◇OSS◇NECと日立がOSS/Linuxの協業で合意

2008-03-30 16:57:43 | OSS・ニュース
 NECと日立製作所は、OSSミドルウエア/Linuxに関する協業で合意した。今回の合意に基づき両社は①アプリケーション開発・運用管理を支援するOSSミドルウエア関連ツール②Linuxカーネルの障害解析機能―の共同作業を進めることにしている。これにより、OSSプラットフォームの基幹系システム適用拡大に向けたさらなる高信頼化を推進することになる。

 <短評>NECと日立はこれまでシステム運用管理ソフトなので協業をしてきた経緯があり、今回もその一環としての取り組みと考えられ、別段不思議なことではない。しかし、富士通や日本IBMとの関連から考えると、OSS/Linux事業でNECと日立が相互協力関係をさらに深めたことは、注目に値する。今回の協業について2社は「本取り組みに賛同する企業があれば、協業範囲を拡大していく所存であります」とし、富士通を含めこの協業への参加を大いに歓迎をすることを表明している。ところがである、内容を見てみれば、NECと日立のツール類を使った協業に富士通や日本IBMが入れてくださいということはないであろうし、仮に、富士通や日本IBMのツール類をこの協業に取り込めば、複雑怪奇なことになり、組織が空中分解することは明らかだ。つまり、この協業はOSS/Linux事業での実質的な「NEC・日立連合の旗揚げ」と言ってもいいのではなかろうか。

 もともと、NECと富士通は仲が悪い。これは、例えば自治体システムで2社は昔から競り合ってきたし、その他のシステムでも似たような取り組みを行い、この結果「あいつだけには負けたくない」という感情になっていったのだろう。まあ、似たもの同士は仲が悪いといったとこだ。NECとすれば、ちょっと毛色に違う日立と組めば、憎っくき富士通に一矢報いることができると考えた(?)。日立は昔から良く言えば、大物ぜんとした雰囲気があり、NEC、富士通とは格が違うと自分では思っているが、悪く言えば“大男総身に知恵が回りかね”的なところがあり、小回りのきくNECと組むメリットは大きい。

 これまで、Linuxの基幹システムへの対応では富士通、日立、NEC、日本IBMの4社連合で対応してきた。これは、ある意味では対マイクロソフト共同戦線的意味合いを持っていたが、その役割もそろそろ終える時期になり、では次の一手はといった状況に現在置かれていた。つまり、総論の時期が終わり、各論に入ってきたわけである。その時期にNECと日立が協業を発表したことは、なにやらきな臭さを感じざるを得ない。
(ossdata)

http://www.nec.co.jp/press/ja/0803/2701.html

◇OSS◇オープンソースERPソフト「コンピエール」のスターターキットが発売

2008-03-23 16:41:35 | OSS・アプリ
 オープンソースERP&CRMソフト「Compiere(コンピエール)」のベンダーである米コンピエール社の日本語サポートを担当しているアルマスは、日本の中小企業やインテグレーター向けに「コンピエール」を素早く、手軽に利用できるための日本語版スターターキットの販売を開始した。「コンピエール」は野村総合研究所が07年4月に発表した「オプンソースマップ」で高い評価を得るなど、世界的に注目を集めているオープンソースERP&CRMソフトで、今後日本でも注目が集まるものとみられる。

 <短評>SAPやオラクルなどのERPソフトは、大手ユーザーを中心に世界にユーザーを持っているが、これらはシステム構築期間が長く、しかも価格が高いといった問題を抱えている。また、最近ではSOAなどによりより柔軟性がでてきたとはいえ、パッケージに合わせてアプリケーションを構築しなければならない。このような欠点を克服できるERPソフトとして、最近注目を浴びているのがオープンソースERPソフトである。

