比類なき「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズは、小説である。
だがこの作品の知名度を飛躍的に上げたのは、原作ではなく5年前の第一期アニメ版だった。
かく言う俺自身、アニメでハルヒを知った口だ。
初見の頃は、出鱈目な時系列で放映される形態に「原作未読者の事をまるで考えない糞オナニーアニメ」と憤慨したりもした。
あれから5年も経ったなんて、ちと信じられん。驚愕だな。
その第一期アニメが放映されたのは、2006年4月~7月である。
ところで、ハルヒの原作小説は、この度発売になった最新巻以前に、計9冊発行されていた。
その中の直近2冊の発売日を見てみよう。
・第8巻「涼宮ハルヒの憤慨」 2006年5月発売
・第9巻「涼宮ハルヒの分裂」 2007年4月発売
……お分かり頂けただろうか。これ一度言ってみたかった。
そう、ハルヒの原作は、アニメが大ブームを巻き起こした時、既に9巻中8巻までが発売されていたのである。
逆に言えば、ハルヒ大ブレイク後、様々なメディアで作品が展開される中、肝心要の原作はたった1冊しか発売されなかったのである。
またその1冊すら、前作から1年近くかかっている。それまでは概ね数ヶ月間隔でテンポよく発行されていたのに。
別に、8巻まででネタを出し切り、作品が磨耗していたとか、そういう理由ではない。寧ろ伏線が膨れ上がった状態だったのだ。
いかに作者・谷川流氏が創作に行き詰っていたかがよく分かる。ちなみに氏の他作品も同時期に刊行が止まってしまっている。
ハルヒ効果で知名度が劇的に上がり、懐もアホほど潤っただろうに、作家としては経験したことのないほどの壁にぶち当たってしまっていたのだ。
……まぁ単に金が入ってサボり癖が付いたとも考えられるが、それはないと思いたい。ファンとして。
そんな中、氏が苦しみながら生み出した「分裂」は、当初から2部構成であり、下巻で完結することが明言されていた。
その下巻も上巻からさして間を置かず発売されることが決まっていたので、ファンはやきもきしながら続きを待った。
しかし……直前になって無情の発売延期。アニメ効果で原作ファンが激増していたこともあり、その落胆の範囲は広く大きかった。
と言っても、この時点では深刻な事態は誰も予想していなかった。ちょっとだけ待てばいい。ワクワクを溜めていればいい。
「ごめんネ!」とおどけて謝罪する、原作ではまず見られないであろうハルヒのイラストに免じて許そうぞ。
その代わり下巻は必ず面白いものに仕上げてくれよ。頑張ってくれ谷川さん!!
……で、4年。4年ですよ。正直もう色んな意味で覚えていない。
2年目くらいまでは「驚愕はまだかなぁ」なんてネタをたまに自分用日記に書いてたりしたが、いつしかそれもなくなった。
ハッキリ言ってこのまま消失していくものだと思っていた。もちろん谷川氏共々。
それほど4年という時間は長かった。もう誰にも絶対に取り戻せない、間。
この尋常じゃない原作の停滞は、当然ながらアニメ他メディアミックス展開にも大きな影響を及ぼした。
なまじ大ブレイクを果たした後だけに、そこらの作品よりダメージは大きかったと思う。
中でも最も痛手を受けたのは、皮肉にもハルヒをブレイクさせたアニメ版だろう。
1期の大ヒットを受け、2期の製作はかなり早くに公表された。
アニメ化してない原作のストックはまだまだたっぷりあり、2期どころか3期も十分考えられた。
そこに原作の更なる展開があれば、相乗効果でブームはますます盛り上がる……関係者もファンもそんな未来を想像したに違いない。
アニメ2期が決定したのは確か2007年7月7日(ハルヒ的に大事な日)だったと思うが、あの時は俺も大層興奮したものだ。
……なのに、結局アニメ2期が始まったのは、2009年になってからだった。だがそこまで製作に時間がかかるとはちょっと考えにくい。
原作新巻とペースを合わすべく、只管放映を延期した結果なのだろう。それも最終的に痺れを切らしてしまったようだ。
ハッキリ言ってグダグダな始まり方だった。1期の再放送と合わせて流すやり方も、個人的には失敗だったと思う。
そして始まったアニメ2期は、放映までのグダグダっぷりを色濃く表したような、何とも残念な出来だった。
特に「エンドレスエイト」8回放送は、後世に語り継ぐべき失態だろう。あれ、面白いと思ったファンは一人でもいるのか?
