夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

磯釣 酒井三良筆 その6

2017-07-05 00:01:00 | 掛け軸
叔父が数多くの酒井三良の作品を旧蔵しており、自宅を訪ねた時に床に掛かっていた軸が酒井三良の作品でした。「酒井三良は知っているだろう?」と尋ねられたのですが、当時まだ知識の浅い小生は首を横に振ったら、叔父が残念そうな顔をしていました。叔父は酒井三良の作品がとても好きだったのだろう。

それから30年近く経った今になって、小生も少しずつ酒井三良の作品を蒐集しているのは叔父の影響であろうか?

磯釣 酒井三良筆 その6
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 共箱二重箱 
全体サイズ:横675*縦1418 画サイズ:横543*縦420



F10号サイズの掛け軸としては大きい部類の作品。酒井三良の作品はこれくらいの大きさのある作品がよいのだろう。



酒井三良は福島県の生まれで我が郷里と同じく東北出身の画家です。会津に住み込み、独学で絵画を描き続け、大正10年、小川芋銭を知り、その勧めで院展に出品し認められました。



それでも困窮した生活を送り、昭和21年、横山大観の勧めで茨城県五浦の大観別荘に移り、昭和29年、東京都杉並久我山に転居するまで暮らしています。



戦後、ようやく生活も徐々に安定していく酒井三良は自然と親しんでいた経験を元に、日本の風景や四季を愛しその風景を中心に描くようになります。



自然に包まれながら生きる人々を素朴な筆致で詩情豊かに描いた画風で知られ、その淡く白みを基調とした作品はどこか繊細であり、緻密な表現力で描かれる日本人の琴線に触れるような作風が特徴となっています。

 

雪景や田園風景を描いた作品は生まれ故郷の福島の風土への回想が根底にあり、また戦後住んだ茨城の海浜風景や水郷をテーマにした水墨作品も多くあります。

 

望郷の念が日本人の根底にあるものとすると、これからの都会で住む人の多い日本人は酒井三良をどう評価していくのでしょうか? ただ望郷の思いは日本人の意識の中に深く息づいている以上、酒井三良の作品は今後も高く評価されていくのでしょう。



表具の仕立てもセンスが良く、保存状態も良好です。私が骨董においても師と仰ぐ一人の叔父が旧蔵していた作品は、子息らの手ですべて散逸しました。

それらのほとんどの作品の画像は当方で保存しており、印章はその作品の中のものと同一のものが押印されていることが確認されています。

本作品の大きさ、状態の良さですと市場の取引価格はほぼ30万前後。最低でも10万は超えます。掛け軸において、ある程度著名な画家の作品はある程度の金額で購入しないといい作品は入手できないでしょう。

陶磁器にしろ骨董というものは、ある程度名前の売れた作家の作品は、インターネットオークション、骨董市、骨董店などで10万程度以下で購入できる作品は99%駄作、贋作と思っていいでしょう。駄作ばかりを飾っている御仁は、本人の品格まで問われますので要注意ですね

よくいるのですよ、立派な部屋に駄作ばかり飾る御仁が・・・、金持ちほどケチということかも? いい作品の入手には知識、鑑識眼が不足しているなら資金で補うしかないのに・・・。

ただ叔父は能ある鷹は爪を隠すが如く、本当のいい作品はなかなか見せてくれませんでした



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