 オープンソースERPソフトのメリットは、OSSなので低価格で構築できること。また、SAPのようにクローズドなパッケージソフトでないため、各ユーザーに合ったアプリケーションを短期間で構築できる点にある。ある識者に言わせると「今後の企業システムのアプリケーション開発は、オープンソースERPソフトを使うのが一番理にかなっている」と言うほどである。オープンソースCRMソフトとしてははSugar(シュガー)が有名であるが、これまでオープンソースERPソフトについては日本には紹介されていなかった。

 このような状況下で日本に上陸を果たしたのが「コンピエール」である。今回アルマスからスターターキットの日本語版が発売されたことにより、わが国でもオープンソースERPソフトの普及が始まる可能性が出てきた。「コンピエール」は野村総合研究所の「オープンソースマップ」でお墨付きを得られるなど、機能の高さでは定評がある。大手ユーザーのERPソフト市場は既にSAPなどが定着し、これから市場に入り込むことは難しいが、中堅・中小企業市場や大手企業でも部門システム市場でならこれから市場開拓しても十分に勝算はある。(ossdata)

http://www.compiere-japan.com/index.html

http://www.almas.co.jp/

http://www.nri.co.jp/news/2007/070523.html

http://ja.wikipedia.org/wiki/Compiere


◇OSS◇埼玉県上尾市がホスト機からLinuxサーバーシステムへのリプレースに成功

2008-03-16 17:06:24 | OSS・ユーザー
 ミラクル・リナックス、RKKコンピューターサービス、日本IBMは、埼玉県上尾市の新基幹系電子行政システムをLinuxOS、ブレードサーバーなどオープンスタンダードで構築し、3月3日から稼働させた。新システムの導入により、10年単位のライフサイクルコストを比較した場合、従来のホストシステムと比べておよそ6億円のコスト削減につながると予測される。また、新システムでは24時間継続してオンライン稼働が可能となり、メンテナンスにかかわる職員の負担が大幅に軽減した。

 <短評>今回、ブレードサーバーは「IBM BladeCenter」、LinuxOSは「MIRACLE LINUX V4.0-AsianuxInside」、高可用性ソフトは「MIRACLE CLUSTERPRO X」「MIRACLE FailSafe」がそれぞれ採用された。現在、メインフレームによるホストシステムは数多くの自治体で使われているが、今回、埼玉県上尾市がホスト機からLinuxサーバーによるオープンスタンダードシステムへのリプレースに成功したことによって、現在ホスト機を利用利用している各自治体に大きな波紋を投げかけたといえよう。

 オープンスタンダードの採用によりコスト削減効果が一番インパクトがある。現在全国の多くの自治体が緊縮財政を求められており、この中でコンピューターシステムコストをいかに削減するかが問われているからである。こうなるとLinuxの威力を最大限発揮することができる。上尾市の場合10年間で6億円のコスト削減が予測されている。さらにメンテナンスの負担軽減も大きい。

 Linuxベンダー各社はもっとコスト削減を強調した事業活動を展開した方がいい。ホスト機をLinuxサーバーシステムに移行すれば、いくらお得になりますよと、ユーザーに強く働きかける必要がある。また、現実にコスト削減が可能なLinuxシステムとしなければ、オープンスタンダードといくらお題目をユーザーに言ってもうまくいかない。IT業界関係の人は技術指向が強すぎて、難しい用語を使うのが即仕事と考えているふしがある。ここらで技術指向は、言ってみれば隠し味とし、コスト削減指向を前面に掲げた事業に転換してみる必要があろう。(ossdata)

http://www.miraclelinux.com/corp/pressroom/details/2008/0311_1.html

◇OSS◇レッドハットがOSS対応SOA製品を発表

2008-03-09 17:15:52 | OSS・ミドル
 レッドハットはサービス指向アーキテクチャ(SOA)による業務システム構築のためのOSSミドルウエア製品「JBoss Enterprise Platform」の提供を開始した。これは、業界で初めてOSSベースのSOAミドルウエア機能を統合し、低コストで一括提供するもの。同社では「JBossソリューションセンター」を設置により、ISVパートナー支援を強化し、オープンソースSOAを本格推進することにしている。