あそこまで行くと原作延期のせいだけとは思えんが……一体何だったんだろうなぁ。
ちなみにエンドレスエイトは原作だと非常に面白い。個人的にお気に入り短編の一つだ。
この頃にはブームもすっかり沈静化しており、アニメ2期の出来はこれに拍車をかけることとなった。
発売されるDVDやゲームも値崩れが目立つようになり、一度そうなるともう流れは止まらなくなった。
それに、世にある面白いコンテンツは、別にハルヒだけではない。客はいつまでもハルヒだけを待ってくれるわけではない。
生き馬の目を抜く2次元業界でここまでの停滞は、いかに大ヒット作品だろうと許されるものではなかった。
かくして生み出された言葉は……ハルヒは「終わったコンテンツ」……即ち「オワコン」。
何ともムカつく言葉だが、言い得て妙だからこそムカつくのだろう。嫌味と皮肉をやらせれば日本ネット界は世界一だ。
どう考えてもオワコン。自然になったのならまだしも、自業自得のオワコン。救いようのないオワコン。
どうしてこうなったのだろう。いずれ未来人がこの過去を変えてくれるのを願うばかりだ。
はぁ。
で、4年後、今年、5月25日。最新作「涼宮ハルヒの驚愕」が発売された。
もうなぁ。「待ってた」て感覚はないなぁ。「忘れてた」でもないけど。熱意が随分薄れていたのは確かである。
それでも買う事に迷いは全くなかった。1月くらいに予約したんじゃなかったかな。
何と言っても安いし。前後編・小冊子付き初回限定版で1260円。ゲームやアニメソフトに比べたらカスみたいな価格である。
ラノベ、いや文庫って非常にコスパの高い娯楽だと思う。何かの作品にハマれたら、あとネット環境さえあれば他何も要らないよ。
その意味じゃ現状の乱造傾向もまぁ悪くないんじゃなかろうか。一応読書だから世間受けもまだマシだろうし。まいいや。
こうなったらもう、読むしかない。……の前に、復習がてら既刊9冊を再読した。
これが結構、大変だった。思ったより遥かに時間がかかってしまった。
ラノベと侮るなかれ、ハルヒは結構文字数が多い作品なのである。少なくとも俺妹よりは多い。もちろん良し悪しの話ではない。
古泉解説を始め、ややこしい表現も多用されてるから、ぼんやりと読んでたら意味が分からなくなる。じっくり読んでも全部分かるわけじゃないけど。
しかしながら再読の甲斐はあり、忘れてたことを思い出し、また今更気付いた描写も幾つもあったりした。
過去何度か再読はしたんだが、年単位のブランクがあるとやっぱ抜け落ちていくもんだねぇ。俺の愛着なんてこんなもんか……はぁ。
ともかく、上巻に当たる「分裂」まで読み終え、準備は整った。いざ、4年間の思いを込め、ペァジを開かん。
「涼宮ハルヒの驚愕」、前後編2冊、開始ナリ!!
