが、もし参考になりましたならば幸いです。

それでは失礼させて戴きます。


敬白
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>モンゴールさん  (凛太郎)
2013-02-14 05:37:35
いつもありがとうございます。これはずいぶん昔に書いたもので、今読み返しますと文章が稚拙で全くのところ恥ずかしく思っています。
コブラツイストはいかにもプロレス的な技であると思っていましたので、レスリングにも存在していたとは驚きました。さすれば、プロレスが採り入れ見栄えの良い立ち関節技に改めた、ということですね。
柔術にも存在するということで、さらに驚きです。
プロレスで言うグラウンドコブラが本格ということになりますが、やはりバックに回って脇から上半身をもぐりこませるのでしょうね。確かに決まればフォールでしょう。
複合技なので正式名称はないのかもしれませんが「ギロチン」とは凄まじい。興味深い話を誠にありがとうございました・
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