 <短評>SOAは仮想化と並び最近IT関連のホットな話題となっており、各社が力を入れ始めている。JBossを買収したレッドハットとしては、OSS対応SOAは満を持した発表であった。SOAは業務システムで稼働する個々のサービスをネットワーク上で自由に連携させて、システム全体を最適化する設計手法のことで、システムをゼロから作るのではなく業務プロセスの視点で変化させて構築するもので、今後のシステム構築の焦点になりつつある。

 このように注目されているSOAではあるが、①SOAミドルウエア製品のコストが高い②実際には費用対効果が能書きほど得られにくい③各社固有のSOA技術では習得も容易ではなく、技術者の確保が難しい―などの理由により、思ったより普及してないのが現実だ。そのような状況下でレッドハットがOSS対応SOAの提供を発表したことの意義は大きい。つまり、OSS対応のため①コストが安い②このため費用対効果が得やすい③SOA技術がオープン化され、その結果技術者の確保も比較的容易―などのメリットが得られる。

 このように、OSS対応SOAは期待が持てる製品であり、今後の普及が大いに楽しみな製品であることは間違いないのであるが、IBMをはじめとする大手IT企業は既に独自のSOA製品による事業を展開しており、これらの中でレッドハットがどう存在感を植え付けることができるのかは未知数なところがある。正にレッドハット首脳部の能力が問われる製品ではある。(ossdata)

http://www.jp.redhat.com/news_releases/2008/02282008.html

◇OSS◇しまがねOSS協議会が「地域づくり総務大臣表彰」を受賞

2008-03-02 19:33:47 | OSS・ニュース
 しまねオープン・ソース・ソフトウェア協議会が総務庁の「平成19年度地域づくり総務大臣表彰」を受賞した。受賞理由は「OSSの普及活動による地元IT産業の振興、若年者の地元定着」で、①地方からの情報関連事業の企業②「戦略は辺境の地から起きる」という経済学仮説の成功に期待したい③地元IT産業の振興により、雇用の場の確保、若者の地元定着が図れるなど、情報化による地域振興として期待がもてる。ITビジネスにおける東京一極集中に歯止めをかける取り組みとしても評価したい。

 <短評>今、地方単位でOSSの組織が生まれ、活発な活動が展開されている。その代表的な組織として、しまねOSS協議会が今回「地域づくり総務大臣表彰」を受けたわけである。これまで日本のソフトウエア産業は、大手IT企業が元受となり、下請け、孫受けと連なる産業構造を取ってきた。しかし、この構造ではやがて破綻がやってくることは確実だ。一つは特に自治体のシステムが硬直化してしまうこと。大手が収益を第一に考えシステム構築すると、柔軟性のあるシステムを実現させることは難しい。

 さらに、オフショアに代表されるように、わが国のソフトウエア産業に黒船が出現し、国内のソフト開発の業務を一挙に持ってしまう可能性が出てきたことだ。これまで、日本語という障壁でわが国のソフト産業は安泰であったが、中国、インドをはじめとする海外のソフト会社が日本市場での活動を開始するのに従い、受注に自信を深めてきている。この結果、下請け、孫受けの中小ソフト会社は、大手IT企業から見捨てられる可能性が出てくる。

 今後のわが国のソフト産業を考えると、地域ごとに組織化し、オープンな仕様に基づく新しい考え方に立つことが、生き残りの切り札になってくる。つまり、ソフトウエア業として自立できるか、否かが問われているわけである。この際、OSSは有力な武器になることは間違いない。今後、全国各地でソフトの地場産業と自治とがOSSを中心にガッチリ組み、都市部と地方の格差是正に向け走り出すことが、欠かせない。(ossdata)

http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080220_4.html