……うーん。
まず装丁、これがダメだった。
前後編にオマケの冊子を挟み、ただ無骨なビニールで包んだだけ。全然限定版らしい高級感がない。
綺麗に纏められるスリーブを付けるとか、その程度の豪華さは付与すべきだろう。なんじゃこの空虚さは。
後編には帯やチラシも付いておらず、普通に買うより何か損した気分だ。ガッカリである。
して肝心の内容は……こんだけ引っ張ってアレだが、あまり書くことがない。
まぁ取り敢えず、文体も内容もちゃんとハルヒだったのは間違いない。谷川流は生きていた。当然だが。
二日で1冊ずつ読んだが、先日の俺妹8巻のように貪り読めたわけではなかった。まぁこんなもんだろうな。
4年という期間はあまりに長く、もう発売されただけでOKな気分になっていて、内容はどうでも良かった。言い過ぎか。
当初の予定通りに発売されてたら、ギッチギチの感想と続きへの期待を並べただろうが、今の俺にゃ無理。
4年は長すぎた。幾らなんでもやり過ぎた。しつこいようだがこれが答え。仕方ない。まぁこんなもんだろうな。
分裂から続いた騒動は一応決着したが、相変わらず伏線めいた謎が多く、先が期待できる半面モヤモヤが晴れない。
この作品は謎めいた現象に様々な説明をしてくれるが、それが正しいとは殆ど言及してくれないのである。あくまで可能性だ。
なので「過去現在未来の関係」「古泉の機関の実態」「朝比奈と藤原の関係」「ハルヒや佐々木はキョンのことがLOVEなのか」といった謎は、
結局読者一人一人が想像するしかなく、真相は藪の中。「こんだけ待たされたのに……」という不満が募る。
佐々木みたいなキャラが登場した以上、キョンを挟んだハルヒとの三角関係になるのは至極当然だろうが。
なのに終盤の空気っぷりは何だよ。「好意」はライクラブどっちなんだよ。ハッキリしやがれ畜生。
佐々木のキャラは上巻にも増して良くなっていたが、扱いは明らかに悪くなっていた。とても残念である。
佐々木団こと相手側の変人軍団は、橘京子はあられもないヘタレ化、藤原と九曜はムカつくだけの悪人化し、魅力大幅減。
特に藤原の極悪化は作風に合っておらず、非常に違和感があった。あんな糞野郎出さなきゃいいのに。
そんな藤原にキョンは過去にないほどの激怒を見せたが、それを晴らすシーンは結局語られず、再登場の可能性もなさそうだ。
スッキリしないことこの上ない。サラッとエピローグ流してんじゃないよ。半殺すシーンくらい入れろや。はぁ。
終盤はようやく気持ちが入り、夢中で読む事ができたが、展開は何かいい加減な感じで、違和感に包まれたまま読了した。
別にこれが完結編ってわけじゃないから、今後に期待でも別にいいんだが……なにぶん、とにかく待たされただけになぁ。
キョンや佐々木の本名を教える程度のサービスは欲しかったよ。もう隠す意味は殆どないと思うんだけどなぁ。
そういや、いとうのいぢ。
ハルヒとシャナで大いに名を上げた人気イラストレイター(多分)だが……俺はこの人の絵、正直嫌いである。
ハッキリ言って、下手じゃないか? この絵のどこに魅力が? なんで人気あんの? 理解できなかった。
ハルヒでも、カラー絵はともかく本編に挟まれる挿絵はどうしようもないほどに下手糞で、これがプロの仕事かと常々疑問だった。
挿絵があくまでオマケで、想像力を掻き立てる程度でいい一般作ならこれでも可なのだろうが、ハルヒはライトノベルを自称する作品だ。
そのジャンルと客層を考慮し、挿絵もそれなりのレベルで仕上げなければならんだろう。マジ理解できない。
しかし何より酷いのが、ロクに本分を読まず絵を描いていること。
キャラの衣装が文章と挿絵で違うシーンが今まで幾つもあり、そのいい加減な仕事っぷりに呆れて物が言えなかった。
小説の挿絵の仕事で、まさか原作を無しに描き始めることはないだろう。ロクに文を読まずテキトーにやってるに違いない。
これは、そんなのいぢの手抜きを放置した編集者にも大きな責任があると思う。仕事を舐めすぎ。客を舐めすぎ。
特に最高傑作として名高い「消失」で、長門がキョンにおずおずと白紙の入部届けを差し出すシーンは最悪だ。
あの長門か積極行動に出るという、消失でも屈指の名シーンなのに、「消失長門」のシンボルたる眼鏡が描かれていない。
これ見た時はマジ死ねと思ったわ。いとうのいぢ、なんで人気あんの? せめてハルヒとシャナは別の人に代わってほしい。はぁ。
……と糞味噌に思っていたんだが、今回の驚愕では絵のレベルが随分上がっており、ようやく俺の望むラノベ挿絵の次元に来ていた。
それでも上手いとは全く思わないが、まぁ許容範囲である。偉そうだが、過去が酷すぎたからな。
しかし文を読まずに描く舐めプレーは抜けていないのか、今回もすぐ分かる服装がおかしい絵があった。
具体的には、後編P41。朝比奈さんはメイド服を着てないとおかしい。はぁ。読めば分かるだろう。ったく。
まぁ一応ハルヒやシャナのキャラクターをデザインし、2次元絵に起こした生みの親はこの人である。
そういう意味では立派な神だから、やっぱ尊重せにゃならんのかのう。はぁ。
そして後編の最後、谷川氏の後書き。
ある意味これが一番読みたかったかもしれない。一体どんな言い訳をするんだ。ワクワクして読んだ。
……んー。もちろん謝罪はしつこいほどしていた。読者及び関係各位に対して。文章だから本心は分からんけど。
んでこんだけ時間がかかった理由は、結局単純に「書けなかったから」に他ならないらしい。本人にも理由不明の大スランプだったと言うのだ。
この4年間、当然様々な人に延期の理由を訊かれたが、本人に分からないものを他人に上手く説明できる訳もなかったとの事だった。
そう言われちゃぁ、納得できないまでも受け入れるしかないわなぁ。
あくまで作者は谷川氏、こっちゃただの客。執筆し発行する権利はどこまでも谷川氏にしかない。
世界は神のきまぐれによって如何様にもなる。あっはっは、その通りだな。
ついでに震災の事にも触れて欲しかったが、そちらは何もなかった。
自身の阪神大震災被災経験から、何か思う所は必ずあるはずなんだが。
ンな意見ぶてる立場じゃないと思ったのかな。残念だ。
一応、驚愕執筆中に短編の構想が幾つか浮かんだとの事で、次回作は意外と早く期待できるかもしれない。
取り敢えず今後も新刊購入は確定。ラノベは安いし、驚愕も決してつまんなかったわけじゃないからな。
ハルヒ以外の停滞中作品も徐々に復活させていってもらいたい。ハルヒ待ち中に谷川作品はあらかた漁ったからな……。
再読でハルヒ熱が高まったんで、3万円ちょいのブルーレイボックスが欲しくなってきた。
一度諦めたんだが、ありゃぁ魅力的だよ。1期の名作っぷりは間違いないし、エンドレスエイトを改めて流したい気もする。
発売時はもっと安かったから、あん時決断すべきだったなぁ。時間移動して修正したい。うーん、3万円。うーむ。
「消失」の映画も未見だから、こちらも何とかしないとなぁ。物欲がどんどん繋がって疲れる。
ゲームは、「戸惑」の限定版を買ったものの、ずっと放置状態になっている。早く再開しないといかんなぁ。
値崩れした他のゲームも色々漁りたい。意外と挑戦的な内容が多いみたいだからな。
はぁ。やる事多すぎて大変だ。正直気が滅入る。
けどこうして作品に気持ちが乗ってる時ってのは幸せなもんだよな。そう思う。
過去の熱意はもうないが、今後もダラダラこの比類なきオワコンに付き合っていこう。
久々に比類なき1期のOP「冒険でしょでしょ」をようつべで観たら、素晴らしくてちょっと涙出そうになった。
俺はアニメ「憂鬱Ⅵ」の終わり際、
キョン「ハルヒ」
ハルヒ「なに」
キョン「似合ってるぞ」
~冒険でしょでしょのイントロ~
の演出が死ぬほど好きで、何回観ても奇声上げながらゴロゴロしてしまう。
あの時のハルヒの表情を想像するだけで飯2杯は食える。あの演出した人(ヤマカン氏?)は神。
ぐちゃぐちゃ言いつつ、本当は好き。オワコン上等、寧ろ俄が去って環境が引き締まったってもんよ。アホか。
アニメ3期もまず間違いなく放送されるし、世間がどうあれ俺は好きなままでいよう。
答えはいつもわたしの胸に~~。
キモ。はぁ。
だがこの作品の知名度を飛躍的に上げたのは、原作ではなく5年前の第一期アニメ版だった。
かく言う俺自身、アニメでハルヒを知った口だ。
初見の頃は、出鱈目な時系列で放映される形態に「原作未読者の事をまるで考えない糞オナニーアニメ」と憤慨したりもした。
あれから5年も経ったなんて、ちと信じられん。驚愕だな。
その第一期アニメが放映されたのは、2006年4月~7月である。
ところで、ハルヒの原作小説は、この度発売になった最新巻以前に、計9冊発行されていた。
その中の直近2冊の発売日を見てみよう。
・第8巻「涼宮ハルヒの憤慨」 2006年5月発売
・第9巻「涼宮ハルヒの分裂」 2007年4月発売
……お分かり頂けただろうか。これ一度言ってみたかった。
そう、ハルヒの原作は、アニメが大ブームを巻き起こした時、既に9巻中8巻までが発売されていたのである。
逆に言えば、ハルヒ大ブレイク後、様々なメディアで作品が展開される中、肝心要の原作はたった1冊しか発売されなかったのである。
またその1冊すら、前作から1年近くかかっている。それまでは概ね数ヶ月間隔でテンポよく発行されていたのに。
別に、8巻まででネタを出し切り、作品が磨耗していたとか、そういう理由ではない。寧ろ伏線が膨れ上がった状態だったのだ。
いかに作者・谷川流氏が創作に行き詰っていたかがよく分かる。ちなみに氏の他作品も同時期に刊行が止まってしまっている。
ハルヒ効果で知名度が劇的に上がり、懐もアホほど潤っただろうに、作家としては経験したことのないほどの壁にぶち当たってしまっていたのだ。
……まぁ単に金が入ってサボり癖が付いたとも考えられるが、それはないと思いたい。ファンとして。
そんな中、氏が苦しみながら生み出した「分裂」は、当初から2部構成であり、下巻で完結することが明言されていた。
その下巻も上巻からさして間を置かず発売されることが決まっていたので、ファンはやきもきしながら続きを待った。
しかし……直前になって無情の発売延期。アニメ効果で原作ファンが激増していたこともあり、その落胆の範囲は広く大きかった。
と言っても、この時点では深刻な事態は誰も予想していなかった。ちょっとだけ待てばいい。ワクワクを溜めていればいい。
「ごめんネ!」とおどけて謝罪する、原作ではまず見られないであろうハルヒのイラストに免じて許そうぞ。
その代わり下巻は必ず面白いものに仕上げてくれよ。頑張ってくれ谷川さん!!
……で、4年。4年ですよ。正直もう色んな意味で覚えていない。
2年目くらいまでは「驚愕はまだかなぁ」なんてネタをたまに自分用日記に書いてたりしたが、いつしかそれもなくなった。
ハッキリ言ってこのまま消失していくものだと思っていた。もちろん谷川氏共々。
それほど4年という時間は長かった。もう誰にも絶対に取り戻せない、間。
この尋常じゃない原作の停滞は、当然ながらアニメ他メディアミックス展開にも大きな影響を及ぼした。
なまじ大ブレイクを果たした後だけに、そこらの作品よりダメージは大きかったと思う。
中でも最も痛手を受けたのは、皮肉にもハルヒをブレイクさせたアニメ版だろう。
1期の大ヒットを受け、2期の製作はかなり早くに公表された。
アニメ化してない原作のストックはまだまだたっぷりあり、2期どころか3期も十分考えられた。
そこに原作の更なる展開があれば、相乗効果でブームはますます盛り上がる……関係者もファンもそんな未来を想像したに違いない。
アニメ2期が決定したのは確か2007年7月7日(ハルヒ的に大事な日)だったと思うが、あの時は俺も大層興奮したものだ。
……なのに、結局アニメ2期が始まったのは、2009年になってからだった。だがそこまで製作に時間がかかるとはちょっと考えにくい。
原作新巻とペースを合わすべく、只管放映を延期した結果なのだろう。それも最終的に痺れを切らしてしまったようだ。
ハッキリ言ってグダグダな始まり方だった。1期の再放送と合わせて流すやり方も、個人的には失敗だったと思う。
そして始まったアニメ2期は、放映までのグダグダっぷりを色濃く表したような、何とも残念な出来だった。
特に「エンドレスエイト」8回放送は、後世に語り継ぐべき失態だろう。あれ、面白いと思ったファンは一人でもいるのか?
あそこまで行くと原作延期のせいだけとは思えんが……一体何だったんだろうなぁ。
ちなみにエンドレスエイトは原作だと非常に面白い。個人的にお気に入り短編の一つだ。
この頃にはブームもすっかり沈静化しており、アニメ2期の出来はこれに拍車をかけることとなった。
発売されるDVDやゲームも値崩れが目立つようになり、一度そうなるともう流れは止まらなくなった。
それに、世にある面白いコンテンツは、別にハルヒだけではない。客はいつまでもハルヒだけを待ってくれるわけではない。
生き馬の目を抜く2次元業界でここまでの停滞は、いかに大ヒット作品だろうと許されるものではなかった。
かくして生み出された言葉は……ハルヒは「終わったコンテンツ」……即ち「オワコン」。
何ともムカつく言葉だが、言い得て妙だからこそムカつくのだろう。嫌味と皮肉をやらせれば日本ネット界は世界一だ。
どう考えてもオワコン。自然になったのならまだしも、自業自得のオワコン。救いようのないオワコン。
どうしてこうなったのだろう。いずれ未来人がこの過去を変えてくれるのを願うばかりだ。
はぁ。
で、4年後、今年、5月25日。最新作「涼宮ハルヒの驚愕」が発売された。
もうなぁ。「待ってた」て感覚はないなぁ。「忘れてた」でもないけど。熱意が随分薄れていたのは確かである。
それでも買う事に迷いは全くなかった。1月くらいに予約したんじゃなかったかな。
何と言っても安いし。前後編・小冊子付き初回限定版で1260円。ゲームやアニメソフトに比べたらカスみたいな価格である。
ラノベ、いや文庫って非常にコスパの高い娯楽だと思う。何かの作品にハマれたら、あとネット環境さえあれば他何も要らないよ。
その意味じゃ現状の乱造傾向もまぁ悪くないんじゃなかろうか。一応読書だから世間受けもまだマシだろうし。まいいや。
こうなったらもう、読むしかない。……の前に、復習がてら既刊9冊を再読した。
これが結構、大変だった。思ったより遥かに時間がかかってしまった。
ラノベと侮るなかれ、ハルヒは結構文字数が多い作品なのである。少なくとも俺妹よりは多い。もちろん良し悪しの話ではない。
古泉解説を始め、ややこしい表現も多用されてるから、ぼんやりと読んでたら意味が分からなくなる。じっくり読んでも全部分かるわけじゃないけど。
しかしながら再読の甲斐はあり、忘れてたことを思い出し、また今更気付いた描写も幾つもあったりした。
過去何度か再読はしたんだが、年単位のブランクがあるとやっぱ抜け落ちていくもんだねぇ。俺の愛着なんてこんなもんか……はぁ。
ともかく、上巻に当たる「分裂」まで読み終え、準備は整った。いざ、4年間の思いを込め、ペァジを開かん。
「涼宮ハルヒの驚愕」、前後編2冊、開始ナリ!!
……うーん。
まず装丁、これがダメだった。
前後編にオマケの冊子を挟み、ただ無骨なビニールで包んだだけ。全然限定版らしい高級感がない。
綺麗に纏められるスリーブを付けるとか、その程度の豪華さは付与すべきだろう。なんじゃこの空虚さは。
後編には帯やチラシも付いておらず、普通に買うより何か損した気分だ。ガッカリである。
して肝心の内容は……こんだけ引っ張ってアレだが、あまり書くことがない。
まぁ取り敢えず、文体も内容もちゃんとハルヒだったのは間違いない。谷川流は生きていた。当然だが。
二日で1冊ずつ読んだが、先日の俺妹8巻のように貪り読めたわけではなかった。まぁこんなもんだろうな。
4年という期間はあまりに長く、もう発売されただけでOKな気分になっていて、内容はどうでも良かった。言い過ぎか。
当初の予定通りに発売されてたら、ギッチギチの感想と続きへの期待を並べただろうが、今の俺にゃ無理。
4年は長すぎた。幾らなんでもやり過ぎた。しつこいようだがこれが答え。仕方ない。まぁこんなもんだろうな。
分裂から続いた騒動は一応決着したが、相変わらず伏線めいた謎が多く、先が期待できる半面モヤモヤが晴れない。
この作品は謎めいた現象に様々な説明をしてくれるが、それが正しいとは殆ど言及してくれないのである。あくまで可能性だ。
なので「過去現在未来の関係」「古泉の機関の実態」「朝比奈と藤原の関係」「ハルヒや佐々木はキョンのことがLOVEなのか」といった謎は、
結局読者一人一人が想像するしかなく、真相は藪の中。「こんだけ待たされたのに……」という不満が募る。
佐々木みたいなキャラが登場した以上、キョンを挟んだハルヒとの三角関係になるのは至極当然だろうが。
なのに終盤の空気っぷりは何だよ。「好意」はライクラブどっちなんだよ。ハッキリしやがれ畜生。
佐々木のキャラは上巻にも増して良くなっていたが、扱いは明らかに悪くなっていた。とても残念である。
佐々木団こと相手側の変人軍団は、橘京子はあられもないヘタレ化、藤原と九曜はムカつくだけの悪人化し、魅力大幅減。
特に藤原の極悪化は作風に合っておらず、非常に違和感があった。あんな糞野郎出さなきゃいいのに。
そんな藤原にキョンは過去にないほどの激怒を見せたが、それを晴らすシーンは結局語られず、再登場の可能性もなさそうだ。
スッキリしないことこの上ない。サラッとエピローグ流してんじゃないよ。半殺すシーンくらい入れろや。はぁ。
終盤はようやく気持ちが入り、夢中で読む事ができたが、展開は何かいい加減な感じで、違和感に包まれたまま読了した。
別にこれが完結編ってわけじゃないから、今後に期待でも別にいいんだが……なにぶん、とにかく待たされただけになぁ。
キョンや佐々木の本名を教える程度のサービスは欲しかったよ。もう隠す意味は殆どないと思うんだけどなぁ。
そういや、いとうのいぢ。
ハルヒとシャナで大いに名を上げた人気イラストレイター(多分)だが……俺はこの人の絵、正直嫌いである。
ハッキリ言って、下手じゃないか? この絵のどこに魅力が? なんで人気あんの? 理解できなかった。
ハルヒでも、カラー絵はともかく本編に挟まれる挿絵はどうしようもないほどに下手糞で、これがプロの仕事かと常々疑問だった。
挿絵があくまでオマケで、想像力を掻き立てる程度でいい一般作ならこれでも可なのだろうが、ハルヒはライトノベルを自称する作品だ。
そのジャンルと客層を考慮し、挿絵もそれなりのレベルで仕上げなければならんだろう。マジ理解できない。
しかし何より酷いのが、ロクに本分を読まず絵を描いていること。
キャラの衣装が文章と挿絵で違うシーンが今まで幾つもあり、そのいい加減な仕事っぷりに呆れて物が言えなかった。
小説の挿絵の仕事で、まさか原作を無しに描き始めることはないだろう。ロクに文を読まずテキトーにやってるに違いない。
これは、そんなのいぢの手抜きを放置した編集者にも大きな責任があると思う。仕事を舐めすぎ。客を舐めすぎ。
特に最高傑作として名高い「消失」で、長門がキョンにおずおずと白紙の入部届けを差し出すシーンは最悪だ。
あの長門か積極行動に出るという、消失でも屈指の名シーンなのに、「消失長門」のシンボルたる眼鏡が描かれていない。
これ見た時はマジ死ねと思ったわ。いとうのいぢ、なんで人気あんの? せめてハルヒとシャナは別の人に代わってほしい。はぁ。
……と糞味噌に思っていたんだが、今回の驚愕では絵のレベルが随分上がっており、ようやく俺の望むラノベ挿絵の次元に来ていた。
それでも上手いとは全く思わないが、まぁ許容範囲である。偉そうだが、過去が酷すぎたからな。
しかし文を読まずに描く舐めプレーは抜けていないのか、今回もすぐ分かる服装がおかしい絵があった。
具体的には、後編P41。朝比奈さんはメイド服を着てないとおかしい。はぁ。読めば分かるだろう。ったく。
まぁ一応ハルヒやシャナのキャラクターをデザインし、2次元絵に起こした生みの親はこの人である。
そういう意味では立派な神だから、やっぱ尊重せにゃならんのかのう。はぁ。
そして後編の最後、谷川氏の後書き。
ある意味これが一番読みたかったかもしれない。一体どんな言い訳をするんだ。ワクワクして読んだ。
……んー。もちろん謝罪はしつこいほどしていた。読者及び関係各位に対して。文章だから本心は分からんけど。
んでこんだけ時間がかかった理由は、結局単純に「書けなかったから」に他ならないらしい。本人にも理由不明の大スランプだったと言うのだ。
この4年間、当然様々な人に延期の理由を訊かれたが、本人に分からないものを他人に上手く説明できる訳もなかったとの事だった。
そう言われちゃぁ、納得できないまでも受け入れるしかないわなぁ。
あくまで作者は谷川氏、こっちゃただの客。執筆し発行する権利はどこまでも谷川氏にしかない。
世界は神のきまぐれによって如何様にもなる。あっはっは、その通りだな。
ついでに震災の事にも触れて欲しかったが、そちらは何もなかった。
自身の阪神大震災被災経験から、何か思う所は必ずあるはずなんだが。
ンな意見ぶてる立場じゃないと思ったのかな。残念だ。
一応、驚愕執筆中に短編の構想が幾つか浮かんだとの事で、次回作は意外と早く期待できるかもしれない。
取り敢えず今後も新刊購入は確定。ラノベは安いし、驚愕も決してつまんなかったわけじゃないからな。
ハルヒ以外の停滞中作品も徐々に復活させていってもらいたい。ハルヒ待ち中に谷川作品はあらかた漁ったからな……。
再読でハルヒ熱が高まったんで、3万円ちょいのブルーレイボックスが欲しくなってきた。
一度諦めたんだが、ありゃぁ魅力的だよ。1期の名作っぷりは間違いないし、エンドレスエイトを改めて流したい気もする。
発売時はもっと安かったから、あん時決断すべきだったなぁ。時間移動して修正したい。うーん、3万円。うーむ。
「消失」の映画も未見だから、こちらも何とかしないとなぁ。物欲がどんどん繋がって疲れる。
ゲームは、「戸惑」の限定版を買ったものの、ずっと放置状態になっている。早く再開しないといかんなぁ。
値崩れした他のゲームも色々漁りたい。意外と挑戦的な内容が多いみたいだからな。
はぁ。やる事多すぎて大変だ。正直気が滅入る。
けどこうして作品に気持ちが乗ってる時ってのは幸せなもんだよな。そう思う。
過去の熱意はもうないが、今後もダラダラこの比類なきオワコンに付き合っていこう。
久々に比類なき1期のOP「冒険でしょでしょ」をようつべで観たら、素晴らしくてちょっと涙出そうになった。
俺はアニメ「憂鬱Ⅵ」の終わり際、
キョン「ハルヒ」
ハルヒ「なに」
キョン「似合ってるぞ」
~冒険でしょでしょのイントロ~
の演出が死ぬほど好きで、何回観ても奇声上げながらゴロゴロしてしまう。
あの時のハルヒの表情を想像するだけで飯2杯は食える。あの演出した人(ヤマカン氏?)は神。
ぐちゃぐちゃ言いつつ、本当は好き。オワコン上等、寧ろ俄が去って環境が引き締まったってもんよ。アホか。
アニメ3期もまず間違いなく放送されるし、世間がどうあれ俺は好きなままでいよう。
答えはいつもわたしの胸に~~。
キモ。はぁ。
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